【書籍化】クラスで2番目に可愛いボーイッシュ幼馴染を、二泊三日の修学旅行で寝取って種付けセックス漬けにする話 作:月見ハク
夕方にもなると、お化け屋敷はだいぶ完成してきた。
お化け役や仕掛け役のリハーサルも済んだ。
教室内に張り詰めていた緊張感も、和らいできた。
後は細部を直したりして、明日を迎えるだけだ。
チラホラと、帰りだす生徒もいる。
「ふぅ」
俺も、一息ついて床に座った。
教室を見回して、アヤを探す。
彼女は、廊下で電話をしていた。
「それは大変だ」とか「うんいいよ」とか相槌を打っている。
アヤは電話を終えると教室に戻り、いそいそと帰り支度を始めた。
しばらくすると、俺のスマホも震え出す。
ポケットから取り出すと、画面に『リョウジさん』と表示されていた。
リョウジさんは、アヤのお父さんの弟――つまりアヤの叔父さんだ。俺の本名「リュウジ」と似ているので、昔から妙な親近感があった。
料理人で、オシャレな中華レストランを営んでいる。
俺も昔から何度も足を運んでいて、リョウジさんとは顔なじみだ。
特製餃子が絶品で、何皿食べても飽きない。
廊下に出て、通話ボタンを押す。
「リョウジさん、どうしたの?」
すると、『ぼーやん悪いんだけどさー!』という軽快な声が響いた。
リョウジさんは、アヤのお父さんとは正反対に陽気な人だ。
『今日バイトが来れなくなっちゃって、急遽アヤちゃんに助っ人頼んだんだよ~! 文化祭準備で忙しいのは分かってるんだけど、今日予約のお客さん結構入っちゃって――』
「ああ、アヤの迎えですね」
『ほんとゴメン! メシご馳走するからさ!』
「お安い御用ですよ。夕飯……お願いします」
アヤは月に何度か、リョウジさんのお店を手伝っている。
終わるのは二十二時を過ぎるので、アヤのお父さんが仕事で遅い日なんかは、たいてい俺が迎えにいく。
リョウジさんは大声で『ぼーやんありがとな!』と叫び、電話を切った。
大音量に耳が痛くなり、思わず目をつぶる。
瞼を開けると、教室から出てきたアヤと目が合った。
今からリョウジさんのお店に向かうのだろう。
しばし、アヤと見つめ合う。
まだ鼓膜が痺れている俺の様子に、アヤは「ふふっ」と微笑んだ。
俺がリョウジさんと電話していたのを、アヤも知っているのだろう。
一緒に行こうか――。
そう言いかけたとき、横から声を掛けられた。
「ぼーやん、髪にゴミついてる」
「え?」
見ると、すぐそばにユカリが立っていた。
俺の頭に向かって手を伸ばしてくる。
「
意識がアヤに向いていたせいか、ついユカリの言うままに屈んでしまった。
――屈むな。
は?
直感が謎の警告を発する。
しかしすでに、俺は膝を曲げていた。
「はい、取れたよ」
ユカリが小さな木くずを見せてくる。
準備の最中に付いたのだろう。
急いでアヤのほうを見ると、ふいっと顔を背けるところだった。
そのまま足早に廊下の向こうへ去っていく。
アヤの背中に声をかけようとしたとき、ユカリが話しかけてきた。
「ぼーやん、このあと時間ある?」
「ないかな」
適当に返事をして、再度声をかけようとする。
「アヤのことで、大事な話があるの」
「……アヤの?」
思わずユカリのほうを向く。
「うん、ちょっとでいいから」
「……分かった。ちょっとなら」
俺は教室に戻り、急いでカバンを取る。
すでに帰り支度を済ましていたユカリと合流し、校舎の出口へ向かった。
***
学校の一番近くにある喫茶店で、俺とユカリはテーブルを挟んで座っていた。
「で、アヤの話って何?」
早速、最重要テーマについて聞く。
ユカリはため息をついて、ガクッとうなだれた。
セミロングの黒髪がふわりと揺れる。
「ホントにぼーやんって、アヤにしか興味ないよね」
「うん」
「私が二組にいるって、知ってた?」
「まあ、それくらいは」
お化け屋敷の準備をしながら、アヤとユカリが話しているのを何度か見かけたことがある。
ユカリは「はぁ」と息を吐きながら、上目遣いに俺を見た。
「ぼーやん、神様から不思議な力もらったでしょ」
ユカリの言葉に、固まる。
しかしその意味を考える前に、俺はなぜだか理解した。
ユカリも、同じような力を授かっている。
それが、伝わってくる。
俺が理解したことも伝わったのだろう。ユカリは平然と話を続けた。
「修学旅行の帰りにさ、新幹線でぼーやん寝てたじゃない? あの時、私が起こしてあげたんだよ」
