※この作品はR-18です。

世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話   作:白髪ロング娘スキー

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第二十六話 私の男

 

 当然といえば当然のことなのだけど。

 連続で鳴り響く銃声や、勇次郎による Diablo(悪魔) パンチによる轟音に、屋敷にいる者達が気付かぬ筈もなく。

 あの後すぐに、屋敷中のニンジャやクノイチが、臨戦態勢で部屋へと駆けこんで来た。

 そんな彼らの目に映ったのは、畳から逆さに生えているクソ野郎の足に、血塗れの私を抱えた勇次郎。

 速攻で侵入者と判断された勇次郎が、ニンジャ達の襲撃を受けた。

 よっぽど頭に血が上っていたのか、私の静止の声も届かず。

 なるべく殺さないでと乞う私に、勇次郎は面倒そうな顔をしながら対処。

 

 結果としては、襲い掛かったニンジャ達、その全てが勇次郎の手によって容易く蹴散らされた。

 投げられたクナイは避けられ、刀は振っている途中で叩き折られ、鞭は弾かれ、銃は発射する前に手から叩き落された。

 近接に持ち込んだ者達など、もはや赤子扱い。

 戦闘が始まってから約2分、ニンジャ達は足しか使わぬ勇次郎に対し、掠り傷の一つも与えられずに壊滅した。

 正に瞬殺である。

 私の傷や部屋の状況などを見て、なんとなく事情を察した翁などの実力上位組が、勇次郎への攻撃に加勢しなかった事もあるだろうが。

 流石の勇次郎も、私を抱えながら翁達まで足だけで応戦ともなれば、傷の一つくらいは負った筈だ。

 ……Maybe(多分).

 

 ボロ雑巾にされ、頭の冷えたニンジャ達に、勇次郎に抱えられたままの私が事情を説明した。

 とはいえ、なんだかんだでクソ野郎はニンジャ達の頭首である。

 お嬢様である輝夜の言葉とはいえ、御館様のご乱心など到底信じられないと、ニンジャ達が否定。

 そこに高齢組の男衆が事実だと、私の中身が男である事は隠して経緯を説明し、後押しを行う。

 本当の事なのだと納得させられたニンジャ達は、頭を抱えて行動不能に陥った。

 

 その隙に、包帯などを抱えた男衆が私の手当を開始……しようとして、絹代がそれを止めた。

 何のつもりだと青筋を浮かべる男衆に対し、絹代は同じく青筋を浮かべながら口を開いた。

 着物の下には下着代わりの襦袢がありますと前置きを話し、更に言葉を続ける。

 輝夜様は襦袢の下にブラを着けるなど、変則的な着方をしておりません。

 故に、襦袢の下は裸です。

 そして、怪我をした場所には足や腕の付け根に近い部分もあります。

 加えて手当とは基本素肌に対して行うもの。

 

「輝夜様のお裸を見られるおつもりですか?」

「……あっ」

 

 言われて初めてその事に気付いたらしい男衆から、治療具を奪取。

 部屋の隅で固まっていた女中達を呼び、大広間から少し離れた部屋へと移動。

 私の着物を全て脱がしてから、女中の私物だというYシャツと短パンを、素肌の上に着用させてきた。

 服が小さくて胸が苦しいと呻く私に、我慢してくださいと一言だけ告げ、私に丸めたタオルを噛ませる。

 そうして、絹代は私の手当を開始した。

 

 手当をする手つきは慣れたもので、銃創をタンポンで埋めてから圧迫して止血。

 女中に持ってこさせた綺麗な水を手拭いに吸わせて血を拭き、ぐるぐると包帯を巻いていく。

 貫通しきっていなかった弾丸も、銃創に鉗子(かんし)*1を突っ込み、パパッと摘出。

 ものの30分程度で治療は終わった。

 

「違和感はありませんか?」

「んー、この程度なら許容範囲でしょ。ありがとね」

 

 私が咥えていたタオルを受け取り、止血に使用した道具と一緒にポリ袋に放り込んでいく絹代。

 死滅していた四肢の感覚はある程度戻っており、多少動かすくらいなら出来るようになっていた。

 相変わらず歩いたり、物を掴んだりは出来そうにないけど。

 壁に背を預けながら、ゆったりと足を伸ばす。

 

