関わらず椿は新二の子供しか妊娠する可能性がありません。
両性具有者には他者を妊娠させる力がまるで無いからです。
新二も『乱交』と言うシチュエーションに誤魔化されて
その可能性を考慮出来なくなっています。
【2011年7月31日 午前10時 茨城県水戸市 天女の湯水戸本店内 愛の間】
静かな部屋に、肉を身体の奥へと叩き付ける音だけが響き渡る。
新二は荒い息を吐きながら、盛りのついた犬の様に腰を振っていた。
「ああッ、新二さん。
もっと奥にください。
私の膣内をたっぷり味わってくださいね」
「し、締まる……」
根元をきつく締め上げ、狭くなる膣の中を肉棒が無理やり広げながら入っていく。
腰を引き、突き出す一連の動作の中で波の様に襲ってくる快楽の連鎖に対して新二はその快感に溺れる事しか出来なかった。
(彼女を気持ちよくさせてあげたいけど、正直あっと言う間に達してしまいそうだ……)
出来るだけ長く保ちたいと思う彼の思惑とは違い、椿は早く射精してほしいと願う。
(貴方の精子を私にください。
そして、私を妊娠させてください。
貴方と私の子供なら、きっと正義の心を持った真っ直ぐな人間になるでしょう)
椿はこの話を咲に持ち掛けられた直後から、この『計画』を頭の中に描いていた。
たった1つの嘘と覚悟さえあれば、月山新二の子供を妊娠する事が出来る。
他の誰に、妻候補の相手さえいる男の子種を受け取る覚悟があるのだろうか?
椿にはその覚悟があり、その後の『誤魔化し』すらも考えていた。
(血生会と関係を持ち後ろめたい仕事をしている私だからこそ出来る事がある。
2週間程経てば妊娠していた場合解るだろうから、雲雀さんに『男』を斡旋してもらえば良い。
白薔薇館で働いている男は『ハードな生活から逃れて安定した人生を送りたい』と思っている人だらけ。
真面目そうな人、そして口が堅い人を連れてきてもらえれば……)
本人が知らない間に生まれた月山新二の『隠し子』が世間に露呈しない様にする為の偽装結婚。
自由と満ち足りた生活を保障する代わりに、秘密を墓場まで持っていくという約束をさせる。
そういった人物を探す事はそう難しい事では無かった。
その男の子供だと騙し続け、ゆくゆくは自分の店の後継者として育て上げる。
夢は膨らむが、まずは目の前の『妊娠』に意識を集中させなければならなかった。
「俺、椿さんも気持ち良くしてあげたいです」
新二は、自分だけが達するのではなく椿も絶頂に導かなければ失礼だと考え背後から彼女の肉棒を扱く。
暴発しそうな程限界が近付いている為、意識を別の所へ移そうと言う狙いもあった。
「そ、そんな事もしてくれるんですか新二さん。
嬉しい……
おうッ」
自分が愛している相手に突かれ、手で奉仕してもらっている事に椿は感動すら覚える。
感覚が鋭敏になっており、触られるだけで自然と喘ぎ声が漏れた。
「あひッ、あッああッ。
さっき出したばかりだから……
すぐイッちゃいますッ」
「幾ら出しても平気なんでしょう?
遠慮せずに出してください」
カタクナールΩはどれだけ精魂が尽き果てていようが摂取すれば強制的に勃起を促す。
精神力さえあれば何度射精しようとも装填出来る事を新二は充分理解していた。
「湯姫さん、頑張ってんなぁ。
のきあ、アタシ達も負けてられねぇぜ」
「ええ。
貴方のオマンコに突き刺した私のを、たっぷり味わってもらいましょうね」
椿と新二がセックスしているのを横目に見ながら、希望を『犯す』妙子。
希望を壁から突き出た柱の上に座らせ、そのまま凶器と呼べる極太の肉棒を無理やり膣内に押し込んだ。
「おごッ、がッあッ」
通常では入るとは思えない太さの肉の塊が、容赦無く彼女の奥へと入っていく。
やがて根元近くまで入ると、希望の腹は妊娠したかの様に膨らんでいた。
「私のを受け入れてくれているじゃないですか。
頑丈な身体をしてますね」
「あッ……
当たり前だ。
アタシはレディースのトップ張ってた女だぞ。
こんな痛みに耐えられねぇとでも思ってんのか。
舐めんな」
痛みを紛らわそうと強気な発言を続ける希望であったが、身体は悲鳴を上げている。
吐く息は深呼吸の様に長く、顔は引き攣り涙がとめどなく溢れていた。
「アタシのチンポの面倒も見てくれよ。
耐えられるんだろ?」
蛍は角材の様な柱の上に乗り、パンパンに張ったペニスを希望に咥えさせる。
妙子よりは小さかったが、それでも口で息をする事が難しくなる程のモノが彼女の喉を小突いた。
「いいぜ、今だけアタシのオナホになれよ。
こぼしたら承知しねぇぞ」
「ネットリと包み込んでくるオマンコ……
貴方の、とても気持ち良くて最高よ。
油断したら出てしまいそう」
金属バットよりも巨大な肉棒が、膣を抉る様に擦りつつ出入りを繰り返す。
蛍は希望の頭を手で押さえながら腰を前後に動かした。
(よ、容赦が無さ過ぎるだろこんなの。
なのに何で感じちまうんだ。
滅茶苦茶にされてるってのに、すげぇ身体が火照って変な気分になっちまう)
