世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話 作:白髪ロング娘スキー
第二の課題を達成してから3日、屋敷は男に女にと忙しなく走り回る音で
手には一様に紙やら箱やらが持たれており、置き場所を指示する者の声に従って配置が行われている。指示の内容を聞く限り、どうやら何かのイベントの準備を行っているようだ。
試しに手伝いを申し出てみると、お嬢様を働かせるなどとんでもないという声以外にも、今日の主役なんですから! という言葉が聞けた。
主役ってなんだ? と絹代に聞いてみれば、なんと今日は輝夜の誕生日なのだとか。
そうと分かれば手伝う様な事はしない。
正直、俺は輝夜ではないし、誕生日パーティーを開かれても困るという思いはある。だが契約の一つに輝夜とバレない事があるので、不参加を決め込むことは出来ない。
それに俺はそこまで空気を読めない男という訳ではない。
という訳で、手が空いた俺は起きては気絶を繰り返しながら、いつも通り具象化した俺との特訓を行っていた。
無表情のまま少しだけ唇を釣り上げてこちらを眺めている俺と向き合い、隙を窺いあう。
隙が出来る瞬間を待ち、待ち……具象化した俺が瞬きをした瞬間に地を蹴った。途端、見てもいないのにそれに合わせて俺の頭に直撃するように放たれる大振りの右。
風を切って振るわれるそれを腰を屈めることで避け、膝のバネを活かして顎への上段廻し蹴りを行う。
軽く首を傾ける事で避けられはしたものの、廻し蹴りによって生まれた回転に身を任せて裏拳鞭打。
皮膚であればどこに当たろうと大ダメージ必死のそれをグローブの丸みで上へと流され、振るわれるのは掬い上げるようなアッパー。
咄嗟に足を乗せて上へと振るわれるままに跳び、天井に着地して衝撃を吸収。即座に天井を蹴って加速し、全体重を乗せた踵落としを……
「輝夜嬢!」
「!」
振るう事無くゆったりと床に足をついて全ての勢いを霧散させた。相対していた具象体は俺の後ろで残念そうに顔を顰め、空中に溶けていく。
それを見送ってから、声を掛けてきた者へと顔を向けた。
「なにかしら、翁。見ての通りスパーリング中だったのだけど」
どうぞ、とタオルを差し出してくる絹代に礼を言って受け取る。それで汗を拭けば、嗅いでもいないのに薔薇の様な匂いが香りだす。
匂いが無いだけならまだしも、何故汗から植物の様な匂いがするのか。
女は不思議だ。
「会場の準備が出来たので呼びに来たのですよ」
「そう、報告ありがとう。シャワーを浴びたらそっちに向かうわ」
「かしこまりました。……して、今のは?」
具象体が消えた辺りに視線をやり、僅かに眉を顰める翁。
そう言えば翁にはまだ見せていなかったかと思いつつ、特に隠す事でもないとそのまま話す。
「限りなく現実に近付けたシャドースパーリングよ」
「お相手は?」
「……私が一番強いと思う者よ」
「……そうでございますか」
散々嫌っていた
とはいえ、圧倒的な実力者といえば真っ先に浮かんでくるのが
自分の眉が寄っているのを自覚しつつ、翁にそれを伝えて道場にある備え付けのシャワールームへと向かった。
——— ———
「汗は流せたけど、やっぱりシャンプーとかしたいよなぁ……設置してくれないかなぁ」
「今度から洗髪剤の類を設置するよう進言してみましょうか?」
「んー、言うだけ言ってみてくれ。結局風呂があるし重要度は低い」
「かしこまりました」
道場備え付けのシャワー室にはシャンプーなどが置かれていない。
汗を流してサッパリはしたが、やはりシャンプーを使ったか使っていないかの差は大きい。素材が良いから誤魔化されているものの、少し触るだけで髪にしっとり感が足りていないのが分かる。
これは寝る前に風呂に入り直す必要がありそうだな。
そんな雑談をしながら縁側を歩く俺と絹代。服装は動きやすいスポーツウェアと
