※この作品はR-18です。

世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話   作:白髪ロング娘スキー

43 / 55
第四十二話 新居

 

「へぇ~、ここが」

 

 住宅街の奥、大通りから外れた細道の先にその家はポツンと建っていた。

 木造の屋根に、木造の壁。木の枠にガラスが嵌め込まれた横開きの引き戸。

 特に何の変哲もない、平凡な一階建ての木造の一軒家。

 強いて言えば、何故か玄関の横に、裏口の扉が設置されている事くらいか。

 裏口なのに表にあるというちぐはぐさが、何だか少し面白い。

 

 勇次郎に聞けば、それは裏口ではなく勝手口というのだそう。

 玄関とは違う、キッチンの隣に作られるもう一つの玄関のような物らしい。

 ふぅ~ん、built-in Garage(ビルトインガレージ)*1みたいなものかしら。

 あれはもう、そっちの方が玄関みたいな扱いになってるけど。

 

 中に入ればキッチンと繋がったリビングがあり、寝室は一つ。風呂とトイレは別の1LK。

 少し広めとはいえ、前の家と比べるとどうしても狭い印象は受けるか。

 二人で生活する分には、それほど困る事は無いだろう。

 

 と思っていたら、まさかの地下があった。

 壁に埋め込まれた梯子(はしご)を降りた先にあったのは、一面コンクリートの密室。

 部屋の中には大小様々なダンベルやバーベルなどの鍛錬器具が設置されており、片隅にはシャワールームが設置されていた。

 見た目からして、どうやら食料の保存庫というよりはトレーニングルームのようだ。

 広さは地上の家の間取りとほぼ同じくらいか。

 勇次郎曰く、完全防音なのだそう。

 なんでも、光成に言って作らせたらしい。

 

 ……なんとなく、この地下室の使い道が察せてしまった私がいる。

 これからは、近所迷惑で訴えられる事は無さそうだ。

 いやまぁ、普通にトレーニングルームとしても使うんだろうけどね。

 寝室が寝室の役割を果たせるのは、少し遠い未来になりそうだ。

 

「まるで勇次郎みたいな家ね」

「どういう意図で言っているんだそれは?」

 

 辺り一面にコンクリート住宅が立ち並ぶ中、まるで俺がこの一帯の王だとばかりに、でんっ! と木造の一軒家が堂々と建っている様が似てるから。

 なんというか、平凡の中にある異端というか、目に付くのよね。

 でもちゃんと中に人間の心はあるというか。

 上手く口には出来ないけど、そういう感じだ。

 

 眉を僅かに吊り上げ、疑問そうな顔で見下ろしてくる勇次郎に、なんでもないと首を振る。

 言ってもどうせ認めないし、私も説明しきれる気はしない。

 多分、これは少しでも勇次郎を理解出来た人間にしか、共感してもらえない感覚だろうから。

 

「にしても、なんで引っ越ししようなんて思ったの?」

 

 地下から地上に戻り、リビングにて。

 胡坐を掻いて座った勇次郎の膝に足を投げ出して座り、彼の首に腕を回して抱き着く様に見上げる。

 口をついて出たのは、結局今の今まで一度も説明の無かった引っ越しの理由についてだ。

 

「不満か?」

「この家に不満は無いわよ。勇次郎がしたいなら、私は受け入れるしね。でも私は妊婦だし、前の家なら何かあった時に絹代が駆け付けてくれるし、前の家のままの方が良かったんじゃないのかなって」

 

 実は、今の家も別に前の家からそう遠い訳ではない。

 前の家との距離は、徒歩で大体5分くらいといった所か。

 何かあっても、助けを呼んだ時に絹代がすぐさま駆け付ける事は出来るだろう。

 

 だが、前の家は絹代の住む家から徒歩10秒だ。

 妊婦である私にとって、どちらの方が安全かは言うまでもない。

 そんな事は勇次郎は百も承知だろう。

 私が聞きたいのは、それを理解した上で何故、この引っ越しを敢行したのかという事だった。

 

「それを抜きにしても、料理やら洗濯やら……絹代にはかなり助けられてたでしょ? なのに絹代を遠ざけるような事をしたのは何でかなーって」

 

 朝昼晩の料理から、事後の布団やら着物やら、専用の洗い方をしなければ洗い辛いものの洗濯。

 風呂焚きに掃除に細かな私の身の回りのお世話など、絹代のしていた事は多岐に渡る。

 途中からは、私も絹代に教わって色々やり始めたから、私も一通りの家事はお付きの女中クラスに熟せる様にはなっている。

 とはいえ、やはり二人と一人では効率がまるで違う。

 

 勇次郎に抱き着きながら、そんな疑問を零す。

 別に答えたくないならそれでもいいけど。

 最後にそう付け加えて言葉を止めると、勇次郎が口を開いた。

 こいつは何を言っているのかと、不思議そうな目で。

 

「……お前は、情事を交わす男と女の家に友人を住まわせるのか?」

「それを言われると痛いけど……今更じゃない?」

 

 もうあの生活を始めて2か月ちょっとは経ってるわよ?

