【書籍化】クラスで2番目に可愛いボーイッシュ幼馴染を、二泊三日の修学旅行で寝取って種付けセックス漬けにする話 作:月見ハク
キラキラと明滅する巨大なクリスマスツリーを、俺はぼーっと見上げていた。
吐いた息は白く、ダウンジャケットを着込んでいるのに冬の寒さが染みてくる。
今日は十二月二十四日、クリスマスイブだ。
イルミネーションが有名な屋外の商業施設で、俺は現場スタッフとして撮影に参加していた。お笑い芸人と何人かのモデルが、話題のデートスポットを生中継で紹介するテレビ特番だ。
見知ったスタッフもいれば、見たこともない大型機材を担いだテレビのスタッフもいる。午前の中継が終わったからか、張り詰めていた空気が少し和らいでいる。
俺はスマホを取り出し、アヤにメールを打った。
『撮影終わった。今から向かうね』
彼女は今日、リョウジ叔父さんの中華レストランで臨時バイトだ。
中華だからクリスマスとは関係ないのではと思ったが、意外に繁盛するらしく、今年は屋台を出してクリスマスチキンなるものを売るらしい。
しばらく待ってみても、アヤからの返信はない。どうやら相当に忙しいようだ。
図書室で彼女をイかせ、階段裏で口でしてもらってから、もう二週間が経つ。
最後にアヤとセックスをしたのは、中学校に忘れ物を届けに行った日だからもう一カ月以上前のことだ。
正直、日が経つにつれて慣れるかなとも思っていたが、全然そんなことはない。
毎日彼女を見るたびにムラムラするし、見ていなくても彼女の姿を想像するだけで股間がいきり立ってしまう。
階段裏でフェラをしてもらったときは、これで少しは収まってくれと祈ったがそんなことはなく、むしろそこからの日々は余計に彼女への情欲を募らせるばかりだった。
街の看板やポスターのアイドルの写真がアヤに見えてしまうほどには、俺は欲求不満のただ中にいる。
「あ、リュウジくんお疲れ。ケーキ食べる?」
商業施設のマネキンをぼんやり眺めていると、千春さんに声を掛けられた。
ハイブランドの白いコートを着こなした千春さんが、やけにニコニコ顔を浮かべている。その両手には甘そうなカップケーキが乗っていた。
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
「あ、もう彼女さんのところに行く?」
「はい、そのつもりです」
「そっかそっか」
千春さんが片手に持ったマフィンを口に運びながら、納得したようにうなずく。
「どっか行くの?」
「いえ、特には決めてないです」
「ふーん……あ、じゃあ定番だけどイルミネーションとかどう? リュウジくん家から電車でちょっと行ったところの駅前で、けっこう派手めなのやってたと思うよ」
「そうなんですか」
ナチュラルに家の場所を知っているのが気になったが、そういえば千春さんは姉貴と仲が良かった。
二個目のカップケーキを頬張りながら、千春さんが真面目な顔になる。
「ところでさ、専属のこと……そろそろ考えてくれたかな?」
……正直、まだ悩んでいた。
千春さんは売れっ子だ。モデルとして活躍しているのに、テレビのバラエティにも精力的に出るほど貪欲だったりもする。
専属になれば、間違いなく稼ぎも上がるし安定するだろう。
アヤと二人、大学に行きながら家庭を築けるくらいには。
でも、どうにも彼女の顔が浮かんでしまう。
中学校の教室や図書室で見せた、あの不安そうな無表情を。
――断るな。
直感が強めの警告を発する。
分かってるよ。
今、アヤが多少やきもちを妬いてしまうからといって、断っていい話でないことくらいは。
いや、むしろ直感としては彼女がやきもちを妬いたほうが……。
