※この作品はR-18です。

世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話   作:白髪ロング娘スキー

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第二十七話 帰り道

 

 私が、勇次郎は私の男であると宣言した直後。

 屋敷は、それはそれは大変な大騒ぎになった。

 

 いきなり私の腰を抱き、顎に手をやって唇を合わせ、なんなら舌まで入れて来る勇次郎。

 観衆の中、唐突にされたディープキスに驚いて固まり、されるがままの私。

 私達を見て、興奮した女の様に野太く姦しい、黄色い悲鳴を上げる若い男衆。

 上がった叫び声に何かあったかと、再度臨戦態勢で駆けつけるニンジャ達。

 そんな彼らに、部屋で待機していろと怒鳴りつけ、部屋へと叩き返す高齢組。

 なんというか……色々とカオスだった。

 

 放置していれば、あのままあと一時間ほどは継続しそうだった、混沌とした大広間の惨状。

 それは最終的に、ゴミ捨てから戻って来た絹代の手によって収められた。

 どうやって収めたかと言えば……なんというか……うん。

 ブチ切れた女って怖いもの無しだよね、とだけ。

 まさか勇次郎の頭をフルスイングで殴り飛ばすとは……

 

 まぁそんなこんなで、昂っていた皆のテンションが落ち着いた後。

 私は頭首引き継ぎをしたり、自分の部屋から家に持っていきたい物を選別したりと、少しあわただしく動いていた。

 真上にあった筈の太陽は今や、赤みを増しながら地平線へと沈む準備を始めている。

 家に帰るなら、山から下りて歩いて公道に出てまた歩いてと時間が掛かるため、そろそろ出発しなければならない時間だ。

 

「本当に行っちまうんですか、お嬢」

「予定は狂っちまいましたが、メシの準備はありますぜ?」

 

 割と帰れるかどうかギリギリの時間。

 そんな時刻に、私は屋敷の正門で勇次郎に横抱きにされながら、男衆に引き止められていた。

 折角帰って来たんですから、夕飯くらいは一緒に食いませんか? と。

 

「いいのよ、元々アイツを殺したらすぐに帰るつもりだったし。それに私は頭首を殺した反逆者だもの。あまり屋敷にいちゃいけないわよ」

 

 せめて夕飯だけでもと誘いを掛けてくる男衆に、されど頑として否を返す。

 ここで仕方ないなぁと流されて夕飯を食べたら、帰る時間が遅くなってしまう。

 冬の夜は寒いからと、そのまま流されて泊まっていく事になるのが目に見えている。

 

 ……あと、これに関しては非常に言い辛いんだけど、単純にムラムラする。

 ただでさえ敏感な体に加えて、生理である事も関係してるんだとは思う。

 けど、これに関しては、命を賭した戦闘の後だというのが大きい。あと勇次郎のディープキスも。

 貧弱な体が、なんとか死ぬ前に子孫を残そうと、一端に性欲を高めているのだ。

 ……言ってしまえば、今私は非常にオナニーがしたい。もしくはセックス。

 しかし、誰が聞いてるともしれない屋敷で、そんな事は出来ない。

 だからあの家に帰りたいのだ。割と切実に。

 

「どうしてもっすか……?」

「悪いわね」

「……いえ、用事があるなら仕方ないっす。無理には引き止めないっすよ」

 

 残念そうに引き下がる若い男衆に、少しだけ罪悪感を感じる。

 ごめんなさい、特に用事とかは無いのよ。私がただ家に帰って性欲を発散したいだけなのよ。

 そんな私の心中など察せる筈もなく、男衆が残念そうにしながら一礼をしてくる。

 

「何か困った事があったら、迷わず駆け込んできてください。手を貸しますので」

「全身全霊でお手伝いするっすよ!」

「お嬢の男だァ……テメェが来てもぶぶ漬けくらいは出してやるよオーガ」

「10合は炊いとけ」

「ざけんな、0.4合流し込んどけや」

 