希望は相手を乱暴に攻めようとした事はあったが、今まで乱暴にされた事は一度も無い。
今まで知りもしなかった未知なる扉が彼女の目の前で開き、その快楽に彼女は酔い痴れた。
「激しいですね。
私はとてもついていけないです」
「ついていけないんやったらついていける所に混ざればええやん。
ウチ、いっぺん入れながら入れられるって言うのを試してみたかったんよ」
周防幸枝は輪の中に入っていけず困惑していたが、遠藤咲に声をかけられ彼女がいる方へと駆け寄る。
咲は既に芹沢葵の肉棒をその身で受け止めており、自身の竿が空いていた。
立っている状態のまま若干腰を屈ませ、後ろから挿入し易い状況を整える咲。
ガチガチに硬くなり熱を帯びている肉の槍が、彼女の体内にずぶずぶと潜り込んでいく。
「あは、ええわぁ。
やっぱオメコの中はサイコーやな。
特にまるうはんのは狭くてウチのを締め付けてくるのが気持ちええで……」
前後が連結された状態でのセックスは、腰を振るタイミングが難しい。
大きく動くとバランスが崩れてどちらかのモノが抜けてしまう為、肉棒をなるべく密着した状態で奥へと叩き付けると言う方法を採用した。
「沙織先輩のオマンコの中、すっごく気持ち良いです。
オチンチンが溶けちゃいそう」
「ウチもええで。
葵はんのチンポ熱くて、ウチのも滾るわ」
同じ人間に付いている器官である以上、片方が刺激を受ければもう片方も同じ様な反応を見せる。
肉棒の膨張と膣内の収縮が同じタイミングで発生し、葵のペニスと幸枝の膣内に快感を与えた。
「オチンチン擦られるとおかしくなっちゃいますッ。
そんなに激しく出たり入ったりしてるのに」
「ウチも思い切りおかしくなるつもりやから、遠慮する必要あらへんよ。
出したかったら出せばええやん。
ウチもまるうはんのオメコの中でイクつもりやし」
射精の予兆を感じると、極端に口数が減り淫靡な喘ぎ声を発するだけになる。
獣の様な声を出しながら、幸枝は視界に映る椿と新二のセックスを見つめていた。
室温こそ浴室より高い『愛の間』であったが、床が熱を発しているワケでは無い。
新二は寝そべった状態の椿の膣内に硬くなった自身の剛直を差し込んだ。
(どんな体位であろうとも、俺のをねっとりと包み込んでくる。
射精するのが勿体無いけど、そろそろ我慢出来なくなってきた……)
股間を含めた身体全体が熱い。
繋がっている部分が溶けて椿と一体化したかの様な錯覚すら覚える。
そして椿の方も、彼女の膣内で太くなった肉棒が弾けそうになっているのを感じていた。
「少し位なら、乱暴に動いても良いんですよ。
遠慮しないで沢山出してくださいね……」
「はい。
一緒にイキましょう」
両性具有者を満足させる為の方法。
その簡単な手段を新二は躊躇わずに実行する。
椿の穴のすぐ上で痙攣している肉棒を右手で扱きながら左手で彼女の胸を揉んだ。
「あッ、あはぁッ……
いいの、オチンチンシコシコされるの良いのォッ」
「ううッ、締まる」
肉棒が快感に震えるのと同時に膣壁がうねうねと動き、新二の根元をきつく締め上げる。
2人は思考を完全に停止させ、快楽の為だけに互いの身体を貪っていた。
もっと肉棒で膣内を感じたい。
相手の腹の中に射精したい。
その思いだけを抱えて激しく腰を振り続けていた新二であったが、終わりは唐突に訪れる。
「俺、もう駄目です。
出る……
出ッ、ああああああ」
「私も、私も出る。
イッちゃいます。
出ちゃうぅぅ」
欲望に身を委ね、本能のままに繋がっていた2人の竿が思い切り弾けた。
「ごめんなさ、止まらないッ……
止められないのぉ」
「くぅぅ、出てる。
俺も、湯姫さんの中に」
何日も自慰行為を我慢していた分だけ、その量も濃さも尋常では無い。
新二は椿の身体の最も深い所に何度も白濁液を注ぎ込む。
一方椿は与えられ続けた刺激に耐えられず、透明な粘液を新二の顔や胸にかけてしまっていた。
とんでもない量の精液を出したのに、萎えるどころかさらに逞しくなるのか。
2人が同じ事を考えてしまう程両者の肉棒は漲っていた。
(一週間オナ禁して、さらにカタクナールΩを飲んだ後セックスするなんて前例が無いもんな……
モノが張って痛いのはさっきと変わらないけど、より射精への渇望が増した気がする)
達したばかりだと言うのに、身体は貪欲に快楽を求め続けている。
新二は快感に対する飢えを感じつつも、抜かずに続行するのは流石に失礼だと思い一旦腰を引いた。
滾った肉棒が椿の膣からずるりと抜け、その瞬間に白い液体が床に零れる。
新二の竿は自身が出した精液に塗れており、椿のモノもべたつく液体を纏っていた。
「いっぱいかかっちゃいましたけど大丈夫ですか?」
「俺が至近距離で扱いていたんだから不可抗力でしょ。
何も気にする事無いですよ」
お互いの反り立つ肉の槍が視界に入り、性的な欲望が抑えられなくなっていく。
(俺が出したのが流れ落ちてる……
膣口から精液が出てるのって凄くエロい)
「私、我慢出来ません。
もう1回してください」