そのとき、キーンと耳鳴りがした。
目の前に映像が映し出される。いつも直感が見せてくる、未来の記憶だ。
――見慣れたアパートの玄関。
そこは数年後、俺たちが同棲している部屋だ。
「おかえり~。今日は夕飯食べてく?」
茶髪のロングヘア―のアヤが俺を出迎えている。
「ああごめん、またすぐ現場行かなきゃ」
玄関での立ち話。これもいつもの光景だ。
「アヤ、両立たいへんじゃない?」
「ぼーやんに比べたらヘノカッパだよ」
「ヘノカッパ? ああ屁の河童か」
「そう、カッパカッパ。さ、仕事間に合わなくなるよ、行った行った。今日も千春さんの現場なんでしょ?」
「うん」
「千春さんも倒れなきゃいいけど……じゃあ、頑張ってね」
「うん、今日は遅くならないと思う」
いつものように、いってきますのキスをする。
「……いってらっしゃい、ぼーやん」
「いってきます。愛してるよ」
微笑むアヤを残し、玄関の扉が閉まっていく――。
そこで、映像は終わった。
なるほど。
俺たちは千春さんのおかげで、数年後もささやかな同棲生活を送れていたのか。
俺が迷っているから、しびれを切らした直感がクリアに見せてきたのだろう。
「リュウジくん?」
いつの間にか近寄ってきていた千春さんが、俺の顔を覗き込む。
「ああ、すみません。ええと……返事はもう少し先でもいいですか?」
「どうして?」
千春さんの瞳に冷たいものが宿った気がした。
「今、受験勉強の真っただ中なんです。将来を左右する話だと思うので、できれば合格発表の後だと助かります」
まっすぐ千春さんを見つめると、その異常に整った顔がくしゃりと歪んだ。
「……ごめんね」
「え?」
「ごめん、カエデさんから受験のこと聞いてたのに、ついこっちの都合で言っちゃってたよ。早く返事がほしくて焦っちゃったみたい」
「はぁ」
「リュウジくん大人びてるけど学生だもんね! うん、そうだよ、そっちを優先させなきゃ」
「すみません」
「いやこっちこそだよ! ごめんね……あっ、ケーキいる?」
「いえ、大丈夫です」
少しあたふたする千春さんに、ほっと胸を撫で下ろす。
けっこう失礼な先延ばしをしたかと思ったが、怒ってはいないようだ。
「結果分かるのっていつ?」
「二月十二日です」
「お、じゃあそのときになったら速攻で返事貰ってもいい? 結果次第じゃアレかもだけど、こっちもプロとしてあまり待てないから」
「わかりました」
「二月十二かー、じゃあバレンタインデー……はマズいか。その前日に聞きに行くよ」
聞きに……くる? 直接?
「リュウジーそろそろ行ったらー?」
姉貴が衣装を回収しながら声を掛けてきた。
「すみません、俺そろそろ」
「ああそうだよねっ、引き留めちゃってごめん。彼女さんのバイト先の近くまで車で送ろうか?」
「いえ、大丈夫です」
「そっかそっか」
ニコニコ顔をする千春さんに俺は頭を下げ、早足で現場を跡にした。
***
スマホで話題のイルミネーションスポットを調べていると、あっという間に最寄り駅に着いた。
ここから三十分ほど歩けばアヤのバイト先だ。
時間はまだ午後と夕方の間。
それなのに冬の空にはもう赤みが差し始めていた。
寒さで手がかじかんできたので、店の近くにある自販機でホットココアを買う。
両手で包み手のひらを温めていると、隣の自販機に若い大学生くらいの男二人組がやってきた。
「――なぁ、あの売り子の女の子、めっちゃ可愛くなかった?」
「あーあのサンタの子な。ヤバかったな」
なんとなく気になり、横目で彼らを見る。
二人とも銀紙の持ち手が付いたチキンを持っていた。
やはり……アヤのことを言っているようだ。
少し警戒しながら彼らの雑談に聞き耳を立てる。
