【書籍化】クラスで2番目に可愛いボーイッシュ幼馴染を、二泊三日の修学旅行で寝取って種付けセックス漬けにする話 作:月見ハク
どれくらい、唇を重ねているだろうか。
複雑に絡み合う舌が、淫らな水音を立てている。
俺は、アヤと屋上でキスをしていた。
みんなの見ている前で。
吹奏学部の演奏が終わったのだろう。
体育館のほうから、うっすら拍手の音が聞こえてくる。
俺とアヤは息を合わせたように、ゆっくり舌と舌を解き、密着した唇を離す。
互いの舌に、名残惜しそうな銀糸が掛かる。
体育館の拍手はまだ続いている。
しかし、屋上の観衆たちから拍手が上がるはずもなく、誰もが呆然としていた。
視界の端であたりを見る。
こちらに向いているスマホはない。
どうやら撮影した人はいなかったようだ。突然のことに、みんなビックリしているのだろう。
別に、俺たちの関係が知られるのが嫌なわけじゃない。
ただ、知らないところでアヤの写真が――それもキスをしている姿が出回るのは、たまらなく嫌だ。
この前、大会でのアヤを撮った写真を、女子の一人に見せられた時のことを思い出す。
あれは、なかなかに不快だった。
俺は、目の前の幼馴染に視線を戻す。
アヤは、真っ赤になって目を泳がせている。
出会った当時の、人見知りだった頃の彼女がちょっぴり顔を覗かせていた。
俺は、いつもと変わらない調子で声を掛けた。
「もうちょっと見て回ろうか?」
「……うん、そうだね」
アヤは、ぎこちなく微笑んだ。
内心の動揺が伝わってくる。
でも、俺の調子に触発されたのか、アヤもいつもと変わらない表情を作った。
――大丈夫?
そう言おうとして、止める。
違うな。
ここで掛けるべき言葉は。
「アヤ、大丈夫だから」
俺は、確信を持って微笑んだ。
「うん、そうだね」
アヤも、今度はふんわりと微笑む。
自然体で、機嫌の良さそうないつもの笑顔だ。
二人で、屋上の出口へ歩く。
遠すぎず近すぎず、いつもの距離感で。
屋上に来たときとは違って、さすがにアヤに話しかける人はいなかった。
校舎の中に入り、階段を降りる。
自販機のところまで来ると、後ろを付いてきていたアヤを振り返る。
文化祭を回る前に、とりあえず。
「アヤ、何食べたい?」
すると、アヤはぷっと吹き出し、呆れ顔を作った。
「さっそく食べ物か~? 食いしんぼーやんめ」
「いや、アヤもお腹すいたって顔してるよ」
今日、アヤは朝にアンパンを一つ食べただけだ。足首つかみ係も、さぞやカロリーを消費したことだろう。
「うっ……ぼーやんに言われると、そんな気がしてきた……」
「焼きそばとたこ焼きでも食べようか」
「欲張りだねー」
「アヤがどっちも食べたいって顔してるから」
「……たこ焼きだけだし」
「じゃあ、先にたこ焼き屋から行こうか」
二人で一階まで降りる。
廊下の突き当たりにある投票箱で立ち止まることなく、俺たちは校舎の外に出た。
校舎から正門までは出店が立ち並び、焼きそばやたこ焼きの匂いが漂ってくる。すごく美味しそうだ。
来場客でごった返す中を、アヤと二人で歩く。
たこ焼き屋まで来ると、行列の最後尾に並んだ。
列で待っている間は、お互い無言だった。
別に気まずくて、とかではない。
話していれば楽しいし、会話がなくても別にいい。
それが、俺とアヤの普通だった。
十五分ほど並んで、やっと順番が回ってくる。
俺は指を一本立てた。
「たこ焼き一つ…………じゃなくて二つください」
隣でアヤがじっとたこ焼きを凝視していたので、指を二本に変えた。
8個入りのたこ焼きを二皿持って、出店通りを歩く。
所々に設置されたベンチは、全て埋まっていた。
「アヤ、どっかそのへんの木陰にでも座ろうか? お化け屋敷の係、疲れたでしょ」
「ううん、大丈夫。木陰も人で埋まってるし、歩きたこ焼きしよっ!」
結局俺たちは、正門の近くで立ちながら昼食にありつくことにした。
アヤは、「はふはふ」と息を吐きながら、いいテンポでたこ焼きを口に運んでいる。
ふと、アヤを見ている視線に気づいた。
遊びに来た大学生だろうか、二人の男が、美味しそうにたこ焼きを頬張るアヤを興味深げに見ている。
その視線はアヤの顔に向けられ、次にその胸元に吸い寄せられた。
立ち止まって、何やらつぶやき合っている。
おおかた、「可愛くね?」とか「胸デカくね?」とか言っているのだろう。
アヤと一緒にいると、よくこういう場面に出くわす。
以前の俺だったら、彼らが去るのを待っていただろう。
俺は、自分の体格をフルに使って、アヤの姿を男たちから隠した。
「ん? どしたのぼーやん?」
アヤが能天気そうな顔で見上げてくる。
「いや、ただの日除け」
「あ、ありがと…………ぷふっ、日除けぼーやんか」
「ああ、俺は日傘だよ」
「日ぼーやんか、んぷ、くくっ……」
