黒井津さんへの淡い想いを秘めたウルフくんちゃんが悪の組織特有の淫魔王な身内の裏切りにより間違った男らしさを徹底的に追求させられ、無事えっち専用雌犬怪人として完成しちゃうやつ 作:デイジー亭
「ふふ……♡ お待たせしました、お二人とも。私が大トリのクロチェッタ、です♡」
「は、早くっ♡ はやく、しろよぉ……♡」
「まぁまぁ焦らないで……ラストに相応しい、ステージをご用意いたします♡」
「……? えっ」
現れたのは、雌牛……蒼いツインテールの下で微笑む、おれと同じデカ乳の雌。しなやかを両手を翼のように広げ、羽ばたくような格好を取る大トリ。その搭載した淫肉重量では、空なんて飛べはしないだろうに。だっぷだぷっ♡ と重々しく震える肉毬。おれはお前になんか興味ない、一刻も早くアクラにおれでおちんぽ様シゴいてもらいたい♡ 息を荒げるおれの鼻を刺激する、新鮮な空気の匂い。
「アラクネ様、お疲れ様でした♡」
「く、クキキ……♡ た、大変な注文ばかりつけおっテ♡ このアラクネをコキ使っていいのは、アクラだけだゾ♡」
ぱちんと鳴らされる指の音と共に、バタバタバタンッ! と壁が倒れ……崩れ去る、おれとアクラの愛の巣。景色を見回すと、観覧車にジェットコースター……一面の巨大遊具。そしてゴンドラに乗り、しゅるしゅると降りてきた大幹部。大きな角と、次第にグラデーションする独特な髪色。細い身体を包むのは……メルヘンな雰囲気にそぐわぬ、短く切り詰められた和装。
「ええ、だから……♡ ご褒美に、コキ使ってもらいましょ♡ はい、抜いちゃいましょうね~♡」
「クキィ゛ッ♡!? ま、マッ♡ まンッぉ゛ぉ゛ォ゛~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
「あ、アラクネ様までっ♡」
この異空間の主、アラクネ様……考えてみれば当たり前だ、前提と言ってもいい。彼女が既に堕とされていなければ、こんな大舞台は創れない♡ おれを堕とすためだけに、こんな大がかりな仕掛けを……♡
つかつかと歩み寄ったクロチェッタに、ミニ過ぎる袴に腕を突っ込まれ……ずぬるるるるっ! と一気に引き抜かれる長すぎるバイブ♡ びくぅんっ! がくがくがくっ♡ と仰け反りイッた機織り怪人♡
「うわぁ、ほっかほか……♡ 楽しみにし過ぎですよぉ♡」
「く、クキッ♡ あ、当たり前だろウッ!? こんな物突っ込まれテ、貴様らの痴態を延々と魅せられながら織り上げるだケッ♡ ご褒美無くして、異界の管理などやってられるカッ♡♡♡」
「ごめんなさい、アラクネ様♡ でもぉ……♡ 後ろ♡」
「キッ!? あグッ♡ アクラぁ゛ッひょぉ゛ぉ゛~~~~~~~~~ンギョォ゛ッ♡♡♡♡♡」
「あー、これこれ。温泉みたいだねアラクネ」
がっぱぁっ♡ がに股拡げ、なんとか姿勢を揺り戻す。クソ長バイブに頬ずりする蒼髪に必死に苦情をまくしたて……♡ 忍び寄る、雄様の魔の手に気付かない♡ がしりと掴まれた角で持ち上げられ、ずっぽんっ♡ 一気に鬼挿入♡ じっくりことこと、淫欲煮込みされたちんぽシゴき穴を雑に使われちゃってるぅ♡ ばたばたっ♡ ばたばたっ♡ と暴れる細い脚♡
「と、当然ダッ♡ 我が異界モッ♡ おなかモッ♡ 持ち主を包むのがだぁいすキッ♡ キキッ……♡」
「そっか。さすがアラクネ、自覚に満ち溢れてる……ご褒美だ、
「ほォ゛ッ♡!? ほァ゛ッ♡ と、とメッ♡ とめてとめてとめてぇ゛~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡」
「な、なんて見事なっ♡」