「俺めっちゃタイプだわ」
「いやまあ、小柄で細くて巨乳で、おまけに可愛いって……いるんだなああいう子」
「それだけじゃなくてさ、調子乗ってもう一本買ったらめっちゃ笑ってお礼言ってくれたじゃん」
「あー確かにあの笑顔もヤバかった」
「元気っ娘っての? ヤバいはあれ……惚れたかも」
「次あの店行ったとき声かけてみる? 大学からも近いし」
「彼氏いんのかなぁ……」
「いるんじゃね? あんだけ可愛けりゃ……あーでも彼氏いたらイブにバイトするかな?」
「やば、可能性出てきたかも。ちょい今から作戦会議な」
「イブにする話じゃねーけどな……」
男たちがチキンをかじりながら店とは反対方向へ去っていく。
「……ふぅ」
思わずため息が漏れる。
ちょっと警戒し過ぎだろうか。
いや、やはりリョウジさんの店のバイトはもう行かせないほうがいい。
そのとき、ポケットの中でスマホが振動した。
取り出すとアヤからのメールが表示されている。
『ごめん上がる時間遅くなるかも』
どうやら相当に繁盛しているらしい。
その半分は彼女のせいでは、とくだらないことを考えてしまう。
店に歩きながら、痛感する。
最近、アヤの魅力がやばい。
付き合い始めてからうっすらとは思っていた。
だが、ここ最近は色気というか艶っぽさが増した気がする。
普段はすっぴんなのに、ドキリとするほど綺麗に見える瞬間がある。
この冬、俺との情事をずっと我慢しているせいだろうか。
彼女も俺を見てムラムラしていてくれたら……そんな自分本位の願望さえ浮かんでしまう。
俺がアヤに骨抜きだからそう見えてしまうのではとも思うが、以前、手錠をはめた彼女に注がれていた男子たちの視線は尋常ではなかった。
「急ぐか」
自然と駆け足になる。
だんだんとリョウジさんの店が見えてきた。
相変わらずオシャレな照明が看板を照らしている。
店先の駐車場に簡素な屋台が出ていて、そこに……美少女サンタがいた。
「あ、ぼーやん!」
すぐに気づいたアヤが、屋台からひょこっと顔を出す。
ついでに、集まっていた大学生らしきお客さんたちも一斉に俺を見た。
屋台に近寄ると、彼女も他のバイトに売り子を代わってもらいこちらに来る。
「お仕事早かったね」
「うっ……」
ふんわりと微笑むアヤに、思わず息をのんでしまった。
彼女はいつもの白いコックコートに黒いダウンジャケットという姿だ。
茶髪のショートカットを後ろで結び、その上に赤と白のサンタの帽子を被っている。
サンタ要素はそこだけなのにいつもと全然違う感じがして、そのあまりの破壊力に俺は硬直してしまった。
「ちょっと、うっ……てなによー」
アヤがいぶかしむように覗き込んでくる。
サンタ帽子でそれをやられると可愛すぎて言葉を失う。
前髪が帽子で隠れていて、彼女本来の整った目鼻立ちが強調されているから余計に見惚れてしまうのだろう。
「いや、ほっぺた冷たそうだなと思って」
「別に赤くなってないし」
赤いとは言っていないのだが。
アヤは、頬がすぐ赤くなってしまうのをよく気にする。彼女のコンプレックスの一つらしい。
そんなの可愛い要素でしかないと思うが、それを言うときっと怒るので伝えたことはない。
「冷たそうって言ったんだよ、ほら」
寒さでピンク色に染まった彼女の頬に、温めておいた手のひらを添える。
お客さんたちの視線を感じるが無視だ。むしろ見せつける必要があるだろう。
「おわっ、ぼーやんの手あったか~」
驚いて目を見開き、すぐに心地良さそうに顔をふにゃりとするアヤが面白い。
本当にこの子は表情がころころと変わる。その顔が、今度は申し訳なさそうなものに変わった。