 それに、絹代は友人だけど女中でもあるし、メイドのような存在と思えばそこまで違和感は無いと思うけど。

 

「別にあの女が邪魔という訳ではないがな。お前は少々あの女に依存し過ぎだ」

「そんな事は無いと思うけどなぁ……」

 

 首を傾げる私に、勇次郎が手を掲げた。

 そして開いた手の指を、一本折る。

 

「朝の起床」

「自分で起きる事もあるけど、絹代が起こすわね」

 

 最近では、事後の朝に絹代が来るまでに起きれない事も多くて、換気が出来ていない事が多い。

 何というか、セックスだけの疲れにしては、異常なくらい体が怠いのよね。今なら妊娠の影響だって分かるけど。

 勇次郎に関しては、起きても私を起こしたりしないしね。換気なんてする訳もない。

 もう完全に諦めたのか、絹代も何も言わない。

 あのアイアンクローで、不満が溜まってたのは心底理解したけど。

 

「朝飯の用意」

「寝過ごして絹代に作って貰ってるわよねぇ」

 

 勿論、私が朝に起きる事が出来た時には手伝うけど、最近は一週間に2日ほど手伝えればいい方だ。

 お昼と夜はちゃんと手伝ってるから許して? って言うと、

 

「元々女中の仕事ですし、許すも許さないもありませんよ。お手伝い頂けるだけで楽になりますし、ありがたいです」

 

 なんて返されちゃうし。

 少し絹代の優しさに甘えてる感はあるかな。

 

「着替え」

「着物って一人だと着づらいのよねぇ……」

 

 前みたいに体が勝手に動けばいいんだけど、もうそんな事も無くなったし。

 頑張って一人で着ても、左前になっていますよ、とか、帯の締めが緩いですよ、なんて言って直されちゃうし。

 もう面倒臭いから、最近では着る着物の種類も含めて、全て絹代に任せている。

 絹代が居ない時には、紐で縛るだけの簡単着付けだ。

 

「化粧」

「……一人だと、はい。出来ないです」

 

 前の私なら、化粧なんてしなくてもいいと思っていたのだけれど、今は勇次郎がいる。

 勇次郎の前では少しでも綺麗な私でいたくて、それでも自分でやると折角の美貌がファニー・フェイス*2になる。

 なので、こちらも絹代頼りだ。

 着物の着付けもそうだけど、絹代も私に化粧をしている時は楽しそうだし、ならいいかと任せきりだ。

 

「買い物」

「最近は錦帽子をしてても人が群がってきちゃうのよねぇ……」

 

 最強の防御手段だった錦帽子をしていても、最近では私の美貌がそれを貫通してしまうのか、ジロジロと見られてしまう。

 絹代が言うには、最近美貌以外にも腰付きや動作などに色気が増してきたらしいから、多分その所為なんだろう。

 そして、幾ら鼻まで隠しているとはいえ、そこまでジロジロ見られてはどうしようもない。

 最後にはナンパやスカウトの嵐となり、絹代か見かねた警官に助けてもらう事になる。

 それを3回ほど繰り返した結果、もう私は地下闘技場に行く時以外は、外出すらしなくなってしまった。

 

「依存していないと言えるか?」

「バッチリ依存してますねぇ……」

 

 こうして並べられると、私がどれだけ絹代に頼り過ぎてるかが分かるな。

 今勇次郎が挙げたのが5つというだけで、他にも色々と絹代には頼りっぱなしだし。

 私のお世話があるから、大山との付き合いを深め過ぎないようにしてるみたいだし……

 そう考えると、絹代に暇を出すのも悪い話でもないのか。

 私の自立という意味も込めて。

 

「でも他4つと比べて、最後はどうしようもないわよ? 勇次郎と二人暮らしになったら、必然私が買い物に行く事になるんだけど」

「俺がついていけばいい」

「まぁ確かに勇次郎がいれば、有象無象は寄って来な……勇次郎が買い物についてくる!?」

 

 え、なにそれどういう絵面?