本来ならば、大人数でこの場所に来ているのだから誰かと交代してもおかしくない。
だが、妊娠を望んでいる椿にとって新二は絶対に離したくない相手だった。
「あッそんな、汚いですよそんな所」
「ついてしまったものですから不可抗力、でしょう?」
精液塗れの肉棒を舐めさせるのは相手に悪いと思った新二であったが、拭き取ろうとする前に椿は根元まで咥え込む。
椿はあくまで新二のモノを『掃除』する為のフェラチオだと割り切って行為を継続した。
本腰を入れたおしゃぶりでは無かったものの、射精したばかりの肉棒は敏感になっており舌で舐められただけでも激しく脈動する。
(やばい。
口の中で暴発するワケには……)
さらに長い間強くねぶられていたら間違いなく射精していただろうが、ギリギリの所で彼女はフェラチオを止めた。
「綺麗になりましたね」
本来ならばやりたい事でも無かっただろう。
だが相手の為を思って実行してくれた。
新二を思いやり、苦でも何でも無いと微笑んでくれる。
そんな椿の優しさが新二の琴線に触れ、その刹那彼は椿を抱き締めた。
「湯姫さん。
俺、凄く嬉しいです。
ココまで俺に色々してくれるなんて」
「私は、貴方の大ファンですから。
全国大会の映像を見た時から、貴方に憧れていました。
これは神様が私にくれたたった1つの大きな御褒美だと思っています。
今、この時だけで良い。
私を名前で……
『椿』と呼んでいただけませんか」
その気になってくれているのなら、もっと押してまた愛されたい。
椿は自分が出せる最大限の魅力で新二を虜にしようと考えていた。
新二もまた、彼女の今にも消えてしまいそうな儚さとその懇願に魂を奪われてしまう。
「椿さん、俺……
貴方が満足するまで付き合います」
情熱的な口づけを交わす2人。
2人が誰かと『交代』する事は暫くの間無さそうだった。
頭が真っ白になり、何も考えられない。
靄がかかった様な視界の中で、希望は柱の上に座り壁に寄りかかっている妙子の上に跨っていた。
「私のを上から受け入れると、深く潜り込んできてたまらないでしょう?」
「オラ、もっと舌と喉使って気持ち良くしろよ。
簡単に壊れるタマじゃ無ぇって事を証明してみせろ」
すぐ前に壁がある為、希望は柱の上で正座しなければならずさらに苦しい状況に追い込まれる。
暴力こそ振るわれていないが、この犯され方は蹴ったり殴られたりする事よりも厳しかった。
(なんだ、この頭の芯が痺れてる様な感覚。
こんなに乱暴に扱われてるのに、アタシの身体は喜んで従ってしまっているなんて)
実の父親に何度も睡眠姦され続けた結果、彼女の中に芽生えていた『被虐の快感』。
玩具の様に扱われれば扱われる程股間が潤み、肌が熱を帯びていく。
自分がそういう変態であるという現実を、希望は認めなければならなかった。
「私のオチンチン、久しぶりのオマンコの中で凄く熱くなって……
ひあッ」
「スパートかけるぞ。
吐いたら承知しねぇからな。
全部飲めよ!」
ちょっとしたミサイルの様な巨根が、希望の膣内で暴れている。
お腹の形が変わってしまうのではないかと思う程に貫く肉棒の先端が、常に最奥にぶつかっていた。
上下に揺らされ、口で太く硬い肉棒を咥えさせられ、彼女自身を含めた周囲の景色が涙で滲む。
(ああ、アタシ……
格好つけて威張ってたけど、所詮はか弱い1人の女でしか無いんだなぁ。
ふたなりの女の方が余程強くて、逞しくて……
アタシは何で彼女達を馬鹿にしてたんだろう)
人に尊敬され、多くの部下を作ってリーダーとして君臨する。
レディースのトップとして確固たる地位を作り上げた希望であったが、何時しかその肩書に溺れてしまっていた。
自分は何でも出来る。
偉い人間だと勘違いして、彼女が一方的に『下』だと決め付けた両性具有者を嘲笑う。
だが客観的に見れば希望より辛い茨の道を通ってきたのは彼女達の方だった。
希望は彼女達と比べれば赤子と同じ。
その事に今まで気付く事が出来なかったのだ。
「あー、良い。
私の、弾けちゃう。
イク、イッちゃうッ!!
ううッ……
あッ、あは、出てる。
いっぱい出てるぅ……」
「そろそろ出すぞ。
アタシのしっかり受け取れよッ。
おッ、おお……」
膣内と口内に収まっていた2本の槍がビクビク震え、その直後に透明な粘液を噴射する。
妙子も蛍も足と肉棒を僅かに痙攣させながら、全く遠慮する事無く希望の身体の中を汚した。
(……アタシはどうして、レディースのトップになったんだっけ?
そうだ、兄貴が少年院を出てから『人殺し』と罵られる様になって表の世界での居場所が無くなったからだ。
アタシのせいで兄貴の人生が狂って、兄貴を『暴走族のリーダー』にしてしまった。
その罪を償う様にアタシは兄貴と同じ道を選んで、兄貴の威光を使って成り上がって……)
全て頭がおかしくなって自分を強姦した父親が悪い。
その一言で片付け、希望は自分は何も悪くないのだと自分に言い聞かせ続けていた。
だが、本当にそうなのだろうか?