「そうなんだ」
確かにあの時、誰かにトントンと肩を叩かれた気がして目を覚ました。
なんとなくアヤかと思っていたけど、ユカリだったのか。
「それでさ、そのときに願ったんだ」
「なんて?」
「…………ぼーやんを、私にくださいって。そしたら『叶えました』って声が聞こえて、なぜだかぼーやんも同じ力を授かってるって分かった」
「そっか」
俺だけじゃなかったのか。
神様はずいぶん大盤振る舞いをしているらしい。
「ぼーやん……じゃない、リュウジくん」
「なに?」
「私ぼーやんとエッチしたい。しよ?」
ユカリは、まっすぐ俺を見てきた。
俺は、少し考える。
神様の直感が、ユカリに言わせているんだとしたら。
こういうストレートに伝えてくる感じが、本来の俺のタイプなのだろうか。
多分、リュウジという本名で呼ばれるのにも弱いのだろう。
しかし今の俺には、少しも響かない。
「ごめん、無理」
なんで? とか どういうこと? とかは聞かない。
ただ、事実をそのまま伝える。
「じゃあ、デートして欲しい」
「無理」
「じゃあ、手とか……つないでみたい」
ユカリがテーブルの上に両手を差し出し、握手を求めてきた。
「無理」
「うっ」と言葉に詰まったユカリの目に、涙が浮かぶ。
それも、直感の指示なのだろうか。
いずれにせよ、俺の心が揺らぐことはない。
「……神様の力のこと、アヤに言ってもいい?」
もうヤケクソだ、という感じを醸し出して、ユカリは食い下がってきた。
「言ってもいいけど……だから何? って話になると思うよ」
「…………だよねぇ」
そう。
この力は、言ってしまえば直感と運が良くなるだけだ。
超能力では? なんて思われるような要素はどこにもない。
アヤに言ったところで、「ユカリどうした?」と心配されて終わりだろう。
ユカリもそれを分かっているのか、再びうなだれてしまった。
セミロングの黒髪も、くたびれて見える。
と思ったら、また顔を上げて見つめてきた。
今度は怯えたような顔を作り、ヒソヒソ声で話し出す。
「ねぇ、この神様って何者なんだろうね……ちょっとコワくない?」
「いや、特に」
今のところ、この力には感謝しかない。
「私はコワいよ。もしかしたら悪魔的な何かかもって。アヤにも、悪い影響があるかも……。ねぇ、私たちで解明してみない? 私とぼーやんって、一種の共犯者みたいなもんだしさ」
なんとなくだが、作戦を変更してきたのかな、と思う。
正直、アヤ以外には鈍感なぼーやんのままなので、ユカリの真意は分からないが。
ただ俺は、神様の正体なんてどうでもいい。
たとえそれが仏様でも八百万の神でも、ユカリの言うような悪魔でも、女神や魔王だったとしても……かまわない。
アヤを手に入れることができるなら。
だから俺は、端的に答える。
「あんまり興味ないかな」
「はあぁぁぁ~、もーなんなの~……」
ゴンという音がして、ユカリがテーブルに突っ伏した。
まるで降参のポーズだ。
ユカリの頼んだアイスティーが揺れ、俺のお冷の氷がカランと鳴る。
「もういい?」
俺はまだ冷たい水をぐいっと飲み干した。
「あ、待って! じゃあ文化祭、一緒に回って? 一日目、ちょっとの時間でいい……そしたらもう、ちょっかい、出さないから」
最後のほうは、涙声だった。
「ごめん、む――」
無理、と言おうとしたところで、直感が囁いた。
――受け入れろ。
ユカリのお願いをきく。
それがアヤを手に入れることにつながる。
なら、淡々とそうするだけだ。
「……午前ならいいよ」
「え、いいの!?」
ユカリが信じられないという顔をした。
アヤは一日目の午前は、お化け屋敷の足首つかみ係で忙しい。
その間くらいなら、少し時間を割いてもいいだろう。
ユカリの狙いは分からない。
でも、アヤを文化祭で手に入れられるという確信は、少しも揺らがない。
嫌な予感も一切しない。
つまり、ユカリがどう行動しようが、俺とアヤのゴールには何の影響もないということだ。
多分、想いの強さが、俺とユカリじゃ全然違うんだろうなと思う。
「じゃあ行くね」
用件が済んだので、立ち上がる。
「どこ行くの?」
「アヤのバイト先」
「あぁそう……」
ユカリが、諦めたようにつぶやいた。
***
リョウジさんのお店は、アヤの家から自転車で三十分のところにある。
電車やバスを使うと一時間以上かかるので、自転車のほうが早い。
