※この作品はR-18です。

世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話   作:白髪ロング娘スキー

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第四十六話 味噌汁

 

 錦帽子を被り、鍵を閉めて家を出る。

 何時も利用しているスーパーまでは徒歩で約10分。その間を、勇次郎と並んで歩く。

 

 勇次郎よりも30㎝近く小さな女の体に加え、着物を身に纏っている所為で、私の歩幅はかなり小さい。私が四歩歩く距離を、彼は一歩踏み出すだけで潰せる。

 それでも私が勇次郎と並んで歩けるのは、単に彼が私の歩幅に合わせて歩いてくれているからだ。

 絹代の時は私が遅く歩いてあげて欲しいと示すまで、普通に大股で歩いて置いてけぼりにしていた辺り、私もそうなるのだろうと考えていた。しかし、予想に反して彼は私を置いて行く事は無く、静かに私の隣を歩いてくれていた。

 

 これに関しては特に何かあった訳ではない。最初の買い物の時から、彼はこうだった。

 車道の傍を歩けばさりげなく車道側を歩き、重い荷物は自分の担当だとばかりに奪い取って持ってくれた。

 買い物の時以外も、エスカレーターでは下側にいてくれたり、エレベーターでは他の人から姿を隠すように立ってくれた。まぁこれに関しては、どっちも勇次郎と一緒に乗り込んだ時点で、他の人達が慌てて降りて行ったからする必要は薄かったけど。

 兎も角、彼は私を置き去りにする事なく、外出の際にはちゃんとエスコートしてくれたのだ。

 その事に気付いた時の私の気持ちったらないわよね!!!

 

 あぁ思い出したら体がウズウズしてきた。

 ちらりと横を見やる。変わらずそこには、勇次郎がポケットに両手を突っ込みながら歩いていた。

 その腕に、そっと手を伸ばして絡めてみる。勇次郎はチラリとこちらを見て、特に反応する事無く再び前を向いた。

 勇次郎の太い腕に手を絡ませたまま、しずしずと歩く。その分更に私の歩幅が小さくなり、しかしそれでも勇次郎は特に何かを言う事無く、私の我儘に付き合ってくれた。

 スーパーに着く頃には、普通に歩けば10分で済む距離を、たっぷりと20分近くも掛けていた。その事に少し申し訳なく思いつつ、しかし勇次郎が嫌がらないのだから問題はないと自分を正当化してみたり。

 

「そら、好きに持ってこい」

「……うん」

 

 名残惜しいが、このまま腕を絡めたままではロクに買い物など出来ない。

 買い物カゴを手に持った勇次郎から手を離し、買う物を選んでいく。まずは野菜類だ。

 入り口から一番近い所に置いてあるネギの元へと向かい、どれを買うかを選んで行く。

 

「ん……こっちよりこっちの方がいいかな」

 

 パッと見て新鮮そうなネギを両手に持ち、白身の巻きの締まり具合や葉の肉厚さを比べ、より鮮度が良さそうなものを優先してカゴへと入れていく。

 今回ネギを使うのは、あくまでローリエの代用としてなので、使用するのは緑の葉の部分のみ。

 なので、少し多めに4本ほど選んでから、次にトマトとアスパラを選んで行く。

 

 3回目辺りの買い物の時に気付いた事がある。

 勇次郎は私が鮮度の良さの選定に失敗すると、意識しているのかいないのかは分からないけど、一瞬だけ目をより鮮度の良い物の方へと向けるのだ。

 だからといって特に指摘はしてこない辺り、別に彼にとってはどちらでも構いはしないのだろう。が、選ぶ私からしてみれば、心臓に針を刺されたかのような気持ちになる。

 なので、視線を向けるほど気になるようだったら、構わず指摘して欲しいと言ってあるのだけど……どうやら今回はちゃんと選べたらしい。

 

 勇次郎は、私が選んだ物に対して特に何か反応をする事も無く、野菜の入ったカゴを片手に持って立っていた。

 一度、どうやって触りもせず、見ただけで鮮度を見分けてるのかを聞いた事がある。

 その際、なんて事の無い様に生命力の強さを見分けてるなんて言われた時は、意味が分からな過ぎて頭の中がハテナマークで埋め尽くされたものだが。

 生きた動物ならまだしも、収穫済みの野菜に生命力の強さとか関係あるの?