居場所が無くなり孤独を深め、自暴自棄になり暴力で人を従わせる様になっていった実の兄に、希望は救いの手を差し伸べなかった。
寧ろ二度と自分がその様な目に遭わない様にする為に、兄を利用していたのだ。
兄が変貌していくのならば、それで良い。
それで自分は今後自分に襲い掛かってくる『悪意』から身を護る事が出来る。
そんなどす黒い思惑を抱き、兄を堕落させ後戻り出来なくさせたのは希望自身だった。
先程椿が己のトラウマを蘇らせてしまった様に、彼女もまた罪の意識に苛まれる。
「アタシは、自分が不幸だったから、他人を不幸にしても構わないって思い込んで……
それで、とうとう兄貴まで不幸にしてしまった。
アタシがその気になれば、兄貴は救ってあげられたのに」
口に吐き出された粘液を飲み込み、荒い息を吐きながら涙を流す希望。
結合部からは受け止め切れず溢れ出した精液が滴り、床に小さな水溜りを作っていた。
「アタシは自分勝手な女なんだ。
こんなアタシに誰かを非難する資格なんて」
ぱんッ、と軽い音が部屋内に響き、他の女性達が一斉に音のした方に視線を向ける。
軽く頬をはたかれたのだ、と希望は思ったが、その一撃には先程とは違う何かが込められている様な気がした。
「バーカ。
解ってるんなら、自己嫌悪に陥る必要なんか無ぇんだよ。
今の自分が嫌なら、今すぐ変われば良い。
今の境遇に不満があるなら、明日から少しずつ変えていけば良い。
過去に押し潰されて自分を見失っていった奴等なんて、アタシは山ほど見てきた。
大切なのは振り返る事じゃねぇ。
明日を信じて顔を上げる事だろ」
蛍が戦ってきた相手は、皆が皆『国を背負って』戦っていた者達ばかりだった。
負けたら国の恥。
帰国出来ないのではないか。
本当に勝つ事が出来るのか。
後ろ向きな精神状態に支配され、心のバランスを崩し瓦解していったチームを蛍は多く目撃してきた。
諦めない事、どんなに絶体絶命の状況でも笑って前を向く事。
その結果世界一の座を掴んだと言う自負があるからこそ、蛍はその考えに自信を持っていた。
「アンタが兄貴の事を大事に思っているのなら、今からでも関係は変えられるハズだろ?
どうせアンタの事だ、兄貴を自分の盾程度にしか考えていなかったのかもしれねぇが……
もし仮にそうだったとして、明日から変えられねぇなんて誰が決めた?
本当にアンタが生まれ変わりたいのなら、何でも出来る。
何にでもなれるんだ」
辛い事があっても、弱音を一切吐かずに耐え抜いてきた蛍だからこその言葉。
放たれた矢は彼女の心を覆っていた氷を壊し、そのまま彼女の魂を射抜く。
「うッ……
あッああッ、あ――――ッ、ああああ……」
妙子に抱き付き、子供の様に泣きじゃくる希望。
彼女の頭を、妙子は優しく撫でた。
「ふたなりだろうとノーマルだろうと、抱えている心の傷があるのなら私達は解り合えるんじゃないですか?
一緒に立ち向かっていきましょうよ。
どんなに高い壁でも、団結すればきっと乗り越えていけるハズです」
父親の性的暴力に翻弄され、母親の慈愛を受け取る事が出来なかった希望が初めて感じた『母親の様な優しさ』。
乱暴に扱われた後に優しくされると人は相手に好意を抱くと言うが、希望も2人に対して良い印象を持ち始めていた。
【2011年7月31日 午後6時 茨城県水戸市 天女の湯水戸本店内 愛の間】
何度、獣の様に後ろから相手を突いて中に精液を注ぎ込んだのだろう。
何度、肉棒を手で扱かれたり胸で擦られたりして先端からあっけなく放出してしまったのだろう。
性行為の回数が解らなくなる位新二は様々な女性の相手を務めた。
勿論その間にもあかりを筆頭とした『やる気満々』の面子が新二や他の両性具有者を欲情させ、盛り上げ続ける。
外の明るさも解らない部屋の中で時を過ごしていた為、新二はあかりから教えてもらい今の時間を把握した。
「結局、休憩を取りながらセックスばっかりしてましたね……
俺、もう限界が近いですよ」
「元々それ目的で来たんだから良いでしょ。
新二君、まだへばっちゃ駄目だからね。
私は最後にやりたい事をやって、それで終わりにするつもりだから」
本来は『愛の間』での飲食は禁止されているが、移動する時間も惜しいと主張する者がいた為今日だけ特別だと椿から許しを得ている。
新二達は片手で食べる事が出来るパン類をほおばり、茶やスポーツドリンクで胃の中へ流し込んでいた。
(最近は移動中にこんな事してるけど、暴飲暴食は本来健康に悪いよな……
多分、長生きは出来ない気がする。
そこまで長生きしたいって願望があるワケでも無いけど)
そんな事を考えながらあかりや他の女性達の方へと視線を向ける新二。
全裸のまま座ってサンドイッチを食べているあかりの姿も相当に異様な光景ではあったが、他の者は今もセックスに励んでいた。
蛍の肉棒を受け止めながら顔に妙子や幸枝の粘液を浴びせかけられる希望。
遠藤咲の肉棒を咥えながら下の口で芹沢葵の面倒を見る椿。
「なんか、明日になったら全てが夢だったんじゃないかって思うんでしょうね。
まるで現実味が無いですよ。
今日の朝からずっとその夢が続いている感じで」
「貴方が普段目にする事の無い世界がこの世には沢山あるって事よ。
でもこれからは夢じゃなくて当たり前の世界になるかもしれないわ。
葵ちゃん、機会があればこれからも新二君とも御相手してもらいたいって言ってたもの」
愛する女性がいるハズなのに、あかりや葵の誘惑を断ち切れず、底無し沼へとはまり込んでいく新二。
桃子に対して不義理な事をしているのは解り切っているにも関わらず、彼は下半身で物事を考えてしまう己が情けなかった。
「いいんですかね。
こんな事してて……」
「貴方がしている事で桃子さんは不幸になるかもしれないけど、私や葵ちゃんは救われている。
今自分がしている事を恥じる必要なんて無いと思うわ。
後は貴方が選ぶだけよ」
あかりはそう言ってスパークネオンを一気に飲んでペットボトルの中身を空にすると、立ち上がり他の人達に呼びかける。
「皆さん、ココが水戸の山奥である事を考えるとそこまで多くの時間は残っていないと思います。
今日と言う日を参加した全員が忘れない様に、記念写真を撮りませんか?
