【書籍化】クラスで2番目に可愛いボーイッシュ幼馴染を、二泊三日の修学旅行で寝取って種付けセックス漬けにする話 作:月見ハク
教室の窓から、校庭をふんわりと眺める。
昨日雨が降ったせいで、そこかしこに水たまりができていた。登校してくる生徒たちが水たまりを避けながら歩いている。校庭全体が濡れているから、朝陽に反射して煌めいている。
そんな悪条件でもサッカー部は一生懸命、朝練で汗を流していた。その中には時田の姿もある。校庭の隅で青い水筒を持っている女の子は、彼女だろうか。
俺はスマホに視線を落とした。
アヤと新幹線のホームで別れた後、お互いにメールをしていない。
もう寂しくない、の暗黙の合図だ。
確か今日の午後から復帰すると言っていたので、それを楽しみに待とうと思う。
「ぼーやん、少し時間ある?」
昼休みに廊下を歩いていると、ユカリに呼び止められた。
「ああ、別にいいよ」
「……いいんだ」
メガネ越しの瞳が驚いたように見開いていた。
「図書室、ね」
「問題ある?」
「ううん、ない」
話があるというので、俺はユカリを図書室に連れてきた。
テスト期間明けの図書室は、昼休みというのに閑散としている。俺たちは大きなテーブルを挟んで座っていた。
図書室なのでお互いそこそこ小声で話す。
「あのさ、私ぼーやんに振られたじゃない」
「うん」
「それでまあ勉強に専念していたんだけど……端的に言えば、私にも相手ができました」
ユカリが真面目な顔で見つめてくる。相手というのは恋人のことだろう。
小柄な背筋を伸ばし、かしこまった雰囲気だ。
こういう律儀な感じが、本来の彼女なのだろう。
「そうなんだ」
「うん、一応報告しなきゃと思って。ぼーやんと、アヤには」
アヤにはもう話したの? とは聞かない。
それは彼女たち二人の問題だ。
「そうなんだ」
「アヤは……ああ見えてすごく真面目な子だから、私に対して負い目みたいなものを感じてると思うんだ」
「そうだね」
アヤは文化祭以降、ユカリのことを一切口にしなくなった。
自分が負い目を感じているのもあるが、一番は俺に負い目を感じさせないためだろう。
「だから、もう気にしなくていいんだよって伝えられるのは、私としても喜ばしいんだ」
「それは、よかったね」
心からそう思う。
「ぼーやんのおかげだよ」
「そっか」
「うん、私と……真面目でつまらない私と真剣に向き合って、真摯に振ってくれたから」
ユカリがふっと笑う。
目尻の下がった穏やかな笑顔だ。これも、彼女の本来の顔なのだろう。
「だから変われたんだ……アヤみたいに」
「アヤみたいに?」
「そう、強くなった」
「それは、そうかもね」
確かにアヤは何度も、直感がびっくりするくらい飛び越えてきてくれた。
でもそれを言うなら、俺のほうがアヤにもらってばっかりだ。
彼女を手に入れるために強くなって、いろんなことに気付かされて、モノクロだった視界が色づいて。
世界が、広くなった。
俺の返事が気に食わなかったのか、ユカリがさらに言い募る。
「そうなんだよ……自分を偽る必要なんてないって、ぼーやんが思わせてくれたの。だから、嘘のない私を好きに……なってくれる人が、できたりしてっ……」
ユカリが恥ずかしそうに視線を逸らした。
その様子から、彼女が恋人さんをどれくらい好きかが伝わってくる。
「それは、よかったね」
俺は多分、初めてユカリに笑いかけた。
「うん……ありがとう」
ユカリもふんわりと笑う。
しかしすぐに、彼女の顔は真剣なものに戻った。
「……ところでさ、ぼーやんはまだ直感の声って聞こえてたりする?」
「まあ、たまに」
ユカリは握った手を口元に当て、「ふむ」とつぶやいた。何か思考を巡らせているようだ。
「私はね、聞こえなくなった」