 どこか腰が引けた対応だった勇次郎とも、今では割と打ち解けているようだ。

 軽口を叩き合う様子が微笑ましい。

 とはいえ、このままそのやり取りを眺めている時間は無い。

 会話が一旦落ち着いたのを見計らい、僅かに身じろぎをして勇次郎に合図をする。

 

「もういいのか」

「ええ。暗くなってしまうから」

「だそうだ。行くぞ、女」

「準備は出来ております」

 

 勇次郎の後ろに、小さな風呂敷を持った絹代が控える。

 風呂敷の中には、着物や襦袢などの着替えに加えて、私が家に持って帰りたいと思った小物類。その他にも、男衆からのプレゼントなどが入っている。

 重くないかと少し心配だったのだけど、お付きとして仕込まれた内容に最低限とはいえ肉体の鍛錬もあったらしく、風呂敷を持つ絹代の顔は涼し気だった。

 

 勇次郎が身を翻して歩き出す。

 首を伸ばして後ろを見れば、手を振る男衆の姿が見えた。

 体が動かないため、手は振り返せない。

 代わりに、ただ彼らの姿を眺め続けていた。

 そして、姿が見えなくなった頃に、伸ばしていた首を戻す。

 

 静寂の中に、二つの足音のみが響く。

 ただ勇次郎の胸に頭を押し込んでいるというのもなんだか勿体ない気がして、辺りへと視線を向けた。

 

 一面に広がる森林。

 木には葉が付いておらず、茶色の樹木は剥き出し。

 殺風景なそこには、時折リスや鳥の姿が見えた。

 私を見て近付いてこようとして、されど勇次郎を相手に、本能が危険を訴えるのか動けなくて。

 結果、機械の様にカクカクと動く事となった小動物の姿が可愛らしい。

 

 乾いた風が吹けば髪が靡き、長い髪による動きに頭が持っていかれそうになる。

 それを見た絹代がヘアゴムを使い、私の髪をポニーテールに纏めた。

 髪が靡かなくなり、そちらに意識を取られなくなれば、今度は乾燥した風の清涼さに驚かされた。

 着物の隙間を縫うように吹くそれは寒く、しかし心地よい。

 澄んだそれは、一つ呼吸をするごとに肺を満たす。

 都会には無い、大自然ならではの、一切の雑味が無い風。

 空気が美味しいとは、こういう事を言うのだろうか。

 

 澄んだ空気は視界を晴らし、黒く染まりかけた空に、僅かに無数の光を灯す。

 まだ太陽が仕事をしているというのに、待ちきれないとばかりに、まん丸の月が空に浮かび始めていた。

 瞬く星々が彩る夕焼けに、何か面白い事がある訳でもないのに、自然と笑みが漏れる。

 ……ふと気になり、絹代に声を掛ける。

 

「そういえばよかったの? 絹代」

「何がですか?」

「お付き。命令したクソ野郎は死んだんだから、お付きの任も自然と解消されてるでしょう? ありがたいけど、別に無理に付いて来なくてもよかったのよ?」

 

 絹代が私にお付きとして付いてくるのは、クソ野郎に命令されたからだ。

 クソ野郎の命令がある事を前提に、絹代は私のお付きとなっている。

 であれば、クソ野郎が死んだ今、絹代がお付きとして私に付いてくる理由は無い。

 

 自分でこう言うのもなんだけど、私の世話は大変だ。

 精神と肉体の違いによる様々な問題があるし、無駄に臆病だから小さな事ですぐに情緒不安定になるし、何かある度に大怪我を負ってるし。

 もしも病院でこんな患者がいたら、間違いなく医者や看護師から煙たがられて、厄介者扱いになっているだろう。

 今回のこれは、そんな私から離れる絶好のチャンスだったのだ。

 なのに、絹代は迷わず私に付いて来た。

 それは何故なのだろう。

 

 そう聞くと、絹代は目をぱちくりと瞬かせた。

 呆れたように笑いながら、返事を返してくる。

 