この日の為に結構高いデジカメも購入したので……
データは後で全員に渡しますね」
写真は、良くも悪くもその一瞬を切り取って半永久的に残し続ける事が出来る。
この1日をずっと大事にしておきたいと願う椿にとってその提案は願ってもない話だった。
「お互いの暴露を封じる牽制にもなりますし、私は良いと思いますよ。
その1枚に全員が映っていればそれ自体が大きな抑制力となります。
ココにいる人達がそんな事をするとは思えませんが、万が一の保険と言う意味では有効でしょう」
椿が率先して賛成する事で、他のメンバーが反対しにくい空気を作る。
秘密を暴露されれば全てを失うのは皆同じであった為、あまり乗り気では無かった蛍も最後には折れた。
「あと、コレは提案なんですけど……
折角ですから『連結』した状態で写真を撮りません?
馬鹿っぽいですけど、今日1日を表現するには最も適している気がするんです」
全裸で、繋がり合った状態での記念撮影。
痴態を晒し続けた彼女達だからこそ、最後までふざける姿勢が相応しいのではないか。
あかりは拒絶される事も頭に入れながらそう言ったが、咲はあかりの考え方に同調した。
「ええやん。
ウチ等、今までアホみたいに散々人のオメコの中でヘコヘコ腰振って出しまくっとったやろ。
今更上品に振舞っても嘘っぽくなるだけやし、どうせならとことんやろうや」
ありのままの自分を受け入れて、前を向く事。
椿も希望も、そうしたいと思っていた。
ココで笑顔を見せて、皆で仲良くこのイベントを終えたい。
その為に、写真を残しておくべきではないか。
あかりは後で不満を漏らす者が出ない様多数決をとり、その結果賛成側が上回った為実行に移す事となった。
他に色々な荷物を持ってきていた為、三脚までは持ち込めず誰か1人は必ず『撮影役』にならなければならない。
「まずは私が撮ります……
コレってシャッターボタンを押せば良いんですよね?」
「3秒位長押ししてれば勝手に撮影してくれるわ。
それ以外の設定はもう済ませてるから大丈夫よ。
あと、撮影した直後に写真の内容を確認出来るからあまりにも写りが悪かったら教えてね」
全員で相談した結果、比呂子、あかり、希望が撮影役となり3枚の写真を残す事となった。
希望は連結が出来ない為最前列のあかりの前でポーズを取る。
「新二君も他のふたなりの人達も、カタクナールΩの効果が出てくる頃だと思います。
どうせ写真に残るなら、しっかり挿せる位硬くなった状態にしておきましょう!」
精力剤を、飲んだ回数も最早記憶に無い。
萎えてきたら飲む。
その繰り返しで無理やり陰茎を勃起させてきた。
部屋の隅に転がる数十本の瓶が、彼女達の性欲の凄まじさを如実に表している。
「あかりとアンタは一番前、一番後ろは確定としてあとはどういう並びにする?」
「適当で良いんじゃない?
3枚撮るのならその都度順番を変えたって構わないんだし……」
新二を見ながらそう言った蛍に対し、妙子はそこまで深く考える必要は無いと思っていた。
元々コレは遊びで、閉じられた輪の中で共有する情報でしか無い。
他の者達もそれに賛同し、自然と列が作られていった。
おふざけの極致ではあったが、改めて列を作ってみるとさらに現実味が薄くなる。
(自分も加わっておいて言うのも何だけど、コレ……
本当に現実なのか?