「そうなんだ」
「私の推論を言ってもいい?」
「どうぞ」
「あの声は、もう一人の自分なんじゃないかな。心を偽って、抑え込んでいた情念とか本能に近い、何か……二重人格みたいな」
「そうかもね」
「それが何かのきっかけで……多分私はぼーやんに触発されて覚醒したんじゃないかと。超能力……というか潜在能力が目覚めるみたいな感じで。だとすれば説明も……無理やり付けられないこともない」
ブツブツと自問自答をしていたユカリが、「非科学的すぎる」と言ってテーブルに突っ伏した。ゴンという音が静かな図書室に響く。
好奇心旺盛というか、こういうことが気になって仕方ないという感じだ。もともとのユカリはこういう気質なのだろう。
「ぼーやんは、なんだと思う?」
ユカリが上体を起こし、研究者のような顔で見つめてくる。
「さあ……なんでもいいかな」
それは変わらない本心だ。
直感の正体がもう一人の自分だろうが、超能力だろうが大仏さまだろうが俺にはどうでもいい
アヤを完全に手に入れて、幸せにできればそれで。
「……ぼーやんはそうだったよね。ごめん、どうでもいいことをベラベラと……つい気になっちゃって」
「問題ないよ。それに」
「ん?」
「こっちのユカリのほうが、いいと思う」
メガネの奥の瞳が、またも見開く。
「……ありがとう。私の、その……パートナーもっ、同じこと言ってくれた」
ユカリが嬉しそうに笑う。セミロングの黒髪がふわりと揺れた。
「そっか」
「うん」
「じゃあ、そろそろ行くね」
俺は静かに立ち上がった。
「あーごめん、用事あったりした?」
「いや、そろそろアヤが来るって直感が言ってるんだ」
***
教室に戻ると、アヤの親友のカナッペが近づいてきた。
「ぼーやん、そろそろアヤ着くってさ」
「そうなんだ」
「『恥ずかしいから迎えに来て~』ってメール来たから、『待ってるから一人で来い』って送っといたのよ。ということで、ぼーやん出迎えてあげたら? サプライズってやつ」
ユカリと他の女友だち達がニヤニヤ笑っている。
なるほど、驚いて照れるアヤを見て楽しもうという魂胆らしい。
「うん、もともとそのつもりだよ」
俺は教室の入り口を見つめた。
――あと三十秒。
直感が囁く。
アヤとの距離を教えてくれるあたり、本当にカーナビみたいだ。
――あと十五秒。
そろそろか。
俺はゆっくりと入り口へ向かう。
――あと三秒。
ふっと息を吐き、廊下に出る。
「うわっ、びっくりした……!」
目の前に、驚き顔の美少女がいた。
長袖のブラウスの上に、お祖父さんの家で着ていた黄色いニットを羽織っている。二日しか経っていないのに、すごく大人びたように見える。
「おかえり」
優しく笑いかけ、幼馴染の茶髪を撫でる。
「ただいま」
彼女も上機嫌そうに笑い、でも何かを要求するような目で見つめてきた。まるで飼い主を見つめる子犬のような、褒めてと言わんばかりの眼差しだ。
不思議に思った瞬間、ふと複数の視線を感じた。
気づけば廊下にいる生徒たち――だけじゃなく教室にいる大勢が、俺たちに注目している。
そんな中でもアヤは笑顔で、背筋を伸ばして立っていた。
なるほど、だから褒めてなのか。
俺は彼女の頭を何度か撫で、ついでに頬に手を添えてみた。
「……ぅッ」
アヤが笑顔のまま口を引き結ぶ。頬がじんわり汗ばんでいる。
俺としてはこの流れで抱きしめたかったのだが、それは我慢する。さすがにアヤが恥ずかしさで倒れてしまう。
「アヤぁ~! 寂しかったぞぉ~!」
カナッペが教室から出てきてアヤに抱きついた。他の女友だちも彼女を囲む。
石のように動かなくなってしまったアヤに助け舟を出してくれたのだろう。
もみくちゃにされる彼女を微笑ましく思いながら、俺は自分の席に戻った。