「だって、私がいないと、輝夜様は死んじゃうじゃないですか」

「そこまでは……ないと思うけど」

「怪我が治るまでの風呂は? 食事は? トイレは? 生理周期やその対処法など、女だけが分かる機敏なんてのもありますよ。男二人で出来ますか?」

「……出来る?」

「俺に聞くなッ」

 

 勇次郎に聞くも、即座に一喝された。

 まぁ、なんだかんだで多分、勇次郎なら出来るとは思う。

 風呂に一緒に入って、髪や体を洗ってもらって。

 ご飯は……分からないけど、多分焼くだけの男飯くらいなら作ってくれる。食べさせてくれるかは分からないけど。最悪犬食いか。

 トイレは……ちょっと拒否感が強いな。勇次郎に排泄した汚物とか見られたくないし。漏らすよりはマシだから我慢するけど。

 生理に関しては、昨日の対応からして、勇次郎ならどうにか出来ると思う。

 

 結論としては、多分出来る。

 とはいえ、どれもこれも勇次郎に頼り切りだ。束縛する時間が長過ぎて、勇次郎の自由が無い。

 勇次郎はあまり気が長い方ではなさそうだし、そもそもが風来坊気質に見える。

 私の利用価値よりも面倒が勝った時は、最悪捨てられてしまうかもしれないな。

 その時は一人倒れ伏したまま、動く事も出来ずに餓死する事になるだろう。

 恐らく帰ってはこないだろう勇次郎を、それでも待つ事しか出来ずに、ただ一人あの家で。

 ……風とは違う寒さに胸が痛くなり、勇次郎に顔を押し付けた。

 

「脅し過ぎましたかね。でも、そういう事ですよ」

「……ごめん、ありがとう」

「気にしないでください。元より、私の命は輝夜様のものですので」

「どういうこと?」

「こっちの話です」

 

 絹代を見れば、既に彼女は口を固く結び、前を向いて真っ直ぐに歩いていた。

 多分、聞いても絶対に答えてはくれないのだろう。

 絹代の態度がそう語っている。

 であれば、私ももう聞かない。

 絹代が善意で私の世話を続行してくれる。

 なら、それだけでいい。

 

「ありがとう」

 

 最後にもう一度だけ礼を言って、私も口を閉じた。

 静かに冬の空気を楽しむ。

 三人揃って一言も発さず、ただひたすらに歩く。

 山を下り、森を抜け、公道に出て、街に着いて。

 歩いて、歩いて……不意に、きゅうぅ、っと小さい音が鳴った。

 ……私のお腹の音だった。

 

「お腹減ったわね……」

「お昼は湯漬けのみ、時間もいい時間ですしね。でも、これから足りない材料を買って帰って調理ってなると、少し時間が掛かってしまいますね。大体3~4時間くらいですが、持ちそうですか?」

「子供じゃないんだし、それくらいなら我慢出来るわよ」

 

 そう言った瞬間、再び私のお腹がきゅるる、っと抗議する様に小さく鳴った。

 絹代の目がジトッとしたものに変わる。

 恥ずかしい。けど手が動かせないから隠せない。

 真っ赤になっているであろう顔を、せめてもと少しだけ逸らす。

 その先にジト目のまま、絹代が移動した。

 目を逸らしていると、絹代がため息を吐く。

 

「……変に我慢しないで下さい。今日は外食にしましょうか。勇次郎様もそれでいいですか?」

「好きにしろ。ただ……そうだな」

 

 なにやら唐突に、犬の様に鼻をクンクンとヒク付かせ始める勇次郎。

 真顔のままそんな事をするものだから、少しおかしく見えてしまう。

 勇次郎はそのまま、しばしの間右を見ては鼻をヒク付かせ、左を見ては鼻をヒク付かせていた。

 そして、始めた時同様に唐突に止めた。

 

「よし。こっちだ」

 