「ごめんね、まだちょっと上がれそうにないんだ」
「いいよ、待ってるから。というか売り子代ろうか? 外にずっといたんじゃ冷えるでしょ」
お客さんたちから鋭い視線を感じるが、それも無視する。
「んふ、ぼーやんもこれ被りたいの?」
アヤが自分のサンタ帽子を指差す。
「ああ、すごい被りたい」
「ぷふっ」
俺が被っている姿を想像したのだろう。彼女が変な顔で吹き出す。
でもすぐに、にっこりと笑った。
「ぼーやんありがと。でも、もうちょっとで完売だから、せっかくなら売り切りたいんだ。ぼーやんこそお店で待ってて」
「……わかった」
渋々、お店の中へ向かう。
まあアヤだけ交代することになったら、他のバイトの子にも悪いだろうし。
仕方がないので、店の中から彼女に変な虫が寄り付かないよう見張ることにする。
「おーぼーやん、久しぶりだな!」
「久しぶりです」
リョウジさんが厨房から大きな声を張り上げる。俺にニカッといい笑顔を送りつつも、フライパンを振っている。すごく忙しそうだ。
挨拶もそこそこに、俺は自分が常連だったころにいつも座っていた特等席を探す。
「あー悪いな! 今日は確保できなかったんだ」
リョウジさんがまたも叫んだ。
「俺も手伝いましょうか?」
「頼む! 食器洗ってくれ」
俺は素早く更衣室に向かうと一番大きいコックコートに着替え、厨房へと向かった。
「――いやー助かったよ! ありがとなぼーやん」
「いえ、お客さんも来なくなりましたね」
「ああ、クリスマスだからな」
店の時計を見ると、もう十九時を過ぎていた。
「屋台も盛況でしたね」
「だな。間違いなくアヤちゃんのおかげだわ」
店先では、すでにチキンを売り切ったアヤたちが屋台の片づけを進めている。
「というか悪かったな。今日ぼーやんたちデートなんだろ?」
「知ってたんですか」
付き合っていることはアヤの両親にしか伝えていないが、誰かから聞いたのだろうか。
「知るもなにも、ぼーやんたち見てたら分かるよ。今日だってアヤちゃん、ぼーやんが来るからって屋台の売り子に手を上げたんだぞ」
「え? それどういう……」
「まあ恋人の顔は一秒でも早く見たい、的なアレなんだろ。健気だよな」
「はぁ」
だったら店の中にいたほうが、長い時間お互いを見られるのはと思うが。
「ぼーやんも顔が赤くなることがあるんだな」
「まあ、そうですね」
からかうようなリョウジさんの言葉を適当にかわす。
こういうところはアヤと性格が似ている。
「で、二人は結婚式いつよ?」
またもからかうような言い方に、俺はつい笑ってしまいそうになった。
小学生のころ、よくアヤの自転車でこの店に来て。
リョウジさんに同じようにからかわれた。
そのときは、俺と彼女は気まずい苦笑いを浮かべるだけだったが。
「落ち着いたら、挙げたいと思ってます」
「そうか」
リョウジさんは驚くでもからかうでもなく、ただしみじみといった声で答えた。
「アヤちゃんのこと、頼むな」
「はい」
「いやすまん、ぼーやんに任せておけば大丈夫か。今日だってぼーやんが迎えに来れないんなら、俺も臨時バイトお願いするつもりなかったしな」
「そうなんですか」
「あ、そうだ、ちょいと待ってな!」
大きい声で叫んだリョウジさんが、オーブンからチキンを二本取り出した。
「これ、クリスマスプレゼントな。包んでおくから後で二人で食べてくれ」
「ありがとうございます」
俺はお礼を言うと、屋台の片づけを手伝うために外へ出た。
スマホの時計が、二十時を示す。
俺は店先で、アヤが出てくるのを待っていた。
リョウジさんは早々に店を閉めることにしたらしく、バイトの子たちも次々に帰っていく。
なんとなく駐車場にたたずむ俺に視線が注がれている気がするが、無視だ。