予鈴がなると、アヤたちも教室に入ってくる。
「あ、次移動じゃん!」
カナッペが声を上げる。次の授業は理科準備室で実験だ。
俺やアヤをチラチラ見ていたクラスメイトたちも、そそくさと教室を出ていく。
ゆったり教科書とノートを準備していると、いつの間にか人の姿はなくなっていた。
多分これも、直感の粋な計らいなのだろう。
なぜなら。
タッタッタと廊下から軽快な音が響いてくる。聞き慣れた幼馴染の足音だ。
「あ、やっぱりまだいた」
アヤが無人の教室に入ってくる。
「今行こうと思ってたところだよ」
「お昼寝ぼーやんしちゃってんのかと思った」
言いながら隣までやって来る。座っている俺と比べると、立っているアヤのほうが少しだけ高い。
……のだが、今日は特に高く見える。表情が大人びてきたからか、彼女からなんとなく余裕が漂っているからか。
そんなことを考えていると、アヤが教室のほうをチラと見た。
「あの、さ……ぼーやん」
「ん?」
「ありがと……こ、コンヤクユビワ」
なぜかロボットのような口調になるアヤが面白い。頬を染めて、入り口のほうを横目で気にしている様子は相変わらず可愛い。
大丈夫。この教室には当分誰も来ない。
「結婚指輪はもっと、ちゃんとしたのを選ぼう」
「う、ううん、これで十分……私の、宝物だよ」
「そっか」
それは嬉しい。
とはいえ結婚指輪はもっと奮発するつもりだが。
「駅で、もらってから……肌身離さず付けてる」
アヤは瞳を潤ませながらブラウスのボタンを外し始める。第二ボタンが外れると、白い谷間が覗く。
おもむろに中腰になると、豊満な谷間を見せつけてきた。
ピンク色のブラジャーが目に飛び込んでくる。あの六畳間で抱いたときに付けていたのと同じ柄だ。
その魅惑的な胸元に、細いシルバーネックレスにつながれた指輪がぶら下がっていた。
「チェーン、付けてくれたんだ」
うちの学校は指輪やピアスが禁止されているので、指輪ケースにネックレスチェーンを入れておいたのだ。
「付けるに決まってるし……お風呂でも外してないよ」
「俺もずっと付けてる」
「見てもいい?」
アヤが俺のワイシャツに手を伸ばし、第三ボタンまで外した。
開いた胸元に彼女の細指が触れる。ネックレスをなぞり、指輪をつついてくる。
「ぼーやんは私のものって証みたい」
アヤが嬉しそうにつぶやいた。
「……少しくすぐったいかな」
「あ、ごめん……」
指がパッと離れる。
俺は彼女の背中に手を回すと、ぐいっと引き寄せた。
「ひゃっ」
アヤの開いた谷間に顔を埋め、指輪に唇を重ねる。両頬が柔らかい圧迫に包まれる。
「お返し」
「なに、それ……んっ、だめっ……り、理科準備室、行かなきゃ」
「そうだね」
「誰か、来ちゃうっ……」
「誰も来ないよ」
あと十分くらいは誰も来ない。直感もそう言っている。
俺は、思った以上に嬉しかったらしい。
――ぼーやんは私のものって証みたい。
アヤの言葉が頭の中で反響している。
彼女の体の一部になった指輪に、もう一度キスをした。
「あんっ、もぉ……ぼーやんえっち過ぎっ……んッ、ぁ……」
真っ赤になった顔の火照りが引くまで、あと五分くらいは掛かる気がする。
それまでは、こうしてごまかしていよう。
ヒュウと冷たい風が吹いた。
窓が開いているのだろう、昨日の雨の名残りで湿った空気が流れ込んでくる。
これならすぐにクールダウンできそうだ。
「ヘンな気分、なっちゃうのっ……」
アヤが泣きそうな声でつぶやき、首に手を回してきた。ぎゅうっと包むように抱きしめられる。ご褒美のハグ、だろうか。
……これは、クールダウンまで少し時間が掛かるかもしれない。
俺もアヤの腰に手を回し、抱きしめ返す。
昼下がり。
誰もいない教室で。
俺たちは幸せな温もりに酔いしれた。