 料理店が立ち並ぶ商店街へと足を踏み入れる。

 その足取りに迷いは無く、どうやら目的地は決まっているようであった。

 まるで歩き慣れた通学路のように。通い慣れた通勤道中の様に。よく食べに行く馴染みの店に行くかのように。

 真っ直ぐ。ただの一度も止まる事無く、真っ直ぐに歩みを進めていく。

 そして、とうとう商店街から出てしまった。

 

「え、ちょ、これ何処に向かってるの!?」

「この辺で一番マシな店を探した」

「……もしかしてさっきのは」

「匂いを嗅いでいた。メシの美味さってのは匂いに出る。調理をせずとも、素材のままでもだ」

 

 味という物は複雑だ。

 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、食感。

 食べ物を見て、発せられる音を聞いて、匂いを嗅いで、実際に口に入れて、噛んでみて。

 これらによる総合感覚として感じとったものこそが、"味"である。

 しかし、それの真の美味さを感じるには、残りの4つはむしろ邪魔なのだという。

 

 食べ物を見た瞬間に、昔食べた物から近い物を連想し。

 音を聞けば、それに含まれた温度や瑞々しさを連想し。

 口に入れた瞬間、以上の2つから連想した味に近いものに僅かに味覚が引っ張られ。

 噛んでいる時に、視覚や聴覚との僅かな差異に違和感を生じさせられる。

 故に、これらは真に美味しい物を探す事には、全くもって向いていないと。

 

 そこで、嗅覚。

 人間は外界からの情報の大半を、視覚と聴覚から得ている。嗅覚から得る情報は極僅か。

 それ故に、嗅覚は原始的な感覚とされている。

 しかし、ここで出て来るのが、原始時代にて危険を察知する手段こそが、匂いであったという事実。

 

 獲物から香る僅かな匂いを嗅ぎ取って弱いものを判別して襲い、刺激臭を嗅げば危険だと撤退する。

 空気の湿った匂いを嗅げば嵐を予測し、木の実の匂いを嗅いで食べれるかを判断した。

 匂いには危険を知らせる役割がある。原始時代においては、匂いこそが最高の護身用具であったのだ。

 これを利用して行われたのが、先ほどの勇次郎の行動。

 

 見もせず、聞きもせず、味わいもせず、噛みもせず。

 されど、空気中に含まれた旨味の成分が、雄弁にその味の子細を語る。

 そうして、この近辺で感じる一番美味い店の匂いに向かって移動しているのだと。

 勇次郎はそう言った。

 正直引く。

 

「もう獣そのものね貴方……」

「誉め言葉だな。着いたぞ、アレだ」

 

 人気の無い裏路地。

 そこに、一つの屋台があった。

 店の前には4つの小さな椅子が置かれており、それがそのまま一度に食事が出来る人数を示していた。

 正直、あまり大きくはない屋台だ。

 

 料理店が立ち並ぶ商店街は、この裏路地の入口からもう少し進んだ……戻った? 先にある。

 ただでさえ路地裏という目立ちにくさに加え、商店街からも離れているという立地の悪さ。

 商店街前の裏路地を通る人間は大抵腹を空かせていないし、腹を空かせた人間はそのまま商店街へと向かう。

 到底客が来るとは思えず、事実席には誰一人として座ってはいなかった。

 とても採算が取れているとは思えない状態だ。

 

 というか、一番のツッコミ所は、屋台の裏にある電柱。

 屋台の軒先には、何個かの提灯がぶら下がっており、それが辺りを照らしていた。

 光に炎特有の揺らめきは無く、恐らくは電球を使っているのだと思われる。

 それ以前に、料理をするのなら電気は不可欠だ。特に、外で店を開くのなら。

 なのに屋台の周りには発電機の類は見えず、電気を引っ張る許可を得ている様子も無い。

 間違いなく、その電柱から違法に電気を引っ張って来ていた。

 

 そんな不安しかない屋台の軒先にぶら下がった提灯。

 そこには、明らかに素人が書いたと分かるかなり崩れた文字で、こう書かれていた。

 

『ラーメンこずえ』

 

 と。

 

 

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