世界最強の男がTS憑依して範馬勇次郎に負けた挙句同意レイプされる話 作:白髪ロング娘スキー
鞭という光明を得てから今日で丁度一週間。
今日まで翁に鞭の扱い方を学び、ひたすらに鞭を振るってその性質を研究してきた。
その結果分かった事としては、以下の4つ。
・鞭とは調教や拷問に使用するための武器であり、致命傷にならない範囲で苦痛を与えることが目的の殺傷力が低い武器*1である。
・鞭とは、弾丸やジェット機、爆弾の爆発などで観測される
・鞭の威力が最も高い時は、振った時ではなく、むしろ鞭の先端が急激に戻ろうと
・俺に武器を扱う才能は無い。
……最後が割と致命的だが、取り敢えず今は置いておこう。
まず一つ目。
鞭に殺傷力は無い、とまでは言わないが低い。
なぜなら、元々鞭という物は馬や牛などの大型動物の調教の為に作られたものだからだ。調教をするのに殺しては意味が無い。
そして調教繋がりで奴隷や被差別者相手に使われ始め、そこから更に罪人や捕らえた間諜を拷問する為にも使われ出したもの。
何処にも相手の命を害そうという要素が混ざらなかった武器。
武器というよりも道具に近い物、それが鞭なのだ。
次に二つ目。
まず、衝撃波とは何かを説明しよう。
衝撃波とは、超音速飛行中の戦闘機や弾丸、ロケットや隕石。そういった音速よりも速い速度、すなわち超音速で形ある物質が移動し、空気の壁を破った事により発生が確認される波動の事だ。
その波の威力は凄まじく、周囲一帯の窓ガラスを粉砕したり、木を根ごと吹き飛ばすほど。
しかもそれが減衰したらしたで、ソニックブーム*2が発生して轟く様な大騒音を生み出す。
人類が開発した中で一番の衝撃波を放てる物が核爆発だ、と言えば多少のスケールダウンをしようともその恐ろしさが分かるか。
そして、そんなものを人力でいとも簡単に出せるのが鞭なのだ。
そして三つ目。
これに関しては意外だったのだが、鞭の最高速度とは、打ち込んで当てるまでの加速・着弾の時にはない。
むしろ振った後、鞭を手元に戻すために振り戻した瞬間。鞭の先端が向きを変えようと、空中で跳ねるその時にある。
加えて言えば、鞭が空気の壁を破り衝撃波を生み出すのも、その跳ねる瞬間である。
故に、鞭で最高の一撃を相手にぶつけたいと思ったのならば、相手には直接当てず、相手の近くで鞭を振り戻して衝撃波を相手にぶつけるのが一番なのだ。
最も、それは翁も出来ない程の技術が要る絶技らしいが。
……最後に、四つ目。
俺には武器を扱う才能が無い……という言い方は正しくはないか?
翁が言うには経験が無さ過ぎて、武器という概念そのものを全く扱えていないそうだ。
どんな武器でも振り下ろし、薙ぎ払い、振り上げ。偶に突きこそ混じるものの、パターン通りの扱い方しか出来ていない。
よく言えば見本通りの、悪く言えば相手にとって対処しやすい動き。
試合で使っていたグローブに似ているからと使ってみた手甲*3でさえも、他と比べればマシではあるものの、指の繊細な動きの邪魔になっているから付けない方がいいという評価を受ける始末だ。
暗器も同様にダメ出しをされて使用しない方がいいと宥められた。
正直かなりへこんだ。
そっかァ……俺武器使わない方が強いのかァ……適当に発泡スチロールでも巻き付けたゴムバット振ってればよかったかなァ……
まぁ後悔先に立たず、経験が無いなら振るのみ! と気合を入れたら、それはそれで首を横に振られたけど。
なんでも才能が無い訳ではないが、武器での鍛錬の成長率を徒歩*4だとすれば、徒手での鍛錬はジェット機。結果的に徒手での鍛錬をした方が格段に強くなれるとのこと。
……それはつまり才能が無いという事では? 俺は訝しんだ。
直球にぶつけてこない翁の気遣いに心の中で涙を流しながら、それでも俺は鞭という光明を捨てきれなかった。
翁は徒手の才能はあるとは言うが、それだって翁と組手をしてみれば負ける程度のものに過ぎない。
成長途中な上に肉体というマイナス要素があるとはいえど、負けているのだ。加えて、暗殺任務の時に翁以上の使い手と
