※この作品はR-18です。

世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話   作:白髪ロング娘スキー

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妊娠編
第三十二話 お料理教室


 

「くっっっさッッッッ!?!?」

 

 遠くに絹代の声が聞こえて、目が覚めた。

 瞼を開ければ、開かれたカーテンから日の光が差し込むのが見え、眩しくて目を細める。

 目が慣れた頃、私のすぐ目の前に、眠っている勇次郎の顔がある事に気付いた。

 途轍もなく距離が近い。少し頭を前に出せば、それだけでキスが出来そうだ。

 

「うわァっ、二人ともビッチャビチャ……」

 

 キスしたいなー、でも起きちゃうかな。

 どうするか悩んでいると、ふと枕が硬い事に気付いた。

 見れば、私の頭の下には勇次郎の腕があった。その腕の先は、勇次郎の頭の下へと伸びている。

 どうやら私は、自分の手を枕にして眠る勇次郎の腕を、枕代わりにして眠っていたらしい。

 腕枕……何度か、せがまれてした事があったな。

 ……思ってたより結構いいわねコレ。

 

「ひゃっ、なんか踏んだっ!?」

 

 勇次郎に腕枕をされている事に、むふー! と満悦する。

 腕枕の感触を楽しんでいると、お腹を圧されるような感覚に、今度はそちらに目を向けた。

 そこには、朝立ちでギンギンに勃った勇次郎のチンコがあった。

 身長の関係で、丁度その先端、亀頭が私の子宮を押すような形になっている。

 ジクジクと下腹が疼く感覚。それを私の膣内へと納めたくなる。

 

「呆れた……よく見りゃ壁にまで掛かってンじゃないか……」

 

 けれど、流石に今からおっ始めるのはマズいだろう。

 腕枕は楽しみたいけれど、朝っぱらから発情するのはいただけない。

 というか、そんな事したら普通に絹代に怒られそう。

 怒った絹代怖いんだよなぁ……勇次郎の頭すら殴り飛ばすし。

 流石に殴った手は痛そうにしてたけど。

 

「もおおおっ、換気ィッッ!!」

 

 勇次郎を起こさない様に、ゆっくりと距離を取ろうと動く。

 しかし体が動かない。勃起したチンコにばかり視線が向いていたが、よく見れば、勇次郎の空いた手が私の腰に巻き付いていた。

 抱き寄せるようにされたそれに、体が固定されている。

 不味いなぁ……勇次郎に抱き寄せられている事が嬉しくて、抜け出す気力が失せてしまう。

 

「アンタらも! 何時まで寝てンだいッ! 起きなァ!」

 

 勇次郎が起きるまで、ずっとこのままでもいいかな。

 そう思っていたのだが、流石にそろそろ絹代の堪忍袋の緒が切れそうだ。

 体は動かせない為、手を振って起きている事を伝える。

 

「おはよう、絹代」

「エエ、おはようございます輝夜様。すみませンが、部屋の掃除をしたいので、勇次郎様を起こして頂けますか?」

「えっと……もうちょっとだけ勇次郎の寝顔を見ていたいというか……」

「あン?」

「あ、はい、すみません、何でもないです」

 

 勇次郎の顔をぺちぺちと叩く。

 10回程度叩いた頃、ようやく勇次郎が目を覚ます。

 うっすらと瞼を開けて辺りを見回し、朝である事を把握したのか、むくりと身体を起こした。

 それに引っ張られるように、朝立ちしたチンコも上に向かって体を起こす。

 私が犯される所は見た事があっても、直に近くで見た事は無かったらしい。

 勇次郎の勃起したチンコを見た絹代が、ぎょっとした顔をしていた。

 

 勇次郎が自分の体を撫で、乾いた精液と愛液の混合物を軽く払い落とす。

 手の平にこびりついた混合液のカスを見て顔を顰め、次いで私を見た。

 私の体も、勇次郎と似たような惨状だ。

 それを見て、勇次郎が脱衣所を指差した。

 

「おい、先にシャワーを浴びてこい」

「一緒に入らないの?」

「朝っぱらからヤりたいなら一緒に入ってやる」

 

 それは私を抱きたくなるという意味と受け取っても?

