世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話 作:白髪ロング娘スキー
お腹に当てられていた聴診器が離される。
ドクターが笑顔でウンウンと頷きながら、テーブルの上に置いてあったコーヒーを手に取って啜った。
彼の様子は、暗に健診の結果が良好であったという事を示している。
その事に、思わず安堵の息を吐く。
ドクターが、手に持ったコーヒーのカップをテーブルの上に置いて、健診の結果が記載された資料や写真を束ねてから、机にトントンと当てて上下左右を揃えて、直接私に手渡してきた。
渡された資料と写真の束を受け取り、様々な私の肉体のデータが記されたそれに、一つ一つ目を通していく。
所々、私には理解出来ない単語が出て来る事もあったが、それでも全ての情報をしっかりと読み込んで行く。
全体的に肉体が弱く、出産には少し母体が危ういという評価こそ出てはいたが、少なくとも出産不可能レベルの深刻な問題は無さそうに思えた。
肉体の脆さは、食事を無理にでも取って、お腹に負担を掛けない運動をすればいい。
病弱な事に関しては、胎児の様子も見ながら、薬を調合して飲めばいい。
ここまで弱い母体は流石に珍しいが、全く見ない程では無いという。
少なくとも、ちゃんと出産までに肉体を補強していけば、出産に問題は無いらしい。
その事に、私の体から力が抜けていく。
少なくとも、このままいけば無事に出産は出来そうだと安心したからだ。
……ただし、その安心も、その文字を見るまでの短い間であった。
「あの」
「ん~?」
「この文字、間違えてない?」
手渡された資料の、とある一点を指差す。
私の指はプルプルと震えており、私の焦る内心を如実に語っていた。
しかし、ドクターはそんな私を見て、特に何か考える事も無く即答する。
「別に間違えとりゃせんよ? 今の時点で5ヵ月目やな。元気に育っとる育っとる」
「……えぇ……?」
——— ———
迷子の子供を親御さんの元へ送り届けてから、私は光成と合流した。
予想通り護衛を連れて、自ら迎えに来ていた彼と共に、軽く談笑をしながら地下闘技場の医務室へと向かう。
何気に初めて訪れる地下闘技場の医務室。
そこには、今回の健診の為に機材を用意したのか、医務室に設置する物としては少し巨大に過ぎる機械が、幾つも部屋の中に設置されていた。
部屋の中を見回す私に、光成が紹介したのは、光成とそう変わらない年齢に見える一人の老人。
白髪交じりの髪に、分厚い丸眼鏡。
ペイズリー柄のネクタイを締め、くたびれた白衣を身に纏う姿は、如何にもな歴戦のドクターを思わせる。
彼はまず私に検査衣を私に着せると、早速とばかりに、水をたっぷりと飲ませてから健診を開始。
光成はあんまし見られたくないじゃろ、後で結果だけ教えとくれと言って、早々に退散して行った。
ドクターはまずメジャーでスリーサイズと身長を確認し、次に体重を測定した。
血圧計で血圧を測ると、そのままゴムチューブを腕に巻き、注射をして血液を採集。
尿意を訴えると蓋の着いた紙コップを渡され、中に尿を注いで渡すと、そのまま検査機にかけられた。
最後にレントゲンを撮ってから、長音波で胎児の様子を確認して健診は終了。
何気に、ここで初めてちゃんと赤ちゃんの姿を見たので、丸まっている胎児の姿に、これが私の子供かと少しの感動を覚えてしまった。
所々に挟まれる、軽薄と言ってもいいドクターの言動には少々顔を顰めそうにはなったものの、しかし彼の仕事は丁寧であった。
テキパキと動く彼の健診は、慣れと経験を感じさせた。
光成の言葉が正しければ、彼はあくまで外科医であって、産婦人科医ではない筈なのだが……
言動は兎も角、一ドクターとしてはしっかりとした技術があって、信用の出来る相手であった。