ならば今扱える技のキレを上げるだけでなく、少しでも強力な新技を編み出しておかなければならないだろう。
使える手の多さは可能性の多さだ。負ける可能性は下げる、発作が出る前に仕留められる可能性を上げる。
……こう言っては何だが、俺は凄く楽しんでいた。
まだ弱い頃、ジムに入ったばかりの頃を思い出すからだ。
体格や経験でこちらを押しつぶしてくる相手に、新技を考えて乗り越える。あの楽しかった時の事を。
「19……ッ、20……ッ! っふぅー……」
両手に持った10キロのダンベルをゆっくりと下ろして深呼吸をする。
試しに、一番軽い5キロのダンベルから次に軽い10キロのダンベルに変えてみたが、かなりキツいな。
たった20回のアームカールで、もう腕が痺れてまともに動きやしない。
しかし、それで休憩はしない。
休んでいる暇など無い。武器を扱えぬ才能の無さ。それを受け入れた上で鞭という光をちゃんとした道にする。
ならば止まっている暇など無い。体が冷える前に動かし続けて高いパフォーマンスを維持し続ける。
その分発作が出る可能性は高いし、苦しみも増すだろう。だが、ただでさえ難しい事をしようとしているのだ、多少の無茶は覚悟の上だ。
やろうとしている無茶、
二ホンの代表武術にカラテという物がある。
この武術は、竹を重ねてその中に抜き手を仕掛けたり、コンクリート板に等しい硬さのカワラを重ねて叩き割ったりと様々な頭のおかしい方法で、気の遠くなる様な時間を掛けて体を虐め抜いて体を鍛える。
当然痛いし体は壊れる。竹に抜き手を仕掛ければ貫通しきれなかった指が折れ、節くれ立った竹が肌に刺さる。カワラに至っては最悪叩きつけた瞬間に手が粉砕骨折だ。
それでも止めず、諦めず。そうしていつしかその手は、体は鈍器と化し、切れ味を帯びるようになり、最終的には刃と化す。
俺が目指すのはその領域。
とはいえ、明らかに時間が足りない。加えて、この体でそんな事をしていては何十年かけた所で鈍器止まりだろうし、その前に再起不能となるだろう。
だから鞭だ。刃よりは武器化がしやすい。
鞭の当たるまでの工程は、振る、しなる、当たるだ。このしなるの部分を何としてでも習得する。
その為に平手を何度も何度も、関節をしならせて振っているのだが……
「ダメか……」
空気の壁が抵抗している証である空を切る音すらならない。加速が足りていないのだ。
肩を動かして腕を振り、肘の関節から力を抜いてしならせ、手に力を込めて跳ねさせる。
これでは筋力の問題で振る為の速度が足りず、また関節の少なさによってしなりが足りていない。
とはいえ、関節を増やすなど物理的に不可能。さて、どうするべきか。
関節が足りていない、という事で取り敢えず関節を増やしてみよう。
矛盾するようだが、別に矛盾はしていない。ただ単に、体全体を使ってみようというだけの話だ。
両足を肩幅に開き、手は顔の横に。ボクシングのファイティングポーズ。
しかし、これでは結局動かすのは上半身だけ。なので、顔の横に置いた手を胸辺りにまで下げ、開いた足を前後にも少し開く。
これで腰、及び下半身の関節も扱えるようになった。
さて、試してみようか。
左の足の指から力を込めていき、右足を一歩前に。腰を捻って左肩を前へと押し出しながら、肩を動かして腕を振り、しならせながら手を跳ねさせるッ!
すると、今度は空気を切り裂く様な音が響き、されど空気の壁を破る事は叶わなかった。
しかし空気は切り裂いた。このアプローチの仕方で間違いはない筈だ。
もう一度構え、先ほどよりも更に関節を使う事を意識する。
先程使っていなかった部位……足首、膝、股関節か。
各関節を意識して腕を全力で振り抜き、されど空気の壁を破る事敵わず。だが、明らかに空気を切り裂く音は大きくなった。
更に、もっと関節を使う。あと使っていない関節……背骨、か?
たしかに背骨の各関節を加速に使えれば一気に速度は増すだろう。だが、どうやってやるんだ?