 思わず頷きたくなる気持ちを、般若絹代を見て抑える。

 

「それじゃあ、先に入るわね」

 

 体を起こすと、肌に張り付いていた、カピカピとした乾いた混合液が剥がれ落ちる。

 まるで脱皮前のトカゲの様になった肌に、少しの不快感を覚えながら、脱衣所へと向かう。

 軽くシャワーを浴び、髪や肌、膣内……も、少し惜しい気持ちはあれど、汚いので洗い流す。

 髪に絡みついた精子が、想像以上にベタ付いていて取れなかったため、何度もシャンプーなどで洗い流す事になった。

 セックスは勇次郎と繋がれるし、気持ちいいから好きだけど、この洗い流す作業は少し面倒だな。

 

「ふぅー……っああぁ……」

 

 シャワーを浴びている間に、絹代がお風呂の追い炊きをしてくれたため、湯舟にも浸かる。

 温かい湯に肩まで浸かり、体を伸ばす。

 ふと、銃創はどうなったかなと、ほんの少しだけ跡の残っている肌に触れてみる。

 大分肉も埋まってきたのか、指は殆ど埋まらず、瑞々しいハリを持った皮膚に弾かれた。

 結局、あれだけ激しいセックスをしたのに、発作も起こらなかったし。

 ホント便利だなぁ、放華。というより仙道?

 これはお礼に、絹代を連れて行って上げなければいけないな。

 

 勇次郎が待っているため、長風呂はせずに体が温まったら、すぐに上がって脱衣所へ。

 タオルで体を拭き、絹代が用意したのであろう着物に着替える。

 脱衣所から出れば、キッチンに絹代が立っていた。

 冷蔵庫を開けて、朝食の用意をしている。

 

 勇次郎を探せば、自分の部屋の真ん中に裸で座っていた。

 肩にバスタオルを掛け、目を瞑って胡坐をかいている。流石にチンコはもう勃っていなかった。

 庭先で軽く体は洗い流したのか、その体に乾いた混合液はついていない様に見える。

 とはいえ、髪が少しベタ付いているので、シャワーは浴びなければならないだろうけど。

 

 部屋に入る。

 あちらこちらに飛び散っていた厭らしい液体は、ある程度綺麗に拭かれていた。

 布団が見当たらないため、外を見てみれば、巨大な水の張った桶に布団が浸かっていた。

 洗剤を混ぜてあるのか、水の表面には白い濁りと泡が浮いている。

 

「上がったわよ」

「あァ……」

 

 声を掛けると、勇次郎が目を開けて立ち上がった。

 私の横を通って、そのまま脱衣所へと入って行く。

 歩く勇次郎の動きに合わせ、左右にブラブラと揺れる。

 勃起していない勇次郎のチンコは、それでもなお途轍もなく大きかった。

 

 ……なんというか、ダメだな私。思考が愛と性欲に支配されてる。

 両手で頬を挟むように、ぴしゃんと叩く。

 よし。

 

「絹代!」

「はい、なんでしょう?」

 

 声を掛けると、絹代が振り返る。

 もう怒っていないのか、その声は柔らかい。

 手には、魚の切り身が四つ入ったトレーを持っている。

 

「料理! 教えてちょうだい」

「あぁ、そういえばそんな事を言ってましたね……」

 

 一昨日は、夜は下剋上の準備。昨日は下剋上、夜は外食でラーメン。

 料理を学ぶ暇など無く、結局一度も料理のやり方を教えてもらっていない。

 それに比べて、今日は特に何の予定もない。

 料理を教えてもらうのには、絶好の機会だろう。

 

 絹代は、自分の着けていた黒のエプロンを外し、私に着せてくる。

 触ってみれば、ポリエステル特有の、ツルツルとした滑らかな感触がした。

 

「輝夜様は、お料理の経験は?」

「切る焼く煮るなら出来るわよ」

「男料理と……分かりました。では始めましょうか」

 

 まず絹代はまな板を取り出し、キッチンの上に置いた。

 そしてその上にきゅうりを4本置き、包丁を用意する。

 

「では、まず漬物を作りましょう。まずはきゅうりですね。私が洗うので、見ていて下さい」

 

 そう言って、きゅうりの一本を私に手渡す絹代。

 自身も一本きゅうりを手に持ち、シンクの蛇口を捻る。

 流れる水にきゅうりを晒し、手できゅうりの尖ったイボを、横から折る様にして洗っていく。

 頭からお尻まで一通りやると、流水からきゅうりを外し、キッチンペーパーで水気を取る。

 そうして洗い終えたきゅうりをまな板に置き、私の方を向いた。

 

「では、洗ってみて下さい」

「うん」

 

 今見た絹代の動きを真似して、手に持ったきゅうりを、蛇口から流れる冷水に晒す。

 イボを折る様にして、横からいィッッたい!?