 

 ……まぁ勇次郎だしね。

 私はちゃんと鮮度を見分けられているのなら、それでいいのだ。

 バジルの入ったパックをカゴに入れながら、誰に向けているのかも分からぬ言い訳をする。

 さて、野菜は終わり! 次はお肉だ。

 

「お肉お肉~」

 

 ステーキにするからもも肉、それも皮が分厚いものを選んで行く。

 皮が分厚いと、焼いた時にパリッとした食感がより強く感じられて好きなのよねぇ。

 ただ、それはあくまで好みの差だ。勇次郎はどっちの方が好きなんだろう。いつもステーキは牛肉だから、チキンステーキの好みは知らないのよね。

 

「ね、勇次郎……勇次郎?」

 

 皮が分厚いものと、皮が薄いものを手に取り、勇次郎の方へと向く。

 どちらの方がいいかを聞こうとし、何故か勇次郎が少し遠い場所を見つめているのに気が付いた。

 彼の視線を辿れば、染めていると分かる鈍い金髪の男と、耳と鼻にピアスをしている男の二人組がいた。

 その視線は私に向いており、しかし勇次郎に見られている事により、怯えて腰が引けている様子であった。どうやら、ナンパに気付いた勇次郎が牽制していたらしい。

 

 結局、二人組の男は勇次郎の存在感に耐えかね、そのまま何処かへと姿をくらましていった。

 その姿を見送ってから、再び勇次郎に向き合う。

 

「ありがとね、勇次郎」

「フン、そのための付き添いだろうが」

「うん。だから、ありがとう」

 

 私一人だったら、どうせ上手く断り切れず、最終的に手が出るか誰かによる救出を待つ事になっていたからね。

 そう言うと、勇次郎が呆れた様にため息を吐く。

 

「お前もさっさと圧でも掛けて追い払えばいいんだ」

「やー、でも可哀想じゃない? 所詮一般人よ?」

「危害を加える気を持って近付く者に一般人も何もなかろうに」

「そうなんだけどね……」

 

 やろうとすれば別に、私だって圧を飛ばして牽制する事くらいはできる。

 それでも私はやらない。その理由だが……実は先ほど言った一般人云々とは、あまり関係なかったりする。

 私が圧を飛ばしてナンパを牽制をしない理由。それは、勇次郎ならば圧を飛ばさずとも、いるだけで牽制出来るからだ。彼の存在感を見て尚、私に話しかけに来る者は滅多にいない。

 そして勇次郎がいる為には、私が自分一人では買い物が出来ないという前提が必要だ。

 要は勇次郎と一緒にお出かけがしたい私の、ある種の我儘なのだ。

 

 私一人じゃ買い物が出来ないから、一緒に付いて来て、と。

 

 私がナンパに対処しない理由などそれくらいだ。

 絹代と一緒にいた頃は、本当に一般人云々を気にしてたんだけどね。勇次郎と一緒に暮らす内にどうでもよくなって来ちゃった。

 あくまで優先するべきは勇次郎なのだ。その為には、他の一般人に遠慮などしてはいられない。

 とはいえ、そんな事を直接本人に言えるわけもなく。

 

 勇次郎から視線を逸らし、あははと力なく笑う。

 そんな私を見て、彼は仕方がないとばかりに鼻を鳴らした。

 

「そら、次に行くぞ」

「うん。あ、お肉は」

「お前と同じで良い」

「ん、分かった」

 

 皮が薄い方を棚に戻し、皮が厚い方をカゴに入れる。

 後はパンと牛乳を買うだけのため、牛乳は適当に栄養価の高い物を入れ、パンは生地の分厚い物を選び買い物は終わりだ。

 明らかに緊張した様子で汗の浮いた手を震えさせながら、商品のバーコードを読み取って行くレジの女性に、少し申し訳なく思いながらも支払いを済ませた。

 

 購入した商品をレジ袋に詰め、勇次郎に行こうと声を掛ける。

 すると彼は私の手からレジ袋を奪い取り、顎で出口を差してゆっくりと歩き始めた。慌てて駆け足で追いつき、その隣を一緒に歩く。

 帰りも特に問題が発生したりといった事は無く、無言でエスコートをする勇次郎にドキドキしながら歩を進めていた。

 

