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「立城さんは僕に、地上の王の後継者としての役目を期待していた。立城さんはとある事件によって異常なフェチズムを抱えていた僕を抱きこむためにうってつけのカードが手元にある事を思い出した」
ぴくりと斎姫が肩を震わせる。優一郎はちらりと斎姫を見やってからコーヒーカップに目を落とした。
恐らく絵美佳は無意識にそれを行ったに違いない。だが絵美佳の魂にねじ込まれた真也の方は立城の意図を察知していたのだ。そして同時に気付いていたに違いない。このまま行けば間違いなく立城は破綻する。例え傍にストッパーである水輝が居ても、だ。
そして絵美佳は由梨佳を貶める目的で優一郎を使った。その結果、母親である由梨佳を好いていた優一郎はヒューマノイドという機械の身体を持つ女性に興味を示すようになった。
「ヒューマノイドの特性は知っていると思う。僕の義理の母を務めていた宇多川由梨佳さんが、僕の前で故障しモンキーオナニー現象を起こしたことがある。当時中学生だった僕は、欲情に流され彼女を抱いた」
斎姫は黙り込んで俯いている。長い髪の間に見え隠れする斎姫の表情を読んだ優一郎はそこで一旦、言葉を切った。優一郎が気遣っていることに気づいたのだろう。斎姫が慌てたように頭を上げて、大丈夫だから続けてと言う。優一郎はその言葉に頷いた。
「それから僕は、機械の身体を持つ女性にしか性的な興味を抱けないようになった。そんな僕の前に、君は忽然と現れた」
本当の姿を晒した斎姫に優一郎は否応なく惹かれた。まるで自分のために用意された形と思えた。モニタ画面の中で痴態を晒す斎姫に優一郎は欲情し、同時に斎姫を欲しいと思った。
「君は僕の理想そのものだった。当然と言えば当然だ。立城さんがそう仕立て上げたのだから」
優一郎のものになる以前、斎姫はずっと立城の使い魔に育てられていた。立城の使い魔は細心の注意を払い、余計な情報が斎姫に流れないようにしていた。そして壊れものを扱うように、大切に大切に斎姫を育てたのだ。
「僕と君を惹き合わせるのは、立城さんにとってとても簡単な作業だった。君のマスターとしてあらかじめ僕を登録しておくだけで、ただそれだけで僕は君に惹かれていった」
斎姫が目を細める。それから斎姫は静かにコーヒーカップを取った。その手が小刻みに震えている。本物だと、それだけは真実だと思っていた自分の想いまでが誰かに仕組まれたものだと知れば、確かに衝撃ではあるだろう。だが斎姫は気丈に振舞っている。
斎の姫の名を何故つけられたのか。斎とは神聖、清浄を指す文字だ。そして心身を清め、神に仕える者を現す言葉でもある。同時に神を祀る場所も示している。
天の宮、斎の姫。二人につけられた名は立城が意図したよりはるかに強い意味を持っていたのだ。
「立城さんの誤算は、無意識的に僕と多輝が惹かれあったことだった。その対処には水輝さんがあたった。だけど、それは水輝さんの策略だった」
どこまで水輝がからくりを理解し、把握しているのかは正直なところ、優一郎にも判らない。だがあの時、間違いなく水輝は意志をもって動いていた。
「水輝さんは立城さんに助力するふりをしながら、決定的な楔を僕達四人の関係の中に打ち込んだ」
多輝の力の大半は水輝によって眠らされている。不思議な話だ。水輝は何故、眠っていた筈の間に行われた実験に介入することが可能だったのだろう。だがそのからくりは酷く単純だ。水輝は立城の隙をついて時を渡ったのだ。
雷龍神として生まれた多輝の力を抑え、絵美佳の魂にねじ込まれた真也に協力し、その上で優一郎を守る。斎姫に関しては水輝は心配はしていなかったらしい。それは当然だろう。斎の姫の名を持つ斎姫は既に優一郎の手中にあったからだ。
「表面的になぞれば、ただの愉快犯的な行動にしか見えない。水輝さんは当時は僕の姉として女性の姿を取っていた彼の処女を奪い、無理矢理に多輝に介入して君の処女を奪わせたのだから」
補正として必要な行為だったんだけどね。そう続けて優一郎は微かに笑った。斎姫は眉を少し寄せている。なくしていた記憶は既に情報として斎姫に戻してある。当時のことを思い出したのか、斎姫が僅かに身震いする。斎姫にとって多輝とのあの件については嫌な思い出でしかないのだろう。
多輝は斎姫の処女を奪った。例え機械の身体とは言っても器という意味では肉体と変わらない。多輝は斎姫の処女を奪うことによって特別な力を得たのだ。そしてその力は多輝の無意識に働きかけた。名の示す道をゆくように方向修正をされたのだ。
そして水輝は絵美佳の処女を奪った。そのことによって絵美佳の覚醒は他より遅れた。龍神にとって処女血は特別な意味を持つ。相手が龍神であればなおのことだ。水輝は処女を奪った際、覚醒するべきだった絵美佳の力を強引に抑えてしまったのだ。
「納得いかないのはわかる。けど多輝を恨まないでやってくれるかい?」
そう告げて優一郎は深く息をついた。斎姫は頼りなく視線を彷徨わせている。
「性を歪められ育てられた彼女の歪みは頂点に達していた。無意識的に僕に惹かれていたために君に対する嫉妬で気が狂わんばかりだったんだ。それでも彼女は最後の最後で踏み止まり僕達を解放しようとした。水輝さんも焦っただろうね」
だからあの時、水輝は唐突に姿を現したのだ。諦めてしまいそうになっていた多輝の頭を引っ叩き、本来の道に戻すために。だが水輝にとってそれは危険な賭けでもあった。何故ならあの瞬間、確かにあの倉庫の時は止まっていたのだ。そうでなければ記憶を書き換える術を持って介入していた立城に気付かれる恐れがある。
まだヒューマノイドがちゃんと書けてないんですよね……。
頑張り中だったと思います、たしか。