 

「~~~~ッ!」

「だ、大丈夫ですか?」

「へ、ヘーキヘーキ……」

 

 予想以上に硬かったイボに、指をやられた。

 ちょっと痛すぎでしょ……たかが野菜が、なんでこんな針持ってんのよ。

 というか、思ってたんだけどきゅうりほっそいわね! ちっちゃいし。

 こんなトゲトゲしたイボも見た事無いんだけど。

 でも、その分味が詰まってて美味しいのよね……ピクルスにしてみたいわ。

 

 今度はイボにやられないよう、注意しながら洗う。

 無事に洗い終え、キッチンペーパーで水気を取って絹代に見せる。

 及第点は貰えたのか、そのきゅうりがまな板に置かれ、三本目のきゅうりを渡された。

 三本目、続けて四本目も洗い、準備は完了。

 

「では切って行きましょうか」

 

 包丁を持ち、きゅうりの頭とお尻を切る。

 白身を見せたきゅうりを三分割し、縦に立てて包丁を入れる。

 切ったきゅうりを90度回転させ、更にもう一度。

 トドメに四分割したきゅうりの真ん中に包丁を入れ、終わり。

 ……ではなく、折角切ったきゅうりを潰し始めた。

 

「え、何してるの?」

「こうすると繊維が潰れて、味が馴染み込むんです」

「へぇ……」

 

 なるほど……あれだ、逆トリートメントだな? 潰(シャ)し(ンプ)て(ーで)空いた繊(毛)維(穴)に、味を詰め込むってわけだ。

 納得する私をよそに、絹代の手は止まらない。

 手際よく残ったきゅうりも同様に切っていき、切り終えたきゅうりを軽く潰して、ポリ袋を取り出してその中に入れた。

 

「では、やってみてください」

 

 包丁の柄を向けて渡され、それを受け取る。

 きゅうりを手に取り、頭と尻を切り落とす。

 そして三分割し、縦に立てて包丁を入れ、90度回転させてもう一度。

 四分割したきゅうりの真ん中に包丁を入れ、完成。

 ……なんだけど……

 

「なんか不格好ね?」

「初めてなら上出来だとは思いますよ?」

 

 絹代の切ったものと違い、切り口が何故だか途中で斜めに歪んでいる。

 おまけに大きさが均等ではなく、極端に大きいものと、極端に小さいものがある。

 気を取り直して、残ったものも切るが、同様に不格好になってしまった。

 少し不満ではあるが、まぁ切れたしいいかと、軽く潰してポリ袋に入れる。

 

 三本目、四本目と切る度に綺麗に切れるようにはなっていく。

 しかし、結局最後まで切ったきゅうりは、不格好な姿を晒す事となった。

 

「では次です。私の言う通りに、材料を入れてください」

 

 塩、ごま油、すりおろしにんにく、鶏ガラ、いりごま。

 それらをそれぞれ、ミニスプーンで二匙ずついれ、ポリ袋の口を閉じる。

 

「あとはこれを軽く揉んで、漬物は完成です。冷蔵庫入れて寝かせると、もっと美味しくなります」

「結構簡単なのね。ピクルスとか結構面倒なのに」

「正直、手抜きではありますがね。手抜きをしてもいい所は、手抜きしちゃえばいいんです。変に手間を掛けて、結果美味しくなくなるよりは、そっちの方がずっといいでしょう?」

「確かにね」

 

 軽くポリ袋を揉み込み、冷蔵庫に入れる。

 次に、絹代は鍋と四角いフライパンを取り出した。

 今度は手抜きが出来ない料理なのか、色々と材料を出している。

 鍋に水を入れ、コンロに火を点けて、こちらを向く。

 

「では、まずお味噌汁の出汁から作りましょうか」

「出汁ってなに?」

「お味噌汁に味をつけるんです。これをしないと、お味噌湯になっちゃいます」

「へぇー、どうやるの?」

「水にカツオ節を入れて煮るんです。煮干しとか昆布とか、色々とやり方はありますけど、今日はカツオ節です」

 

 そう言って、なにやらひらひらとしたものの集合体を取り出す絹代。

 

「……え、なにそれ」

「カツオ節です。魚を干したものを削ったものですよ」

 

 えぇー……割と誕生経緯が気になるんだけどそれ。

 魚を干すのはまだしも、なんで削った? しかもこんな向こう側が透けそうなぐらい薄く。

 明らかに食べても腹は満たされないでしょこれ。

 しかも、これで出汁を取ろうとした人がいたって事でしょ?