何かがツボにはまったらしいアヤが、堪えきれないように笑った。
アヤは、順調にたこ焼きを口に放り込んでいく。
次第に、その顔が緊張していくのが分かった。
最後の一個を頬張る頃には、これから戦場に行く戦士のような顔つきになっていた。
「ぼーやんごめん、今日はもう、文化祭一緒に回れない」
「どうして?」
「この後、みんなに話してくるよ」
みんなとは、アヤの女友達たちのことだろう。
時田と別れることを、俺とのことを打ち明けるつもりだ。
「アヤの友達に、全部話すってこと?」
「うん」
波風立てたり、気まずくなったりするのをあんなに恐れていたアヤが、覚悟を決めた。
俺の胸が、心配で埋め尽くされる。
――俺も行くよ。
――アヤが話さなくていい。
――傷つくかもしれない。
――アヤがそんなことしなくていい。
――俺が、全部丸くおさめるから。
いろんな言葉が、一瞬のうちに浮かんでくる。
それを全部吐き出そうとして、止めた。
アヤはもう、俺に流されるだけのアヤじゃない。
自分から、俺と一緒になろうと決心したんだ。
俺は口を開く代わりに、アヤの頬に手を添えた。
少しだけ汗ばんだ頬を通して、アヤの心情が流れ込んでくる。
――私、嫌われるかも。
みんなに。
軽蔑されるかも。
でも。
私が。
ちゃんと、言わなきゃ。
私が。
ぼーやん。
私。
「アヤ、大丈夫だよ」
俺は、いなくならない。
俺が、アヤの地盤になる。
今の地盤だって、壊させない。
それを伝える。
――そうだね、ぼーやん。
私は。
大丈夫だ。
アヤの心が、温かいもので満たされていくのを感じる。
「じゃあ、みんなのとこに行ってくるよ」
吹っ切れたような笑顔のアヤが、俺の手に触れた。
俺は、ずっとアヤの頬を撫でていたようだ。
少し見渡せば、驚いたようにこちらを見ている生徒の姿があった。
俺は、パッと手を離す。
「ああ、行っておいで」
するとアヤはまた、ぷっと吹き出した。
「ぼーやんたこ焼き、一つも食べてないね」
「あ、忘れてた……あっひぅっ」
口内が灼けるように熱い。
火傷する。
俺は「あふあふ」と口内から熱を逃した。
「あっ大丈夫!? ぼーやん猫舌なんだからゆっくり食べなきゃっ」
「そうだった、忘れてた……」
「まったく……食べるときにぼーっとしちゃダメ」
アヤがお母さんのように注意してくる。
これも、いつものやり取りだ。
「悪かったな、猫舌で」
そして、ここでアヤに「猫舌ぼーやん~」とからかわれるのだ。
しかしアヤは、少しだけ焦ったような顔になる。
「ううん、猫舌って、危険を察知できるらしいし……別に悪くないと思う」
その口調は、俺を本当に励ますような声色だった。
俺を見つめる目も、ただの幼馴染に向けるような眼差しではなくて……。
ああ、変わったんだ。
アヤの中で、俺の存在が。
さっきから俺の側からなかなか去ろうとしない、この感じも。
俺の胸の中に、熱い感情が湧き上がるのを感じる。
「じゃあ、行くからね」
「ああ」
「ぼーやん……待ってなくて、大丈夫だよ」
「バレたか」
「ずっと待ってるって、顔に書いてある」
――今日は帰ったほうがいい。
直感が、そう告げる。
このまま学校にいると、俺は時田に出くわしてしまうようだ。
どうやら、時田と対峙するのは明日のほうがいいらしい。
「……分かった。今日はもう帰るよ。アヤもあんまり遅くなるなよ」
以前の俺だったら、心配でずーっと正門前で待っていただろう。
そんな自分を思い浮かべて、苦笑する。
アヤが緊張した表情で、校舎のほうに歩きだした。
徐々に、アヤの背中が人ごみに消えていく。
その後ろ姿が、いつもより小さく見えて――。
――アヤ、大丈夫だよ。
――大好きだ。
――ずっと俺がいるから。
いろんな言葉が、一瞬のうちに浮かんでくる。
「アヤ、いってらっしゃい」
その全部を伝える。
出店通りの来場客が、生徒たちが、一斉に俺を見た。
思ったより、大きな声が出てしまったようだ。
アヤも、俺を振り返る。
恥ずかしそうな、困ったような顔で。
人ごみをすり抜けて、アヤの心が伝わってきた。
――ぼーやん、め……。
ここで、いってらっしゃいなんて。
反則だ。
ああもう。
ぼーやんの、ばか。
これ以上、好きになったら。
私、どうなっちゃうんだ。
ぼーやん。
ありがとう。
私はもう、頑張れるから
いってくるよ――。
アヤは胸の前で手をちょっとだけ振り、また歩きだした。
こっちを見ていた人たちも、興味を失ったようにそれぞれの関心に移っていく。
去っていくアヤは、少しだけ背すじが伸びているように見えた。
アヤはもう、大丈夫だ。
女友達たちとどうなるか、見届ける必要もないだろう。
後は俺が、淡々とやるべきことをやるだけだ。
俺は熱いたこ焼きをゆっくり食べ終えると、正門を出ずに、時田のもとへ向かった。