アヤはお父さんが迎えに来れない日は、いつもいったん家に帰ってから、自転車に乗って店に向かう。
俺が店の前に着いたとき、時間は十九時を回っていた。
ぼーっとその外観を眺める。
オシャレな照明が、店の看板を照らしている。
店先の駐車場に、見慣れたアヤの自転車が置いてあった。
入り口のドアを開けると、ふわっと餃子の匂いが漂う。
この匂いを嗅ぐと、俺はすぐにお腹が減るようにできている。
見渡すと、カウンターを合わせて二十席くらいの店内は満席だった。
家族連れやカップルが、美味そうな料理に舌鼓をうっている。
カウンターキッチンから、喜んだ猫のような声が響いた。
「おーいらっしゃい!」
アヤがニコニコしながら、俺を見ている。
その瞬間、モノクロだった視界が一気に色づいた。
さっきまでぼんやり眺めていた世界が、嘘みたいにクリアになっていく。
「カウンターでいい?」
アヤが料理を運びながら、聞いてきた。
俺がコクリと頷くと、アヤは口角を上げ、アイコンタクトでカウンターのほうを指し示した。
そのまま俺の横を通り抜け、家族連れのテーブルに料理を持っていく。
かなり忙しそうだ。
「チャーシュー麺です!」とアヤが笑いかけると、小さい子どもからも笑みがこぼれた。
俺は一番端のカウンター席に座ると、「予約席」と書かれた紙を剥がす。
アヤの字だ。
所々丸っこくて丁寧な筆跡に、なんだか温かい気持ちになる。
店内が見渡せる、いつもの席。
馴れ親しんだイスの硬さに、嗅ぎ慣れた匂い。
俺とアヤの、たくさんの思い出が詰まった店。
この店とは、小学校からの付き合いだ。
六年生になると、週末にアヤと一緒に自転車で来て、ランチを食べて帰るのがブームだった。
そこそこの遠出をして、子どもだけでレストランで食事をする。
俺たちには、ちょっとした冒険だった。
お客さんが少なくなると、リョウジさんが特製デザートをご馳走してくれて、三人で取りとめのない話をする。
「二人は、結婚式いつよ?」。
リョウジさんがそう言ってからかい、俺とアヤは気まずい苦笑いを浮かべ合った。
すぐに会話のテーマは変わり、帰る頃にはそんな一瞬の気まずさなんて忘れてしまう。
少なくとも、アヤは。
俺は、いつも忘れたフリをしていた。
物思いにふけっていると、目の前に美味しそうなお冷が置かれる。
「ご注文は?」
アヤが慣れた口調で聞いてきた。
思わず、その姿に見惚れてしまう。
アヤは厨房も手伝うので、長袖の白いコックコートを着て、下には黒いズボンを穿いている。
コックコートは大きいサイズのようで、アヤは腕の袖の部分を何重にも折っていた。
それなのに胸元は布地をこんもりと押し上げていて、アヤのバストを強調している。
視線を上げると、いつもとは違う髪型が目に入る。
ショートカットをかき上げて、後ろをゴムで結んでいて、整った目鼻立ちを際立たせていた。
アヤの貴重なオールバック姿を見れるのは、この店だけだ。
きっと俺はこれまでもこの店で、アヤに見惚れていたのだろう。
子どもの頃から、ずっと。
「特製餃子二皿と、担々麺で」
俺はメニューを見ることなく告げた。
「はいよー。オーダー、カウンター一番さんいつものー!」
アヤが元気に声を上げる。
キッチンで、リョウジさんが「あいよー!」と返事をした。
料理を待つ間、さり気なくアヤの働く姿を眺める。
キッチンの手伝いに接客にお会計に、大忙しだ。
今も、金髪が特徴的な男のお客さんと、レジで何やら話し込んでいる。
アヤの困ったような笑顔を見るに、多分軽いナンパだ。
キッチンからリョウジさんが、「ありがとうございましたー!」と声を張り上げ、会話を強制終了させる。慣れたものだ。
金髪の男は、中途半端な笑顔を貼り付けて店を出ていった。
キッチンに戻ったアヤに、リョウジさんが小声で話しかける。
「どうした?」
「次いつ入るのって」
「そうか」
その短いやり取りの後、リョウジさんが「四番さん豚チャーハンね!」と、アヤの目の前に料理を置く。
「はーい!」と返事をしたアヤが、また忙しなく接客に戻っていく。
別のお客さんが、「すみませーん」と声を上げ、アヤが「はーい!」と返事をする。
話しかけるのはしばらくやめておこう。
***
二十一時を過ぎると、客足も落ち着いてくる。
アヤもときどき俺のほうに寄ってきて、二言三言会話をするくらいには余裕が出てきた。
特製餃子二皿と担々麺はとっくに平らげ、デザートの杏仁豆腐も食べ終わり、今は食後のアイスコーヒーを飲んでぼーっとしていた。
