世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話 作:白髪ロング娘スキー
「……流します。椅子にお座りください」
優しさからか、結局絹代は触れないでくれた。
近くに先ほどまで座っていた椅子を用意される。
大人しく誘導に従って椅子に座ると、絹代は髪を包んでいたタオルを外してシャワーを手に取った。
手にシャワーを当てて温度を確かめている。
「よし、目を閉じてください輝夜様」
「ん……」
シャワーが掛けられ、トリートメントで固まった髪を指で梳かれていく。
時折髪が掻き上げられ、直接肌にもシャワーが掛けられる。
流石に洗い流す時にまで何か気を付ける様な事は無いのか、割とパパっと体中に水を掛けられて終わった。
先程の件から警戒していた股間に関しては、全体を覆う様に手で器を作り、そこに水を貯めてじゃぶじゃぶと浸けて終わり。
想像以上に何も感じる事無く流し終えた。
シャンプーの時のように軽く髪を絞り、再び髪をトリートメントの時とは別のタオルを使って包まれる。
「また水蒸気か?」
「いえ、お風呂に入る時に髪を浸けては折角洗ったのにまた汚れてしまうので、こうしてタオルで包んで髪がお風呂のお湯に触れない様にするんです」
「ん、あの池か」
未だに湯気を吐いている池……お風呂か。
恐らくその熱さは先ほどと変わってはいないだろう。
「……本当に浸かれるのか、あれ?」
「大丈夫、気持ちいいですよ。ゆっくりと体を熱さに慣らしながら入るのがコツです」
「むぅ……」
「それでは私は体を洗うので、お先にお入りください」
そう言って絹代は、先ほど俺を洗うのに使っていたシャワーとは違うシャワー台の前へと移動してシャンプーを頭につけだした。
何故わざわざ場所を移したんだ? そう思い先ほどのシャワー台を見ると、他のシャワー台とは違って少し高級感がある事に気が付いた。
他の所に比べて大理石が綺麗に整えられており、色も他と比べるとハッキリ分かる程に黒く白いスジ模様も入っていない。
なるほど、あそこは輝夜専用のシャワーという事か。
そんな事を考えて現実逃避をしながらも、渋々とお風呂の前へと歩いていき、一歩手前で止まった。
眼下に広がるのは湯気の立ったお風呂。
これに……入るのか。
お風呂の傍でしゃがんでから、恐る恐る指を入れてみる。
「あ……あったかい……」
先程の様な焼きつくような熱さではない。
むしろ心地よい温かさだ。
お風呂の縁に手をつき、足の指の先でお湯の表面をちょんちょんと触れてみる。
変わらず感じるのは何処か安心感を覚える温かさ。
ふむ……意外と入っても大丈夫かもしれない。
「ふふ……」
「な、なんだ絹代」
何故かシャンプーを泡立てながら、こちらを見て笑い声を零す絹代。
なんだか馬鹿にされている気がして、思わず口を尖らせる。
「いえ、なんだか水に警戒する猫ちゃんみたいで可愛いな、と思いまして」
「かわっ!? 俺は男だぞ! 可愛いなど…………今は女だった……」
言い返す言葉の声の高さに、今の体は輝夜のものであった事を思い出す。
それを自覚した瞬間、股間にあった慣れ親しんだ重さが消えている事への違和感と寂しさが胸を襲った。
なんだか気落ちしてしまい、それ以上言い返す気も起きずにお風呂に足を滑らせる。
