【書籍化】クラスで2番目に可愛いボーイッシュ幼馴染を、二泊三日の修学旅行で寝取って種付けセックス漬けにする話 作:月見ハク
「アヤ、着替えてから寝なさいね」
「うん……」
ファミレスから家に帰ってきて階段を上がる間際、お母さんに釘をさされる。案の定、自分の部屋に入った瞬間にベッドに吸い寄せられそうになって……踏ん張った。
白い薄手のカーディガンは、親友のカナッペに選んでもらったものだ。シワくちゃにならないようにしないと。
カーディガンをハンガーに掛けて、そのままベッドに倒れ込んだ。ぼふっと体が埋まり跳ねる。なんだか、まだ体がふわふわする。
「ぼーやんめ」
むっと尖らせた唇に触れてみる。ファミレスの外階段でしたキスの感触が、まだ頭から離れない。ちょっとカサついたぼーやんの唇のせいで、私はいつも心臓が弾けそうになる。口づけをするたびに、初めてのキスみたいに固まってしまう。
今日のぼーやんはジャケットを着ていた。背が高いからああいう格好が似合うと思っていたから予想とおり……ううん、予想よりも……。
「ふあ~ぁ」
また胸がきゅうっとしてきたので、あくびをして体を落ち着かせる。思えば修学旅行からぼーやんにはドキドキさせられっぱなしだ。強引なのに、心を見透かされたみたいに気遣ってくれる。二人のときはすごく男っぽいのに、ふんわりした笑顔が昔と変わらないから困る。
お腹の奥があつい。
眠たいのに、全然寝れない。それもこれも、ぼーやんが……。
「けっこん……」
隣で、ウチの家族に挨拶していた横顔を思い出す。ほっぺたがほんのり赤くて、思わず触った手は冷たかった。ものすごく緊張しているのが伝わってきて……それが嬉しかった。
煮込みハンバーグをフゥフゥ言いながら食べる姿が可愛くて。
「ふわぁ~あぁぁ」
無理やり空あくびをする。
ダメだ。寝られる気がしない。いつの間にか朝になってそう。
明日もぼーやんはバイトだから会えるのは月曜日だ。
どうしよう、早く明後日になってほしい。
……こういうときは、ぼーやんシールだ。
重い体をズリズリと這わせて、ヘッドボードに貼られたブタのシールに手を伸ばす。最近は毎日こすっているから、もう原型がわからないほどボロボロになってしまった。
「もう昔とは違うんだね」
私たちは、ただの幼馴染から恋人になったんだ。
不思議と不安はない。昨日までは些細なモヤモヤがあったはずだけど、今日、ぼーやんが学校に来て、いっぱい、抱かれて……ウチの親に挨拶してくれて、帰りにお父さんが「ぼーやんはいい顔してるよな!」なんてよく分からない褒め言葉を言って、みんなで笑う頃には、私の心はすっかり軽くなっていた。
いつもそうだ。ぼーやんは私を不安ごと包み込んで、いつの間にか温かい気持ちに変えてくれる。だから、これからもきっと私は。
「ふぁっ……ぁぁぁ、だめだこりゃ」
体の熱が冷めない。ぼーやんに会いたい。
明日は朝早いって言ってたけど、おやすみ、くらいならいいよね。いいかな。
枕元に転がっていたスマホに手を伸ばす。暗い画面に、眉間にシワを寄せた私の顔が映ってハッとする。
「…………私、求めてばっかだ」
ピコンと画面が光り、ショートメッセージが表示される。
送り主は――カナッペだった。
『アヤ~ごめん明日ヒマ? フユミが告られたからウチに集まれ~! おやつ持参で』
簡単に返事をして、重い体を起こす。
私はパジャマに着替えることにした。
***
みんながカナッペの家に集合したのはお昼すぎだった。
「――んでフユミ~、告白の返事はしたん?」
「一応、OKって返事はしたよ……メールで」
「アヤに続いてフユミもかよ~」
