※この作品はR-18です。

魂の座 三部 暁の姉妹   作:伊駒辰葉

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ちょっとだけエロっぽいですが、がちエロシーンはありません。
次ですね。


面白くないから弄んでみる 1

 鈴を横目に見てから多輝は舌打ちをして部屋を出た。苛々とした気分を抑えようと試みるが、どうしてもおさまらない。それもその筈だ。先ほどからずっと立城の嬌声が聞こえてくる。客室の一つにいるため、立城の部屋と多輝の部屋には少し距離がある。が、立城の声は直接に多輝の意識を無遠慮に叩いているのだ。実際に耳で捉えられなくてもこれだけ意識をがんがん叩かれれば嫌でも聞こえてくる。

 

 嫌がってたんじゃねえのかよ。多輝はそう思いながら舌打ちをした。エレベーターホールに向かいながら角の先にある立城の部屋を何気なく見やる。すると立城の部屋の前に誰かが立っているのが見えた。一人の少年が心配そうに立城の部屋のドアを見つめている。それを見た多輝はああ、と内心で呟いた。確か名は白銀と言っただろうか。優一郎が泰蔵の別荘から鈴と一緒に連れ帰った少年だ。

 

 ふと白銀が多輝の方を見る。どうやら多輝の視線に気付いたようだ。軽く会釈をしてからそっと向かいのドアを開けて部屋に入ってしまう。多輝は不機嫌に眉を寄せて頭をかいた。

 

 多輝は優一郎に命じられて鈴を部屋に連れ帰った後、言いようのない熱を覚えて床に膝をついた。震える腕に抱えた鈴を何とかベッドに移したころで多輝は意志とは無関係に男性に変質してしまったのだ。が、優一郎に言われた通りに一応は鈴の治療はした。幸い、手当てが間に合ったため、鈴は今は穏やかに眠っている。

 

 面白くねえなあ。不機嫌な面持ちで多輝はエレベーターに乗った。個体識別をクリアしてから一つ上の層に向かう。開いたエレベーターから降りた多輝は見慣れない光景に目を丸くした。知らない少女たちが廊下を忙しそうに行き来している。その手には様々な道具の入った箱が抱えられているのだ。

 

「あっ、すみません」

 

 歩き出した多輝の脇を一人の少女が過ぎる。多輝は何となく少女の腕を捕まえた。驚きの声を上げた少女が足を止める。

 

「おい、何してるんだ?」

 

 淡いピンクのワンピースと白のエプロンを身につけた少女が困惑したように多輝を見る。白いフリルのふんだんにあしらわれたヘアバンドと白いストッキング。靴はワンピースと揃いのピンクだ。メイドの格好をしたその少女を多輝は無遠慮に見回した。

 

「あの、保美様から申し付かって……」

 

 そう言いながら少女が視線を彷徨わせる。その頬は僅かに赤い。へえ、と呟いてから多輝は少女の腕を放した。慌てたように多輝に頭を下げ、少女が走っていく。どうやら今、保美は何かを優一郎に命じられているらしい。少女はその手伝いをしているようだ。少女が無防備に漏らしていた思惟を読んだ多輝はなるほどね、と胸中で呟いた。

 

 そういえば地下一階のフロアをゆっくり見て回ったことはない。多輝は廊下を行き来する彼女たちの邪魔にならないよう、廊下の端をゆっくりと歩いた。

 

 多輝はのんびりと廊下を歩きながら施設内の様子を観察した。優一郎が部長を務めるこのロボット研究会の所有する施設は、既に学校の部室をはるかに越えたレベルの規模になっている。廊下に面して並んでいる部屋数は十五。しかも廊下の片側に、だ。廊下の反対側には研究室やキッチン、バスルーム、そして保美やカレン、果穂の部屋も並んでいる。中には広々としたスペースもあり、歓談出来るようにテーブルや椅子、観葉植物などが置かれている。書架も中にはあり、生活空間としても地下一階のフロアは使えるように整えられているのだ。

 

 慌ただしく少女たちが行き来する。多輝は横目にそれを眺めながら踵を返し、再び廊下の奥に向かって進んだ。途中、静かに歩く保美とすれ違う。保美はにっこりと笑って多輝に深々と頭を下げた。

 

「こんにちは、雨宮さん。今日はどうされたんですの?」

 

 笑顔で挨拶され、多輝はおうと声を返した。それから頭をかいて壁に寄りかかる。保美は相変わらずのシックな格好をしている。黒いワンピースの丈は膝下まであり、白いエプロンと頭の飾りのフリルは先ほどの少女のものより小さい。よく気をつけてみればフリルの縁は絹糸で縫い取りしてある。

 

「ああ、ちょっと気晴らしに」

「気晴らし、ですか」

 

 なるほどと保美が頷く。それを見た多輝はばつの悪さにさりげなく目を逸らした。保美は優一郎の命令に従って忙しくしている最中なのだ。多輝は引きとめて悪かったな、とその場を去ろうとした。

 

「あ、少しお待ちいただけます?」

「は?」

 

 声に呼び止められて多輝は振り返った。保美がにっこりと笑って首を傾げる。相変わらず表情が読めない。それに保美の思惟は内向きにぴったりと閉じていて、何を考えているのか判らないのだ。多輝は眉を寄せて保美の言葉を待った。

 

「一時間。この時間を心にお留め置きださい」

 

 言われた意味が判らない。が、多輝は判ったと片手を上げた。保美が深々と一礼してその場を去る。多輝は半端に掲げていた手で頭をかきながら廊下の奥に向き直った。右手にエレベーターホールがある。その奥にはキッチンとは別に給湯室が設えられている。多輝は無言で給湯室のドアをそっと開いた。少し開いたドアの間から給湯室に滑り込む。

 

 廊下の奥は静まり返っている。小さな給湯室の隅で震えている背中がある。多輝は口許を歪めて足音を殺してその背中に近づいた。白衣の裾を小さく揺らし、微かな吐息をつきながら震えているのは果穂だ。

 

「あ……っ、ん」

 

 小さな息の合間に微かな声が漏れる。果穂の漏らした吐息を耳にした多輝の背にぞくりとしたものが伝った。

 

 果穂はあの日、望み通りの大人の女性の身体を手に入れた。それを組み上げたのは由梨佳だ。今の果穂は背も高くなり、身体つきも成熟した女性のそれになっている。肩まで伸びた日本人形を思わせる艶やかな黒髪が揺れる。多輝は気配を完全に殺して果穂の背後に立った。

 

 身体の前に回した果穂の右手が忙しく動く。引き気味にされた果穂の腰が揺れ、白衣の裾が踊る。近付くと果穂の吐息に混ざって卑猥な水音も聞こえてきた。多輝は薄笑いを浮かべ、しばし黙って果穂の様子を観察した。




果穂というキャラは割と不憫というか……。
彼らの話から段々と遠くなっていきます。
一応、動いているのですけども(汗)
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