斎姫は微笑みを浮かべたままじっとしている。だが意識はないのだろう。表情はぴくりとも動かない。立城は確認のために斎姫の股間をもう一度覗きこんだ。どうやら手動で操作したらしい。斎姫の膣口には愛液が漏れてきている。これならすぐに挿入することも可能だ。
立城は覚悟をきめて膝で斎姫に擦り寄った。痛いほどに勃起したペニスの先端を斎姫の膣口にあてがう。そこで立城は視線を感じて目を上げた。
「ええと……なに?」
戸惑いつつ立城は傍らに立つ優一郎に問い掛けた。
「いえ、それでは挿入してください」
笑顔で優一郎が促す。立城は眉を寄せて斎姫と優一郎とを見比べた。
「あの、じっと見ていられると……しにくいんだけど」
小声で言って立城は俯いた。だが優一郎の視線を感じていてもペニスは相変わらず張りつめている。それも当然だ。女性から男性に変質したことにより、多少は落ち着いてはいるが情欲が深まっていることには変わりない。
「あっ、配慮不足でした。カメラをセットしますね。少々お待ちください」
「ごめん。それより直に見られる方がましだ」
にっこりと笑って告げられた立城はすかさずそう言い返した。仕方なく立城はペニスを右手に支えてゆっくりと腰を前に進めた。サイズに合わせて調節された膣口が適度にペニスを締める。立城は言いようのない深い快感に熱い息を吐いて腰をひくつかせた。
「ふあっ!」
痛痒いものを感じて立城は思わず伏せかけていた上体を起こした。腰が揺れた瞬間に斎姫の膣壁が蠢き、容赦なく立城のペニスを擦り始めたのだ。半分ほど皮を被っていた亀頭を膣口に向かって擦られる。掠れた声を上げて立城は腰を震わせた。
「どうですか? 斎姫の新型ユニットの感触は?」
にっこりと笑って優一郎が二人の股間を覗きこむ。立城は斎姫の腿に震える手をあてがい、涙の滲んだ目で優一郎を見上げた。
「こんな、こんなにされたらっ、すぐ……あぅ!」
ペニスを包み込んだ膣壁が蠢いて徐々に亀頭に被っていた皮を引き下ろしていく。それまで感じたことのない快楽に囚われ、立城は小さな悲鳴を上げて背を反らした。剥き出しになったばかりの亀頭を柔らかく擦られる。
「プログラムも立城さんのペニスにあわせた自信作なんです」
耳元に囁かれた瞬間、立城は悲鳴を上げて腰をひくつかせた。ペニスを半分ほど膣内に埋めたところであっけなく射精してしまう。
「これからが本番です。立城さん、無心を心がけてください」
射精後の脱力感に襲われていた立城はえ、と顔を上げた。身構える間もなくペニスが斎姫の膣壁の中にぐん、と飲み込まれる。立城は目を見張ってよろけた身体を斎姫の上に倒した。
「まっ、待って! ちょっ……ふぁぁ!」
射精したばかりで敏感になった亀頭を容赦なく擦られ、立城は悲鳴を上げて頭を振った。先に言われていたことを思い出し、斎姫の胸に手を伸ばそうとする。だが立城はその瞬間、激しい快感に襲われて声を上げた。
おじさま! だめ! 逝かないで!!
頭の中に声が響く。立城は目を見張って慌てて身体を起こそうとした。だがすぐに強い快楽が襲ってくる。自覚することも出来ないまま、立城は再び射精した。放った精液がぐんぐんと斎姫に吸い上げられていくのが判る。
「まだまだ、これからです。とりあえず一度吸い出す必要がありますからね」
がっくりと脱力して斎姫の身体に横たわりながら立城はぼんやりとした目を優一郎に向けた。問題が起こらないように根本的に解決しないと。優一郎の声が遠くに感じられる。
そうか。立城は次第に何も考えられなくなっていく頭の中で呟いた。優一郎はもしかしたら知っているのかも知れない。自分のものにしたいと望み、願い、けれどそれが叶わないと知った時、立城はそれまで感じていた相手に対する愛情と同等の殺意を覚えていたのだ。
僕のものにならないくらいなら殺した方がいい。世界の礎になんてしたくなかった。
「くぅ! ああっ! や、やだ!」
記憶や思いが次々に引きずり出されていく。立城は斎姫にされるがままに射精しながら涙を流した。
おじさま! 駄目です。その想いに引きずられちゃ駄目!
凛とした声が頭の中に響く。立城は力ない声で喘ぎながら無意識のうちに腰を揺すり始めていた。荒い息を吐きながらぎこちなく抽迭を始める。
殺した瞬間に力は手に入れることが出来た。龍神として立つことが出来るほどの力を手にして立城は愕然としたのだ。殺したのに。殺したのに。殺したのに。
何で僕のものにならないの? だってあの時は。
喘ぎが次第に笑いに変わる。立城は斎姫に精を吸われながらけたたましい笑い声を上げた。
おじさま! わたしが引き受けるから、だから逝かないで!
微笑みを浮かべたままの斎姫の頬を涙が伝う。だが立城はそれを見ていなかった。陶然とした顔を上げて天井を仰ぎながら笑い続ける。
だって君が言ったんだ。あの時、僕にそう生きろって言ったのに。
脳裏に水輝の姿が蘇る。立城は胸の中に蘇った水輝をぼんやりと見つめた。そうしている間にも斎姫の膣壁に扱かれてペニスが精を放つ。深い快楽に吐息をつきながら立城は笑った。
記憶が混濁する。怒りに震える水輝が紫翠の頬を張る。だがそれでも水輝は頼みを嫌だと断らなかった。このままいけば確実に世界は滅びに向かう。それならば自分の存在そのものを幾つもに分けてしまえばいい。お前にその役を頼む。その代わり、わたしは永遠にお前の傍に居よう。
立城は目を見張って笑いを止めた。頭を抱えて絶叫する。抱え込んでいた暗い思いが望まないのに引き出されていく。
「斎姫。手伝うよ。君は想いを回収することだけに集中するんだ。立城さんは必ず助ける」
どこからか声がする。だが立城はその声を聞いていなかった。喉が裂けるほどの叫びを上げて狂ったように頭を振る。
どうせそんな約束をしなくてもお前を傍に感じない時はない。お前は……そのものだから。
水輝の声が頭に響く。立城は苦しみに胸を力任せにかきむしった。力をこめた指が器に深い傷を残していく。
「このあたりは残さないといけませんよね」
声が遠い。立城は衝動に咳き込みながら血を吐いた。口から散った血が斎姫やベッドに散る。立城は小さな身体を震わせながら立て続けに叫び声を上げた。暴れる立城のペニスは深く斎姫が飲み込んだままだ。
仰け反った立城の胸から一つの宝珠が飛び出す。紫色の輝きをぼんやりと見つめながら立城はそのまま昏倒した。
強制記憶抽出的な何か。