悪い冗談の様な気がする。
エロ漫画とか、エロアニメの世界の話だろ)
あかりが先頭になり、尻を後ろに突き出す形で勃起した肉棒を受け入れその次も同じ様に膣で肉棒を受け入れる。
最後尾である新二まで繋がった一本の線が完成し、撮影を行う準備が整った。
「あかりさんは本当に凄いですね。
私のモノを軽々と受け止めてしまうんですから。
これからも、宜しくお願いします」
「こちらこそ。
んんッ……
のきあさんの、私の膣内でドクンドクンって凄い脈を打ってる。
後でもう1回楽しみましょうか。
じゃあ比呂ちゃん、お願いね」
「了解です。
皆さん、入れてる状態でこっちに顔を向ける事は出来ますか?」
全員が顔を横に向ける。
ピースサインを出したりと、精神的余裕がある者も何人かいた。
閉じられた世界での『パーティ』最終章。
名残惜しさと同時に、また普通の日常が戻る事に安堵すると言う不思議な時間帯。
そういう時だからこそ、彼女達は全力で遊び、悔いの残らない終わり方を望んでいた。
「じゃあいきますよ。
笑顔で楽しく終わりましょう。
いっち、にーッ!」
ピピッと言う音と共にデジカメが光り、撮影自体は特に何の支障も無く進んでいく。
希望が最前列を担当し、妙子はその次。
比呂子のみ単品と言う別のバージョンを撮影した後今度は希望が撮影役を担う事となった。
「うーん……
私が前をやるのは新鮮味が無いし、比呂ちゃんはのきあさんのオチンチンを受け止める事が出来ないし……
いっその事本当の数珠繋ぎを中央でしてもらって、私達はサイドで写るって言うのはどうかしら」
あかりが提案したのは、両性具有者のみで連結の『輪』を作りあかり、比呂子、新二の3名はその横に並ぶと言う構図だった。
彼女達はその提案に乗り、6名の両性具有者で小さな輪を作る。
「私のオチンチン入れるの誰にします?
これだとあかりさんも希望さんもいませんよ」
「アタシが引き受ける。
アタシのモノはきつねで良いと思うけどな」
極太及び太く長いペニスを受け入れる事が出来る両性具有者は少ない。
男性的な部分と女性的な部分を両方備えてはいるが、どちらの性器も未熟な形状をしているからだ。
奥行きも無く狭い膣口に、無理やり先端をあてがい強引に貫いていく。
「やっぱのきあのでけぇな。
アンタとのセックスに慣れてるアタシ以外の奴なら壊れちまうだろ。
じゃあ、アタシも……
おおッ、結構入るじゃねぇか」
挿入自体は可能であったが、竿の全てを根元まで押し込もうとしても入らない。
唐沢妙子の肉棒は半分程度、長崎蛍の肉棒は3分の2程女性器の中に収まっていた。
男性器が勃起した際の標準サイズを下回っているのは周防幸枝のみ。
彼女達の異常とも言える性欲を大きさだけで判断するのは軽率だが、あかりは何らかの関係性があると思っていた。
(大きければ大きい程精液を充填しておけるんだから、性欲も強くなってくるでしょ。
普通の男性である豊や新二君よりも『立派』って言うのはちょっと皮肉よね。
彼女達は普通の女性だと思い込んで生まれてきて育って、それが根底から覆されてしまうんだもの)
6人が全員、大なり小なり何らかの哀しみや絶望を背負って人生を歩んできた。
そんな彼女達が心の底からおどけて、この乱痴気騒ぎのフィナーレを飾ろうとしている。
「じゃあ撮るぞ。
しっかり繋がったままでいろよ!」
唐沢妙子→長崎蛍→遠藤咲→芹沢葵→周防幸枝→鶴野椿→唐沢妙子と言う狂気の円環。
全員の男性器が誰かの膣に入り、全ての女性器もまた誰かの肉棒を受け入れている。
客観的に見れば、5人では作れず6人で何とか作れたと言う所だろう。
(6人いたのも、こんな事をする為だったのかしら?
少しでも何かが違っていたら、このイベントそのものが成立しなかった。
私はその奇跡に喜び、とことん楽しむべきなのよ)
高校3年生の頃から溺れてきた『性欲』の集大成。
火村あかりはこの『乱交』において自分が辿ってきた道のりを再確認する機会を与えられた。
幼馴染との性行為から始まり、可愛い年下の少年や両性具有者とセックスをした。
気になる後輩だった若い男性とも……
その全てが『遊び』であり、己の性欲を満たすもの。
真剣に向き合った事は無い。
ただ楽しいから、面白いからしているだけ。
だが今日相手をした女性の多くが、『性行為』自体に触れる機会が少なくそれを渇望している事実を知った。
(本当の自分を曝け出す事も出来ず、性欲を満たしてくれる相手を探し続けている。
女性であると言う『自覚』と男性的な性欲と言う矛盾に気付いて悩み続けている。
そういう人達のコミュニティを知って、私1人ではとても彼女達全てを満足させてあげられない事が解った。
たった1人では到底無理だけれど、集まって団結すれば叶えられるものがある。
努力する事の大切さと、夢は必ず実現出来るのだと言う事を教えてもらったわ)
格闘ゲームを専門に扱っている雑誌の編集部員である自分に何か出来る事は無いか。
与えてもらっている事に甘んじるのではなく、何らかの形で貢献したい。
金銭的な援助が出来るのならしてあげたい。
それがあかりの偽りの無い本音だった。
「目線はこっちな。
はい、チーズ!」
希望の言葉で現実へと引き戻されたあかりは慌てて椿の肩に手を置きもう片方の手でピースをする。
写真は念の為3枚撮影され、その都度撮影者を替えて全員が写っている様にした。
「凄いな……
もうその言葉しか出てこないです」
「彼女達からすれば当たり前の事だと思うわよ。
この状況自体は普通じゃないけどね」
萎え切っても新二の先端部分は常に亀頭が露出している。