 クレイジージャパン……

 

 割と本気で困惑する私を余所に、鍋に入れた水が沸騰し始めた。

 それを見て、絹代がわさわさしたカツオ節を私に渡してきた。

 

「これを入れてください。量は大体、水600ccに対して20gくらいですね。1200cc入れたので、大体40gです。丁度渡したのがそれくらいですよ」

「じゃあこれをそのまま入れればいいのね?」

「はい。入れた後は、すぐに火を弱めて下さい。風味が飛んじゃうので」

「分かった」

 

 コンロの摘まみに手を添える。

 手に持ったカツオ節をそっと鍋に入れ……すぐに摘まみを捻った。

 これでいいのかと絹代を見れば、頷いて卵を渡された。

 

「暫く煮るので、その間に卵焼きです」

「卵焼き、あれは甘くて美味しかったわね」

「ええ、それを作ります。まず卵を割って、それを溶きます」

 

 これに関しては言われなくても出来る。

 渡された9個の……9!?

 

「お、多くない……?」

「厚焼き玉子はそれくらい使いますよ。むしろ少ないと、薄焼き卵になっちゃって美味しくなくなってしまいます」

「そ、そう……」

 

 9個の卵を割り、溶き解す。

 なかなか溶けない卵白に、少し腕が疲れて来てしまう。それでも手は止めない。

 少しして卵白が目立たなくなった辺りで、砂糖を小さじで9杯、醤油を小さじで3杯入れ、更に掻き混ぜる。

 掻き混ぜ終えたら、次に三つの器に同じくらいの量を入れて分けた。

 

 サラダ油を金属製の器に少量注ぎ、その中に折り畳んだキッチンペーパーを入れる。

 それをフライパンに流すのかと思いきや、そっちには別で新しくサラダ油を流し込んだ。

 隅にまでサラダ油が浸透したのを見届け、火に掛ける。

 

「これは?」

 

 器に入ったサラダ油を指差す。

 

「それは焼いている間に、追加で塗りこむ為のものです。実際にやっているのを見れば分かりますよ」

 

 絹代が箸を卵に突っ込み、フライパンに垂らす。

 ジュッと音を立てて、一瞬で卵液が固まったのを見ると、一気に卵液の入った器の三分の一ほどを流し込んだ。

 じゅわぁっ、と甘い匂いを漂わせながら、ぶくぶくと泡を作る卵液。

 その泡に箸を刺して割り、出来た隙間に焼けていない卵液を流し込んで焼いていく。

 ある程度焼けたのを見ると、四隅に箸を立てて剥がし、手前から奥側へと向けて、卵を巻き始めた。

 あちこちがボロボロに剥がれた、小さな卵焼き。

 

「ここからどうするの?」

「こうするんです」

 

 サラダ油の入った器に浸かったキッチンペーパーを箸で取り、フライパンに塗り込んでいく。

 そして残った卵液の半分を流し入れた。卵を箸で持ち上げ、卵の下にも卵液を流す。

 後は同じ事の繰り返しだ。焼けたら巻き、油を塗って卵液を注ぐ。

 そうして出来上がった卵は、綺麗な長方形をしていた。

 卵を皿に移し、フライパンの前から退く絹代。

 

「さっ、やってみて下さい」

「えぇ……これ結構難しいやつじゃないの?」

「そうですね。中々綺麗に巻けるようにはならないかと。ですが、出来ると良い主婦感は出ますよ」

「やるわ」

 

 クスクスと笑う絹代を無視して、フライパンを掴む。

 確か、最初に油を流すんだったわよね。

 油を流し入れ……ちょっと多いわね。油の器に少し戻して、少し経ってから箸を卵液に浸ける。

 フライパンに垂らすと、ジュッと音を立てて固まった為、卵液を三分の一注ぐ。

 少し少ないかな……いや、変に足すのは失敗の素よ。これでいい。

 卵液に火が通るのを待つ。

 