試しに背を伸ばしたり、上半身を回したり、左右に揺れながら背骨にしなりを作ってみる。
……うーむ? 背骨は確か、28個の骨をジョイントさせた物だったか?
一つ一つの骨を意識し、もう一度試してみる。……何となく、分かってきた気がする。
再度構え……ようとした時、小さな笑い声が聞こえてきた。
「ぷふっ、ング……ふ、フフフ……」
「ん、何を笑ってるんだ絹代?」
「い、いえ……ぐにゃぐにゃと動く様子*5が……フフッ、可愛らしくて」
「んなぁっ!?」
かわっ!? ……いや、まぁこの体で軟体生物が如くぐにゃぐにゃと動いてれば可愛いか。
……ん、軟体? 何か違うような……いや、今は背骨だ。ひとまず置いておこう。
両足を肩幅に、前後にも少し開く。手は胸の少し下に置き……そうだ、指! 指の関節も加速に使おう。
鞭は跳ねる時に先端が振り戻る。それを指の関節で再現するのだ。
試しに指の関節を意識してバラバラに動かし、準備は完了。
左足の指に力を入れ、足首を捻る。
踏み出した右足でも同じことをする。
腰を捻りながら股関節で更に加速。
加えて28個の骨片、それをジョイントさせた背骨っ。
その内動作に関わっていると感じる17個の各骨片を同時加速ッ!
更に肩、関節、手首へと繋ぎ、最後に指の関節を利用して振り抜くッ!
最後に指を振り戻して跳ねも再現!
計30か所*6の加速ッ、さァどうだッッ!!
パァァァンッッ!!!
「きゃっ」
絹代の悲鳴が聞こえる。しかしそれに反応している余裕は無い。
超えたッ! 超えたぞ空気の壁、音の壁ッ!
体の武器化、鞭化に成功したッ!
……だが、これは実戦では使えない。
実戦の中でこんな悠長に構えている暇などありはしないのだから。
ひとまず、体の武器化に成功した事には喜ぼう。それに浸っている暇は無いが。
「これを肩から先の関節だけで出せるようにならなければ……」
しかしどうするか。物理的に関節は増やせない。
……そうだな、物理的に増やせないなら想像で増やしてみるか。
正直言ってアホらしくはあるが、それ以外に手が無いのも事実。
それに、イメージというものは時に想像を絶する効果を発揮する。
有名な話だと、こういうものがある。
死刑囚の健康な男性に目隠しをして手足を固定し、足に少しだけ傷を付ける。
そして何時間も水がしたたる音を聞かせてから、「随分血が出ているな。人間は3分の1の血液を失うと死ぬそうだ。……もうそのぐらいは出ているな」と言う。
すると実際には全く血は出ていないというのに、本当にショック死してしまう、という話だ。
つまり、この話に出て来る男性はイメージだけで死んだという事だ。
イメージで死ねるのなら、イメージで関節を増やす事も出来る……と思いたい。
……いや、やっぱ出来ねぇんじゃねぇかな……? やるけどね。
腕を目の前に掲げ、その姿をしっかりと目に焼き付けてから目を閉じる。
脳裏に浮かぶ白くて細い腕。そこから皮膚を取り除き、肉を取り除き、神経を取り除く。
最後に残ったもの、上椀骨*7を、尺骨*8を、橈骨*9を、そして指の骨の一つ一つを想像。
そうしてイメージ出来た白くて真っ直ぐな骨に、想像で関節を増やしていく。
どうやって?
関節とは、関節包に包まれた靭帯が、2つの骨が離れないよう結び付けている部位のことを指す。
それを、増やす。
どうやって?
