やっと男になったと思ったらこれかよ。多輝は苛立ちをこめて由梨佳の尻を強めに握った。
「もうしわ……いえ。ごめんなさい。多輝さ、いえ、多輝くんの仰るとおりにするには、プログラムを書き換える必要があるんです。ですから、あっ……」
「妙な声出すなよ。聞かれるぞ」
由梨佳の耳元に囁いてから多輝は尻から手を離した。由梨佳がベンチと足の間に敷いていたスカートをそっと引く。少しずつずれたスカートの裾の下に手を入れ、多輝は由梨佳に身体を寄せた。傍目には仲良く身体を寄せ合っている風にしか見えないだろう。多輝は素早く由梨佳のスカートの中を探った。
奇妙なことだが多輝は男性に変質した後、やけに強い欲求に駆られるようになった。女性の時には全く気付かなかったのに、やたらと性的な欲望がわいてくるのだ。だが学校に長く通っていなかったこともあり、多輝はこれまでに関係を持った同級生たちには声をかけられなかった。下手に声をかけて正体がばれるのはつまらない。
そうなると新しく女に声をかけなければならないということになる。多輝は不機嫌な顔をしたまま由梨佳の下着に触れた。するりと手を滑らせて指先で窄まりをつつく。
「いちいち書き換えなきゃなんないのかよ、めんどくせえ。スイッチ一つでぽんと切り替えたり出来ないのか?」
由梨佳の硬貨を握った左手が多輝の右手の中で小さく震えている。
「多輝さ……くんが望まれるなら、そのようにプログラムを組替えます。今日は……お待ちください」
震える声で由梨佳がそう告げる。多輝はふん、と笑って指に力を込めた。軽い抵抗の後に人差し指が由梨佳の肛門に潜り込む。その瞬間、由梨佳は息を飲んで俯いた。何かを堪えるように両手を握って膝に強く押し当てる。そんな由梨佳の様を横目に眺めながら多輝はゆっくりと指を奥深くに埋めた。
由梨佳の機体は多輝が望んだ通りに改造された。本来は何かを挿入出来なかった由梨佳の肛門は、第二の膣とも言える機能を持つよう作り変えられた。だがあくまでも膣よりは狭い。人のそれに使用感を近づけるために伸縮性の小さな人工筋肉を使っているらしい。挿入時には適度な締め付け感を味わうことも可能だ。
他にも改造されたところはたくさんある。口の中と人工膣にはそれぞれにバイブレーターが仕込まれており、多輝が命令すれば起動することが出来るようになっている。大小の陰唇やクリトリスや乳首の動作も自在に操ることができる。それどころか多輝が望むなら感情や記憶さえ好き勝手に書き換えることができるのだ。
だがどんなに機能が優れていても、実際に抱く時に萎えてしまうのはいただけない。多輝がそんな注文をつけたため、今の由梨佳の機体は前のものよりずっと人に近い外見を取っている。
「ほら。どうした? 茶は買いに行かないのか?」
由梨佳の耳元に意地悪く囁きながら多輝はゆっくりと人工の腸壁を指でなぞった。人のそれと異なる点は由梨佳の腸壁は刺激を受けると自動的に濡れることだ。多輝はぬめる液体を絡めながら出来るだけゆっくりと指で抽迭を始めた。
「セックス処理プログラムが……起動しています。命令の優先順位を指示して、くださ……ああっ!」
「おっと」
由梨佳が掠れた声を漏らしたところで多輝は素早く肛門から指を抜いた。ずれたショーツを戻してスカートの中から手を出す。左手の指に煙草を挟み、多輝は濡れた右手の指を口に運んだ。由梨佳は身体を丸めて小刻みに身体を震わせている。それを横目に多輝は指に絡んだ人工の愛液を舐め取った。
由梨佳の人工愛液には香りがつけられている。柚子の香りが仄かにするそれを多輝は丁寧に舐め取った。それから由梨佳の背を軽く押す。
「ほら、行って来い。由梨佳の分も買っていいぞ。小銭は二人分あるだろ?」
「あっ、はい。んっ!」
慌てたように返事した由梨佳がよろけながら立ち上がる。ふらふらとした足取りで自動販売機に歩いて行く由梨佳を多輝はにやにやと笑いながら眺めた。
胸ポケットから携帯電話を取り上げる。何も数年も過ぎてる訳じゃなし、と呟いて多輝は以前に知り合った女子生徒の電話番号を表示させた。画面をスクロールさせて適当に中から名前を選ぶ。新しい女に声をかけ、よろしく出来るようにするまでの手間が面倒だ。
通話ボタンを押して耳に携帯電話をあてがう。だがコールが聞こえる前に相手が電話を取る。おお、と感嘆の声を上げて多輝は挨拶した。どうやら多輝から電話がかかったことに驚いたらしい。
行きと同じようにふらついた足取りで由梨佳がベンチまで戻ってくる。電話で話をしながら多輝は目で由梨佳を促した。由梨佳が静かに多輝の隣に腰を下ろす。由梨佳の手に握られていた缶入りの茶を一つ取り上げ、多輝は電話で話しながら片手でプルトップをひいた。
五分ほど話をした後、多輝は電話を切った。二つ折りの携帯電話をたたんでポケットに戻す。すっかりぬるくなった茶を飲みながら多輝はふと隣に目をやった。封を切らないまま茶の缶を両手に包んだ由梨佳は俯いている。
「飲まないのか?」
「多輝……さま、身体が……んぅ」
唇を噛みしめ、由梨佳が呟くように言う。苦しそうに告げた由梨佳の腰はひくついている。どうやら刺激しすぎたらしい。多輝はやれやれとため息をついて由梨佳の尻を軽く叩いた。
「しっかりしろよ。もうちょいしたら遊ばせてやっから」
「了解しました。このまま状態を保持しま……んぅ」
微かに吐息をついて由梨佳がゆっくりと顔を上げる。そうそう、と笑って多輝は由梨佳にその場で待つように告げた。相手はすぐに来ると言っていた。二十分もかからないだろう。多輝は一人、由梨佳を残してその場を離れた。