見栄えが良いと言う点では包茎手術を受けた意味はあったと言えるだろう。
萎えれば精力剤で勃起させてセックスと言う行為を複数回繰り返していた為、新二は精神・肉体共に疲弊しきっていた。
「私ね、彼女達に貢献する為の募金を雑誌内で募ろうと思ってるのよ。
勿論肝心な部分はぼかさないといけないけどね。
新二君は大口で入れてくれると助かるわ」
「今度東京と大阪で講演会があるんで、その収益を全部募金に突っ込みますよ。
多分数百万になるんじゃないかなぁ。
後はその都度考えます」
金が金を生むと言う言葉があるが、新二はそれを体感していた。
世界一と言う称号はあまりにも大きく、新戦力発掘や講演会、書籍の印税で無尽蔵に金が転がり込んでくる。
かつて九龍拓巳が享受していた栄誉よりも遥かに大きな栄誉と金を新二は容易く手に入れられる立場にあった。
そんな成功者となった新二が見ている光景としては、あまりにも異様でどうかしていると思えるもの。
連結が完了した6人が輪を構成したまま前後に動き、快楽を貪っている。
「やっぱ入れられながら突くって最高だわ。
どっちの部分も擦れて気持ちいいからな。
もっと奥に入ってきてくれよ。
アタシも同じだけ動くからさ……
あンッ」
「あうッ、オチンチンが、私の膣内に入ってるオチンチンが暴れて私のも大きくなってます。
もう我慢出来ません!
あッ、うあッ……
あああ、あ……」
途中で誰かの肉棒が弾けても、行為はそのまま続行される。
繋がっている部分から透明な粘液が垂れ、床に落ちていった。
人の動きがそのまま別の人に伝わり、膣が刺激を与えられて再び己の槍が硬度を取り戻す。
終わりの見えない彼女達の痴態は、まるで『メビウスの輪』の様だった。
「はは……
射精してるのに、また勃っちまうな。
こんなの初めてだぜ」
「後ろがチンポでオメコガンガン突いてくるんやもん。
我慢出来るワケ無いやろ……
切り離さんと終わらんで。
もうそろそろ帰らなアカンのやし」
身体を時折震わせ、自身の砲身に溜まった欲望を思う存分吐き出していく者達。
その度に肉棒がビクビクと痙攣し、ボタボタと精液が流れ落ちる一連の動きが繰り返されていた。
全員がその繋がり合いだけで2発は達した後、遂に均衡が破られる。
立っていられなくなった幸枝が膝から床に崩れ落ちると、肉棒もそのままずるりと抜けた。
そのまま連鎖的に円環はバラバラに砕け、2人同士の交わりへと変化する。
(この人達、性欲の限界とか無いんだろうか。
俺も人の事は言えない程出したけど……
完全に常軌を逸している。
一体何発出せば満足するんだろう)
オナニーの禁止、強精剤の連続使用、場に溢れる淫靡な雰囲気。
当然そういった『理由』を挙げる事は出来るが、条件自体は新二と何ら変わらない。
比呂子は早々にへばり、あかりですら『終了』を促しているにも関わらず宴はまだ続いていた。
肉棒を咥え込む形でのシックスナイン、互いの肉棒を入れ合って同時に達する2人の女性。
舌を使った膣への愛撫、最早見慣れた光景となった後背位での性行為……
結局、彼女達の熱が完全に冷めるまでにはかなりの時間を要し気付けば時計の針は8時を回っていた。
(終わりにしようと言って写真を撮ってから今に至るまでの方が濃密なセックスをしていた気がする。
結局俺も椿さんにねだられて断り切れずにしちゃったし……
身体もモノも悲鳴を上げてるよ)
傍観者に徹しようとしていた新二やあかり、比呂子すら巻き込んでいく圧倒的なパワー。
それは荒れ狂う竜巻の様に強烈で、逃れる事は出来なかった。
ようやく『凪』が訪れ、全裸の女達が仰向けで床に寝そべったり座り込んだりしている。
「空っぽになるまで出し尽くしたわ……
どれだけ出したのかもう数えられへん。
一生分出したって言いたいんやけど、明日になればまた勝手に勃起するやろうしな。
因果な身体や」
「恨んだ所でオチンチンが消えるワケじゃ無いんだから、楽しんだ方が得よ。
私も昔は悩み続けていたけれど、この場所に来て色々な事を教えてもらった。
今は少し楽になったわね。
湯姫さんには頭が上がらないわ」
諦めて、割り切った生き方をする。
その踏ん切りがつくまでにどれだけの時間を要したのか。
妙子ですら完全に迷いが消えたとは言い難い。
己にそう言い聞かせているだけだ。
両性具有者は生きている限りその矛盾と向き合わなければならない。
揺れ動く心を一時忘れ、快楽で全てを塗り潰せる場所。
心の避難場所として『天女の湯』は作られた。
両性具有者が悩みを抱え葛藤を続ける限り、その需要が消える事は無いだろう。
【2011年7月31日 午後8時30分 茨城県水戸市 天女の湯水戸本店 入り口前】
一抹の寂しさも、肉体の疲労と言う現実によって掻き消されていった。
全員がボロボロになった身体を何とか酷使して風呂で精液を洗い流し、服を着て玄関へと向かう。
殆ど誰も言葉を発さず、黙々と作業をこなしていた。
(身体がとにかく重い。
足や腕、背中に何かが乗っているみたいだ。
膝も笑ってるし、気分もあまり良くない。
こんな状態で明日を迎えるのか……)
体調不良を理由に休んでも何とかなりそうな新二と違い、蛍は夏の合宿が待ち構えていた。
(あー……
完全に調子に乗り過ぎたな。
アタシ、この状態で明日チームメイトと合流するのかよ。
コーチに怒鳴られるな。
出来るだけ体力回復に努めねぇと)
それぞれの明日があり、彼女達は通常の平穏へと戻っていく。
椿もそれは例外では無かったが、彼女だけはこの1日を『夢』として終わらせるつもりは無かった。
(妊娠したい。
新二さんの子供を何としても産みたい!
