世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話 作:白髪ロング娘スキー
アクタージュの続きもまた書きたいっすねェ……
私が……なんか未だに慣れないな。私と言っていたのはあくまでお堅い場で、それも口のみだったし。なんなら輝夜の体に憑依してからも、心の中では一人称は俺だったし。
まぁ兎も角、あれ以来私は自分の事を輝夜と名乗るようになり、一人称を内外問わず私に変えた。
それによって、私には多少の変化が起きていた。今までは3日に一度くらいの頻度でネガティブ思考になっていたのが、十日が経った今になっても一度も無いのだ。
絹代にも少し険が取れ、焦りが無くなった様に見えると言われた。それによって、多少仕草が女らしくなったようにも見えると言われた時は反応に困ったが。
恐らくは輝夜を演じる事を止めた事で、少し気持ちに余裕が出来たのだろう。実際私も少し肩の荷が降りたような感覚があった。
あと、自分は輝夜であり、今はもう寂しがりの元世界最強の男ではないのだと認識出来たのも大きいと思われる。
それでも性自認が男である事に変わりは無いけどな。輝夜として生きる=女としての幸せを味わいたいではないのだ。
まぁそんなこんなで、私が輝夜となってから一週間。
今はクソ野郎に呼び出され、クソ野郎の部屋へと向かっている最中だ。
何の用で呼んだのかは大体想像がついている。第四の課題、それの用意が出来たのだろう。
クソ野郎の部屋の襖を開け、中に入る。中では座布団に胡坐を掻いて肘掛けに肘をついたクソ野郎がいた。何やらニヤニヤと笑っているのが心底鬱陶しい。
長々と会話をする気も起きない。早々に要件を尋ねる。
「で、第四の課題の準備が出来たんでしょ? 相手は誰?」
「その前にいいかい?」
「なによ」
「僕の前でもその演技を続けるんだねェ? 他に人はいないよ~?」
ニヤニヤと笑いながらそう言ってくるクソ野郎。
ぶん殴りたい。ぶっ殺したい。もう演技じゃねっつの。
「まぁどうせ元の体には戻れないしね。正式に輝夜として生きていく事にしたのよ」
「ふぅ~ん、受け入れたわけだ」
「受け入れたのはあくまで輝夜になる事だけよ。課題を達成し終えたらアンタを殺す事に変わりは無いから」
何処か満足そうにそう呟くクソ野郎。
何を考えているのかは知らないが、取り敢えずそれに対して調子に乗んなカスと返した。
するとクソ野郎は小さくクスクスと笑ってから、懐から一枚の紙を取り出す。
「はいコレ。今回のターゲットね」
渡された紙を受け取り、内容を確認する。
名は烈永周、歳は16。その隣に貼られた写真には
日課は中国拳法の修行。好物は不明、よく苦い顔をしながら薬膳料理を食べているらしい。
今回は師匠である老人の付き添いで日本へとやってきているのだそうな。
そこまで読んで、読み進めていた目を止めた。顔を上げ、クソ野郎を睨みつける。
「……ねぇ、子供なのだけれど」
「子供だねぇ」
「私に子供を殺せと?」
「悪人だよ?」
「……一応、何をしてきたのかを聞きましょうか」
何でも、この子は黒龍江省白林寺という寺院所属で、天才の名を意のままにしているらしい。
巨大な黒曜石を素手や素足で削る難関訓練すらをも若い身空で熟し、中国4000年の歴史を一人で4001年、もしくはその更に先へと進めかねない程の稀代の大物とか。
中国武術界における高位の称号である「海王」の次期候補へと推薦する声も多いとのこと。
「……悪人要素が無いのだけど。むしろいい子じゃない。闘ってみたいわね」
「その名誉が裏取引で作られたものだとしても? それが将来ライバルになりかねない人物の未来を非道な手段で潰してきた結果だとしても? 彼に格闘家として潰された者の数は100じゃきかないよ」
「……つまり」
「腹黒って事さ。隠す知恵がある分、典型的な悪人よりも更に厄介だね。下手に実力があるから手が付けられない。そこで来たのが今回のこの依頼」
この烈永周に非道な手段で未来を潰された者達が、復讐をしようとしたという事か。
何故中国の暗殺者に依頼をしなかったのか。本当にこの子がクソ野郎の言う通りの腹黒なのか。
色々と疑問はあるが、今この時点では真実までは確かめようがない。
まぁ本当に悪人かどうかは会った時の反応で分かるだろう。
「いいわ、行ってきてあげる」
