TS警報です!
「お願いします。難しいことは言いません。僕の言う通りにしてくれればいいんです」
そう言ってから立城は再度、頭を下げた。目をかたく閉じて白銀の手を強くつかむ。もし断られてしまったらどうしよう。そうしたらまた別の方法を考えなければならない。時間が経つに従って情欲が深まっているのに耐えられるだろうか。そう考えながら立城は震える手でずっと白銀の手をつかんでいた。
頭を下げたまま震える立城を白銀がじっと見下ろす。やがて白銀は諦めたようにため息をついた。
「本当に難しくないんだな?」
その声に立城は目を見張ってぱっと頭を上げた。はい、と力強く頷く。つい力がこもってしまった様子が可笑しかったのか、白銀は小さく笑って立城の頭を軽く撫でた。
立城は白銀の手を引いて部屋に案内した。モップを壁に立てかけた白銀が立城に向き直る。
「へえ。俺の部屋と左右対称だ」
「廊下の向こう側の客室はこちら側とは家具の配置が逆になっていますから」
説明しつつ立城はベッドを指差した。白銀は立城の注文に不思議そうにしながらもベッドに腰掛ける。立城は白銀の足の間に立った。
「まず、僕の右肩を左手でつかんでください」
「こうか?」
白銀が立城の肩をつかむ。はい、と頷いて立城は両手を白銀の膝に乗せた。衝撃に耐えるためには何か支えが必要だが、白銀ならこの軽い身体程度は支えてくれるだろう。後は自分が痛みに耐えられればそれでいい。
「次に右手で僕の左胸に触れてください」
「こ、こうか?」
白銀が恐る恐るといった感じで右手を立城の胸にあてがう。立城は左手を上げて白銀の手の位置を慎重に動かした。位置を定めたところで白銀の手首を両手でつかむ。自分の身体を支えるために手を使うよりこの方が確率が高い。
「絶対に僕の肩を離さないでください」
「お、おう」
緊張した面持ちで白銀が頷く。立城は深呼吸してから白銀に告げた。
「それでは、僕の胸を貫くつもりでこの手を突っ込んでください」
「は!?」
焦った声を上げて白銀が立城を凝視する。立城は真剣な顔で白銀を見つめ、続けた。
「決してためらっては駄目です。本気で、僕の胸に穴を開けるつもりでやってください」
「そ、そんなことしたら……」
記憶をなくしている間、誰かに攻撃を加えたことが一切ないのかも知れない。立城は白銀の動揺した様子を見てそう思った。だがもうそろそろ我慢の限界だ。立城は潤んだ目で白銀を真っ直ぐに見つめ、お願いしますと小声で告げた。白銀がごくん、と唾を飲む。
「どっ、どうなっても、知らないからなっ」
「はい」
返事して目を閉じる。立城はしっかりと白銀の手首をつかんだ。白銀がため息をついた後、息を吸って止める。そして白銀の右手が素早く動いた。その瞬間、衝撃が立城を襲う。立城は思わず目を見開いて歯を食いしばった。痛みに全身から汗が噴き出す。
「大丈夫なのか!?」
焦ったように声を上げて白銀が右手を引こうとする。だが立城はしっかりと白銀の手首をつかんだまま頷いた。
「だいじょ、ぶ、です。手、抜かないで、ください」
苦しい息をつきながら立城は震える声で告げた。白銀の手は器の中に潜り込んでいる。が、加減を知らないため、痛みはとても強い。それでも立城は歯を食いしばってゆっくりと手を動かした。立城の手に導かれ、白銀の手が器の中をゆっくりと移動する。
右、左と立城は白銀の腕をつかむ手を動かした。徐々に白銀の手が器の奥深くに入っていく。白銀の手を自分から引き寄せながら立城は小さく呻いた。白銀がぴくりと眉を上げて息を潜める。
「……なんかある」
「右手の、人差し指を、伸ばして」
白銀の指先が立城の持つ宝珠の一つに触れている。立城に言われるままに白銀が人差し指だけを立て、後の指を折り曲げる。立城は器の中で白銀の手の動きを読み取ってから、ゆっくりと手を引き寄せた。
白銀の指がぷつん、という微かな抵抗の後に宝珠の中に潜り込む。立城はその瞬間、声にならない声を上げた。自然に身体が折れ、その場に崩れそうになる。そんな立城を支えたのは白銀だった。白銀が手を動かし、立城を足の間に引き寄せながら肩を抱く。片腕に立城を支え、白銀が潜めた声で訊ねる。
「これ、どうすればいいんだ?」
「手、に、つかん、で……指で、中を、かき混ぜ、る、ように」
立城は懸命に言葉を紡ぎながら天井を仰いだ。痛みに身体が麻痺して思うように動かせない。痺れた立城の手は自然に白銀の腕から滑り落ちていた。白銀が律儀に立城に言われた通り、宝珠の中を指でかき混ぜる。立城は白銀の指が宝珠の中で動くたびに身体を跳ねさせた。
不意に何もかもが判らなくなるような痛みとは違う何かが襲ってくる。立城はか細い悲鳴を上げて仰け反った。唐突に背を反らした立城の胸から白銀の手が抜ける。
小さな立城の身体が紫の光を帯びる。その光は一気に強くなり、大きくなった。
「お……い?」
白銀の声が遠い。立城は自分の身体を腕で抱きしめて深く息をついた。小さかった体が大きくなり、丸みを帯びる。
やがて紫の光が納まる。立城は深々と息をついて床に座り込んだ。どうやら成功したようだ。そのことに安堵しながら立城は女性に変貌した自分の身体を確かめるように触った。
立城の視点が長いので切り分けました。