※この作品はR-18です。

世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話   作:白髪ロング娘スキー

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第四十八話 ヘリでの一幕

 

 閉じられた空間の中、空を掻き回すヘリのプロペラ音が微かに響いてくる。

 運転手の腕が良いためか、変に揺れたりする事は無い。しかし、スポンジに皮を貼り付けただけの安物とも言い換えられる備え付けの椅子は、あまり座り心地が良いとは言えなかった。

 お尻に感じる違和感に、もぞもぞと腰を動かしてマシな部分を探す。けれど今一納得のいく結果にはならず、仕方なく諦めて座板の縁に腰を落ち着ける事で、お尻と座面の接着面を減らした。

 

「おい」

「ん?」

 

 声を掛けられて、俯けていた顔を前に向ける。

 正面には私と同じヘリ備え付けの椅子に、腕を組んでどっしりと座り込んだ勇次郎がおり、私に視線を向けていた。

 

「なに?」

「ん」

 

 私の問いに、勇次郎は特に何かを言う事も無く、左右に広げていた足を片方だけ持ち上げた。片膝の上に足首を乗せ、再度ん、と一言だけ呟いて組んだ自分の足を顎で指す。

 一瞬何をさせたいのか分からず困惑し、一拍置いてからその膝の上に座れという意味なのだと理解した。

 椅子に手を突いて立ち上がり、組まれた足の上に腰を下ろす。組んだ足の間には隙間があり、そこにすっぽりとお尻が収まった。勇次郎に背中を預け、楽な姿勢になる。

 座り心地の悪い椅子にお尻が触れている事は変わらないが、少なくとも先ほどよりは断然マシだ。勇次郎の体温を感じられるというのも大きい。

 

「ありがと」

「ん……」

 

 腕を組んだまま、勇次郎が目を瞑る。どうやら一眠りするらしい。

 変に邪魔をする気も無い。勇次郎のお腹にもたれかかったまま、人形の様に大人しく座る。少しして、頭上から聞こえる呼吸音が少しだけ深くなった。

 話相手になる者もおらず、これといってする事も無い。暇になってしまった私は、今こうしてヘリに乗って空を飛んでいる理由を思い返していた。

 

 

 

 ——— ———

 

 

 

「子供を託したい……ですか」

「ええ」

「それは何故……?」

 

 目元を赤くしたまま、絹代が不思議そうに小首を傾げた。

 言いたい事は分かる。勇次郎がいるのだから、わざわざ自分に赤子を託さずとも、彼に任せればいいと言いたのだろう。

 けれど、それでは駄目なのだ。

 

「託したい、というのは少し言葉を間違えたかもしれないわね。私は、私の子供が勇次郎の重荷になって欲しくないの。だから、もしも勇次郎がこの子を手放したくなった時に、貴女に受け取ってほしいのよ」

「……? そもそも、その子供は勇次郎様がお望みのものでしょう。手放したいなどとは思わないと思いますが」

「ええ、私もそう思うわ。でも彼が望むのは強い子供なのよ。そしてどうやって勇次郎が強くなったか、忘れた? 彼はきっと、生まれた時から強かったのだと思うわ。でもその強さを地上最強にまで押し上げたのは、紛れもなく戦争での生活よ。背中の鬼だって、過酷な戦場をその身一つで駆け抜けた結果、打撃用筋肉が異常発達したもの。そんな彼が子供に強さを教えるともなれば、鍛錬も相応に厳しくなるでしょうね」

「勇次郎様ではなく、子供の方が耐え切れないかもしれないと」

「そういうことよ。そんな時、扱いに困った彼から子供を引き取って欲しいの。それが私の相談よ」

 

 絹代は、何かを言いたげに口をムニムニと動かし、しかし結局何も言わずに目を瞑って肩を落とした。

 腰を屈ませ、ひっくり返したテーブル等を元に戻していく。ただ見ているのも悪いので、私も一緒にテーブルを戻し、麦茶を拭いて茶菓子を拾った。

 最後に絹代が包丁をシンクに置いて、テーブルに着いてから顔を両手で覆って俯いた。

 言いたい事は全て言い終わった私は、何を言うでもなく静かに絹代の正面に腰を下ろす。

 