「っはぁ~……にしても、撃たれた時より痛かったわね」

「そうですか? 撃たれた時の方が痛そうですが……」

 

 首を傾げる絹代に、いやいやと笑って否定する。

 

「撃たれた時はアドレナリンだったり、殺意だったりで麻痺しててあんま痛みを感じないのよ。でも、手当中に興奮なんてしてたら、余計血が出るだけだし」

 

 体感、倍くらい痛かったわ。

 笑ってそう告げると、絹代はあははと苦笑いしながら、手に持っていたポリ袋の口を閉じた。

 使わなかった道具を片付けて立ち上がり、これを捨てて来ますねと、外へと繋がる障子を開く。

 途端、外で待機していた男衆が、雪崩れ込むようにして部屋の中へと入りこんで来た。

 入口に立っていた絹代が、咄嗟に脇に避ける。

 

「大丈夫ですかお嬢!?」

「手当は……少し拙いが、出来てるな」

「痛みはありませんか?」

「申し訳ねぇお嬢っ、俺が突っ走ったばかりにッ」

「あー、はいはいはい……」

 

 一遍に物を言うな、せめて順番に言いなさい。

 私はオーケストラの指揮者じゃないし、歌姫みたいに絶対相対音感も持っちゃいないのよ。

 

 あと、左之助は本当に反省しなさい。

 偶々防げてたけど、あれ本当なら死んでたわよ。

 というか、貴方は貴方で左足は手当したの?

 

「弾は貫通してたんで、酒ぶっかけて包帯巻きました」

「アルコール消毒は体に悪いわよ……細菌ごと体内の組織を壊すわよ? 綺麗な水でちゃんと手当しなきゃ。絹代、悪いけどやってあげて」

「かしこまりました」

 

 手に持っていたポリ袋を置き、口を開ける絹代。

 片付けてあった道具を再度取り出し、準備を始めた。

 

「え、いや、」

「いいからしてもらいなさい。色々と話したい事もあるし、手際良いからすぐに終わるわよ」

 

 遠慮している左之助に、有無を言わさず手当を受けさせる。

 絹代がズボンを捲り、すね毛の生えた足が晒された。

 困惑しながらも、抵抗する事なく手当を受ける左之助を見てから、男衆に顔を向ける。

 

「さて、色々話したい事はあるけど……ここじゃ手狭だし、大広間で話しましょう。移動は……」

「あ、俺らが運びま」

「ゆうじろー? ゆーじろー!」

 

 名を読んだ瞬間、障子を開けて顔を見せる勇次郎。

 どうやら部屋の外で壁に寄り掛かって立っていたらしい。

 そのままの姿勢で障子を開けた所為か、こちらを覗く勇次郎の体は少し傾いていた。

 

「なんだ」

「大広間に行きたいの。運んで?」

「俺はタクシーじゃないんだがな。そいつらがいるだろ」

「勇次郎がいいのよ」

「……チッ」

 

 嫌そうに舌打ちをして、ポケットに手を突っ込む勇次郎。

 思えば、今まで私を運んでくれていたのは、全て勇次郎が自主的に行っていた事だった。

 私の方から、こうして運んでくれとお願いするのは、これが初めての事である。

 駄目かなぁ……と諦めかけたその時、渋々といった様子で、勇次郎がこちらに歩み寄ってきた。

 私の膝と背中に手が回され、横抱きにされる。

 

「で、大広間ってのはどこだ」

「私たちがさっき殺り合ってた所」

「あそこか」

 

 なんだかんだで運んでくれるらしい勇次郎にお礼を言って、その胸板に顔を突っ込む。

 今の私とは違う、柔らかくないゴツゴツとした、太い脈の浮かんだ分厚い筋肉。

 硬くて居心地の悪い筈のそれが、妙に私の心を擽る。

 スゥーッと深呼吸をして、体を完全に預けた。

 

「あ、そういえば何か言いかけてたけど何かあった?」

「え、あ、いえ……」

「そうきちゃうのかぁ……」

「なんか取られたような……」

「いや、でもこれはこれで……」

「これが性別を超えた感動か……」

「……?」

 

 男衆の言葉の意味が分からず、困惑する。

 我関せずとばかりに、鼻を鳴らして勇次郎が部屋から出た。

 