「お、おお……」
まだ足しか入れてはいないが、それでも気持ちいい。まるで疲労によって強張った筋肉の硬さが分解されていくようだ。
何かしゅわしゅわとした感触が足に纏わり付いている事に気付いて見下ろせば、足に水泡がびっしりとくっ付いていた。
どうやらそれが足から剥がれて皮膚を滑る感覚だったようだ。手を足に添えて撫でおろし、水泡を一気に剥がせば、じゅわぁっと音がして一瞬水面が白く染まる。
もう片方の足も湯に入れ、少しずつ腰を落としてお風呂に浸かっていく。
肩まで湯に浸かると、お風呂の縁に背中を預けた。
「これは……いいな……」
穴でも開いたかのように、全身から力が抜けていく。
体の緊張を無理矢理溶き解されていく感覚は何とも言えない。
なるほど、これがお風呂か。
「ほぁぁ……」
「気持ちいいですか」
「ああ。お風呂というのは良いものだな」
「それは良かったです。お隣、失礼いたしますね」
シャワーを浴び終えたのか、頭にタオルを巻いた絹代がお風呂に入って来る。
慣れを感じさせる無造作な動きだ。
肩まで浸かった絹代が、肺から絞り出すかのように長く息を吐いた。
目を細めており、気持ちよさそうにしている。
「ずっと浸かっていたい気分だな」
「そこまで喜んでもらえると、こちらも嬉しいですね」
そう言うと、絹代は目を瞑り口を閉じた。
俺も声を掛ける事は無く、黙ってお風呂を楽しむ。
二人で並んでお湯に浸かり、暫くして絹代にのぼせてしまうので上がりましょうと促された。
お風呂と脱衣所を分ける扉を開けると、冷たい空気が肌を撫でていく。
暖まった体に襲い掛かるそれが、とても心地よい。
濡れた体をバスタオルで拭き、ドライヤーで髪を乾かした後に
なんでもこれが下着なのだとか。俺が気付いていなかっただけで、今日も着物の下にずっと身に着けていたらしい。
ブラジャーではない事に少し驚きながらも、布がサラサラとしていて肌触りが良い事の方に満足感を覚えた。
脱衣所に設置された椅子に座って涼んでいると、絹代にミルクと書かれた瓶を手渡された。
同じく手に持ったキンキンに冷えたそれを、腰に手を当ててグイッと飲む絹代。
それを真似して、腰に手を当ててミルクを煽る。
口、喉、胃と体内を流れていく甘い冷たさがとても心地よい。
「んく、んく、んぐ……ぷはぁー!」
「んく、んく、んぐ……ぷはぁー!」
お風呂上がりのミルク、これは良いな。
とはいえ、いきなり腹を冷やす事になるからあまり体には良くなさそうだが。
飲み終わった瓶をゴミ箱に入れ、着替えを再開する。
箱に入れておいた寝間着を取り出し、絹代に渡す。
袖に手を通すと、袖を掴んでいてくれと頼まれたため、袖の端っこを握って寝間着をピンと伸ばす。
すると背中の布を掴んで引かれ、そのまま右の襟を胸を包むように押し当てられた。
背中を引っ張っていた手を解かれ、今度は左の襟を右襟ごと包むようにして体に押し当てる。
そこまですると、右襟を掴んでいた手で帯を取り出し、腹を一周する様にして帯を回した。
何やら3重の紐を使い、ぐるぐるとなにやら忙しなくやっている内に、気付けば腹の前で帯で出来た一輪の花が鎮座していた。
最後に花をぐるっと背中に回される。
「はい、完成です」
「……お、おう」
……花? 何で花? というか今どうやって花を作り上げた?