関節を増やすのではなく、骨を増やすのだ。既に形としてある物を変化させるのは難しい。だからこそ、増やす。
新しく上腕骨を、尺骨を、橈骨を。それだけに留まらず、全身の骨という骨に更に骨を増やし、それら同士をくっつけて靭帯で縫合。更にそれを短くしたものを無数に組み合わせる。
想像するのは、大まかな形自体は元のまま、多関節と化した骨。
これもこれで難しい事ではあるが、出来ない程ではない。
増やし、増やし、増やす。
やがて想像の中の関節が、骨一本に付き100を超えた頃、イメージを止めた。
そして目を閉じたまま、足は肩幅に開いて手は胸の少し下。
異形と化した想像上の骨。その関節の一つ一つで加速に加速を重ねる。
そして……腕が振り抜かれる。
瞬間、道場内のガラスというガラスが砕け散った。
残心。
目を開ければ、そこには確かに目を閉じる前と同じ細い腕があった。
試しにもう片方の手で骨の形状を触って確かめてみれば、そちらも何一つ変わらぬ、多関節などではない普通の骨がある。
周りを見渡せば、砕けたガラスの欠片がそこら中に撒き散らされた道場の床。
集中したかったため誰もいない時間に来たが、これが他のニンジャ達がいる時間だったら面白い反応が見れたのだろうなと思うと、少し惜しい事をした気分になってくる。
それにしても、出来ちまったなァ……名付けてマッハビンタといったところか。
凄いね、人体。あとイメージ。
けど、これは使えないな。
未だ未完成という訳ではない。むしろ完成しているからこそ使えない。
もう一度腕を見る。そこには、細く、そして
空気を、音の壁を破った衝撃に腕が耐え切れなかったのだ。
何かを叩いた外的衝撃は一切無し。なのにこの有様。もし、これを実戦で使えばどうなるか。
……腕を失う程度で済めば良い方だろうな。
そもそも今気付いたが、俺はずっと思考が逸れていた。
俺の目的はあくまで体の武器化であり、空気の壁を破る事には無いのだ。
言ってしまえば、別に威力さえあれば空気を切り裂く音すらも鳴らなくていい。
俺が求めているのは速い技ではなく、痛い技なのだから。
それを、音の壁を破る事の凄さに塗り潰されていた。
未熟だな。
という事で、振り出しに戻ってしまった。さてどうするか。
そう言えば先ほど、自分でも理由は分からないが、俺は軟体生物という単語に何かを感じていたな。
一人特訓用の木製マネキンを立て、その前で構えてみる。
真っ赤に染まった方の腕は感覚が無いため、使うのは逆の手だ。
鞭とは何処をどう叩いても、誰を叩いても同様の痛みを与えられる、肉ではなく皮膚を攻撃する道具だ。あくまで鞭が凄いのはそこなのだ。
先ほどまでそれに目を眩まされていた俺が言うべき事ではないが、決して超音速で衝撃波を出せる事が凄い訳ではない。
そんな皮膚を攻撃する鞭の特性を、肉の体で再現する。
必要なものは軟体だ。先ほどの多関節を想像し、されど関節ごとに加速は加えない。
曲がる、しなる。そんな関節の良い所を利用して鞭の一撃を再現する。
体から力を抜き、多関節の腕を振ってマネキンへと叩きつけた。
「いっ!? ~~~たぁ……」
マネキンを叩いた瞬間、腕全体に激痛が走った。
痛みに思わずしゃがみ込んで腕を抱える。
見てみれば、叩いた手の平が真っ赤になっている。
当てたのは手の平だけなのに腕全体に痛みが走った理由は、恐らくイメージした多関節のせいで脳と体で認識に差が生まれ、上手く衝撃を受け流し切れなかったが故だろう。
痛みが引いてきた腕をプラプラと揺らし、動作に支障が無い事を確認して再度マネキンの前に立つ。
何が足りていなかった……? 関節ではない。むしろイメージの関節を増やせば増やすほど、叩きつけた時の自傷による痛みが増すだろう。
……脱力、か? 軟体では足りないという事か……?
そういえば、軟体という単語に何かを感じてこそいたが、違和感も感じていた。
つまり軟体ではない。軟体に近く、軟体ではないもの。
……水?
多関節ではなくなった腕をぶらんと垂らし、全身から力を抜いていく。
イメージするのは水、形ある水だ。
骨など無く、神経など無く、肉など無く、皮膚など無い。
其処にあるのは、ただの水。人体における腕と同じ形をしただけの、ただの水だ。
脱力、脱力、脱力……ふと、腕を超えて全身が水に
ビッダァァァンッッ!!!
ゴロゴロとマネキンが道場の床を転がっていく。
腕に痛みは無い。全身が水に変わったかのような感覚になった瞬間、手の平どころか腕全体をマネキンへと叩きつけたというのにだ。
ふと見れば、木製のマネキンには肩から背中にかけて一筋のへこみが出来ていた。
「成功、だな」
体の鞭化、完了だ。名前は
ドタドタとなにやら慌てたような無数の足音が近付いてくるのを聞きながら、俺は達成感に浸りつつ寝転がるのであった。