 少しして、ブクブクと卵液に泡が浮き始めた。

 泡を潰して焼けていない卵液を流し……焼けてない卵液が無いわね。

 仕方なく四隅を剥がし、焦げるよりはマシと巻いていく。

 ボロボロの玉子。しかし、これは絹代もそうだった。形は二度三度と焼いて整えるのだ。

 二度目に流し込み、焼き、巻いて、三度目も焼く。

 

 そうして出来上がったのは、所々が焦げている癖に、ボロボロに剥がれた所から生焼けの中が覗く、とても食用とは思えない厚焼き玉子であった。

 ……あれぇ?

 

「まぁ初めてですから仕方ないですよ。あと一回ありますし、やってみましょう」

「うん……」

 

 しかし、出来上がったのは、ボロボロの塊だ。

 先程のものとは違い、食用には見える。しかし、美味しそうにはとても見えない。

 思わず肩を落としてしまう。

 

「あー、その……」

「んッ!!」

「!?」

 

 パァン! と頬を叩き、気分をリセットする。

 変に落ち込んでいると、教えてくれる絹代に失礼だ。

 それに、勇次郎はネガティブ思考な私はきら……うんざりしてる。

 慣れないけど、ポジティブポジティブ。

 

「次は何をするの?」

「え、あ……あ、はい。鮭の塩焼きです」

 

 鮭、切り身ね。

 絹代が軽く塩を指で摘まんで、トレーに乗った魚に振りかける。

 

「あまり振りかけると塩っ辛くなっちゃうので、軽くです。そしたら、これをレンジで温めます」

 

 電子レンジへとトレーを突っ込み、一分設定。

 それを終えると、絹代は弱火に掛けていた鍋の火を止めた。

 ボウルにザルを重ね、その上にキッチンペーパーを敷く。

 

「それは?」

「こうするんです」

 

 カツオ節の入った鍋を傾け、その中身を全てボウルに注いだ。

 キッチンペーパーとザルによる二重の防衛に、カツオ節は全て濾された。

 ザルを取り、キッチンペーパーを包んで、中のカツオ節ごとゴミ袋へと捨てた。

 

「そのカツオ節は使わないの?」

「使い道はありますが、今は使わないですね。さっ、これで出汁の完成です」

「綺麗ね……」

 

 僅かに黄色がかった、透き通るような液体。これが出汁か。

 絹代がスプーンで掬って、私に差し出してくる。

 それに食いつけば、深い味わいが口の中に広がった。

 風味が強く、しかし雑味が無い。すっきりとした上品な味だ。

 これだけでも、海鮮スープとして成立している。美味しい。

 

「厚焼き玉子に、砂糖ではなく、この出汁を入れる作り方もありますよ」

「へぇー、食べてみたいわね。上手に作れるようになりたいし、そっちも教えて?」

「構いませんよ!」

 

 出汁を再度鍋に入れ、火に掛ける絹代。

 既に暖まっていた出汁は、すぐに沸騰し始めた。

 それを見る事も無く、絹代は白くて四角い塊を取り出し、手の平に乗せる。

 それは、手の僅かな振動によって、プルプルと震えていた。

 

「豆腐です。少し切り方にコツがあるので、よく見ていて下さい」

 

 そう言って、絹代は豆腐を手の平に乗せたまま、包丁をストンと下ろした。

 唐突に行われた暴挙に、目を見開く。

 

「はァ!? ちょ、なにやって!?」

「大丈夫ですよ、切れませんから」

 

 包丁を上げ、切れた豆腐の隙間から手の平を見せる絹代。

 

「コツはスッと下ろして、スッと上げる事です。刃を動かすと切れてしまいますので、注意して下さい」

「~~~っ、それをする意味はあるの? まな板で切ればいいじゃない」

「そうすると、鍋に入れる時に豆腐が崩れやすくなってしまうんです。あと今は関係ないですが、まな板が汚れないので、すぐ次の作業に移れるという利点もあります」

 

 一応、真っ当な理由はあったらしい。

 確かに、乗せた手を僅かに動かすだけで、過剰なほどに身を震わせる豆腐。

 それをボチャボチャと鍋に落としたら、形など容易く崩れるだろう。

 しかし手なら、上手く匙加減をして優しく流し込める。

 まな板が汚れないというのも良い。肉を切ったりすると、血とかで汚れるからね。

 逐一洗うのは面倒だし、それと似た事が起きるのを防げるのは大きい。

 とはいえ……

 