 二人して喋らず、動く事も無く、ただ無為に時間を過ごす。

 そうして30分ほど経ち、絹代が大きくため息を吐いて顔を上げた。

 

「……分かりました。その時が来たら、受け入れます」

「……ごめんなさい。ありがとう」

 

 テーブルに額が付く程に、ただ頭を下げる。

 下げた頭に手が乗せられて、指で髪を梳かれるように撫でられていく。それを、私はただ黙って受け入れていた。

 暫くして手が離れ、私も頭を上げる。絹代の顔は、複雑そうにしながらも柔らかく、どこまでも優しかった。

 絹代がパンッ! と両手を打ち合わせる。

 

「はい、これでこの話はお終い! さ、別の話をしましょう」

「……、…………そうね。何を話しましょうか」

 

 私が受け入れたから、もうこの暗い話は終わり! と話を変えようとする絹代。

 それに対して、どう反応するか悩み……まぁ私も言いたい事は言い終わってるしいいかと、その提案を受け入れた。

 再度、今度は緑茶を淹れて別の茶菓子を出す絹代。完全に話を切り替えたいと主張する行為に、私も乗る。

 

「そういえば、太山とはどうなのかしら?」

「良好ですよ! 戦う度に負けて傷だらけになるのは、ちょっと見ていて胸が痛くなりますけど、それでも楽しそうに戦うので止められないのが困り所ですが」

「気持ちは分かるわね。あの闘技場では、誰もが柵(しがらみ)を忘れてただ純粋な闘いに熱くなれるもの」

「貴女も楽しそうでしたもんね~、地下闘技場のプリンセスさん」

「ゔっ……」

 

 絹代も知っちゃったかぁ……太山から聞いたのかな? 中身が元男と知っている知り合いに、プリンセスと呼ばれてる事を知られるって……

 揶揄う絹代に、湯呑を持ち上げて赤くなっているであろう顔を隠す。

 

「それ止めなぁい? 普通に恥ずかしいんだけど」

「えぇ~? いいと思いますよ? 地下闘技場っていうのはどうかと思いますけど、てるよ様のイメージでプリンセスはむしろ妥当以上に適当ですよ」

「うー……まぁそれはいいじゃない! 太山よ太山! どれくらい進展したの!?」

 

 湯呑をカッ! とテーブルに打ち付けて、無理矢理話を切り替える。打った衝撃は消力で吸収して湯呑を守り、指関節の節を増やして湯呑を回す事で緑茶を湯呑の中に止める。

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら、絹代は仕方ないなぁと私の話題転換に乗った。

 

「好きだ、って言葉は引き出しましたよ。手当をしている最中に唐突に言われたので、嬉しいやら何やらで上手く言葉は返せませんでしたけど。でも、確実に仕留められますね」

「あはは、完全に絹代の包囲網の中ね」

「このまま蜘蛛の様に絡め捕りますよ。誰かさん達のお陰で、私も人肌恋しくて仕方ないので」

「んふふ~、好きな相手と出来るセックスは気持ちいいわよ~♪」

「完全に女ですねぇ。あ、そういえば愛してるゲームはどうなったんです? もう決着は着きました?」

「あー……」

 

 あれねぇ……

 

「ダメダメね」

「あら、意外ですね。勇次郎様のあの様子だと、割と早めに決着が着くと思ってたんですけど」

「……そもそも、勇次郎がどこまで私に本気なのかも分からないのよねぇ」

 

 私の言葉に絹代が不思議そうに首を傾げた。それに対して反応はせず、言葉を続ける。

 言葉を重ねる度に、気分が落ち込んで視線が落ちていく。

 

「夫婦の真似事みたいな事はしてくれるのよ。つわりの私に変わって料理を作ってくれたり、色々と気も遣ってくれるし、優しいし。でも愛してるって言葉だけは、何をどうやっても全然出てこないの。別にそれはいいんだけど、少し不満はあるのよね」