 大広間に戻れば、荒れ果てていたそこはある程度の形を取り戻していた。

 四方八方に飛び散った障子は、庭の片隅に山のように障子枠が積み上げられ。

 床から浮いていた畳は、ある程度噛み合わせられており、座るための場所が出来ていた。

 頭から床に埋もれていた直哉の死体は引き上げられ、部屋の隅っこに寝かされている。

 顔には白い布が置かれ、凄惨な事になっているであろうそれが隠されていた。

 

「あそこに座って」

「タクシーの次は椅子か? 約束だから殺しはしたが、お家騒動に深く関わる気はねェぞ」

「大丈夫、ただ座っててくれればそれでいいから。鬱陶しくなったら退かしてもいいし」

「……そら」

「ん、ありがとう」

 

 胡坐を掻いて座り込んだ勇次郎の、組まれた足の上に置かれた。

 勇次郎を背凭れに、足を伸ばして座る。

 場所は直哉が座っていた上座、頭首の席だ。

 私達が座ったのを皮切りに、男衆が次々と座りだす。

 

 片付けを終え、大広間で待機していたニンジャ達は、男衆に部屋で待機してろと追い払われていた。

 故に、今此処に居るのは、男衆ではない翁なども含めた、幹部格などの立場が上の者達だけだ。

 最後に翁が盗み聞きをしている者がいないかを確認し、男衆に並ぶ。

 それを確認してから、私はコホンと咳払いをした。

 男衆たちの視線が集まる。

 

「さて、それじゃ始めましょうか。何から話そうかしら」

「挨拶などはいかがで?」

「じゃあまず挨拶から行きましょうか。私は天津神輝夜……の姿をした別人よ。今から約四か月前、輝夜が行ったオカルトで体が入れ替わった。それがクソやろ……直哉にバレて、政略結婚の駒になりたくなければ、五つの課題を達成しろと契約を結ばされた。まぁ色々あって、それが達成出来なくなったから、下剋上を行って有耶無耶にしたわ。今は暫定頭首……って事になるのかしら? 以上よ」

 

 こうして振り返ると、私も中々のクズよね。

 脅されたとはいえ、互いに納得して契約書だって用意された契約。

 それを法的拘束力は無いからって、相手を殺して有耶無耶にしたんだもの。

 やってる事は、私自身が嫌いな筈の強者側の悪行なんだよね。

 なんだか鬱になって来て、ため息を吐く。

 

「……で、なにか質問は?」

「ではまず私が。今の輝夜嬢の中身、一体誰なのでしょう? あそこまでの力を持つという事は、著名な人物だと思われますが」

「ん? 貴方達気付いてるって言ってたじゃない」

「我らが気付いていたのは、輝夜嬢の中身が変わったこと。望んで輝夜嬢の体を乗っ取った悪人ではないということのみ。性別や経歴などは何も」

「あー、なるほど」

 

 高齢組の男からされた質問、私の中身。

 もはや隠す事でもないので、素直にそれに答えた。

 

「私はあれよ、世界統一武術大会10年連続チャンピオンだった男よ。オカルトの影響か、自分の名前が全く思い出せないんだけど……有名だったし分かるでしょ?」

 

 私の言葉に、男衆が顔を見合わせる。

 揃って怪訝そうな顔をしており、言葉には出さないが、お前知ってるか? と確認し合っているのが分かった。

 その反応に私は違和感を持ち、言葉を続ける。

 

「え、いや、分かるわよね……? じゃああれは? 世界一の美貌を持つ歌姫と付き合ってる男! あれは一時かなり炎上してたから、そっちなら知ってる筈よ」

 

 しかし、男衆は納得した様子は見せず、更に顔の皺を深めた。

 続けて世界に名だたる大富豪と不敗の契約をした男に、震災地に10ビリオンドル(約一兆円)を寄付した男、スラムの改善を実現した男などなど、私の名が売れた時に名付けられた様々な私の異名を挙げていく。

 だが、挙げに挙げたそれらは、一つとして彼らにあの男か! という確信を持たせなかった。

 段々と、私の持つ記憶の方がおかしいのかと不安になり始める。

 その時、今まで黙っていた勇次郎が口を開いた。

 

「バタフライ・エフェクト」

「へ?」

「事象に僅かな変化を与えると、その僅かな変化が無かった場合とは、その後の状態が大きく異なってしまうという現象だ。輝夜の居る世界、輝夜の居ない世界。情報が噛み合わないのはそのせいだろう」