 玄関の鍵を開けて一緒に家の中に入り、靴を脱いで一足を揃えて綺麗に置く。

 折角なので、そのまま台所までレジ袋を運んでもらう。

 

「さて、早速作っちゃうね。勇次郎は座って待ってて」

「ン」

 

 小さく返事をして居間へと足を運び、壁に背を預ける勇次郎。

 それを見届けてから、私はまず買った物を冷蔵庫へと入れ始めた。

 すぐに調理するからあまり関係ないとは思うけど、常温に晒したままだと、どんどん鮮度が下がって行っちゃうからね。

 使わない分も出るから、その処理もしないといけないし。

 

 という訳で、まず肉を冷蔵庫へと入れ、ネギを切って行く。

 包丁とまな板を取り出し、根っこを切り落としてから緑の葉と白身で三分割する。

 使うのは葉だけなので、白身は濡らしたペーパータオルで包み、ジップロックに入れて冷蔵庫へ。

 絹代曰く、ネギは乾燥に弱いが、こうする事で3週間くらい持つ……らしい。細かい所は知らないし、それ以前にすぐ食べちゃうからね。

 兎も角、これでネギは完了。次だ。

 

 バジルのパックを取り出し、包装を開ける。

 バジルも、基本的にはネギと同じく濡らしたペーパータオルで包み、ジップロックに入れて冷蔵するのだが……今回は香辛料にしようかな。一度、香辛料からカレーとか作ってみたかったのよね。

 サラダに使う分のバジルを取り出し、余った分のバジルを電子レンジで加熱して乾燥させてから勇次郎を呼ぶ。

 

「なんだ」

「これ、粉にしてくれる? あ、この中に入れてちょうだい」

 

 ジップロックの口を開け、そこを指差す。

 そんな私を見て、勇次郎は少しだけ嫌そうな顔をした。

 

「……それくらい臼(うす)でも使え」

「勇次郎に任せたら一瞬じゃない」

「ったくこの面倒くさがりが」

 

 口では何とか言いつつも、なんだかんだで手を伸ばしてくれる勇次郎。おおきな手の平に一枚二枚とバジルを載せていき、そして全てを載せ終えた後に手を握り締めた。

 握った手に力が籠められていき……再度手を開いた瞬間、ざぁぁっ、とバジルだった粉が私の用意したジップロックの中に流れ落ちて行った。

 相も変わらず凄い握力よねぇ……やろうとしたら、石炭からダイヤでも作れるんじゃないのかしら。少なくとも、私にはこんな芸当は出来なかった。

 

 バジルの粉末が詰まったジップロックのチャックを閉め……閉じられる瞬間、ふわりとバジルの香りが漂った。

 途端、視界が眩んでふらりと体がふらつく。

 

「っぷ……っ、くぅ……」

 

 なんとか台所に手を突き、口を抑える。

 眩む視界に、僅かな頭痛と吐き気。もう慣れたつわりの感覚だ。

 

 どうやら粉末にした事で、強まったバジルの香りが駄目だったらしい。

 これから料理を作るっていうのに、なんでこのタイミングで……ッ!

 台所に手を突いて蹲る私を見て、勇次郎が口を開く。

 

「つわりか」

「ッ……ごめん、そうみたい……」

 

 足に力を入れてなんとか立ち上がり、フラつきながらトイレへと向かう。

 すると、勇次郎はそんな私の肩を支えてトイレまで運んでくれた。

 好き。

 

 便器の蓋を開け、便座に手を突いて見下ろす。

 すぐに吐き気が強くなり、せり上がる熱が喉を焼いた。

 

「うぷっ……」

 

 口から逆流した液体が吐き出されていく。

 その液体に内容物は無く、ただ黄色い液体だけが口から垂れていた。

 胃酸によって焼けた喉が気持ち悪い。

 

「その様子ではチャウダーは食えそうにないか」

 

 背後から聞こえた勇次郎の声。

 正直吐いている姿なんて、汚いからあまり見て欲しくないのだが。

 振り返るのも辛いので、便器を見下ろしたまま返事をする。

 

「ごめん、お水を貰える……?」

「あァ」

 

 足音が少しずつ遠ざかり、一瞬水音を鳴らして帰ってくる。

 