「不満?」

「勇次郎が私に抱いているのは恋愛感情じゃなくて、ペットなんかに対する愛玩の気持ちで。私の事が好きなんじゃなくて、私のことがお気に入りなだけなんじゃないか……って」

「それは無いと思います」

「えっ」

 

 嫌に強く否定されて、思わず顔を上げた。

 上げた視線の先、絹代は何を言っているのかと呆れた様な顔で私を見ていた。

 

「……もしかして気付いてなかったんですか?」 

「え、なにに……?」

「なにって、ホテルで彼が言っていたでしょう? 別に子供は女でも構わないと。あれは実質、子供より——」

 

 そこまで絹代が口にしたところで、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。

 行って来ても? と視線で聞いてくる絹代に、頷いて返す。

 パタパタと玄関に掛けていき、玄関の扉を開ける絹代。その先には、片手に花束を持った太山が立っていた。

 ……ほっほぉ~? なぁるほどぉ?

 

 顔中に汗を掻きながら、視線をあちらこちらに彷徨(さまよ)わせる様は、どうみても緊張している人間のそれだ。挙動不審極まりない。

 そんな彼の様子と、手に持った花束は、これから彼が何をしようとしているのか、言わずとも悟らせた。

 わなわなと口を開き、叫ぶように話す太山。

 

「き、絹代! さん! お、おぉおおれと!」

「ま、待った待った!」

 

 慌てて大山の言葉を遮り、こちらに振り返る絹代。その顔は普段のしっかりした頼りになるお付きの表情から、ただの女の子のそれになっており、耳まで真っ赤に染まっていた。

 ニヤニヤと笑みを浮かべて、無言で揶揄う私に、絹代が怒ったように真っ赤になったまま睨みつけて来る。そんな怖い表情をしても可愛いだけよ。

 

「さて……」

 

 私はお邪魔みたいだから帰るとしますかね。

 湯呑に残った緑茶を飲み干し、錦帽子をして立ち上がる。わざと足音を立てながら玄関へと向かえば、それに気付いた太山がこちらへと視線を向けた。

 私と目が合い、私の見ている前で公開告白をしようとしていた事実に気付いたのか、太山も絹代と同様に顔を真っ赤に染める。

 

「お、お久しぶりだな、てるよさん」

「ええ、お久しぶりね、太山」

 

 どう見ても緊張しすぎてアガり切っている太山。

 流石に見ていられないので、帰る前に少しだけ助け船を出してやる事にした。

 

「ねぇ、太山。聞きたい事があるのだけれど」

「な、なんだい!?」

「私勇次郎の子供を孕んだんだけどね? 私の生命力と赤子の生命力が反響しあって、上手く放華が練れないのよ。どうにか放華を強化する術とか知らない?」

 

 私が放華に関しての事を口に出した瞬間、太山の顔がきりりっと引き締まった。

 意識が絹代への告白から、私への武の助言モードに切り替わったのだろう。真っ赤だった顔は、太山の精神状態を示す様に、すぅっと元の色を取り戻していく。

 顎に手を当て、少し考えた後、太山が口を開いた。

 

「放華に限らず、仙道は仙人になる事を目的にやるもんだ。そして仙人は大抵山の奥深くにいるとされてる」

「山の奥? それはなんで?」

「自然だ。広大な大自然が生み出す生命力が、強い気となる。それを霞と称して食べて体を鍛えるらしい」

「つまり、自然の中で放華を使えば」

「もしかしたら、って程度の話ではあるんだが」

「なるほど……ありがとう」

 

 自然、自然ねぇ……また光成に頼るとしますか。

 靴を履いて玄関を出て、太山の前に立つ。

 

「それで、ちょっとは落ち着いた?」

「え、あ……」

「お邪魔虫は退散するわ~、精々頑張りなさいな」

「……ありがとうな、てるよさん」

 

 ひらひらと手を振って歩き出す。

 少しして、後ろからなにやら声が聞こえて来た。それを聞き流してあげながら、懐から携帯電話を取り出し、ボタンを押して電話を掛けた。

 4度ほどコールが鳴り、電話が取られた。光成の少し皺枯れた声が響く。

 