「……えっと、つまりこの世界がAとして、私が変化のあったBの世界から来たってこと?」

「オカルトが過ぎるがな。お前が要らん嘘を吐くとも思えん」

 

 そう言って、再び黙り込む勇次郎。

 正直、勇次郎の言った事はただの憶測だ。

 だけど、今の所一番納得できる考察でもあった。

 

「……まぁ、多分そういう事よ。他に納得出来そうな推測も無いし、私は異世界から来た元世界最強の称号を持つ男って事で」

「はぁ……」

 

 少し納得のいかなそうな顔の男衆。

 まぁどれだけ納得がいかなくても、そうとしか言えないから納得してもらう以外にないんだけどね。

 というか、一つ聞きたかった事があるんだけど。

 

「私が輝夜の体を使っている事に対して、貴方達は何か不満は無いの? 貴方達のお嬢様なのでしょう?」

 

 私からする逆質問。

 それに対して、男衆は苦笑いしながら答えた。

 

「あー、そうなんですけどね。お嬢の性格が変わる少し前に、お嬢が胡散臭い霊媒師とコンタクト取ってたんで、多分それの影響なんだろうなと」

「お嬢が自分の性格を変えたのか、それとも中身ごと入れ替わってるのか迷って……」

「箸が使えないとか、お嬢が使えない筈の英語が飛び出したりとかして、中身自体が違うんだろうなと」

「お嬢自身が望んでやったことだ。アンタはそれに巻き込まれただけ。不満も何もなぁ……」

「お嬢に対して言いたい事はあっても、今のお嬢に不満は無いっすよ」

「辛く当たろうとしてるけど、優しさ滲み出てるしな」

「うむ。罰だと言って、痛くないように手加減しながら何度も叩いてくる姿は可愛かった」

 

 微かに笑いながらそう答えた彼ら。

 直哉による、私の中身云々の話を聞いていない者達まで、特に驚く事無く同じ表情をしている。

 どうやら、私の中身が違うというのは、割と周知の事実だったらしい。

 思っていたよりも、私の演技は下手だったようだ。

 ニンジャ達を人払いしている事から、そっちにはバレていないようだけど……少し落ち込むなぁ。

 

「……では、次の質問、いいですかな?」

「あ、うん。いいわよ、翁」

「輝夜嬢。貴女は下剋上を起こし、そして外部の手を借りつつも倅殿を打倒せしめた。よって、今の頭首は貴女です。これからいかがなされるおつもりで?」

 

 翁からされたその質問。

 それに、待ってましたと答える。

 

「私は頭首を辞めるわ。トップに立つ器じゃないし、暗殺者にも向いてないもの」

「では次期頭首は誰を指名なされますか?」

「ん-、それなんだけど、良さそうな人いない?」

 

 そう聞くと、翁は顎に手を当てて思慮に耽った。

 時折顔を見上げては、男衆の顔を見つめ、再び俯く。

 それを数度行っている内に、ドッドタッと廊下から不規則な足音が響いてきた。

 警戒態勢に入る男衆だったが、廊下から姿を見せたのが左之助だと分かると、肩から力を抜く。

 同じく左之助を見た翁が、続けて私の方を見て口を開いた。

 

「実鹿角左之助ですかな」

「え、彼? 年配組じゃなくて大丈夫?」

「年若く、精神は未熟。しかし、あ奴が一番輝夜嬢の期待に沿うかと」

「その理由は?」

「性格が甘く、行き過ぎた行為は行いません。倅殿と比べたら天と地ですな。故に当然失敗もありましょうが、それこそ他の幹部達が支えれば良いかと」

「え、え……? なに……?」

 

 手当を終え、足を引きずりながらも大広間に顔を見せた瞬間に名前を呼ばれた左之助が困惑している。

 そんな彼の姿を見ながら、ふむ、と考え込む。

 私にペニスバンドを贈り付けて来るアホ、かと思いきやお洒落なヘアゴムを贈って来る男。

 特に印象的なのは、先ほどの友を殺された事に猛る姿。

 