カナッペがフユミにしなだれかかる。いつもの黒のスウェットの上下だ。なのにスラっとした体つきをくねらせるカナッペは、どこか色っぽい。クセのない黒髪のロングヘアーを、今日は無造作に結んでいる。長い首すじが綺麗で、多分こういうのが男子は好きなんだろうな、と私でも分かる。
ぼーやんも、こういう感じが好きだったりするのかな。
カナッペは中学からの付き合いで、中学から私の密かな憧れだ。私も少しはカナッペみたいに――。
「お~いアヤ、聞いてたぁ?」
「へあっ、ごめん考えごとしてた」
「またぼーやんか」
「うっ……」
否定できない。
「ほんとごめんっ」
ジト目でこちらを見据えるカナッペとフユミがため息をつく。
「週明けにフユミがスポッチでデートすっから、私らも付いていくことになったんよ。お互いこっ恥ずかしいからって」
「あ、うん、行く行く」
「よしよし。そんでアヤはぼーやん連れてこれるかい?」
「えぇっ!?」
「フユミたちもさ、先輩カップルがいたほうが何かといいじゃん? まあ、アヤが良ければだけどさ」
なんとなく、カナッペが私たちをアシストしようとしてくれているのが分かる。私がぼーやんと付き合いたいってみんなに言ったときも、真っ先に味方してくれたのがカナッペだ。
「行けたらいいなと……思う」
「よぉしっ、じゃあ明日ぼーやん誘いなね」
「うん、誘ってみる」
多分、ぼーやんは断らない。むしろ喜んでくれそうな気がする。
それにしても、ぼーやんとゲームセンターでデートか……。
「アヤ~、またぼーやん状態か~い?」
「ぼ、ぼーやん状態ってなんだよ~」
「んー、ぼーやんみたいにぼ~っと考え事してる状態」
「う~ごめん、昨日いろいろあって、疲れちゃって……」
「へえぇ~どうせぼーやん絡みでしょ? 今日は詳しく聞かせろよ」
「う……」
結局その後、根掘り葉掘り聞かれるうちに私はカナッペの家に泊まることになった。フユミと一緒に帰ろうとしたら、カナッペに抱きつかれてお願いされたのだ。
カナッペの家族は仕事で留守にすることが多く、今日も家に誰もいなくて一人じゃ寂しいからと。
「――まあぶっちゃけさ、今後のアリバイ作りってやつだよ」
出前のパスタを食べながら、カナッペがニヤリと笑う。
「なにそれ?」
「ほらさ、もし今後ぼーやんと外泊したくなったときさ、私の家に泊まってたってことにできるじゃん? こういう前例作っとけばアヤん家も不自然に思わないだろうし」
「あ、え……それは、サンキュ」
顔が熱い。カナッペのニヤニヤ顔がどんどん濃くなっていく。
「カナッペ、私先にお風呂入るね」
「おおいいよ、家主が許可する。そのゆるんだ顔を鏡で見ておいで~」
お風呂の鏡で見た私の顔は、確かにふにゃふにゃになっているように見えた。これは……恋する女の子の顔だ。ぼーやんといるとき、いつもこんな顔をしているのだと思うと恥ずかしい。
「でも、ぼーやんだって……」
すごく求めてくるときの、あの苦しそうなぼーやんの顔を思い出す。
一緒に登校するときのお日さまのような優しい笑顔。たまに真剣に考え事をしているときのキリッとした目元。からかってくるときの、あの不敵な口元。
その全部に、いつもドキドキしてしまう。
「うぅ~……」
私はシャワーをぬるま湯にして頭から掛けた。
「カナッペ出たよ~、お風呂ありがとね」
「ほーい、じゃあ私も入ってくるかな。お、似合ってんじゃん私のパジャマ。ああ、ドライアーとかもろもろそこにあるから」
「うん、ありがと」
ニコッと笑い、カナッペは部屋を出ていった。
ドライアーで髪を乾かしていると、修学旅行の最終日にぼーやんが家に来たときのことを思い出す。あの蒸し暑い部屋で、赤い夕日の中で、私は何度もぼーやんに抱かれた。
私も、どうしようもなくぼーやんを求めて……。
「頭、あつい」
髪を乾かし終えたときには、額に汗が浮かんできていた。