それがアクラにおなかを撫でられて……刻まれた文様が紅く光った途端、がっぱぁっ♡ ぴぃんっ! がっぱぁっ♡ ぴぃんっ! と規則正しくがに股から脚ピン♡ 自らおちんぽ様をもぐもぐする、マゾメスの泳ぎ方♡ 空中アクメ平泳ぎを、練習させられちゃってた♡ 泳ぎの苦手な彼女に対する、悪意まみれの泳法指導……♡ 独特のイントネーションが、搔き消されるほどの激悦♡
「うーん、焦らした分思い切りは良くなったけど……やっぱ、角のある肉奴隷にはコレだよね」
「ほンッ♡ ぎょぉ゛ぉ゛ォ゛ッ♡ ……ぶくぶくぶく……♡」
「うーん、よく締まる。でも溺れちゃったね? どれ、もう一本」
「あ、あっあっあっ……♡」
乱暴に乱雑にエゲつなく、彼女への指導は続いていく……♡ 褒めそやしの言葉と共に、握りしめられる雄偉なる角♡ それが、ばきぃん! とスナック感覚で折り砕かれ……びぃッ、いいぃんんっ……! と美しく伸ばされた爪先♡ 泡を噴いて白目を剥いた彼女の、もう片方が軋んでいき……♡
「はい、起床」
「お゛ッ♡ ぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ァ゛ァ゛~~~~~~~~ヤッベッ♡ あ゛ッぢぃ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛~~~~~~~っ♡♡♡♡♡ ほげっ☆」
「んー、悦んでくれて何よりだよ」
「ぶくぶくぶく……♡」
ぼっきぃぃぃんっ! と今度は握り砕かれる♡ クソかわいくない赤ん坊の、産声の後に……ママにされちゃう白濁が、今度は子宮内部を溺れさせにかかる♡ 引き抜かれると同時に、ぶぴぶっぴぃぃっ♡ と床に溢れる、ザーメンの大海♡ 雑に投げ捨てられた彼女が、顔面から着精♡ 要救急救助者が、あっという間に出来上がっちゃったぁ……♡ 脚だけが、まだガクガク平泳ぎしちゃってる♡
「アラクネ様も嬉しそうですね♡ さすがはアクラさん♡」
「こ、これが。大トリ……?」
「いいえ、オマケです♡ 本番は、これから……♡」
「おま、け……♡」
ザーメンの海で溺れるという、親近感を感じる状態。そんなエゲつないコキ使い方をされた彼女が……ステージにすら登れない、お菓子の付録みたいな余興だと告げる彼女♡ わかる……コイツが、はじまり。
「燃えて来たな……!」
「あ、あら? ちょっとはビビると思ったんですが。予想外の反応が多いですね……設計、何かミスった?」
「何を訳のわからないことをっ! いいから早くアクラに雑にハメ潰されろっ♡ トロいんだよ、デカ乳女ッ!」
「うーん、自分のことを棚に上げてこの発言。やっぱ飼い主に似るのかな……」
「がるるっ……!」
コイツに負けるわけにはいかない。だって……キャラが被っちゃってる。おれと同じデカ乳で、ビキニの頂点を濡らすミルク。アクラの喉を潤すのは、おれのミルクだけでいい。牛が何だ、時代はミルクも
「ああ、そっちは生きてるんですね。安心しました……アクラさん♡」
「何だい、クロチェッタ」
「搾って、ください……♡ 彼女に魅せ付けちゃいましょう♡」
「やれやれ、ウルフくんちゃんの前で浮気搾乳とは。台本通りとは言え、心が痛むね」
「ちゅーもしたいですっ♡ いちゃいちゃべろちゅーミルク飲みキス♡ 夢だったんですよぉ♡」
「うーッ! う゛ぅ゛ぅ゛ッ!!」
どんなに止めようとしても、一向に身体が動かない。おれの身体はアクラに重くしてもらったけど……たっぷり実った淫肉重量。それとは違う何かが、四肢を縛り付けている。それは、産まれる前の記憶。彼女に逆らってはいけないという、脳髄に刻まれた当然の理。でも何で、何で……反逆防止機構が働いてるんだ。脳裏に浮かんだ確信を、真実だと思いたくない……!