最後の最後、無理を言って新二さんに付き合ってもらった。
この駄目押しが願いの成就に結び付けばいいんだけど……)
許されない願いである事は解っている。
新二がとんでもない爆弾を抱える事になるのも解っている。
それでも大きなリスクを背負いながら、椿は新二との間に子供を作りたかった。
好きな様に生きる事が出来ず翻弄された自分への、たった1つの御褒美。
これからの苦難も、多くの試練も新たな命とならば乗り越えていける。
椿は本当の意味で誰にも言えない『秘密』を守り抜き、墓場までその秘密を持っていく事を誓った。
「それじゃ、宜しくね」
「任せてください。
私もその為にスタンバイしていたんですから」
送迎バスをずっと待機させていた女性スタッフに椿が声をかける。
8名はバスに乗って水戸駅へ。
希望と椿は後片付けを済ませた後車で帰宅するつもりだった。
「皆様、本日は『天女の湯』にお越しくださり誠に有難うございました。
貸し切りと言う通常とは違う形ではありましたが、堪能して頂けたのであれば幸いです。
本来この場所に足を踏み入れる事の出来ないノーマルの方、男性の方をお招きしてイベントを行った事になりますが如何だったでしょうか」
和装では無い、ラフな格好をした椿が客であるあかり達にそう呼びかける。
浴槽の掃除や片付けをすぐに行う関係上、彼女は無礼を承知で着物を着る事を諦めていた。
「良い所だと思いますよ。
『愛の間』を除けば普通の銭湯ですからね。
男子禁制でさえ無ければ、たまに風呂だけ入りに行きたい位です」
「そう言って頂けると私も嬉しいです。
この店の客層を考えると、顧客拡大の為に何かをすると言うのは難しい事なのですが検討したい所です。
私達がしている事は慈善事業では無くあくまで商売なので、儲けを重視する必要がありますから……」
天女の湯を潰すワケにはいかない。
今まで作り上げた12店舗を何としても守りたい。
熱心なリピーターによって何とか経営が成り立っているが、それが永遠に続くかどうかは不明である。
椿は『通常の銭湯』を新たに立ち上げ、そこで収益を得る事も視野に入れていた。
「類稀な商才があるんですから、きっと上手くやっていけますよ。
私も1人の女性として、積極的に支援していきたいと思っています」
あかりと言う『ノーマルの理解者』が現れたのは、椿にとっても喜ばしい事だった。
彼女の様な『偏見の目を持たぬ者』が増えれば、両性具有者の扱いもきっと変わる。
勿論一気に何かが覆るとは思えないが、椿はそういう女性が増えるきっかけになってほしいと願っていた。
「さようなら皆さん、また何時かお会いしましょう!」
バスが見えなくなるまで手を振る椿。
振り返す気力も無い面子ばかりである事は承知していたが、せめて態度で感謝の意を示そう。
そう思い殆ど残っていない元気を振り絞ったが、全てが終わった瞬間どっと疲れが襲ってきた。
「じゃあ、掃除を始めるか。
アタシの部下は招集をかければ何処にいても駆け付けると思うけどどうする?」
「何人かお願い出来ますか。
私と貴方だけではどう考えても明日の開店前に間に合わないと思いますので……
まずはその人達が来るまで2人で先に作業を始めましょう」
正直、立っていられるのが不思議な位だと椿は思った。
希望はまだ余裕があったが、彼女は新二との性行為を含め多くの者と相手をしている。
「心配すんなよ。
こうなると思って近場に待機させておいたメンバーもいるからさ。
最初からアタシとアンタだけで何とかなるなんて思ってねぇし。
他の店員を律儀に休ませるんだから御人好しも大概だよな」
こういう時は頼りになる女性だ。
椿は希望がいてくれる事に心の中で感謝した。
彼女とは色々あったが今は店内の後片付けを行おうとしてくれている。
(一緒に頑張りましょう)
電話をかける彼女の横顔を見ながら、椿は明日に向けて気合を入れ直した。
それは多くの者にとっては白昼夢だったのかもしれない。
だが鶴野椿はそれを現実であると認識し、たった1度のチャンスを掴む為月山新二を誘惑し続けた。
彼女の努力は報われ、新たな命が芽生える事になる。
その命が『別の物語』を紡ぐのは、さらに多くの時が経ってからになるだろう。