出前に付いてきた麦茶のペットボトルを持ち、部屋の窓を開ける。サンダルを履いてベランダに出ると、肌寒さに体が震えた。
見上げれば、まん丸に近い月が夜空を照らしている。すっかり秋の感じがする。
「もう、夏が終わったんだな~……」
ぼーやんのせいで、この夏は、この一カ月はあっという間だった。なのに修学旅行の思い出がすごく遠く感じる。
「そっか、ちょうど一カ月経ったんだ」
「何から一カ月だって~?」
カナッペがいつの間にか隣に立っていた。
「カナッペお風呂早くない?」
「普通でしょ。アヤがぼーっとし過ぎなんだよ」
言われてスマホを見れば、確かにもう三十分以上は経っていた。
「なんか私、だめだめだぁ……」
「またそーやってアヤはすぐマイナスモードになる」
「だってさぁ……いろいろ、こわくて」
「まあ、分からんでもない。ぼーやんってすごい尽くしてくれそうだし、今にして思えばアヤにゾッコンだよね。ありゃ~よくできた彼氏になるよ。釣り合い取れないかもって思っても仕方ない」
「……そこまで言ってないし」
図星だ。カナッペの言うとおり、私なんかがぼーやんの彼女でいいのかなって思ってしまう。
いつもぼーやんにもらってばかりで、私もちゃんとぼーやんにあげれてるのかな。
きっと余計な考えなのだろうけど、それでも勝手に浮かんできてしまう。そんな自分が、あんまり好きじゃない。
「まあ、頑張りな。ぼーやんだってすごい頑張ってるよあれは」
「……分かってるもん」
「はぁ……ホントはさ、アヤはそのままで十分ぼーやんにラブを与えてるんだぜって言いたいんだけど、それじゃ納得しないんだろ~? だったらもっと頑張ってみ?」
「おう、そうするし」
「はいはいヨシヨシ、アヤはいい子だね~」
カナッペがゴシゴシと頭を撫でてくる。だから私もお返しする。
「カナッペもいい子いい子、いい子だよ~」
「はぁん……もっと撫でて~」
カナッペが頭をこすりつけてくる。艶々の黒髪を撫でていると、なんだか泣けてきた。
「ほんとに、ありがとね……カナッペ。私、勇気出してみんなに伝えてよかった」
「そっかそっか~、おセンチなアヤも可愛いぞ~」
涙をこらえてカナッペを撫でていると、彼女の視線が私のスマホに向いているのに気づいた。猫のような細目で私をチラっと見て、またスマホに視線を戻す。
「私のスマホがどうかした?」
「ん~いや……アヤの待ち受け、最近ずっと大仏だよなーと思って」
「ああ、これね」
待ち受け画面には、修学旅行初日に撮った大仏様が映っていた。あの日、大仏様のふもとで私はぼーやんに相談に乗ってもらった。おかげで、少しスッキリしたのを憶えている。
そうしたら珍しくぼーやんが悩み始めて、なんとかしなきゃと必死に励ましたりしたっけ。
「アヤにしては地味……と言ったら大仏に失礼か。なに、何かの願掛け?」
「まあ、そんなもんかな」
あのときは、ぼーやんがなかなか元気にならなくて、でも班のメンバーから戻ってこいって連絡があって……モヤモヤした気持ちでぼーやんと別れた。
その去り際、ぼーやんは自分も落ち込んでるくせに「良くなるといいね」って言ってくれたんだ。
だから私も。
大仏様に祈ったんだ。
「ぼーやんに幸あれ」
それから、私は大仏様を待ち受けに設定した。幼馴染としてのささやかな願掛けのつもりだった。
でも、ぼーやんと結ばれて。
自分の気持ちを自覚して。
付き合うことになって。
もうこの待ち受けは、変えられなくなった。
「――んでさ、そのお願いごとは叶ったん?」
カナッペが興味あるんだかないんだか分からない口調で聞いてくる。
「どうだろ、叶ったのかな……だったらいいな」
私は大仏様の柔らかそうなほっぺたをそっと撫でた。
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