「んっ」
「んっ……♡ ~~~~~~っ♡♡♡♡♡」
「あ゛~~~~~~っ!! ぎぃ゛ぃ゛ぃ゛ッ!!!!!!!」
ぶちぶちと、筋線維が千切れるほどに四肢に力を籠める……だが、動くことは出来なかった。おれの、おれだけが味わえる最高の幸せ。アクラにミルクをご馳走しながらの、愛情溢れるイチャラブキス。それが目の前で行われても、牙が砕けるぐらい軋んでも……おれは、決して動くことが出来ない。だって、彼女は。
「んふっ……♡ さぁいこうっ♡ さ、そろそろわかったかな? 私が、誰なのか……♡」
「う、嘘だ……そんなはず、ない……! イヤだ、やめて!」
「駄目だよぉ? ワガママ言っちゃ……
「ヒッ」
くちびるをそっと離し、こちらに歩み寄る彼女。だって体型が違う、髪の色も……でも瞳の色は同じで、おれの身体はもう気づいちゃってた。冷静な部分が告げる……アカシック様と同じ。いくらでも偽れる。でも、信じない。信じたくない……! いやいやと首を振るおれの前で、握られるツインテールの片房。ずるりと堕ちるその下から、現れた鮮烈なる紅色。
「クロチェッタとは仮の姿! いつも元気に怪人開発! ……も、仮の姿。その正体は……アクラさんの、最初の肉奴隷♡ 黒井津 燈香でーすっ♡」
「あっ」
「おや? 涙、出ちゃったぁ? おかしいね、お揃いなのに……お母さん、娘が泣いてると悲しいなぁ♡ ほら、スマイルスマイル♡」
「……」
ぐにぐにと、頬を弄ばれ牙を剥き出しにされる。おれは強制的に泣き笑いさせられて、ぽろぽろと零れる水滴を止められなかった。だって……慕っていたあの人が。おれの一番大切だった人が。おれを、自分の意志でアクラに貢いだんだ。満面の笑みが、涙に滲む視界で薄ぼんやりと輝く。大好きだったはずの笑顔が……今は、とても辛くて。
「嬉しくないの? 親公認で、アクラさんの物になれたんだよ♡」
「なん、で」
「んー? それを聞いちゃう? だって、しょうがないでしょ♡ アクラさんが、ウルフ君を気に入っちゃったんだもん♡」
「どうして」
「他に理由要る? しょうがないなぁ、ウルフ君は……それはね、君がオスモドキマゾメスだから♡ そう産み出した製作者として、責任取ってあげなきゃダメでしょ♡」
揺さぶられ続ける精神、失われていく思慕。おれは……何のために産み出されたんだろう。アクラが来たのは、おれが産まれた後。おれの方が先だったのに、この人の中では優先順位は遥か下。おれはおれはおれは……このひとの、なんなのだろうか。
「おれは、なに」
「決まってるでしょ? アクラさんに捧げる、最高のおもちゃ♡」
がらがらと、世界が崩れる音がした。
◇◇◇◇◇
「うッ!! がぁ゛ぁ゛ぁ゛~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!」
「あははっ!」
うーん、心が痛む……彼女が上げた、血を吐くような咆哮。それを聞きながら上げる笑い声の、なんと空虚なことか。だが、必要な措置だ……アクラさんの肉奴隷に、アクラさんより重要な物があってはならない。
「おれはっ! あなたをッ……!」
「どうなのかな、好きだったのかなっ! あはは、無理無理ッ! 君みたいなオスモドキマゾメスじゃ、私を満足させらんないよっ!」
「ぐぅ゛ぅ゛ぅ゛ッ……がぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!」
「どうしたの、具合でも悪いのかな? 培養槽にブチ込んであげようか、もっとえっちな身体にするけどね♡」
頭を抱え、ぎりぎりと締め付ける彼女。苦しむ姿を見ると、胸が締めつけられる。ごめんね、辛い想いをさせて。アイドルコンビでこだわりの無意味さを、科学者と猫で想いの空虚さを。魔法少女たちで、絆の儚さと雑魚雄の弱さを叩き込んで。アカシック様で、自尊心を投げ捨て雄様に奉仕する悦びを叩き込んだ。トドメはやはり、私でなければならない。
「黒井津さんっ……! もうやめてぇっ!」
「やめてあーげない♡ ほら、どうしたの? 抵抗してみせなよよわ雌。じゃないとぉ……アクラさん、私が取っちゃうよ♡」
「……ッ!」
「ほら、もっかいキス……「がァ゛ァ゛ァオ゛ォ゛ォ゛ンッ!!」あははっ、やっとだねっ!」