「なら良かった。あ、今日は日本の香港料理が食べたいってこの店に行くらしいよ。ついでに夜ご飯そこで食べてくれば?」
そう言って追加で紙の束を渡してくるクソ野郎。見れば紙の束は店の情報サイトを印刷したもののようだった。色々と店の情報が記載されている。
店の名前には王翠軒と書かれており、それなりに有名な香港料理店らしい。
自慢は一口噛めば、それだけで口の中を満たすほどに肉汁のスープがたっぷりと詰まった
「……おうすいけん?」
「ワンスイシェンね」
「このしょうろんぽおはどれくらいで食べられるの? 日本の金銭相場が分からないのだけれど」
「第二課題の時みたいに傍に護衛は付けてるから、そいつらに払ってもらえばいいよ*1」
そりゃあ楽でいいや。ついでにその時護衛に金銭相場も聞こう。
今まで必要が無かったから聞いてなかったけど、流石に何時までも知らないままってのもあれだし。
「それじゃあ行ってくるわ」
「あ、服は前のドレスね」
「チッ」
——— ———
「ふむ……日本の香港料理も存外馬鹿に出来んのう烈や」
「ええ、郭老師。例えばこの
烈はそこで言葉を切り、箸で籠ではなくスープに浸っている小籠包をそっと抓んだ。そして小皿に用意した薬味の混ざったタレに浸け、
箸で小さく皮を破り、溢れ出てきたスープに口を付ければ、薬味と混ざったスープの風味がふんわりと口内を満たす。
最後に散蓮華に乗った小籠包を口の中で躍らせ、スープごと呑み込んだ。
「極めつけはこの
「ほふ、ほふ……うむ、美味いの」
同じく郭が小籠包を口に入れて飲み込み、満足そうに口角を上げる。
郭と烈は、日本が東京のとある香港料理屋へと赴いていた。
そもそもの始まりは郭が日本から届いた一通の手紙を見た事から始まった。それを開いて中を見た郭は直後30分の硬直、後に何度も何度も内容を確認していたという。
内容は知らないし、興味も無い。烈に言わぬという事は、知らせる必要が無いという事なのだろうから。
一つ確かなのは、その翌日に郭が烈をお付きに任命し、共に日本へと向かう事を宣言したという事だけ。
とはいえ、日本に来てから郭が何処へ向かうでもなく、ただ日本観光を満喫している事には僅かに首を傾げたが。
そうして今日で日本へと来て五日目。
良い所ではあれど慣れない場所に、僅かに烈はホームシック気味になっていた。そんな少し元気のない烈を見て、郭は香港料理の店に行く事を提案したのだ。
結果、今に至る。
「ふぅぅ……」
日本風にアレンジされた香港料理を満喫し、元気を取り戻した烈。埋まった腹を撫でつつ食後の休憩を楽しむ。
しばしそうしていると、同じく郭も食事を終えた。陶器の入れ物から爪楊枝を取り出し、歯の隙間に入り込んだ繊維を取り除き始める郭。
老男二人で満足げに笑みを浮かべるその姿は親子のようで、とても微笑ましいものがあった。
さて、そろそろ帰ろう。そう思ったその時、烈は店の入り口が何やら騒がしい事に気が付いた。
人込みが出来ており、何故かそれが徐々に後退して店の中へと入り込み始めている。
何が起こっているんだ? 烈が疑問に思い内心首を傾げていると、最後の人込みが左右に分かれた。
まるでモーセの様に人の群れを割り、その中心をスーツ姿の男を伴って一人の女性が歩いてくる。
それを見た瞬間、烈は何故あの日本人たちがあのような動きをしていたのかを理解した。
その女は美しかった。ただひたすら、美という概念の極致をそれは体現していた。
日夜修行漬けで深い語彙の無い烈は、上手い例えが出てこない事を苦々しく思いつつ、それを見つめる。
腰まで届く黒い髪に、彼女の立っている場所の傍に置かれた真っ白な陶器以上に、その純白を主張している真っ白な肌。
黒いドレスに包まれた肉体は日本人らしく小さいものの、女としてはこれ以上無い程に完成していた。胸元を押し上げる胸に、内臓が詰まっているのか疑問になるほど細い腰。にもかかわらず、尻のラインは己の筋肉質なそれよりも大きいのではないかと思う程に膨れている。
艶めかしい尻から伸びる足はブーツに包まれており、大部分がその姿を隠していた。そんな中、ブーツの履き口と前が短いドレスの切れ目に僅かに姿を見せる白い太もも。いけない事だと理解しつつ、それでも烈はその部分へと視線が吸い込まれる事を阻止出来なかった。
なによりも、その顔! 恐らく自分はこれ以上に美しい女性を見た事は無いし、これからも見る事は無いだろうと確信できるその美貌!