縁側から見える中庭には等間隔に赤い生誕祭と書かれた光るランタン*1が吊り下げられており、夕方から夜に変わりかけの暗い視界を明るく照らしている。
「あれは?」
辺りを見回してみれば、所々でなにやらニンジャ達がタコ焼きやわたあめなる字が書かれた小さな店を開いているのが見えた。
物によって値段は違う様で、300円やら500円と書かれた札が置かれている。
……300円と500円って何ドルくらいなんだ? 札には小さく【輝夜様は無料】と書かれているため、金を払う必要は無いのだろうが……日本の金銭事情が少し気になる。
「輝夜様は体が弱く外に出れないので、せめて誕生日くらいは祭りの気分を味わってもらおうと幹部達が始めた出店のようなものです。今では見習い達が小遣い稼ぎで開いているものもありますね。幹部達との挨拶が終わったら回ってみましょうか」
「ああ、中々に楽しそうだ」
豪邸らしく庭はかなり広いが、その庭すら埋め尽くしそうな程に開かれている出店。
自分達が楽しむためというのも多少はあるのだろうが、それでも輝夜一人の為にここまでするのか。もはや扱いが一国の王女とかそのレベルだな。
暗殺者云々は兎も角として、性格という意味では男衆は良い奴らばっかなんだよなぁ。絹代との仲を邪推してペニスバンド贈り付けて来るアホもいるけど。
なんでクソ野郎は一人だけクソ野郎なんだか。
「あ、あそこですよ輝夜様」
絹代が指を指したその先には、第一の課題であるピッグマン処刑の時と似たような、白い幕が一面に張られた陣が庭の片隅に設営されていた。
陣には既に男衆が左右共に等間隔に俯きながら並んで座っており、その間には道を作る様にして広く隙間が開けられている。
薄暗い中、焼けた木の弾ける音を鳴らして篝火が辺りを照らしていた。
「絹代、絹代! どうすればいいんだこれ!?」
「奥の開いている席、あそこです。見えますか? あそこにこちらを向いて座るのです」
絹代が指差すその先には、誰も座っていない座布団が置かれていた。
その隣では、クソ野郎が男衆と同じように横を向いて座っている。そこで漸く気付いたが、誰も正面を向いていない。皆が皆、揃って横を向いて座っている。
あくまで主役は輝夜だから、正面を向くのも輝夜だけ、という意味だろうか。
「あそこにはどうやって行けばいいんだ?」
「真ん中の道をお歩き下さい。一歩一歩お淑やかに、体を前後僅かに揺らすようにしてゆっくりと」
言われた通り、真ん中に開けられた道をしずしずと歩く。
手は体の前に組むようにして置き、踏み出す足のつま先を内側に。まるで日本の八の漢字を書くようにして内側から小さく足を踏み出す。
絹代曰く、これはオイランの歩き方の一つで内八文字というそうだ。
本来これは
オイランの歩き方は3年近く学ぶ必要があるのでは? と聞くと、それは外八文字という歩き方の方なのだとか。
内八文字は元々動きが小さくお淑やかで美しい歩き方のため、ただ歩き方を学ぶだけで終わる。
しかし外八文字は外側から大きく足を踏み出すために派手な印象を与えてしまい、歩き方を学んだだけのヒヨッコではだらしなく見えてしまう。
それを派手な印象を与えつつも、粛々とお淑やかに美しく魅せられるようになるために、3年近くの期間がいるのだとか。
まぁそんな事はどうでもいい。
席に辿り着くと同時にゆっくりと振り返り、膝を畳んで正座をする。
それと同時に男衆が一斉に懐から小さな紐の付いた小包を取り出した。
紐を掴み、顔を見合わせてから一斉にそれを引く。瞬間、空気の弾ける様な音と同時に色とりどりの紐が小包から放たれた。
「「「お嬢! 誕生日おめでとうございますッ!!」」」
「……ありがとう、貴方達」
正直複雑だ。俺は輝夜ではなく、この男衆も俺が輝夜ではないという事を知らないのだから。もし知られれば即刻、俺は嬲り殺しにされるだろう。