雄たけびが上がる……掠める爪の鋭さと来たら、二人の間を引き裂く気概しか感じない。天秤に載せられた重さは、アクラさんに傾いた。手ひどく嬲った彼女の心は、もう完全に私から離れた。怪人開発の基本、絶対服従の刷り込み。本能にまで刻んだそれが、意味を失うほどに。ここで終わってもいいけど……それじゃ、つまらない。
「ふぅーッ! ふぅぅ……!」
「さ、ウルフ君。戦おうか……君がよわ雌だってことを、骨の髄まで叩き込んであげるよっ!」
「……がァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!」
「ふふ、激しいねっ!」
彼女のルビーの輝きが、私を憎々し気ににらみつける……完全に暴走状態。カミュラ様に貢がせた万能細胞は、何もえっち専用ってわけじゃない。彼女を着実に強化しているのだ……全身に走る、黒いラインがその証。『黒色獣化』……満載された媚肉重量を無視するほどに、進化した力。それが私を襲うが……頭に血が昇り過ぎた彼女は忘れている。
「うがぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ……げぐぅ゛ッ!!」
「
「よぐも、アクラのおれのおなかをぉ゛ッ!!!!」
「ノッてきたね、もっともっと踊ろうかッ!」
飛び掛かってきた彼女の、なんと隙だらけなことか。前職で鍛え上げた拳の、完全なカモである……メテオグランドエンドを使うまでもない。アレを使ったら殺しちゃうし……ただの、カウンター。振り抜く拳が、彼女の腹部。『予約済』の文字を正確に打ち抜く……逆鱗を痛打され、彼女のボルテージがさらに上がる。白い肌に走る黒が、面積を増す。
「シィネェ゛ェ゛ェ゛ッ!!!」
「本音が出て来たねっ! これはちょっと危ないかもっ!?」
「ガァ゛ォ゛ッ! グッギャァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!!」
「わおっ!」
どごんと、地面が爆ぜる……アカシック様にすら比肩する、とんでもない破壊力。ばちばちと肌を叩かせるわけにいかないので、弾く瓦礫の雨。さすがに辛くなってきた、生身ではもう無理。だが、私にはこれがある……そっと撫でるブレスレット。彼女が強化されているように、私も立ち止まってはいないのだ。
◇◇◇◇◇
「ふぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ッ!!」
身体が熱い……おれは、力に酔い痴れていた。地面から拳を引き抜くと、がらがらと頭上から降り注ぐ瓦礫。……気にするまでもない。痛みすら感じず、肌で弾く重いカタマリ。苦労して拳で弾く彼女とは、肉体強度からして違うのだ……おれの勝ちは決まっている。少し冷静になる……さすがに殺すのはマズい。四肢をもぎとるぐらいで済ますべき。
「変ッ! 身ッ!!!」
「……は?」
だが……力強い声が響く。俯いた顔を上げると、彼女が構えた腕。マイクロビキニが羽となって飛び散り、桃色に光るゲージが輝度をあげていき……黒い装甲が、敵手の身体を覆っていく。そして腕をゆっくりと回し、だっぷんっ! とそこばかりは柔らかそうな、デカ乳が揺れる。拡げた両腕の中心。おなかの位置で輝く宝石。
「ブラックブレイダーッ!!」
「はァァッ!?」
「何驚いてるの、ウルフ君。私はさぁ……未完成品をそのままにしない。当たり前だよね? これで条件はイーブン、さ……殺り合おうか」
「べ、ベートクローッ!」
シャキンと抜き放つ刃の煌めき……以前見た時よりも、鋭さを増していて。慌てて伸ばした銀の輝きが、おもちゃに見えるほどに。当然だ、彼女の本分は怪人開発者。完成した装着型怪人は、その機能を大幅に増強されているに違いない。でも……負けない。弱気な心を奮い立たせ、四肢を曲げる。
「おっと、イーブンじゃないか。だって、ウルフ君はよわ雌だもんね?」
「……グッギャァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!!!!!!」
もう何も言うことはない。ただ一心に、敵手の首を狙うのみ。一瞬で沸騰した頭が、殺害指令を出す。本能が告げている……アレはヤバい。手加減なんかしたら、こちらの首が飛ぶ。だが、ああ……おれは、わかってる。勇ましく雄たけびを上げたって、おれがどんなに本気になったって。彼女には決して……