まぁ勇次郎の子を孕んだだけで、最高級ホテルの最上階を永久貸し切り、なんて事をするあの光成が、
そんな相手が、歳だけ食ったヤブ医者である事は、まずあり得ないと言っても過言ではなかった。
……筈なんだけどなぁ……
「……あの」
「なんじゃい」
「私、初体験が2か月半前なんですけど」
「あん? んな訳ないやろ、そんな腹の膨れ方しとって」
恐る恐る発した私の言葉に、ドクターが眉を寄せた。
彼の指差す先には、検査衣の形を歪めている、私のお腹にあるオレンジ程度の小さな膨らみがある。
「検査の結果にしてんそうやわ。2か月半はありえん」
「いや、ほんとに。光成に聞けば分かるわよ」
「……マジかい?」
「マジよ」
ドクターの額に汗が浮かぶ。
にやにやと笑みを浮かべていた表情が、どんどん顰められていく。
「……ちぃと立ってもらってもええかの?」
「ええ……構わないけれど」
顔を歪めたまま、ドクターが私を立ち上がらせた。
そして私に見える様に、手を掲げる。
「すまんが、腰に触るでぃ」
「……何の為に?」
「骨盤の確認のためじゃ」
「骨盤?」
ドクターが言うには、普通は赤ちゃんが成長するにつれておなかも大きくなり、その分腰や骨盤への負担がかかるらしい。
その原因が、母体がリラクシンなるホルモンを出し、出産に向けて関節や靭帯、筋力、骨盤が徐々に緩んでいく所為なのだとか。
その影響で、骨盤の矯正をしないと、分かる者には触っただけで、妊娠期間が何となく分かるのだという。
彼はその緩み具合を確かめて、凡その妊娠期間を探りたいのだと言った。
「光成の奴に嫌がるだろうから、あんまし体には触れんでやっとくれと言われとった。やから触診は避けちょったんやが……流石に真剣な顔して2か月半と言われてはの」
説明をするドクターの目は真剣で、不穏な気配の欠片すらも無い。
……一瞬、不埒な事を考えているのではないかと思った自分が恥ずかしい。
最近、私を性的に狙う者が多すぎて、少し過敏になり過ぎているようだ。
真っ直ぐ立ったまま、腕を上げて左右に広げる。
「はい、どうぞ」
「んむ。触るでぃ」
ドクターの手が、襦袢越しに私の体に触れた。
反射的に湧いた僅かな嫌悪感を抑え、触診に耐える。
腰に当てられた手が、腰骨を掴んで内側に閉じたり、外側に広げる。
次に、鼠径部を指で押された状態で、再び内に外にと動かされた。
それが終わったら、後ろに回ってもう一度同じように腰を動かす。
暫くの間、ドクターは私の腰を触診してから、もうええと言って私を座らせた。
信じられないものを見るかのように、顔を歪めたまま首を傾げるドクター。
「んんんむ、なんだこりゃあ……?」
「どうかしら?」
「マジにほとんど緩んどらん。この腰付きだけ見りゃあ、妊娠1ヶ月辺りと言われても信じるわい」
加えて骨盤が緩んでいくと、それに伴って尻が多少膨らんで大きくなるものだが、それもパッと見る限り無さそうに見えるという。
お腹の膨らみを考慮に入れても、黄金比の見本とも言えるような、完璧なスタイルらしい。
「妊娠5か月。しかも骨盤の矯正も無しでこれはありえん。相当体がしっかりしてるなら兎も角……」
「むしろ病弱で弱いわね」
「そこは検査しちょっても思っとった。まぁこれから改善してけばええかと思うてたんやけどな……」
顔を顰め、ポリポリと頭を掻くドクター。
歪んだ表情に、内心の焦りを感じる。
「んむむ……体の状態と赤子の大きさが、まるで一致しちょらん。成長が早いにしたって限度がある。なんか心当たりとかはないんかィ?」
「ん~……放華、かな?」
放華は、疑似生命エネルギーを生み出して、身体活性や傷の治癒を促す技術だ。
もしもこのお腹の子が、私が産みだした疑似生命エネルギーを、成長の為に吸収していたとしたら?