「そら」

「ありがと……」

 

 コップを受け取り、口を濯いで吐き出す。2回ほどそれを繰り返し、便器の水を流した。

 吐き気は未だに収まらず、無数の針で刺される様な痛みが頭を襲っている。

 しかし、そんな物を気にしてはいられない。

 時刻は夕方。私の分は兎も角、勇次郎の分の夜ご飯だけは作ってあげなければいけない。

 

「っ、ごめんね、すぐ夜ご飯作るから……」

「構わん。チャウダーは明日にでもして今日は寝てろ」

「でも、夜ご飯……」

「気にするな。俺が作ってやろう」

「え」

 

 思わず吐き気も忘れて振り返った。

 トイレの入り口に立つ勇次郎。何故かその表情は少し得意げだった。

 振り返った私を見て、何処か楽しそうに彼が口を開く。

 

「お前の分のメシも俺が作ってやる」

「……え?」

 

 ???

 え、私の分も? 勇次郎が自分の分を作るだけならまだしも、私の分も?

 

「……あの、見ての通り私体調悪いから、肉汁滴るステーキとかは流石に食べれないわよ?」

「お前は人の事を何だと思ってるんだ……? 作るのは汁だ。汁くらいならば飲めるだろう」

「まぁ、それくらいなら……」

「布団に横になって待っていろ」

 

 それだけを言い残し、勇次郎が台所へと向かって行った。

 楽し気なその背中を呆然と見送る。もはや吐き気や頭痛など吹き飛んでいた。

 

 コップに残った水で口を濯ぎ、コップを台所へと持っていく。

 台所では、本当に勇次郎が小鍋を片手に立っていた。

 コップをシンクに置き、勇次郎を見やる。

 

「……あの、本当に勇次郎が作るの? 言っちゃ悪いんだけど、物凄い不安なのだけれど」

「お前の調理姿くらいは見ていた。簡単な汁くらいは作れる」

「作れない人の言い方よそれ……」

 

 私の調理している姿を見ていたなら、変な物は出てこないとは思うけど……一体何が出来上がるのやら。

 まぁ勇次郎が楽しそうだからいいか。吐き気が収まっている今の内に、他の買った物を冷蔵庫に入れておこう。

 

「……? あれ、勇次郎、他の買った食材は?」

 

 台所の床には、大きめのレジ袋が転がっていた。しかし、その中には何も入ってはいない。

 購入した食材を何処にやったのかと聞くと、勇次郎はパックから取り出した豆腐を片手に答えた。

 

「入れておいたぞ」

「え、何処に」

「冷蔵庫に決まっているだろう。他に何処に入れるというんだ」

 

 ?????

 今までそんな事してくれなかったよね? なんで急に?

 試しに冷蔵庫を開けると、確かに勇次郎の言う通り、保存処理が出来ていなかった食材が、全て冷蔵庫の中に入っていた。パンも含めて。

 取り敢えず冷蔵庫に入れていた肉を冷凍庫に突っ込み、パンを冷蔵庫から取り出してブレッドケースに入れた。

 

 横目に勇次郎を見れば、小鍋に水と昆布を入れて火に掛けていた。

 豆腐は既にサイコロカットされており、少し切り過ぎ感こそあれど、ちゃんと綺麗に切られていた。

 ……あ、でもあれ水気取ってないな。キッチンペーパーとかで水気を取らないと、味が染みにくい上に型崩れしやすいんだけど。

 

 ……果たして口を出すべきなのだろうか。

 でも勇次郎が楽しそうなんだよなぁ。変に口を出して、彼の機嫌を損ねるのも不本意だし……

 どうするかを悩んでいると、私の不安の混じった視線に気付いたのか、勇次郎がしっしっ、と手を振ってきた。

 

「いいからお前は寝ていろ。すぐに出来る」

「……………………うん」

 

 ……まぁいっか!