「ブラックブレイダー・クラッシュッ!!」
「……ははっ」
勝てるわけがないんだ。おれの、大好きだった人……爪を切り落とされて、悟る己の弱さ。この人にはおれなんて必要ない。全てが自分を上回った、上位存在。頭の良さも、女としての心得も。強さだって……だから憧れた。だから好きだった。産み出してくれたから、好きだったわけじゃない。この人のぜんぶに惹かれていたんだ。でも……もういいや。
◇◇◇◇◇
「あ゛ぁ゛ぁ゛んっ! あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ!!」
「ウルフ、君……」
しゅるしゅると、彼女の身体が縮んでいく……泣き叫ぶ、ちいさなちいさな女の子。無力で守ってあげないと何もできない、儚い姿。デカ乳とデカケツはそのまま……とんでもないアンバランス。でも……彼女はそれを選んだ。アクラさんに愛されること以外、何もできない自分を。
「あ、あくらぁっ! おれ、わたし、あたし、うち、ぼく、わし……あああああんっ!」
「や、やり過ぎたッ!」
でも……変化はそれにとどまらなかった。髪の色と一人称が滅茶苦茶に変わる。七色を超えてゲーミング……アイデンティティの完全な崩壊。暴走した万能細胞が、彼女のぜんぶを変えていく。愛される自分が、わからなくなったのだろう。こだわりも想いも絆も強さも自尊心も……存在意義さえ、滅茶苦茶に叩き壊した。青ざめる……このままでは、彼女は存在ごと崩壊する。
「やれやれ……やり過ぎだよ、燈香」
「ご、ごめんなさいっ!」
「見てごらん、可哀そうに。あんなに泣き叫んで……一心に俺を求めてる」
「あ、アクラさんっ!」
「――――――――――――――――――――ッ!!!!」
暴走した彼女は、もう何も見えていない。天を仰いで、可聴限界を完全に超えた雄たけび。減った体積の分零れ落ちた黒い液体。そこから生み出される、不定形の獣たち……明らかに危険だ。肉体的には弱い、この人を向かわせてはいけない。でも……その少年の背中は、私の手を無言で拒んで。どしゅどしゅと、幾多の爪に切り裂かれても歩みを止めない。
「まったく……手の掛かる子だ。そこがかわいい」
「あ、あく、らぁ……?」
「と、止まった……?」
「当然だろ? 俺のウルフくんちゃんだ」
「ひん、ひんっ……」
だらだらと血を垂れ流す手が、そっと抱える小さな身体。怯える耳を撫でた途端に、暴走する獣たちが止まる。彼女の手が、傷だらけの肌を撫でる……しゃくりあげるその顔に、浮かんだ怯え。愛する人を傷つけるという大罪。でも……千変万化する髪色が、輝く銀に戻る。
「どうしたんだい、ウルフくんちゃん。悲しいことでもあったのかい?」
「アクラ……おれ、わかんない。どんなおれだったら、アクラに愛してもらえる?」
「おかしなことを聞くね」
「だって、おれ……男で女で、馬鹿で間抜けで。黒井津さんよりも弱くて、不安定で。ねえアクラ、教えて……おれは、どうすればいい?」
「決まってるだろ?」
しゅるしゅると、短い手足がすらりと伸びる……口調も落ち着いてきた。重くなった身体を支える手から、ぶしりと血が噴き出す。地に満ちる獣たちが、彼女の身体に吸収されていく……うっとりと見上げる、紅い瞳の群れ。消えゆく彼らの視線の向かう先は、たった一人の赤く染まった黒い少年。
◇◇◇◇◇
「どんな、おれ? なんだってなる、おれはお前に愛されたい」
「どんなきみでもいい。俺はね、ウルフくんちゃん。きみのぜんぶが好きなんだ」
「……んっ♡」
「んっ」
そっと告げる言葉に、返ってくる力強い言葉。胸にじんわり染み込むそれに、心が落ち着いていく……がたがたと揺れ動く天秤が、軽重を失う。そうだ、コイツははじめからそうだった。おれのぜんぶを、味わおうとした。男らしさと、女らしさ。生意気と屈服。プライドと、媚びへつらい。悪戯とお仕置き……くるくると回る両方の皿。おれはまた、キスで生まれ変わる。
「ちゅっ♡ ちゅぱっ……♡ んっ……♡」
「んっ……れろっ」
「ん~~~~っ♡」
「ふふ。ちゅっ……」
はじめの一回は、おれを素直にした。次の一回は、おれを従順な雌犬にした。そしてこの一回は、おれの全てを変える。ブンブンと振るしっぽとともに、振り回される価値観の天秤。遠心力でつり合いが取れたそれは、もう回転を止めることはない。おれは何も捨てることを許してもらえず、ただただワガママに振り回される。