「心臓に悪い……」

「あはは、すみません。でも、これが出来ると便利ですよ」

 

 まぁそうなんでしょうけどね。

 スッ、スッ、と手際よく賽の目状に切り、鍋に流し込む絹代。

 そして、私に豆腐の入ったパックを向けてきた。

 手の平を差し出すと、その上に豆腐を落とされる。

 落ちた振動で、プルプルと身を震わせる豆腐。

 ホント脆いわね……

 

 包丁を受け取り、絹代の見様見真似で包丁を入れる。

 スッと落とし、賽の目状にカットしていく。

 大小の差はあれど、綺麗に切れたそれを、鍋に入れた。

 

「では次です」

 

 絹代が、なにやら黒い棒を何本も取り出した。

 それを鍋に入れる。出汁を吸い、少しずつ解れていく黒い棒。

 

「ワカメです。海藻の類で、お味噌汁によく合うんですよ」

「へぇ、この黒い棒が……」

 

 屋敷で出てきた味噌汁に入っていた、緑色のひらひらとしたもの。

 この黒い棒がそれねぇ。とてもそうには見えないけど。

 受け取ったワカメを、同じく鍋に入れる。

 

「さて、最後です。メインの鮭を焼きましょう」

 

 レンジから切り身を取り出し、丸いフライパンを取り出す絹代。

 油は引かず、火も点けず、ただ切り身を並べた。

 そうしてやっと、中火に掛ける。

 

「油は?」

「引きません。鮭自身の脂で十分です。油を引くと脂っこくなってしまいます」

「最初に火に掛けなかったのは?」

「フライパンが温まった状態で入れると、表面に一気に火が入って身が縮んで硬くなるんです。それを防ぐ為ですね」

「そうなんだ……」

 

 そこから、三分ほど放置。

 その間に絹代は、私の作った生焼け玉子をレンジに掛け、中に熱を通していた。

 使ったまな板や包丁などを洗い、洗い物を片付ける。

 折角料理を教えてくれたのだ、これくらいはやりたい。

 そうしていると、絹代が箸を取った。

 

「見えますか? 鮭の下部分が白くなっているのが」

「これね?」

 

 フライパンに接した側から、約三分の一程度が白く染まっている。

 肉と同じ、しっかりと火が通っている証拠だ。

 絹代は、箸で切り身をひっくり返すと、フライパンに蓋を被せた。

 ガラスの蓋が、蒸気に触れて白く染まっていく。

 

「こうなったらひっくり返して、蓋をしてまた三分です。それで終わりなので、お味噌汁も終わらせましょう」

 

 フライパンは放置して、鍋の火を弱火にする絹代。

 茶色の塊を取り出し、箸で摘まんでお玉に乗せる。

 そして、それを私に手渡してきた。

 

「少しだけ出汁を掬って、その上で掻き混ぜて溶かして下さい」

「出汁に直接浸けたら駄目なの?」

「そうすると、溶け切らずにダマになる可能性がありますから。火を弱めたのもそれです。味噌の風味は酵母によるアルコール成分ですから。火が通り過ぎると、風味が飛んでしまうんです」

「ほへー」

 

 色々と気を遣う必要があるのねぇ……

 お玉に僅かに出汁を掬い、箸で掻き混ぜる。

 出汁が茶色に染まる度、鍋に戻して新しく出汁を掬う。

 それを、味噌が溶けて無くなるまで繰り返した。

 これで、お味噌汁は完成だ。

 

 お玉を洗い、皿を用意。

 卵を五等分に切り、切断面が上になる様に並べる。

 小皿に冷蔵庫から取り出したきゅうりの浅漬けを入れた。

 

 そこまで準備をしたところで、フライパンの蓋を取る。

 紅色をしていた鮭の切り身は、今や綺麗な焼き色が付いていた。

 鮭を皿に取って、これで調理は完了。

 朝ごはんの完成だ。

 

 あとは勇次郎を待つだけ。

 そう思った瞬間、脱衣所の扉が開いた。

 

「ン、出来てるのか」

 

 さぁ、朝ごはん(決戦の時)だ。

 

 

 

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