 買い物カートを押しながら、今日牛肉安ーい! とか言ってる私の後ろに勇次郎がムスッとした顔で、周りを威圧しながらピッタリ付いてくるの?

 え、え、なにその面白い絵面、凄い見たいんだけど。

 夫婦みたいじゃん!

 

 ……ん? 夫婦みたい?

 

「……もしかして、勇次郎さ」

「なんだ」

「夫婦は二人で暮らすもの、とか考えてる?」

「………………」

 

 一見そうは見えないが、勇次郎は割とルールというか、模範的な規則などを守るタイプだ。

 必要に応じて、はたまたその時の気分で破りこそするものの、平常時は黄色信号で止まったり、何処から稼いだのかは知らないが、買い物の際にはちゃんとお金を出して買う。お釣りは受け取らないけど。

 私が誘いを掛けた時や、ホテルなどの正式な場にはジャケットを着用したりもする。

 一見分かりにくいものの、勇次郎の中にはいざとなれば破りはするが、そうでない時は守ってやろうと考える一定ラインのルールのような物があるのだ。

 その暴虐の悪魔の如き力を、平和な日本で無暗に振るわずに、戦場を渡り歩いていた辺りからもそれが読み取れる。

 

 そんな彼が、夫婦は同居するものだと考えていたとしたらどうか。

 ドレスの時もそうだが、なんだかんだで勇次郎の心の何処かに尊敬の気持ちがあるらしい、彼の父たる範馬勇一郎。

 もしかしたら、彼が共に妻と仲睦まじく二人で暮らしていたのかもしれない。

 それを見て育った勇次郎が、夫婦は基本同居して二人だけで暮らすものだと考えていたとしたら。

 

 憶測だらけの私の言葉に、勇次郎はただ静かに目を瞑り、何も答えなかった。

 反応は無く、しかし言葉にするよりも雄弁なその動作に、私のテンションメーターは即座に振り切れた。

 身体が歓喜にわなわなと震える。

 

「I fancy you(大好きぃぃぃ)!!!」

「んっ」

 

 抱き着いたまま、投げ出していた足で地面を蹴る。

 胡坐を掻いていた勇次郎が後ろに倒れ、その上に私が圧し掛かった。

 湧き上がる愛情のままに、力いっぱい勇次郎を抱きしめながら、スリスリと顔を首筋に擦り付ける。

 呆れたようにため息を吐きつつも、勇次郎は鬱陶しいと私を突き放す様な事はせず、手をポケットに入れて黙ってされるがままになっている。

 それに甘えて、私も遠慮せずに体をベタベタと密着させて引っ付く。

 

 暫くそうしていると、ふと勇次郎の耳に垢が少しあるのに気付いた。

 恐らく、自然に剥がれ落ちる前の物なのだろう。乾燥していて、耳肌に僅かにくっ付いている形だ。

 多分、放っておいても明日辺りには取れていると思われる。

 けれど、今の私は勇次郎に何かをしてあげたい気分だった。

 

「ね、勇次郎」

「今度はなんだ……」

「耳掃除してあげる」

「あァ?」

 

 何故か気怠げにしている勇次郎の上から退き、耳掻きを取って戻る。

 勇次郎の頭の傍に正座で座り、ポンポンと太ももを叩いた。

 

「ほら、頭を乗せて」

「いらん」

「するの」

「しなくていい」

「す・る・の!」

 

 面倒そうに断る勇次郎の頭を掴み、無理矢理太ももに乗せた。

 乗せた後も嫌そうに頭を持ち上げようとする為、抑える手を退かされる前に、さっさと耳掻きを勇次郎の耳穴に突っ込んだ。

 それを感じたのか、勇次郎がピタリと動きを止める。

 

「んふふ~♪ それでいいのよ。変に動いたら傷ついちゃうからねー?」

「……チッ、さっさとしろ」

 

 舌打ちをされるが、何故か苛立ちは見えない。

 不思議な態度の勇次郎に、少し疑問を覚えつつも、取り敢えずはチャンスだと勇次郎の頭を横に向かせ、耳穴と視線を縦に揃えた。

 耳たぶを親指と人差し指で摘まみ、少しだけ引っ張って穴を広げる。

 勇次郎の耳たぶは想像以上にモチモチとしており、少しだけフニフニと揉み込んでしまった。

 眉を寄せてさっさとしろと再度促されたため、耳たぶを揉むのを止めて、耳穴を覗き込む。

 

「おぉ~……」

 