「んっ♡ ち、ちくび♡ たべて……♡」
「はむっ」
「んぎゅっ♡ む゛~~~っ♡ ぶぴぴっ……♡」
「じゅる、じゅる……」
おねだりをすると、口に含まれる乳先。触れ合うくちびるの間から口内を満たし、鼻から間抜けに溢れさせるミルク。だけど愛しい雄様の喉が鳴ると、口の中に残るのは甘やかな味だけ。舌先を絡めて、ねっとりとすり合わせて。コイツに全部食べられるのが、最高の幸せだって思い知らされる。おれは、何も捨てる必要がない。
「んふーっ♡ んふーっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡」
「かわいいよ、ウルフくんちゃん。もっとくちびるとミルクを寄越せ」
「ちゅぅぅっ♡ ちゅくっ♡ んじゅちゅっ♡ ん~~~~っ♡♡♡」
「んぶぶぶぶっ……」
だって……コイツに全部食べてもらえるのだ♡ おいしいおれを……全部丸ごと何もかも、愛しいアクラの物♡ なら捨てるなんてもったいない、全てを捧げるべき。ぎゅんぎゅんと廻る天秤が、キィィンと心の奥で高周波を奏でる……振り回され続ける心は、やがて完全なる円を描く。
「んっ……♡ 待ってて、アクラ♡ おれ、戦ってくる♡」
「ああ、かっこいい姿を俺に見せてくれ」
「うんっ♡」
「え、この空気で戦うんですかッ!? ……え゛っ」
わかる……これが、男雌心。アカシック様が言っていた、全てを捧げる感覚。強きも弱きも尊厳も、全部全部投げ捨てるのではなく……捧げる。高揚する心のままに、そっと全身に力を籠める。拡張されていく意識、ぼこぼこと千変万化する身体。でも何も恐れることなんかない、おれはいつだって元に戻れる。
「知ってるか、黒井津さん」
「な、何を……?」
「ジェヴォーダンってさ、おれのモデルだろ? 狼じゃないんだぜ、アレ」
「う、ウルフ君なのに?」
「ああ、正確には……狼に似た、何かだ」
黒い甲殻に包まれた、彼女は知らない……自分が何を産み出したのか。己のルーツを知らないのは、怪人としてあるまじきこと。そう言ったメギストス様に教えられた、真実。フランスのジェヴォーダン地方。森の中から現れ、人を食い荒らした
◇◇◇◇◇
「じゃ、じゃぁ……何なのかな?」
「さぁ? 知らない。狼かも、ハイエナかも。フクロオオカミとか……はたまた狼と犬との雑種なんて説も、あったらしいぜ」
「へ、へえ。そうなんだ。ちなみに……今のウルフ君は、何かな?」
「決まってるだろ? 狼に似た何か……
「そ、そんなにじゃらじゃら金属音鳴らしながら、凶悪な爪したわんこっ! 居るかなぁっ!?」
ゆっくりと上がった彼女の顔が、にぱっと笑う。笑顔とは、元々は獣が行う威嚇だったという……その説、全面支持。舞い踊る銀鎖に囚われた、縛られた獣。四肢と首から伸びたそれは、金属音を奏でながらアクラさんんの方へ伸びていき。構える腕に、ギラつく銀色の刃。私の構える剣がおもちゃに思えるぐらい、長くて分厚くてそして……どこまでもデカい。
「居るよ、ここに。アクラ専用雌犬♡ ベート・ウルフッ! 黒井津さんを男らしく、ブッ潰しちゃいまぁ~~~すっ♡♡♡」
「クソッ! 完全に発狂して……ヒィィィィッ!?」
チャーミングに笑って、えいとかわいらしく振り下ろす……大木みたいなベート・クロー。雌犬を名乗るのに、薩摩隼人みたいな思い切りの良すぎるチェスト。ぐんぐん迫るそれが告げる、明白すぎる事実。あ、死んだわこれ。さよならアクラさん、二人仲良くお幸せに……現実逃避してる場合じゃない! せめて勢いを……ぱっきん折れるブラックブレイド、飛び込んでくる金色。
「ぬおおおおおおっ!? クソ重いわこれっ! 危機一髪どころか、十発はカタいわよこれっ!」
「どいてくれねーかなアカシック様。黒井津さん殺せないじゃん」
「た、助かっ……てないっ!?」
「まぁいいや、纏めて潰しちゃお♡ よーし、おれ頑張っちゃうぞー♡」
「「ヒィィィィィィッ!?」」
掲げたちっちゃな拳に宿る、海を割るほどの膂力。それが二つ……やっとアクメ気絶から復帰した、頼れる首領様によるインターセプト。だがのんびりと殺害を予告する、彼女の爪が膨れ上がり……さらにデカさを増すギロチン。アンカーみたいに地面に突き刺さった鎖が、絡みついて勢いを増しアカシック様の腕がメキャる。死ぬッ! 死んじゃうッ!