カランと店の扉の鈴が鳴り、アヤが出てきた。
「ごめんごめんっ、お待たせ~!」
黒いダウンジャケットの中に淡いオレンジ色のセーターを着込み、下はジーンズという格好だ。
いつもの彼女らしい格好だが、その美少女顔にはほんのりと薄化粧が乗っている。
塗ったばかりだろうリップが唇を潤わせていて、ハッとするほどの色気を漂わせていた。
そして頭には、なぜかサンタの帽子を乗っけている。
「それ、まだ被ってたんだ」
「ふふ、クリスマスプレゼントだって」
「叔父さんから?」
「うん。あ、ぼーやんも後で被ってみる?」
「ああ、後でね」
言いながら、二人で夜の道を歩き出す。
「ごめん、すっかり遅くなっちゃったね……」
「いいよ。俺も久しぶりにリョウジさんの顔見れたし、アヤのサンタコスプレも見れたし」
「こっ……」
アヤがニワトリのような鳴き声を発する。
すると不意に、彼女が腕を絡めてきた。
俺の腕と体の間に手を滑り込ませ、ぎゅっとしがみつくような感じだ。
必然的にアヤの豊満なふくらみが腕に当たり、凶悪な柔らかさが脳内を支配する。
「ぼ、ぼーやんは優しいな~」
彼女が上ずった声で言う。これはすごく照れているときの声色だ。
思えば、アヤから腕を組んできたのは初めてだ。
ふにゅんとした胸の感触も相まって、俺は不覚にも股間を昂らせてしまった。
彼女を見れば、その瞳も恥ずかしげに足下を見ている。
――ホテルに連れ込め。
――抱き潰せ。
この一カ月、何度も発せられてきた直感の声が響く。
「ふぅ……」
俺はもう何十回と繰り返してきた深呼吸で衝動を落ち着かせると、その場で立ち止まった。
「ぼーやん?」
「アヤ、大事な話がある」
「ん……なに?」
サンタ帽子を被ったアヤが、きょとんとした顔で見上げてくる。
この不穏な切り出し方で、ちっとも不安そうな顔をしない彼女が愛おしい。すごく信頼されているのを実感する。
もしかしたら少しの不安を感じても、それを俺に見せないように振る舞っているのかもしれない。
「俺、千春さんの専属スタッフにならないかって誘われてるんだ」
「……マジ?」
それは驚くというより疑っているという感じの聞き方だった。
「マジだよ。姉貴にも先に声掛けてるんだって」
「マジ、なんだ……。それって多分、出世ってやつだよね」
「うん、そんな感じだと思う」
「やるじゃん……」
彼女が組んだ腕をぎゅっと握ってきた。
熱いくらいのアヤの体温から、大量の思いが流れ込んでくる。
でも俺は、それをシャットアウトした。
直感の力に頼らなくても分かる。
今の彼女の心中では、嫉妬心と、そんな思いを抱いてしまう自分への嫌悪感がせめぎ合っているのだ。それが痛いほど伝わってくる。
俺は、アヤの返事を待つ。
渦巻く思いの果てに、彼女が下す決断を。
「私は、いいと思うよ」
アヤがにっこりと笑った。
「どうしてそう思う?」
「だって大出世じゃん! 千春さんってすごい売れっ子だから、きっとたくさん仕事増えるよ。ファッションショーとかテレビとか。ぼーやん稼ぎたいって言ってたじゃん」
「そうだね」
「それにさ、ぼーやんの力を認めてくれたってことでしょ? 私そういう世界には全然詳しくないけど、多分こういうチャンスって滅多にないことだと思うしさ」
アヤが爽やかな笑顔でまくしたてる。少し興奮気味な演技も混ぜている気がする。
きっと彼女は、自分が嫌だと言ったら俺が断ってしまうのを分かっているのだろう。
だから嫌な気持ちを微塵も見せずに、心から祝福しようとしてくれている。
アヤは、本当に強くなった。
だから俺も、もっと強くならないと。
