※この作品はR-18です。

魂の座 三部 暁の姉妹   作:伊駒辰葉

41 / 175
銀色の白銀が出てきます。
安直な名前……w

エロシーンは今のところありません。


立城の欲望と変身タイム 1

 はっと目を見張って立城は身を起こした。その瞬間、後頭部が酷く痛む。立城は呻いて後頭部を押さえながら目を上げて周囲を伺った。どうやら失神していた間に優一郎の研究施設に戻ってきていたらしい。立城は見覚えのある部屋の様子に息をついて肩を落とした。

 

 立城はベッドの上に膝を抱えて丸くなった。あれから数時間が過ぎている。壁の時計を読んで立城は目を細めた。泰蔵の別荘を訪ねた際に見たものを思い出す。銀色の輝きを帯びたあれは何故、あんなところに居たのだろう。それにあの輝きの欠片は一体……。

 

 立城は考えながら膝に顔を埋めた。膝を抱える腕に無意識に力が入る。あの時、確かに真也の気配を見たのに。だから理由を考えるより早く、立城は動いた。少女の中に見えた輝きを取り出そうと刀を繰り出したのだ。

 

 結果、このざまか。立城はそう呟いて目を細めた。

 

 あの時、水輝と戦った際に立城の力は大幅に削ぎ落とされた。それまで肉の器を維持するのに使っていた力は根こそぎ削られ、それ以外の力もかなり消耗している。それでも真也の輝きを見間違う筈はない。

 

 砕けた魂の欠片が何故あんなところにあるのだろう。立城は膝に顔を埋めたまま、しばし考えを巡らせた。一応は思考を遮蔽するために壁を張り巡らせてはいるが、水輝のことだ。必要だと思える情報ならどんな手を使っても手に入れるだろう。だがここは外とは切り離されていると優一郎は言っていた。だからきっと水輝にも思考を読まれる心配はない。

 

 削がれた力を回復することは可能だ。時間と手間は相当にかかるが元のレベルにまで回復することは出来る。が、そんなに悠長に構えていては相手を見失うかも知れない。一刻も早く力を回復して。

 

 そこまで考えて立城は情けない気分で小さく笑った。優一郎に事実を突きつけられても、泰蔵が手の内をあえて見せて諭してくれても、水輝が命がけで止めても、それでも真也の僅かな気配を捉えただけでこんなことを考えてしまう。自分のそんな性に立城は泣きたくなった。

 

 皆の言いたいことは判るし、理解も出来る。なのにどうしても相手を求めてしまう自分がいる。確かに水輝の言う通り、誰よりも記憶に引きずられているのは自分なのだと立城は改めて自覚した。

 

 立城はぼんやりとした面持ちで腕を解いた。いつの間にか手が震えている。立城の頬はほんのりと染まり、目は潤んでいた。熱い息をつきながら自分の手を見下ろす。小刻みに震える手は小さく頼りない。

 

 龍神の性交渉は人のそれとは異なる意味を持つ。交わった相手の力を受け、同時に自分の力を相手に流す。そのことにより互いが互いの力に影響され、力が増幅したり、また傷ついた場所が癒えたりもする。十七歳の覚醒の時を迎えると性欲がやたらと旺盛になるのはその意味があるからなのだ。

 

 抗いがたい欲求を抱えたまま、立城はゆっくりとベッドを降りた。立城がいるのは優一郎が貸してくれた地下二階の部屋の一室だ。地下二階はあれからかなり形が変わり、今では部屋数も増えている。立城がいるのはその中の客室の一つだ。立城は頼りない足取りでベッドを降りるとふらつきながら部屋を出た。

 

 静かな廊下を壁伝いに歩く。ぼんやりとした目をして歩いていた立城はふと人影を見つけて足を止めた。誰かが廊下を掃除している。立城は特に何も考えず、掃除する誰かに近付いた。白い割烹着と三角巾をつけた誰かが気配に気付いたのか、立城が声をかける前に振り返る。

 

「あ」

 

 立城は思わず目を見張った。相手も立城に見覚えがあったのだろう。僅かに目を見開く。

 

「えーと……確かじじいのとこに来てた……」

 

 少年はそう言いながら立城にあわせて腰を屈めた。立城は軽く会釈して答えた。

 

「吉良瀬立城です」

 

 そう自己紹介してから立城は相手がいま記憶をなくしていることを思い出した。どういう経緯でそうなったのかは判らないが、少年は記憶をどこかで落としているのだ。以前の立城であれば相手の記憶を復活させるのも簡単だが、いまは出来ない。立城はぼんやりと少年を見上げて首を傾げた。

 

「あ、そっか。俺、名前言ってなかったよな。白銀って言うんだ」

 

 それを聞いた立城は驚きに息を飲んだ。白銀と名乗った少年はその名に特に思うことはないのか、にっこりと笑っている。記憶をなくしている筈だから、きっとその名は誰かが少年につけたのだろう。

 

「白銀、さん、ですか」

 

 立城は口許に指をあてがって呟くように言った。白銀がああ、と笑顔で頷く。立城は無言で泰蔵のことを思い出した。泰蔵はどうやら思っていた以上にこちらの手の内を知っているようだ。

 

「ところで白銀さんは何故、掃除を?」

 

 立城はそう言いながら壁に寄りかかった。早く欲求を解消したいのはやまやまだが、そうもいかない。自慰では限界があるのは判っているし、かと言ってまた女性に変質して優一郎に頼むという訳にもいかない。基本的に優一郎は生身の女には興味はないらしいのだ。

 

 白銀が困ったように笑いながら鼻の頭を指先でかく。

 

「いや、手持ち無沙汰っていうか」

 

 そう言ってから白銀が僅かに赤くなる。立城はそれを見て少しだけ眉を寄せた。どうやら白銀は暇潰しのためだけに掃除をしている訳ではないらしい。

 

「そうですか。では僕はこの辺で」

 

 丁寧にお辞儀をして歩き出す。立城は静かに白銀の脇を過ぎて奥の部屋に向かった。こうしている間にも欲求は強くなる一方だ。この際だから人でもいいかな。ぼやけた頭でそう考えながら立城は優一郎の部屋に向かおうとした。

 

 不意に肩を後ろから捕まれる。驚いて振り返った立城の視線の先には今度こそ真っ赤になった白銀がいた。耳まで真っ赤になった白銀が慌てたように首を横に振る。一体なんだろう。そう思いつつも立城は足を止めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。