 想像以上に綺麗だ。

 殆ど耳垢なんて付いていない。

 私が気付いた、少し大きめの耳垢が一つ。

 後は注視しないと気付かない様な、小さいのが2~3個あるだけ。

 

 これ耳掃除する意味ないなぁ。

 そんな事を考えつつ、耳掻きで耳垢を優しくこそげ取る。

 当然ながらすぐに終わってしまい、最後に梵天を使ってから勇次郎の頭をひっくり返し、反対の耳に移る。

 しかし、こっちも殆ど耳垢なんて付いていない。

 大きいのが無いぶん、むしろこっちの方が少ない。

 

「む~……」

「自分からやっておいて随分と不満そうだな貴様」

「だって……やり甲斐が無いというか……」

「フンッ、だからいらんと言ったんだ」

 

 そう言う勇次郎に、私はしょぼんとしながら、梵天を耳穴に入れて軽くクルクルと回した。

 両耳の掃除時間は僅か1分程度。本当にやり甲斐が無い。

 この昂った気分をどうしてくれるのかと、八つ当たりしたい気分だ。

 私にお前を愛させろッ!

 

「むぅ……」

 

 不満を抑えもしない私に構わず、抑えが無くなった勇次郎が、ムクリと身体を起こす。

 そして私の手にある耳掻きを奪い取り、胡坐を掻いた。

 耳掻きを持った手とは逆の手を私の後頭部に回し、ぐいっと引っ張ってくる。

 突然の事に対応が出来ず、私は引っ張られるがままに、勇次郎の足に額をぶつけた。

 

 勇次郎は痛みに頭を抑える私の腋に手を回し、再度引っ張った。

 体が持ち上げられ、私の頭頂部が勇次郎の腹に当たった。

 

「いったぁ……急になにぃ?」

 

 流石にいきなりこんな手荒な扱いをされては不満も出る。

 私は勇次郎に何をされても最終的には許しちゃうだけで、嫌な事は嫌というのだ。

 不満節全開で勇次郎を見上げると、勇次郎は何処か楽し気に私を見下ろしていた。

 

「耳掃除の褒美だ。俺が直々にお前の耳を掃除してやる」

「……えっ」

 

 勇次郎の言葉に、思わず動きを止めた。

 ……私、最後に耳掃除したの何時だっけ?

 記憶を辿り、一週間前に絹代にやって貰った事を思い出す。

 時期としては、既に耳垢が溜まり始めていてもおかしくない頃だ。

 

「ちょっ、いや!?」

 

 慌てて体を起こそうとして、頭を抑えられた。

 即座に耳穴に耳掻きが突っ込まれてしまう。

 無理に暴れれば、耳の穴に傷が付きかねない。

 私は体の動きを止めざるを得なかった。

 

 クソッ、意趣返しかこの意地悪めっ!

 

「おいおい、折角この俺が耳掃除をやってやろうというのに、何を嫌がる事がある?」

「汚れてる耳穴を好きな男に見られたい女がいると思う!?」

「お前が言うのかそれを……」

 

 呆れた様にそう言って、勇次郎が手を動かした。

 ザラザラとした、筋肉質な硬質化した指が私の耳たぶを摘まむ。

 視界の外で耳たぶが、ふにふにと弄ばれる感触に、まるで愛撫をされているかの様に感じて、ビクリと体が震えた。

 

 ゆっくり、ゆっくりと耳の穴の中に耳掻きが差し込まれていく。

 ガサゴソと、鼓膜に直接耳穴を弄られている音が叩きつけられる。

 ヘラ状の先端が内壁を優しく撫でる度に、耳穴を傷付けられるのではないかと、体が本能的な恐怖に強張る。

 

「変に緊張するな」

「だって……」

 

 どう見ても、他人に耳掃除なんてした事無さそうなんだもん。

 何時、あっ、とか言って鼓膜まで耳掻きが突っ込んでこないとも知れない。

 流石にいくら何でも恐怖体験が過ぎる。

 

「安心して身を任せろ。変に緊張していると、無駄にやりづらい」

「うぅ……匂い、匂い嗅がせて」

 

 勇次郎に一旦耳掻きを抜いてもらい、勇次郎のお腹に顔を埋める。

 少し野性的な匂いの混じった勇次郎の体臭に、すっかり調教されてしまった体が、安心してやんわりと弛緩していく。

 それを見て、再度勇次郎が耳掻きを突っ込んだ。

 