恐るべしクノイチ……クノイチでこれという事は、本場のオイランはこれよりもっと凄いものを帯で作り上げるのだろうか。
一体どこに力を入れてるんだ日本人。
唐突にクレイジーな面を出すなって。
絹代が着替え終わるのを待ち、共に輝夜の部屋へと戻る。
時間は21時、まだ深夜には程遠い時間。
何時もならここから24時まで筋トレや動きの研究を行っている、寝るには早すぎる時間だ。
「んにゅ……」
しかしこの体の影響か、既に眠くて仕方がない。
なんとか堪えてはいるが、気を抜いた瞬間に首がカクンと落ちる。
視界の端で絹代がパパっと布団を敷いているのを尻目に、なんとか眠気を堪える。
堪え、堪えて……
——— ———
「はい、敷き終わりましたよ輝夜様」
振り返り声を掛ける。しかしそれに対する反応は無い。
見れば、彼……彼女? ……輝夜様は、私が教えた正座の体勢のまま項垂れ、静かに寝息を立てている。
布団を敷くのに掛かった時間はほンの30秒ほど。たったそれだけの間に眠っちゃったのね。
その事に少々驚きを感じながらも輝夜様を抱き上げ、敷布団へと寝かせる。
最後に布団を掛けてあげれば、白雪姫も恐れ戦く就寝中の輝夜様の完成だ。
美しいその寝顔は、とても中身が外国人の男性だとは思えない。
そう、今の輝夜様は男性。
それも御屋形様の言う通りであれば、あの地上最強の生物とまで噂される範馬勇次郎と同クラスの実力を持った男性。
この可愛らしい寝顔や、あの風呂場での乱れようからは到底想像つかないけど。
……それにしても、一体元輝夜様は普段何をしてたンだか……
いや、まぁそれはいいわ。
輝夜様からしたら頭が痛いでしょうけど、そこは我慢してもらいましょう。
問題は輝夜様が結ンじまった契約。
御屋形様が出した5個の課題を熟さなければ、輝夜様はどこの誰とも知れない男と結婚する事になっちまう。
それも、性自認は男性の輝夜様がだ。
その精神的苦痛は計り知れたもンじゃない。
熟せばいいと輝夜様は言うけど、私はとても無理だと思ってる。
今の輝夜様の戦闘力を不安がってる訳じゃない。事実、あの御屋形様を一方的に伸しちまうほどの力の持ち主だ。やろうとすりゃ簡単なンだろう。
けど、それは元の体でのこと。輝夜様の体はあまりにも脆すぎる。
あと半年あるンだし、鍛えりゃいい。そうは言うけど、正直厳しいだろう。
なんせ、医者が匙を投げたんだ。体を鍛えるなんてだけじゃあ、多少楽にはなっても治りはしない。
でも、その程度の事は輝夜様だってとっくに気付いてる筈だ。
その上でやると言い切った。
私はとうに死を覚悟した身だ。
あの悪名高い輝夜様のお付きになれと。その言葉を聞いた瞬間、私はまず遺書をしたためた。
私が聞いた限りでも、既にお付きは23人変わってる。その全てが輝夜様の処分を受けた結果だ。私だけは違うなんて言えたら良かったんだけどね。
そして今日、なんなら初対面で処分される覚悟もしながら襖を開けたら、そこにいたのは何だか様子のおかしな輝夜様だ。
無茶ぶりの連続。今となっては輝夜様も混乱の中、なんとか対応しようとした結果なンだって分かるけど。
結果、中身が変わった事で輝夜様の処分を受ける心配はなくなった。
御屋形様に殺されかけはしたけど、あれに関しては輝夜様は悪くない。
つまり、輝夜様は私の命の恩人だってことだ。
本人が知ったら否定するンだろうけどね。
だから、私はただ黙って輝夜様に付き従う。
そうして、もしも輝夜様が課題を達成出来なかった時のために、輝夜様と一緒に逃げる覚悟を決めた。
人によっては、そンな事でそこまでしてやる義理ないだろうにと言われる程度の、小さな恩。本人が気付いてすらいない小さな恩。
けど、とうに覚悟して捨てた命だ。どうせこの家から逃げる事も出来ない。なら、せめて輝夜様のため、小さな恩のためにもう一度命を捨ててやろうじゃないかい。
明日からは地獄の鍛錬だ。
貧弱な体で鍛えて、血も吐いて、沢山苦しむだろう。
だから、支えてやる。そのためにも今は。
「おやすみなさい、名前も知らない誰か」
静かに襖を閉じた。