※この作品はR-18です。

魂の座 三部 暁の姉妹   作:伊駒辰葉

26 / 175
続きです~。
エロシーンはありません。


優一郎から斎姫への告白 3

「さらに水輝さんも恨まないでいてほしい。もし、あの時、多輝が君の処女を奪っていなければ、君は立城さんの手で処分されていただろう」

 

 真也の魂の輝きは、絵美佳の持つ龍神としての輝きを持ってしても抑えられなくなりつつあった。もしも立城があの時に真也に気付いていたら、間違いなく斎姫は処分されていただろう。危険分子を残しておくほど立城は甘くない。

 

「僕と多輝が惹かれあったのは、立城さんの全く知らない場所で結ばれた縁のせいだった。転生が実在していることは、インプットしたよね?」

 

 そう言って優一郎は斎姫を見た。斎姫は少しは気分が落ち着いたのだろう。先ほどよりは穏やかな表情で頷く。

 

「実はまだ詳しいことは判明していない。前世で、多輝は僕の保護者のような存在だったらしい。その縁もあって、女性に戻った多輝は僕に強く惹かれていった」

 

 そして恐らく水輝はそのことを最初から知っていたのだ。だからこそ水輝は多輝の頭を叩きながらでも道を踏み外さないように見守っていたのだろう。

 

 前世の記憶は優一郎の中には存在しない。多輝の無意識にのみ残っているらしいが、それを引き出す術はもちろん判らない。

 

 水輝さんは全て知ってるんだろうけどね。優一郎は内心で呟いた。立城も途中、優一郎と多輝の惹かれ方が普通ではないことに気付いたらしい。が、どうやら立城は二人の前世の魂が生きていた頃を知らなかったようだ。優一郎から聞き出そうとしていたこともあったが、優一郎にはその記憶はなかった。結局、今もまだ立城は真相には辿り着けていないだろう。

 

 知らないことが武器になることもあるから。見えないことが武器になったことがあったように。

 

 そう心の底で呟いて優一郎は目を細めた。カップの中で琥珀色のコーヒーが揺れる。水輝がとある夜に優一郎の許を訪ねてきたことがある。優一郎が宝珠に戻ってしまっていた奈月の機体を用意すると持ちかけたあの時だ。当時、優一郎は何も見えず、また知らなかった。だからこそ水輝は優一郎の申し出を飲んだのだろう。

 

 木村の屋敷に正面突破を仕掛けた水輝はそこで屋敷の主に捕縛された。本来なら水輝ほどの力を持っていれば捕まることなどあり得なかった筈だ。が、実際には水輝は捕えられた。それは水輝があの時、十全の状態ではなかったからだ。

 

 だがそれでも水輝は何も知らない優一郎のために働くことを約束した。奈月がかかっていたということもあるだろうが、恐らく水輝が動いた理由はそれだけではない。優一郎が何も見えず、知らなかったからこそ水輝は動く気になったのだ。

 

「優くん、続きを。わたしは大丈夫だから」

 

 小声で斎姫が促す。黙考する優一郎を見てどうやら勘違いしたようだ。優一郎はそんな斎姫をしばし見つめ、判ったと頷いた。

 

「女性に戻った多輝と出会って僕の心は揺れた。僕は無意識的に多輝に惹かれ、そして、君の想いに対して疑惑を抱いた」

 

 純粋な、一点の曇りもない存在はない。それは立城の記憶が流れてきた時に見た言葉だ。あの頃の優一郎は斎姫が自分に向ける想いは純粋なものだと信じていた。だが本当にそうだろうか。

 

「試験という名目で僕は君を試すことにした。いや、君の想いを偽物だと決め付け、その尻尾を掴もうとしていたと言っていいかもしれない」

 

 一人の女性を想う気持ちを貫くことこそが、自分の存在を正当化する唯一の方法だと当時の優一郎は無意識に逃げていたのだ。

 

「多輝に惹かれている後ろめたさを誤魔化すために、君の想いを試し、粗探ししたんだ」

 

 そして斎姫を試しながら由梨佳を夢想した。自分が一体、誰を好いているのか優一郎はますます判らなくなった。そんな中でも多輝だけがやけに強く輝いて見える。優一郎は半ば逃げるようにして多輝への想いに没頭していった。

 

「どれだけ酷いことをしても、君の僕に対する想いは揺らがなかった。君は僕を疑うどころか自分の中に有りもしない非を捜そうとして必死になっていた。だから僕は君を嵌めた」

 

 斎姫を拘束し、目隠しをし、相手が誰か判らないようにした上で優一郎は斎姫を攻めた。悲鳴を上げる斎姫を見た優一郎の心のどこかには暗いものが生まれていた。あの頃、優一郎こそが誓約という力に抵抗しようとしていたのだ。

 

「必死に僕との約束を守り通そうとする君を、僕は他人を演じながら約束を違えさせようとした。結局、君は僕の約束を守り通した。だけど、そんな君に僕は無実の罪をかぶせようとした」

 

 だがそんな折、要の母親である栄子が失踪する事件が発生する。結局、斎姫は持ち主である優一郎にうやむやのうちに放置されることとなった。優一郎は忙しいという理由をつけて斎姫から目を背けてしまったのだ。

 

「金庫の奥に君の脳をしまいこんで、僕は目を背けた。そのうち修理しようと言いながら、本気で直す気は全く無くなっていた」

 

 そしてあの事件が起こる。空色の風の力が斎姫の脳の入った機体に潜り込み、それを木村の主が持ち去ってしまったのだ。

 

「君を奪われて、僕は初めて気づいたんだ。自分がどれだけ君に依存していたか、どれだけ君という存在に甘えていたか」

 

 だから優一郎は斎姫を取り戻そうと考えた。だが事はそう簡単に進まなかったのだ。

 

「僕は多輝に惹かれていた。だから、君に惹かれていたのは間違いだと思い込んだ。だけど、それは違ったんだ」

 

 たった一人の女に一途に身を捧げ、想いを貫き通す男など愚の骨頂! そんなもの、言い換えればただの甲斐性なしに過ぎませんわ!

 

 要の気合のこもった言葉を思い出す。優一郎は微かな笑みを浮かべて斎姫を見た。それまで顔を強張らせていた斎姫が少しだけ表情を緩める。だがやはり緊張は抜けきらないのだろう。優一郎に合わせて微笑むまではいかない。

 

 翠から送られてきた龍神の体の欠片は優一郎の器に注ぎ込まれた。その瞬間、優一郎は己の置かれた立場を理解したのだ。そして同時に斎姫や多輝、そして要の意味にも気付いた。翠は龍神の欠片にメッセージをこめていたのだ。




告白というタイトルの説明w
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。