そう考えると、一時は完全に治まっていた発作が、再発したのにも納得がいく。
病弱な体を治癒する為の疑似生命エネルギーが、赤子に吸われて治癒出来るだけの量が残されていないという事になるのだから。
ついでに言えば、多分それだけではない。
たった今、そうなのではないかと考えて意識を向けた結果、漸く気付く事が出来たのだが、妙に放華の出力が弱いのだ。
まるで何かに邪魔をされているかのように、上手く気が練れていない。
私の生命の鼓動が、別の波長に乱されている。
恐らく、この波長は赤子の生命エネルギーの波だろう。
一つの肉体に、二つの異なる生命エネルギーが混じっている。
その影響で、放華を上手く使えていない。
ただでさえ、妊娠をして弱まった放華。
生み出しても生み出しても、全て赤子に吸われる生命エネルギー。
私自身の身体活性に充てる事が出来ず、病への抵抗力の下がった肉体。
抑えていた病症が、ここぞとばかりに侵攻。
結果として発作が起きたと。
多分というか、絶対これだな。
理屈が通っている。
こんな事、勇次郎には絶対に言えないな。
馬鹿かテメェと怒鳴られて失望される光景が、ありありと浮かぶ。
一分一厘反論の余地も無い程に、子を身篭った母親として、格闘家として、なにより勇次郎の女として有り得ない初歩的なミスだ。
いくら無意識で使えるようにしてオートで行っていたとはいえ、こんな重要な事にすら気付かなかったのは、流石に気が抜け過ぎだろう。
勇次郎との生活に浮かれ過ぎだ。
危機感の欠如としか言い様が無い。
自分で自分に心底呆れ返る。
「よー分からんが、心当たりはありそうやの」
「ええ」
「にしても困ったのぉ……赤子の成長に対して、体が全く出産の準備が出来とらん。このままやと帝王切開やで」
帝王切開。
私の腹を切り裂いて、直接赤子を取り出すという事か。
「帝王切開をすれば、出産自体は出来るの?」
「出来る。むしろ母体への安全性を考えると、こっちのがおススメやの。けど、あんたの体の弱さやとなぁ……」
「私が死んじゃう?」
「……医者として言わせてもらうなら、今回は
……そっかぁ。
死にたくないなぁ……もっと勇次郎と一緒にいたい。
でも……産みたいよなぁ。
手の平を広げる。
医務室に来る前に、地上で送り届けた少年の手。
優しくて、他人に思いやる事が出来て、でも子供なんだと分かる小さな手。
そんな少年の暖かさが、まだその手の平に残っているような気がした。
ぎゅっと手を握り締める。
……よしっ、決めた。
「一つ聞きたいのだけど、いいかしら」
「なんでぃ」
「私持病があるのよね。これが子供に遺伝することは?」
「この胎児の様子なら、まずなかろ。しても幼い頃なら十分治せるやろな」
それならいいや。
不安材料は消えて無くなった。
「ねぇ、お願いがあるのだけどいいかしら?」
「なんでぃ」
「私の帝王切開の手術、貴方がしてくれない?」
「……あん? 死ぬ可能性が高いんよ? 堕ろさんの」
「堕ろさないわ、絶対に」
例え私が死ぬとしても、この子は産む。
絶対に。何があろうともだ。
私が今、そう決めた。
私の顔を見て、ドクターが辟易とした表情を浮かべる。
「ワシにあんたを殺せっちゅうんかい」
「それは……ごめんなさい。でも、今日の健診を見て、貴方に任せたいと思ったの」
「んぬぅ、気持ちは嬉しいけんどなァ……」
嫌そうな顔を浮かべて頭を抱えるドクター。
そんな彼に対し、私は椅子に座ったまま無言で頭を下げた。
しばしの間、彼は悩むように呻った後、仕方ないとため息を吐く。
「しゃーないの、やったる。後で光成には言っとき」
「……ごめんなさい」
「ええよ。ワシもこないな急成長する赤子の執刀には興味あるしの」
一度決めたら、即座に意識が切り替わるタイプなのだろうか。
何処か楽しそうに、にやりとドクターが笑みを浮かべる。
先ほどまで、私を殺す事になるかもしれない手術に、嫌そうにため息を吐いていた人間とはとても思えない。
もう一度無言で頭を下げる。
頭を上げ、私も意識を切り替えた。
「ドクター、もう一つ聞いてもいいかしら」
「んー? なんでぇぃ」
「この子、性別って分かる?」
「男」
「ッし!」
その言葉に、思わずガッツポーズを取ってしまった。
女だと駄目という訳ではないが、やはり勇次郎の相手をする事を考えると、男の方がいい。
何故か勇次郎は、別に女でもいいと言っていたが、あれはあくまで妥協だろう。
彼にしても、女よりは男の方がいい筈だ。
「なんでぇい、男が良かったんか」
「ええ! 勇次郎が喜ぶわ!」
「……あぁ、うん。まぁ健診はこれで終わりや。着替えんさい」
「ええ、ありがとう!」
勇次郎に良い土産話が出来ちゃった~♪
「……自分の命よりも男優先かい。これが巷で有名な『やんでれ』っちゅうやつかね……おー、おっかね」