いや、輝夜の体が死ぬのは困るから、再度体を入れ替える手帳を使って輝夜と入れ替わるまで監禁程度か。
どちらにせよ、契約の成否に関係なく俺の自由は無くなるだろう。
「こちら、私めがご用意させて頂いた贈り物にございます。御受取下さい」
そう言って立派な包装が施された小さな箱を差し出してくる男。
こいつは……ペニスバンドを贈り付けてきたアホだったな。
名前は確か
一体今回は何を買ってきたのやら。
「……ありがとう、開けても?」
「ええ、どうぞ」
立派な包装を破らぬように丁寧に解き、内心戦々恐々としながら箱の蓋を開けた。
……意外にも、中には何の変哲もない黒いリボンの付いたヘアゴムが入っていた。
リボンは最初から結ばれており、わざわざ結ばずともヘアゴムを付けるだけで、髪に綺麗なリボンのアクセントが出来る良い品であった。
ヘアゴムの部分も太くてモコモコしており手触りが良い。これならば髪を結ぶ際に変に髪が引っ張られて痛くなるといった事も無いだろう。
「着けてみても?」
「ええ!」
フンスフンスと鼻息荒く応える左之助。
そんな彼に見せつけるようにして髪を片手で纏め、ヘアゴムで縛った。試しに軽く首を振るってみれば、揺れる髪に加えて柔らかいリボンの感触が時折首元を掠めた。
うん、良いね。
「似合うかしら?」
「これ以上の無い程に」
「そう……ありがとう、左之助」
「!?!?!? い、いま私めの名を……」
「どけどけ、次は俺だ。お嬢、俺からの贈り物です。どうぞお受け取り下さい」
大柄な男が涙を浮かべ始めた左之助を片手で退かし、同じく包装に包まれた箱をこちらへと差し出してくる。
それを受け取り、包装を解いていく。見れば大柄な男の後ろには男衆が並んでおり、俺にプレゼントを渡せる時を待っていた。
……気持ちは嬉しいが、時間が掛かりそうだな。
——— ———
「大事にするわね。ありがとう、権兵衛」
「こちらこそッッッ!! うぅ……」
最後の一人が自身の席へと戻っていく。
気付けば男衆は一人余さず目に涙を浮かべており、とても嬉しそうだ。名前を呼ばれただけでこれか。
俺は輝夜ではない。そのように喜ばれても、むしろ心が痛む。
だがそれでも、俺のした事で彼らが喜んでくれているのなら、個人的には心温まるものがある。
輝夜、お前ちゃんと愛されてるよ。
「それじゃあ、最後に僕からのプレゼントをあげよう」
遂に来やがった。温まった心が瞬時に冷えたのを感じる。
案外普通のプレゼントで終わるかもしれない。何事も無く終わるかもしれない。
だが、相手はあのクソ野郎。そんな訳が無い。コイツは必ず何かをやらかす。これは予想じゃない、確信だ。
事実、俺の斜め前に座っているクソ野郎を見れば、奴はニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべていた。
「あらァ、何をくれるのかしら?」
「良い対戦相手を」
そう言ってクソ野郎が指を鳴らした。途端、陣の外から足音が響いてくる。
足音に加えて聞こえて来るのは僅かに擦れ合う金属音。
武装しているな、それも大量に。
足音の方向へと警戒を向け……そして垂れ幕を押しのけて陣へと入って来た男を見て、俺は思わず目を見開いていた。
確かにこの場にはいなかった。だが、それは飯の場でも彼らだけがいるように、幹部級の男衆だけがこの陣に入って良いという意味なのだと思っていたのだ。
「翁……?」
全身から空気が歪んで見える程の闘志で溢れたその男。翁は無表情のまま、こちらを見つめている。
どういう事かとクソ野郎を見れば、奴は先ほどと変わらず、胡坐を掻いて厭らしい笑みを浮かべていた。
「相手は完全武装かつ全力の爺や。単純な一個人の戦闘力という意味で言えば、ウチの最高戦力だ」
「勝ったら第3の課題は達成した事にしてあげるよ。負けたとしても特に何もない」
「さぁ、俺と爺やからの誕生日プレゼントだ。存分に楽しんでくれ」
完全武装翁=2.5親友