「こーら、ウルフくんちゃん。ステイ」
「わんっ♡」
「ハウス」
「わふっ♡ わふぅんっ♡」
「「へっ……?」」
だが目を瞑っても、一向に訪れない死への片道切符。しばらく待っても死神さんが魂の緒をブッた斬らない……恐る恐る目を開けると、お空がきれい。悪夢みたいな大質量が消え、声の出どころを見ると……猛ダッシュするウルフ君の背中。アクラさんの目の前で急ブレーキし、お利口さんにお座りする。
「チンチン」
「わんっ♡」
「おもらし」
「ふぁ゛ぁ゛ッ♡」
「デカ乳」
「わうわうっ♡」
「ミルク。がぶっ」
「んぉ゛ぉ゛ッ♡♡♡ しあわせっ♡ しあわせぇ~~~~~~っ♡♡♡」
号令と共に、がに股乳見せエロ蹲踞。そのままの姿勢でションベン……ジョボつかせるままに、だっぷんっ♡ 持ち上げたデカ乳。それに吸いつかれて、媚び狂った嬌声を上げる躾けられ過ぎた雌犬……うん、まぁ。雌犬だもんね、飼い主には絶対服従だよね……アクラさんにより無力化された、彼女の痴態。腰が抜けて、アカシック様と抱き合ったまま見守る。
「ぷはっ……ウルフくんちゃん、そのおなかは?」
「えへへっ♡ 羨ましかったからぁ……着けちゃったっ♡」
「セルフ淫紋? また高度なテクを……じゃあ、これは?」
わざわざこちらに見せつける、紅く輝く文様……『予約済』を上書きする、彼女自身が刻んだ淫紋。『♂』と『♀』が組み合わさり、その上で『↓アクラ専用チンこきあな♡』の文字が誇らしげに輝いている……いいなぁアレ。私たちの淫紋より、手が込んでるんだけど。文字も刻めるなんて聞いてない。じゃらりとアクラさんの手が握る、首から伸びる鎖の先端。
「うんっ♡ 引っ張ってっ♡ アクラとおさんぽしたいっ♡」
「しょうがないなぁ」
「んぎゅっ♡ くびっ♡ しまるぅっ♡」
「さぁ行くぞウルフくんちゃん。お利口さんな馬鹿犬には、ご褒美をあげないとね」
「わふっ♡ わんっ♡ あ゛ぁ゛ぁ゛ぉ゛ォ゛ォ゛ンンッ♡♡♡」
それを思い切り引かれ、わざとらしく転倒。取るのは乳土下座のポーズ……そのまま引きずられ、しっぽをブンブン振りながら連行されていく馬鹿犬。長く伸びる嬌声が、彼女の満足感を示していて……ああ、これ私たち出汁に使われただけだわ。殺そうとしたのもブラフ、強いところを見せて雄様に対してはよわよわ。絶対服従な馬鹿犬具合をアピールする、絶好の機会。
「……アカシック様。これ、成功です? 失敗です?」
「さぁ……ちょっと吾輩、起きたばっかだからわかんない。ただ一つだけ言えることがあるわ」
「何です?」
「これから行われるのは、
「誰がうまいことを言えと」
ひゅるる……と空っ風が吹く中、私は謎の敗北感にツッコミを入れることしか出来なかった。