あと一時間もすれば、アヤの帰宅時間だ。
ふと、キッチンからリョウジさんに声を掛けられた。
「ぼーやん、ちょっと手伝ってくれるか?」
「あ、はい」
俺はリョウジさんの後について、キッチンからお店の裏手に出た。
たまにこうしてビール瓶や料理の材料を運ぶのを手伝う。
しかし今回は、違う用事のようだ。
リョウジさんはお店を回り込むように、店の入り口のほうへ向かっている。
店先の駐車場が見えてきたあたりで、立ち止まった。
「ぼーやん、あいつ、アヤの知ってるヤツか?」
リョウジさんの視線の先。
駐車場近くの塀に寄り掛かる人影があった。
さっきレジでアヤに話しかけていた、金髪の男。
顔は若く、二十歳くらいだろうか。
少なくとも俺は見たことない顔だ。
「俺は知らないですし、多分、アヤも」
「そうか」
リョウジさんが、低い声で唸った。
金髪の男はスマホを見るフリをしながら、チラチラと店の中を見ている。
直感に頼らなくても、ピンときた。
「アヤの、ストーカーですか」
「まだ分かんねぇけどな。この前アヤちゃんがバイトに入った日から、毎日来るんだよアイツ」
「常連さん?」
「だと思ってたんだけどな。さっきアヤちゃんに、次いつ入んのかって聞いてたんだ。……クソ、せっかくアヤちゃん接客に慣れてきたってのに」
「そうですね」
金髪の男はアヤに次のシフトを聞いて、その後、駐車場に
でも俺もリョウジさんも、ストーカーだと確信していた。
前にも一度、アヤはストーカーに遭ったことがある。
中学三年生の時だ。
近くに住む大学生が、一人で店に来ていたアヤに一目惚れをしたらしく、名前や学校について聞いてくるようになったらしい。
しばらくすると、店の近くでアヤが来るのを待ち伏せするようになったという。
学校では時田との名物カップルぶりは有名なので、変な輩が寄ってくることはない。
しかし学校外では、たまにナンパされたり、こうして変なヤツに狙われたりすることがある。
その大学生のストーカーは、リョウジさんが人知れず追い払ったらしい。
だから、アヤはストーカーに狙われたことも、リョウジさんが対処したことも知らない。
この頃、リョウジさんが俺によくアヤの迎えを頼むようになったので、理由を聞いたら教えてくれた。
「騒ぎになったらアヤちゃんがビビっちまうからな」。
そう言って笑うリョウジさんは頼もしくて格好よくて、なんでかちょっと悔しかった。
――話をしに行け。
神様の直感が、そう告げてくる。
「リョウジさん、俺があの男と話してきますよ」
「いや、だめだめ。ぼーやんは店でアヤちゃんと待っててくれ。そのために今こうして呼んだんだ。俺が話してくる」
「リョウジさんが店先で話し始めたら、それこそ目立ってアヤが不安がります」
「確かにそうだけどさ」
リョウジさんは、ストーカーの存在をアヤに知られたくない。
実は人一倍臆病なアヤを、恐がらせたくないのだ。
その気持ちは、俺も分かる。
「大丈夫なんで、任せてもらえますか? もしダメだったらリョウジさん呼ぶんで」
リョウジさんの目を見据え、自信を持って伝える。
リョウジさんが目を見開いて、俺を見た。
直感のおかげで、妙な自信をみなぎらせる俺の態度に驚いているのだろう。
普段だったら、俺なんかに任せないのだろうが――。
「……分かった、ぼーやん頼んでいいか? コイツは話通じねぇと思ったら、刺激しないように会話をしつつ、こっそり俺の携帯鳴らしてくれ」
リョウジさんは、俺を頼った。
ひそかに憧れ尊敬してきたリョウジさんに、男として認められた気がして嬉しくなる。
これも、神様のちょっとした計らいなのだろうか。
「分かりました。アヤには、俺は外で待つことにしたって言っておいてもらえますか?」
「おお、くれぐれも気をつけてな。絶対に刺激すんなよ? すぐに警察呼ぶとか、ぶっ飛ばすぞとか言って脅すのもダメだ。逆上しかねないからな。できるだけ穏便に引き下がってもらうんだ、いいな?」
「はい、そうします」
リョウジさんは、深く頷いた。
「まあ、ぼーやんの図体なら、襲ってくるとかはないだろうけどな」
若干物騒なことを言い残し、リョウジさんはひとまず店の中に戻っていく。
俺は、ゆっくり金髪の男に向かって歩き始める。
――刺激しろ。
――脅せ。
――逆上させろ。
神様の直感が、物騒なことを囁いていた。