「うっ……あ……」
「……ようやく来たの」
隣に座っていた筈の郭が零した言葉が何処までも遠い。
視線が動かない、動かせない。何かで固定されてしまったのではないかと思う程に、顔が彼女の方を向く。
そんな烈の頭に、郭のチョップが叩きこまれた。
「いっ!? な、なんでしょう郭老師!?」
「見惚れるのは良いが、隙だらけじゃ。あと財布を忘れた。ワシは取りに行ってくるぞい」
呆れたように鼻を鳴らして立ち上がる郭。
慌てて烈は立ち上がり、懐から財布を取り出す。
「い、いえ郭老師! わざわざ戻らずとも、私のものをお使いください!」
「ええ、ええ。腹ごなしのついでじゃ。お主はここで待っとれ」
「……はい」
「あの女子をナンパしとってもよいぞ?」
「んなっ!? からかわないで下さい老師!」
「ひょっ、ひょっ、ひょっ」
何故か楽しそうに笑う郭を、羞恥で頬を染めながら見送る烈。
老師に呆れられてしまったな。天才などと持ち上げられてはいるが、所詮美しい女性がいれば無防備な姿を晒す程度の軟弱者。まだまだ修練が足りん。
深いため息を吐きながら、椅子に座って郭の帰りを待とうと思い……ふと、先ほどのあの女性は何処へ行った? と辺りを見回す。
幸い、と言っていいのか、彼女の姿はすぐに見つかった。
「ねぇ、これなんて読むの?」
「ホイ……かいなべにく……? 申し訳ありません、分かりません」
「じゃあこれは?」
「マーボ……まばぁまめくさり……?」
「むぅ……お店のサイトの資料にはルビがあったのに、なんでこっちには無いのよ……」
烈の座るテーブル席。その一つ隣のテーブル席に座っていたのだ。
思わず体を後方へと逸らしてしまい、背凭れを押された椅子が大きな音を立てて倒れる。
しまったッ!?
即座に椅子を拾って立て、女性の方を見る。当然と言うべきか、女性は烈へと視線を向けていた。
見た者全てを自らの色に塗り潰しそうな黒い瞳が、真っ直ぐに烈を見つめている!
「あ、いえ、すみませっ」
「大丈夫?」
「も、
「も……? まぁ大丈夫そうね。ちょっといい?」
「なんでしょうきゃ!?」
「これ、読める?」
緊張で碌に返事もおぼつかない烈。
何をやっているんだ私はッ!? 自己嫌悪に陥り、目を回す。
そんな烈を心配そうな目で見つつ、女性はメニュー表に指を指して烈に見せた。指の先は回鍋肉の写真に止まっている。
「え、ええ……ホイグオーロウです」
「ホイグオーロウ……じゃあこれは?」
「マァポォドォゥフゥですね」
「そっかそっか、ありがとう! ……ねぇ、やっぱりいい子なんじゃないの?」
「御屋形様は腹黒だとおっしゃっておられたので、恐らくは本性を隠しておられるのかと。そういうタイプは大抵実際に手を出してみないと分からないものですよ」
「むぅ……」
なにやら小声で護衛らしき男と会話をしている女性。小さくはあれど、耳を澄ませれば聞こえなくはない程度の声量。
そんな彼女らの会話を、されど烈はまるで聞いていなかった。
礼を言った時の女性の笑顔に頭をやられていたのだ。
「ねぇ、あなた。……あーなーたー?」
「……はっ!? な、なんでしょうか」
「こっちのテーブル席に座らない? 料理の名前が分からなかった時に聞きたいし、折角だからお話もしたいわ」
「え、はっ、よ、喜んで……」
烈は今まで座っていた席から立ち上がり、彼女と同じテーブルの席へと腰を落ち着けた。
料理を頼み、それが届くまでの間、烈は彼女と会話をする。彼女の名前は天津神輝夜というらしい。テーブルナプキンへと書かれたその字を見て、天へと
料理が届けば、輝夜はとても美味しそうにそれを食べ始めた。先ほど腹一杯に食べたばかりだというのに、見ているだけで烈まで腹が空いてきそうな良い食べっぷりであった。
約1時間ほどか。烈は輝夜の食事姿を見ながら、彼女と談笑をしていた。
そうして、輝夜が最後の小籠包を飲み込む。そしてほうっ、と息を吐いてからゆっくりと立ち上がった。
ああ、この楽しい時間もこれで終わりか。思わず肩を落とす烈。そんな烈に、輝夜が手を伸ばす。
「ねぇ、烈。この後腹ごなしに少し歩くのだけど、貴方も来ない?」
その手を掴みかける。だが、烈の頭には郭老師の姿があった。
財布を取りに行き未だに戻っていない郭老師。宿泊施設からこの店までは、片道約10分。行って帰ってくるにしても、既にその3倍の時間は経っている。
それでも、郭老師はここで待っていろと言ったのだ。であれば、自分がここから動く訳にはいかない。
伸ばしかけた手を下ろそうとする烈。そんな烈に、それまで黙っていた護衛が話しかけた。
「お連れの郭様ですが、戻っては来られませんよ」
「それはどういう……?」
「店を出られる際、私にこれを渡されて行きましたので」
そう言って護衛が差し出したのは、一つの財布であった。
烈には見覚えのある財布。それは間違いなく、郭の財布であった。
「なっ!? 老師は財布を忘れたと」
「彼は輝夜様の分の代金もこの財布から出して構わないから、気が向いたらあそこにいる男、烈様を同席させてくれないか、と」
「なぁっ!?」
何をされておられるのですか郭老師!?