 カリカリ……ガサゴソと。ヘラの先端が耳垢を削る。

 時折乾いた音が鼓膜を叩き、その度に勇次郎が内壁を引っ掻く様にして耳掻きを引き抜いていく。

 耳穴の中の老廃物がこそげ取られ、摘出されていく感覚に、腹の底から何か熱い物が込み上げてくる。

 

 用意したティッシュに耳垢だろうものを落とされ、再度耳穴に耳掻きが戻されていく。

 明らかに、勇次郎の耳とは比べ物にならない程に時間が掛かっていた。

 つまり、イコールでそれだけ私の耳穴が汚れていたという証でもある。

 それを勇次郎に見られて、あまつさえ掃除してもらっているなど、恥ずかしいにも程がある。

 羞恥に赤くなる顔を、更に強くお腹に押し付けて隠す。

 

 掻いては離し、また掻いては離す。

 絹代にやってもらっていた時は、明らかに違う。

 やっている事は同じ耳掃除でしかないのに、一つ一つの動作に体が震える。

 色気があるというか、なんというか。好意による補正が掛かっているのかもしれないが。

 

 暫くして、勇次郎がティッシュの端でヘラを拭いた。

 漸く掃除が終わったのだろう。安堵に体から力を抜く。

 その瞬間を狙い澄ましたかのように、ぞぼり、と何か柔らかい物が耳の穴に突っ込まれた。

 ガサガサ、ゴソゴソと。耳穴を蹂躙し尽くし、それが引き抜かれていく。

 チラリと見れば、白い梵天が僅かに汚れているのが見えた。

 

「~~~~~!」

「ッ、っ……」

 

 勢いよく顔面をお腹に叩きつける。

 一瞬勇次郎の体が強張り、すぐに緩んだ。

 

「全く、耳掃除をしてやったというのに随分な礼だな」

「うぅ~~……」

「そら、次だ。反対を向け」

「え」

 

 まだやるの? と一瞬思い、そう言えば耳は二つあったねと思い至った。

 いや私、今の時点で大分キツいんだけど?

 羞恥的な意味でも、股間の濡れ具合的な意味でも。

 

 呆然とする私の頭を掴み、勇次郎が無理矢理反対側を向かせる。

 必然、掃除した耳垢が乗ったティッシュが見えてしまった。

 茶色の粒が幾つか乗ったそれが、元々は私の耳の中に入っていて、勇次郎に掻き出して貰ったものなのだと突き付けて来る。

 

「~~~~~!!!!!」

 

 お腹に顔を埋めて隠す事も出来ず、私は羞恥地獄を味わう事となった。

 

 

 

 ——— ———

 

 

 

「そら、終わったぞ」

「はぁ……っ、はぁ……っ」

 

 所詮はただの耳掃除。

 にもかかわらず、私は疲労困憊であった。

 ティッシュには米粒程度の茶色い山が出来ている。

 なんというか……穢されてしまったという感じだ。

 

「ッ、絶対に責任取ってもらうからッ……!」

「ガキを腹にこさえて何言ってやがる」

 

 苦笑しながら勇次郎がティッシュを丸め、ゴミ箱に放り込んだ。

 そして耳掻きをリビングのテーブルに置き、すくっと立ち上がる。

 

「……? どこ行くの?」

「地下だ。鍛錬をしてくる」

「そう、行ってらっしゃい。晩御飯は何がいい?」

「ステーキは入れろ。後は任せる」

「分かった」

 

 さっき確認した時、確か冷凍庫にステーキ用の肉があった筈だ。

 それを焼いて……メカブと胡瓜の浅漬け。後は……焼き魚でいいかな。

 味噌汁は適当に昆布と油揚げでいっか。

 

「そしたら、早めに仕込みをしないとね」

 

 地下に入って行く勇次郎を見送ってから、気怠い体を起こして立ち上がる。

 胎が疼いている。今日は少し激しめにしてもらおう。

 そんな事を考えながら一歩踏み出し……胸に感じた違和感に、膝を突いた。

 

「けほっ、けほっ……」

 

 零れ出た咳を手で抑える。

 少しして咳は収まり、胸の違和感も無くなっていた。

 膝に力を入れて立ち上がり、口元を抑えていた手を外す。

 

「……えっ」

 

 その手の平は、赤黒い液体に濡れていた。

 

 

 

*1:
建物の一部に駐車スペースを組み込み、車の出入り口にシャッターやドアを設置したガレージ。アメリカは車社会のため、この形式の家が多い。

*2:
良く言えば個性的だけど魅力的な顔立ちのこと。悪く言えばおかしい顔。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。