『どうしたてるよ、何か用かの』

「ええ、ちょっと山に行きたいのよ。自然に囲まれたくて。何処かに良い所はないかしら?」

『んんー、山か。となるとあそこかの』

 

 

 

 ——— ———

 

 

 

 という流れで、今私はヘリに乗っている。

 光成曰く、目的地は飛騨山。私が地下闘技場で闘ったあの巨人、安藤玲一が住んでいる場所なのだとか。

 他にも色々と場所はあったが、最終的に此処に決めたのは病院が近いからだ。

 山の麓の方にあるため、来るために時間はかかるが、もしも私の身に何か起きた時にすぐに助けを呼べるというのが、ここ飛騨山に決めた理由だった。

 

 すぐに助けが呼べて、そして自然溢れる山の中。

 条件で言えば、屋敷もそうだ。では何故屋敷ではなく飛騨山なのかというと、屋敷にいると私が出産で死ぬことがバレそうな気がしたからだ。

 彼らは実力は兎も角、暗殺者らしく私が輝夜ではない事に気付くだけの観察力はある。私の隠し方が壊滅的に下手というのもあるのだろうが、ここで大事なのは隠し事が出来ないという点だ。

 私が出産で死ぬなんて、そんな事がバレたらまず堕ろす事を求められるだろう。流石に無理矢理堕ろさせには来ないとは思うが……あの慕われ様からして、もしかすると切腹覚悟で私が生きる事を優先してくる可能性がある。

 なので、一応念の為というやつだ。

 

 ……光成には悪い事をしたな。

 結局、出産をしたら勇次郎と闘う様子を見せてあげると約束したのに、それも守れそうにないし。

 でもやけにあっさりと受け入れたのよね。出産で私の体が耐え切れず死んでしまう、約束は守れそうにないと言った時も、そうか……の一言で終わったし。

 あの格闘技バカな光成が、私と勇次郎との闘いという、世紀の一戦を見れなくなった事を残念がらなかった事に、何か裏での企みを感じなくもない。

 でも、技術にものを言わせて儂がお主の病を直してやるから安心じゃ! って事でもなさそうだし。

 勇次郎は兎も角、約束を果たせなくなった私にはもう用は無いと思うんだけど……その割にはこうして頼みは聞いてくれるし。

 一体何を考えているのやら。

 

「そろそろ着陸いたします! 念のためシートベルトの着用を!」

「ええ、分かったわ……ん?」

 

 勇次郎の膝の上から立ち上がろうとした瞬間、勇次郎の腕が私の胸の下に回された。抱える様に巻き付いた腕は、私を拘束して動かさない。

 そこで漸く、いつの間にか勇次郎が起きていた事に気付いた。

 

「あの、勇次郎? 私シートベルトして安全を確保しなきゃいけないんだけど……」

「俺の腕の中より安全な場所があるか」

 

 んんんんんんんん!!!!!

 

「シートベルトしましたァァッッ!!!!」

「え、いや、あの」

「しましたァァアアア!!!!!!!!」

「は、はいぃ!!?」

 

 ゆっくりとヘリが降下していく。

 窓を見れば、まず間違いなく絶景が広がっている事だろう。しかし私はそんな余裕も無いまま、両手で顔を覆って俯いていた。

 少しして、着地したのであろう衝撃が走りヘリが動きを止めた。

 

「こちらからお降りください! 何かあればすぐに駆け付けますので、安藤さんに我々の呼び方を教えてもらって下さい!」

「おう」

 

 私を抱えたまま勇次郎が立ち上がり、ヘリから降りる。

 勇次郎がヘリから離れると、すぐさまヘリは離陸し、そのまま空の彼方に飛んで行った。

 それを見送っていると、草を踏みしめる音が聞こえて来た。そちらの方に顔を向ければ、相も変わらずな巨体を揺らしながら、安藤がこちらへと近付いて来ていた。

 

「おお、よく来たなァてる……何やってんだおめぇ?」

 

 

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