混乱する頭で郭の言葉を思い返す烈。……ナンパをしろと言っていたな。
……え、ナンパしなければいけないのですか? それもカグヤさんを相手に?
「ねぇ、思ったんだけどこれ罠じゃないの? なんで初対面の人間に財布まで預けてこんなお願いをするのよ。都合が良いから受け入れたけど」
「それは無い……と思いますが。御屋形様は師匠とは名ばかりの育ての親と言っておられましたし。おそらくは息子の恋を応援したいとかそういうのだと思いますよ?」
「そういうもんかしら……いや、父親ってのはそういうもんよね」
どうやら郭老師は、カグヤさんをナンパしてこいと言っているらしい。
正直、烈は女という存在に慣れていなかった。修行に修行を重ねた日々に加え、寺院には男ばかりの女日照り。烈にはナンパをしろと言われても、どうすればいいのかが分からなかった。
どうするかと悩む烈。その手を輝夜が取って握る。
「さ、問題は無くなったわね。行きましょ!」
そう言って駆け出す輝夜。引く力自体は大したものではなく、抗おうとすれば抗えただろう。だが、いつの間にか烈は引かれるのではなく、自ら走り出していた。
護衛の姿は何処かへと消え、輝夜と烈の二人きり。屋台で軽く摘まめるものを食べ、遊びながら歩き回る。輝夜を狙う暴漢が現れれば、郭老師に呆れられる程度の未熟者なれど、中国拳法にて撃退もしたりした。
とても楽しかったのだ。修行漬けの烈にとって、女と遊ぶというのはこれほどに楽しい物なのかと驚くほどに。
気付けば時刻は10時過ぎ。幾ら郭公認とはいえ、これ以上放浪していると怒られてしまうだろう。
名残惜しい気持ちを振り払い、輝夜に帰らねばと伝える烈。そんな烈に輝夜は一瞬迷い、そして何かを決意したような顔で口を開いた。
「……こっちに、来てちょうだい」
そう言って手を引っ張られ、連れていかれる先は薄暗い路地裏。
何処か緊張した様子の輝夜に烈は首を傾げ……まさかと、その可能性に思い至った。
まさか、なるのか!? やるのか!? 未熟男の称号を捨てる行為を! この美しい女性と、カグヤさんと!? 楽しいひと時を共に過ごしたとはいえ、たった数時間前に初めて会ったばかりの女性と!?
傍から見れば湯気が出ているであろう程に赤面している自覚がある。
未だ未熟な自分がそのような行為を行っていいのか? 女に溺れるなどという軟弱な行為を行っていいのか!?
ぐるぐると目を回す烈を余所に、輝夜は手を放した。
既に路地裏のかなり深いところまで来ており、そうそう人は来ないであろう事が予想できる。……そういう行為を行っても、誰の耳にも声が届かぬであろう事も。
深呼吸をしている輝夜の小さな背中を見る。
……いや、やはりダメだ。己の様な未熟者が快楽に溺れるなどあってはならない。それに、このような美しい女性が、一時の気の迷いで一生に一度しか捧げる事の出来ないものを失うなど。
「カグヤさん、やはりこんな事はいけない。貴女は私よりももっと恋焦がれた人と」
「フッッ!」
烈は輝夜を止めようと一歩踏み出した。
……踏み出した? 筈なのに、何故か烈は今、壁に背を預けて座り込んでいた。
視界が歪んでいる。何処かで見た事のある景色。
咄嗟に、何者かの襲撃を疑った。輝夜を狙う何者かが、己たちを付けていたのだと。
ならば即座に立て直し、輝夜を守らねばならない。上手く体が動かない中、烈はなんとか顔を上げる。
そこには、ならず者などいなかった。
「ごめんなさい、違ったら謝るわ。出来れば貴方を殺したくないのよ。だから、質問に答えてちょうだい」
そこにいたのは、輝夜だけだった。
何処か物憂げな表情で己を見下ろす、拳を握った輝夜だけ。
混乱する頭の中、烈は考えた。誰もいない路地裏。いるのは己と輝夜のみ。拳を握った輝夜。そして今の輝夜の台詞。
そして、烈はようやく思い至った。
……輝夜は、己を狙った暗殺者だったのだと。
烈可愛いよね。