 私の不安は、一転して勇次郎の手料理への興味に移っていた。

 初めての勇次郎の手料理。なぜ彼がそれを私に振舞うつもりになったのかは分からないが、作ってくれるというならば有り難いし、手料理が食べれるのが単純に嬉しい。

 戦争に参戦していた時に、野営食などは作っていた筈だ。ある程度のものは作れるはず。流石に食べられないものは出来上がらないだろう。

 ならば勇次郎の手料理に心躍らせながら、出来上がるのを待っていればいい。

 

 気が抜けたからか、再びジクジクと痛みだした頭を抑えつつ、布団を敷いて横になる。

 少し不慣れそうに包丁を扱う後ろ姿は、まるで妻の代わりに台所に立つ夫のようだった。

 ……いや、これもしかしてそういう事かこれ? 病気に倒れる妻(私)の代わりに、俺(夫)が台所に立ってやると。つまりそういう事なのかこれ?

 

 ……あ、やば、ちょっと濡れ……

 

「んんんんんんん!!!!」

 

 もふりと枕に顔を埋める。

 私の発生した奇声に、勇次郎が振り返った気配がしたが無視する。少しして、再び包丁がまな板を叩く音が響き始めた。

 枕に顔を埋めながら、コトコトと沸騰する鍋の音を聞く。

 一定のリズムで響く湯の音が、子守唄のようで眠気をも湧かす。

 それに何とか抗うこと暫く、火の音が止まった。

 

 足音がこちらへと近付いてくる。

 枕から顔を上げれば、勇次郎がお椀を片手にこちらへと歩いて来ていた。

 

「おい、出来たぞ。起きろ」

 

 布団から体を起こす。

 それなりの重さがあるちゃぶ台を、片手で私の前まで持ってきた勇次郎が、私の前にお椀と箸を置いた。

 お椀の中には、出汁に使ったのであろう昆布と豆腐の味噌汁が入っていた。漂う臭気は、少なくともちゃんと味噌汁としての香りを放っていた。

 バジルの粉末の時とは違い、臭いを嗅いだだけで気持ち悪くなったりもしない。

 

 うん、少なくともちゃんと食べれそう。

 

「冷めるぞ」

「ん、いただきます」

 

 箸を持ち、お椀を持ち上げる。

 まずは一口、汁を啜る。

 

「んっ、……うん」

 

 なるほど? ……なるほど。

 一先ず汁は味わったので、次は昆布と豆腐を口に入れる。

 歯を立てた瞬間豆腐はボロリと崩れ、昆布が歯に食い込んだ。中々嚙み切れない昆布を、何とか噛み千切って飲み込む。

 

「うん……うん…………」

 

 ……うん、不味い。

 言いたくはないんだけど、不味い。

 折角の勇次郎が作ってくれた味噌汁なんだけど、不味い。

 兎に角何か味の感想を言うとしたら、不味い。

 

 まず昆布が全然噛み切れない。

 分厚い上にモソモソとしていて口当たりは良くなく、柔らかい癖に弾力があり過ぎる。

 これ出汁に使った奴を、そのまま具材として煮続けたな?

 

 次に豆腐だが、こちらは脆すぎる。

 水気を全く拭いていないであろう豆腐はやはり崩れやすく、しかも味が染み込んでいない。

 煮た筈なのに、何故か食感はパサパサとしており、粘着のりでも噛んでいる気分だ。

 こっちは出汁を取る段階で投入したと見た。

 

 そして最後に、汁がしょっぱすぎる。

 出汁作りの段階でパッと見た限り、あの水の量なら味噌は大匙1.5くらいで十分だ。この味からして、多分味噌を大匙4から5くらい入れてる。

 戦争中なら汗を掻きまくるから、しょっぱい方がいいんだろうけど、私はつわり中だ。むしろしょっぱいものはあまり摂り過ぎない方がいい。

 

 出汁の味も妙に薄いし……なんというか、大雑把。

 絹代に料理を教わる前の私が、絹代の真似をして味噌汁を作ったらこうなりそうだ。つまりは典型的な男飯である。

 気持ちは有り難いし、勇次郎の手料理は嬉しいのだが……

 うん、不味い。

 

 とはいえ……

 

「どうだ」

 

 何故か少し自慢げに口角を上げている勇次郎に、それを直接言うのも憚られる。

 取り敢えず、全くもって美味しくない味噌汁をもう一口啜る。

 

「ん……」

 

 あー、なんだ。

 自分でも引き攣っていると分かる顔に、無理矢理笑顔を浮かべさせる。

 

「今度、一緒に作りましょうか」

「……むぅ」

 

 

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