「アヤ、ありがとう。そうやって背中を押してもらえると助かるよ」
「ふふっ、任せてよ。背中ならいくらでも押すし」
きっと恩返しのつもりなのだろう。
彼女は、俺に何度も背中を押してもらったと思っているから。
実際に腹をくくって、勇気を出して壁を乗り越えたのはいつもアヤ自身なのに。
……俺も腹をくくろう。
ここからは直感の力を頼れない。
俺一人の力だけで未来を変える闘いに臨むことになる。
でもアヤは、直感の力なんかなくてもここまで乗り越えてきたんだ。
俺が出来なきゃ、格好がつかない。
「アヤ」
「ん?」
「俺、一日二回はアヤを抱きたい」
「わぇ!? ……し、知ってる……けど」
「前にさ、合格発表まではそういうことを控えようって言ったじゃない?」
「……うん。ケジメ……だよね?」
「試験が終わってからは、会える時間も少なくなると思う」
「ぇ……」
彼女が小さくつぶやいた。
俺の言っている意味がよく分からないという顔で、さらにつぶやく。
「どうして?」
「どうしても挑戦しないといけないことがあるんだ。そのためには、もっと仕事に時間を使う必要がある。平日も、放課後はほとんど会えなくなると思う。本当に自分勝手でごめん」
自分で言っていても呆れてしまう。
どこまで俺は、彼女を動揺させれば気が済むのだろう。
アヤに惚れ抜いているなら彼女との時間も全力で確保するべきだ。一時的とはいえ仕事のほうを優先させるなんてありえない。
普通だったら別れを切り出されてもおかしくない。
でもきっと。
これから俺がする挑戦は一筋縄ではいかない。
アヤと甘い時間を過ごせば過ごすほど、俺は間違いなくその快楽に甘えてしまう。
そんなに頑張らなくてもいい。運命に身を委ねていればこんなに幸せな未来が待っているのだからと……そうして挑戦を諦めてしまうだろう。
「それは、すごく大事なこと……?」
二人の未来にとって何よりも大事なことだ。
でもそんなことを言えば、アヤは無駄に気負ってしまうだろう。
そして、少しがっかりさせてしまう気もする。
「うん、俺にとってとても大事なことなんだ」
「……なら、うん……平気だよ。私も、が……我慢するし」
「さっそく決心が揺らぎそうだよ」
「なんでよっ」
彼女の口からこんなに可愛く我慢するなんて言われて、襲わずにいられる男がこの世界にどれほどいるのだろうか。
「アヤ、ありがとう」
いろいろと聞かないでくれて。
黙って背中を押してくれて。
「ううん、私ぼーやん信じてるし」
「合格発表過ぎたら、死ぬほど抱くから」
「死ぬほどは、ちょっと……でも、うん……お願いします……」
恥ずかしそうに目を伏せる彼女を死ぬほど抱きたい。今すぐ。
俺はもう何度目かになる深呼吸をして、ゆっくりと歩きだす。
冬の空気は冷え切っていて、今にも雪が降りそうだ。
空が透き通っていて、星がきらきらと瞬いている。
「ねぇ」
「ん?」
「このあと、どうしよっか?」
そういえば、デートプランを決め切れていなかった。
スマホの時計を見れば、いつの間にか二十時半だ。
「綺麗なところに行くつもりだよ」
などと言いつつ、頭の中で今からでも間に合いそうなデートスポットを整理する。
「あ、ぼーやん決めてたんだ。イルミネーションとか?」
イルミネーションか。
そういえば千春さんが電車でちょっと行った駅前に、派手なイルミネーションがあると言っていた。
ほんのりと期待のにじむアヤの顔を見る。
なんとなく、千春さんの勧めた場所に行ってはいけないような気がした。
「……久々に、ゴージャスタウンに行ってみようか」
「あ、いいね!」
アヤが花の咲いたような笑顔を浮かべる。
俺たちは腕を組んだまま、駅とは反対方向へ歩いた。