ショタ的な形になってます!
エロシーンはあり……びみょーにあるかもです……?(汗)
ドアに寄りかかったまま立城は全身にこめていた力を抜いた。水輝の足音が遠ざかっていく。それを聞きながら立城はドア伝いにその場にしゃがみ込んだ。
出来るだけ考えまいとしているのにどうしても思い浮かぶ。もしかしたら肉の器をまとっていた時よりも鮮明に思い出しているのかも知れない。脳裏に蘇ってくるのは真也と過ごした楽しかった日々のことばかりだ。
立城はしばしぼんやりと中空に視線を彷徨わせてから立ち上がった。焦燥が何度も胸に飛来しては消えていく。あの時からずっとそれは変わっていない。ため息をついて立城は着ていた羽織り袴を脱いだ。ソファに衣装箱に畳んで納める。その傍に雑に放り出されていた洋服を身につけ、立城は執務机に戻った。
あの日、水輝に貫かれた瞬間、激しい痛みと共に安堵感がこみ上げてきた。水輝は力を立城の内側には注がなかった。あくまでも立城のまとっていた肉の器のみを破壊したのだ。
何故、殺してくれなかったのだろう。今でもそれは思う。立城は高い椅子の上で身じろぎをしてため息をついた。もしも水輝があのまま力を立城の中で炸裂させれば、かなりのダメージを受けたに違いない。なのに水輝はご丁寧に器のみにしか力を向けなかった。相手を殺す気でかかってきていながら、だ。
画面をスクロールさせて必要な箇所にサインを入れる。次々に書類を片付けながら立城は感情のない目で画面を眺めていた。画面の隅には愛らしい小さな魚が泳いでいる。
器が弾け、可能性が全て消えた瞬間に遠いところで魂の砕けた音がした。最期の最期まで真也はひと言も立城には恨み言を漏らさなかった。断罪の矛に貫かれた時と同様、真也は砕ける瞬間まで立城を心配していたのだ。
もしも僕があの時、真也を殺さなかったら。半端な記憶に振り回されて刀を揮わなければ。だがそれも全て遠い過去のことだ。やり直しは出来ない。
立城が自分がただの入れ物に過ぎないと気付いた時にはもう、真也はこの世から消えていた。どうして自分たちは二つに分かれて生まれてきたのだろう。何度もそう思った。
全ては夢だ。立城はキーボードを打っていた手を止めて椅子に寄りかかった。
立城は強靭な力と記憶を紫翠から引き継いでいた。本来ならひとつで生まれる筈だったものが、何故二つに分かれてしまっていたか。答えは一つ。真也が紫翠の誓約の力を受け継いでいたからだ。
誓約の力はとても強い。それ故に一つの器には納まりきらず、記憶と肉体の性質のみが立城の形を作り上げた。立城は小さなこぶしを握りしめて唇を噛んだ。
本当は水輝は立城と出会ったあの時に知っていた筈なのだ。だが水輝の記憶そのものは完全に封じられていた。だが水輝は本能で理解したのだろう。だからこそ水輝は真也に襲い掛かったのだ。
中途半端な記憶なんて要らない。だが今さら記憶をなくしたところで真也は戻らない。あの時からずっと立城はジレンマに苛まれていた。それと同時に奇妙な感覚が身体を支配しようとする。ずっとこれまで肉の器に閉じ込められていた力が油断すると暴れてしまいそうだ。
龍神は十七になると覚醒する。だが立城は最初から紫翠の記憶を持っていたために力を揮うことが可能だった。それ故、他の龍神とは異なり、十七になった段階で改めて何かが覚醒することはなかったのだ。
そのつけが一気に回ってきたらしい。立城は机に両腕をついてこぶしを震わせた。俯いて息を殺す。
「人の……気も……知らないで」
小声で呟きながら立城は小さく身震いした。強烈な欲求がこみ上げてくる。微かに奈月の声が聞こえる。立城はかたく目を閉じて力なく頭を振った。震える手を机の下に伸ばす。背の高い椅子の上で立城はびくん、と肩を竦めた。肉の器の時とは全く異なる強い快感がこみ上げる。立城は薄く目を開けて自分の股間を見下ろした。小さな手の中でペニスがいっぱいに張りつめている。ピンク色の亀頭を指先でつついてみる。それだけで立城の背にぞくりとした感覚が走った。
遠くで奈月の嬌声が響く。立城は小さな形を確かめるようにペニスを手で包み込んだ。亀頭はまだ完全には姿を現していない。次第に息が上がってくる。出来るだけ優しく立城は指を動かした。
「ひゃうっ!」
喉を過ぎた熱い息が掠れた声になって漏れる。立城は小刻みに震えながら背を丸めた。手の中がぬめっている。ほんの少しの刺激で立城は射精してしまったのだ。一度、堰を切って溢れてしまったからか、欲求はどんどん深くなっている。立城は歯を食いしばって必死でその欲求に耐えた。精液に汚れたペニスと手をティッシュで拭う。痛いほどに屹立したペニスを震える手でズボンの中に戻し、立城は椅子から飛び降りた。
この章、水輝と立城の視点のみで構成されていて、一段落が長いので切ります……。