「左之助、善人や小さい女の子の暗殺依頼があったら?」

「……どうしようもないなら、やります。やりたくないですけど」

「身代金が欲しいとか、見え麗しい子をペットにしたいから、誘拐をしてくれって依頼があったら?」

「…………やりますよ。嫌ですけど」

「好き好んで殺しをするターゲットが、依頼中に雲隠れした時はどうする?」

「情報を探ります。草の根掻き分けてでも探し出します」

「探った結果、ターゲットが善人だったら? ターゲットを見つけたのが貴方だけなら?」

「………………」

「いいわ、分かったから。意地悪な質問をしちゃったわ、ごめんなさいね」

 

 顔を顰め、唇を噛んで黙り込む左之助に、質問を止めた。

 彼の性格はよく分かった。悪は嫌いだが、仕事だから仕方なくやる。

 しかし、あの様子からして、その内耐え切れなくなって、ターゲットを連れて逃避行に走りそうだ。

 甘い。正にクソ野郎とは天と地だ。けど嫌いじゃない。

 私は翁へと顔を向け、返事をする。

 

「頭首は彼に決まりよ。秘書に翁、もしくは翁の推薦する者を付けて、溜まるストレスを何とかしてあげて。貴方達はそれでいい?」

「構いませんぜ」

「まぁ俺らもぶっちゃけ器じゃないんで……」

「方針に耐え切れなくなった時は下剋上しますよ」

 

 茶化すように笑いながらそういう男衆。

 それに対して、同じく茶化すように笑い返した。

 

「殺さないでよー?」

「殺さないっすよ。ブン殴ってからポーカーで素寒貧になるまで金毟ります」

「ならよし」

 

 いや良くないっすよ!? と騒ぐ左之助を無視して、質問タイムを再開する。

 すると、若めの男が手を挙げた。

 

「質問っていうか、言いたい事というか……したい事があるんすけど、いいですか?」

「なに?」

「オジキ……元オジキの遺体。あれを弔いたくて」

 

 男が部屋の隅に置かれたクソ野郎の死体を見ながら、そう言った。

 その言葉に、少し困惑する。

 なんでわざわざ聞くの?

 

「別にすればいいと思うわよ?」

「やっていいんですか?」

「逆になんで駄目だと思ったの?」

「いや、どうも元オジキを嫌ってるように見えたもので」

 

 思わず目を瞬かせてしまった。

 そっか、そういう意味か。

 いや、別に坊主が憎いからって袈裟まで憎まないわよ。

 私が嫌いなのは、あくまでクソ野郎だもの。

 

「あそこにあるのはただの死体。肉の塊。それをどうするかは遺族の勝手よ。弔いたいならすればいいと思うわ。遺された人が死者の霊を慰めたいと思う気持ちにまで、私はどうこう言わないわよ」

「……ありがとうございます」

 

 畳に握り拳を突き立て、頭を下げる若い男衆。

 それ以外には特に言う事は無いのか、頭を上げ、静かに目を瞑った。

 

 他に質問や言いたい事はあるかしら? と男衆へと聞く。

 しかし、この3つだけで割と質問が尽きたのか、男衆は顎に手を当てて俯き、質問を考え出した。

 そこに、頭が痛そうにしていた左之助が手を上げる。

 

「他いないなら、俺いいっすか?」

「ええ、いいわよ。なに?」

「いや……なんか大人しく椅子になってますけど、そのオーガなんなんですか? オジ……元オジキとの会話を聞く限り、お嬢をレイプした相手っすよね?」

 

 なんでここにいるんだと言いたげな顔の左之助。

 そんな彼に、どう答えようか迷う。

 課題の暗殺対象であり、殺し合いをした相手?

 殺し合いをして、私の四肢を粉砕した相手?

 私を守る代わりに子を産んであげると約束をした相手?

 嫌がる私をイカせ続けて女にした相手?

 私の我儘に付き合ってくれた相手?

 正直、どれも正しい。

 正しいけど、これを言ったら言ったで角が立ちそうだ。

 どう答えるか……

 

 少しの間悩み、一つ閃いた。

 背中と肩の筋肉を使って腕を上げ、勇次郎の首に引っ掛ける。

 ただでさえくっ付いていた体を更に密着させ、まるで抱き着くような体勢だ。

 その体勢のまま、左之助に答えを返した。

 

「私の男♡」

 

 私の言葉に、勇次郎が笑うように鼻を鳴らす。

 一拍の後、放たれた絶叫に屋敷が揺れた。

 

 

 

*1:
ハサミの先端がピンセットみたいになってる医療道具

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