……ですが、みんな悶々としてますw
乱れた髪を指で梳きながらため息をつく。立城は寝起きのぼんやりとした視界をはっきりさせるため、何度か瞼を擦った。欠伸をしながらベッドを滑り降りる。
あの少女は無事に脳のみを取り出され、厳重に保管されたようだ。まあこの状況なら上々か。そう心の中で呟きながら立城はドレッサーに向かった。鏡に映る自分の姿をしばしぼんやりと見つめる。女性の姿を取った身体の線を目で追い、立城は深々とため息をついた。
あんなことがあったのにどうして情欲だけが止まらないのだろう。鏡に映った立城は何も身につけてはいない。そのために昂奮に勃起した乳首の様子がよく見える。立城は自分の身体と鏡とを見比べて深いため息をついた。一体、どれだけの快楽に溺れれば元の状態に戻るのか。それすら今の自分には判らない。
やれやれとため息をついて立城はドレッサーの引き出しから櫛を取り上げた。長い紫色の髪を丁寧に梳いていく。髪を梳き終えたところで立城は腰を上げた。どうせ濡れた股間は何度拭っても落ち着かない。それならシャワーを浴びてしまった方がいいだろう。
立城は迷う事なくバスルームに入った。適温に湯を調整して頭からしっかりと洗い流す。手早く身体を洗い終えてから立城はバスタオルを一枚、身体に巻きつけて部屋に戻った。
そこで絶句する。いつの間に入ってきたのか、立城の部屋には白銀が所在なげに立っていた。立城を見止めてぱっと目を輝かせた白銀が慌てたようにそっぽを向く。立城は自分の格好に気付き、すみませんと詫びて足早にクローゼットに向かった。
「あの、その……ええと、大丈夫かな、とか」
思って。白銀の声が尻すぼみに消える。立城は苦笑して肩越しに白銀を見た。白銀は律儀にあさっての方を向いている。
「平気ですよ。それより僕の方こそごめんなさい。不快な思いをされたでしょう?」
そう言いながら立城はバスタオルを取った。白銀を目にした瞬間から身体の疼きは酷くはなっている。が、誓約がある限り、ここで白銀を食う訳にはいかない。小さなかごに入った下着を取り上げて立城は手早くそれを身に着けた。そんな立城の姿をこっそりと白銀が見る。だが立城はその視線には全く気付かなかった。
「……あれ?」
菫色のワンピースを身につけた立城は困惑の声を上げた。どうしても背中のファスナーが上げられない。どうやらファスナーが生地を噛んでしまったようだ。
「あ、あの、て、手伝おうか?」
戸惑ったように白銀が告げる。立城は白銀を見つめ、苦笑した。
「ごめんなさい。お願いします」
そう言って立城は静かに白銀に歩み寄った。白銀も自分から立城に近付く。後ろを向くように言われ、立城は素直に白銀に背を向けた。
ノックの音がする。立城はその音に俯けていた顔を上げた。背後でびくん、と白銀が身を竦めて息を飲む。立城はそんな白銀を見つめてからどうぞ、と返事した。
「優一郎さまの指示で参りました。お邪魔してよろしいでしょうか?」
聞き覚えのない声に首を傾げつつも立城はどうぞ、ともう一度促した。ドアが開き、見知らぬ少女が姿を見せる。立城は半ば反射的に少女に微笑みを向けた。
「どうしたんですか? 僕に何か用が?」
「お召し替えを手伝うように、仰せつかって参りました」
一礼して少女が部屋に入ってくる。すると見た目にもはっきりと白銀がうろたえた。一体どうしたのだろう。不思議に思いながら立城は首を傾げた。少女が立城の背後に立っていた白銀に失礼します、と断りワンピースに手をかける。
「あっ、あの、えっと……」
真っ赤な顔でどもりながら白銀が困ったように頭をかく。
「あの、あなたが白銀様ですね。あたし、石井梨恵と申します」
慣れた手つきでファスナーを上げた梨恵が頭を下げる。つられたように白銀が少女にどうもと会釈する。立城はありがとう、と梨恵に微笑んでから再びドレッサーに向かった。濡れた髪を丁寧にタオルで拭いてドライヤーをあてる。
「あっ! あのさ、髪乾かすなら」
そこまで言って立城に歩み寄ろうとしていた白銀の前にひらりと梨恵が割り込む。その様を鏡越しに見ていた立城は深々とため息をついてドライヤーの電源を切った。
「ごめんなさい。恐らく、僕に触れることそのものが禁じられていると思います」
流れるように告げた立城を見ていた白銀が目を見張る。それから白銀は戸惑ったように立城と目の前に立つ梨恵とを見比べた。
「あの失礼します。白銀様へ優一郎様からの通信が入っています」
「なっ、なにっ」
動揺も露に白銀が怒りをたたえた目で梨恵を睨む。それを余所に立城は再びドライヤーの電源を入れた。指で髪を梳きながら丁寧に乾かしていく。
「申し訳有りませんが、あたしの下腹部、人で言えば女性器にあたる位置にあるスイッチを押してください。優一郎様との通信回線が開きます」
言いながら真っ赤になって梨恵がスカートをたくし上げる。その瞬間、白銀は目をむいて首を横に何度も振った。
「何で俺が!」
そっぽを向いて白銀がじりじりと梨恵の前から移動する。立城はため息をついてドライヤーを置き、静かにスツールを下りた。半分べそをかいている梨恵の前に跪く。すると梨恵は驚いたように立城を見下ろした。
「僕で構わないかな?」
梨恵を見つめ、立城はにっこりと笑った。
「すいません。あの、とりあえず押さないでランプの光を確認していただけますか? ……お願いします」
小声で言って梨恵が頭を下げる。判った、と頷いて立城は梨恵の股間を覗きこんだ。ごめんね、と囁いてそっとクリトリスを覆うカバーを爪の先で押し上げる。すると小さく緑色に光るランプが見えた。
白銀は記憶喪失前はマトモだったんですけどもw
その辺りの話は書いたことがないので、そのうち書くかも知れません。