※この作品はR-18です。

ZERO ~格闘ゲームに翻弄される者達~   作:夜月光介

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月山新二の『結婚論』はあくまで新二の考えでしかありません。
彼は火村あかりとのセックスを断ち切れず、たまに時間を見つけては
家族サービスとZEROの練習の合間を利用して性行為を続けているのです。
そういう『負い目』と相手の『負い目』が彼の結婚に対する
理念を形成するのに影響を与えたと言えるでしょう。
上の話はあってもなくてもどっちでも良い話なので削りました。


ZEROFINAL2 『許されざること』前編

 人は、自分に似た人間に親近感を覚え恋をすると言う。

 それはある意味、自己愛の1つなのかもしれない。

 自分と容姿、思想が似ている人間は己の分身であり承認欲求を満たしてくれる。

 自分の近くに常にいて、自分の意見に賛同してくれる自分そっくりの美少女がいたらそれは幸せだろう。

 そして身体の相性も構造が近い故に抜群で、夜の営みでも充分満足出来る。

 

 だが天武日本でも、近親相姦は法律によって禁止されている。

 道徳的な問題だけでなく、近親相姦によって生まれてくる子供に何らかの障害が出てくるからだ。

 同じ血同士で交わると免疫が弱くなり、生まれてくる命が不幸になってしまう。

 もし、世間も法律も完璧に欺いた『脱法近親相姦』が成立したとしたら?

 そして当人同士も何も知らず、子供が産まれてきたらどうなるのだろうか。

 

 その物語は、その2人が高校生になった頃から始まった……

 

【2028年4月 千葉県宮本市 ゲームセンター『エターナルナイト』店内】

 

 幾年もの月日が流れ、ZEROの環境は大きく変化した。

 2020年に発売された新シリーズ『ZERO THIRD』はキャラクターを大幅に増やし、画質も向上。

 ある意味決定版とも言えるバランスの良さを維持し、以降の作品はこのゲームを基準にする事が発表された。

 この後はキャラクターの追加・細かいバランス調整・背景の追加などが主な追加コンテンツとなる。

 アーケードの筐体も携帯機もバカ売れし、ZEROブームはさらなる盛り上がりを見せていた。

 

 この熱が沈静化しなかった理由の1つとして、全国大会と世界大会の賞金が増えた事が挙げられる。

 全国大会の優勝賞金は2億円に倍増。

 世界大会の賞金は15億円まで増加したのだ。

 全国大会のルールは変わらなかったが、世界大会に関してはアメリカ50州に選手が集まるやり方を廃止。

 各国から数名の『代表選手』をネット対戦によって選別しそこから地域別に篩にかける方法へと変更された。

 

 そして16名まで減った選手はラスベガスに招待されそこで決勝トーナメントが開催される。

 この『勝ち抜けさえすれば天武日本の何処にいても世界に挑めるチャンスがある』と言う事実がファンを魅了した。

 全国大会の優勝者にシード権が与えられるのは変わらなかったが、まだ枠は数名分用意されている。

 白熱した戦いは世界各国で繰り広げられ、ZEROは世界で通用するゲームであると認められていた。

 

「全ての筐体がネットで繋がっていて、天武日本のプレイヤーだけでなく世界中のプレイヤーと対戦する事が出来るの。

 2025年から全国大会の予選も今年の11月にネット対戦で行われる事になっている。

 大きな会場に出向かなくてもこの筐体の前に座るだけで挑戦の権利があるって事よ」

 

 エターナルナイトが最も人で溢れるのは日曜日の午後1時頃。

 昼食を食べ終えて帰ってきたZEROプレイヤーで店内は熱気に包まれる。

 筐体は向かい合う形で並べられており、その近くに九龍玖留美が立っていた。

 

「鏑木君が説明した通り、腕を上げたいのならどんどん試合をするべき。

 ただ場数を踏むのではなく、強いプレイヤーと戦って切磋琢磨していくのよ。

 対戦相手の癖を見て学び、局面に応じた立ち回りを学習する事。

 物怖じしない精神力、コマンドを正確に入力する手先の器用さ。

 この店で全部学べるから、しっかり吸収していきなさい」

 

 東京都の『電脳皇帝』が最もZEROプレイヤーが集まる『聖地』と化していたが、この店も負けてはいない。

 千葉県ではエターナルナイトとヘリオスが電脳皇帝に次ぐ盛り上がりを見せていた。

 関東に住んでいる者は電脳皇帝に入り浸りつつ、時折エターナルナイトに足を運ぶ。

 電脳皇帝では月山新二と瀬川美奈子が、ココでは鏑木修吾と九龍玖留美がプレイヤー達を引っ張っていた。

 

「すげぇ、ユウの奴20連勝してんじゃん」

「このゲームセンターに集まってくる猛者を相手にしてよくやるわ」

 エターナルナイトの店内で一際輝き、注目を集めるZEROプレイヤー。

 それが月山(つきやま)優一(ゆういち)だった。

 

 16歳にして店舗大会での連覇を達成し、東京都認定ZEROゲーマーの座を父親である新二と争い惜敗するなど既に天才の片鱗を見せている。

 全国大会での決勝トーナメント進出はまだ果たしていないが、周囲からは時間の問題だと囁かれていた。

「高一でこの戦績はとんでもねぇよ。

 やっぱ親父が優秀だと色々なもんを受け継ぐんだな」

 

「そんな、俺なんてまだまだだよ。

 親父には勝てないし、世界大会も地域別決勝に行けなかったし。

 勿論、いつかは親父みたいに世界大会の舞台で輝きたいけどね」

 優一の様な『サラブレッド』は天武日本各地で誕生しており、新たな格闘ゲーム戦国時代に突入していた。

 その中でも優一は最も期待されているプレイヤーの1人として大衆に認知されている。

 

 21連勝をかけた試合に優一が挑もうとしていた時、自動ドアが開き2人の女性が中に入ってきた。

「ココがエターナルナイト……

 ZEROをプレイしている人達なら知らない人はいないと言われている場所なのね」

「月山新二がこの場所で腕を磨いたって話だ。

 彼がアンタの母親のお気に入りだって事も前に教えただろう?」

 

 1人は若く、もう1人はその若い女性の母親くらいの年齢に見える。

 若い女性が目に入った瞬間、優一はその女性の美しさに思わず見とれた。

 (なんて綺麗な人なんだ。

 グラビアアイドルでもこのレベルの美人はそういないぞ)

 

 長い黒髪をなびかせ、ぱっちりとした瞳がキラキラ輝いている。

 彼女がいるだけでその周囲がぱっと明るくなる様な気さえした。

「おいユウ、どうしたんだよ。

 まさかあの女に一目惚れしたんじゃねぇだろうな」

「いや、そんな……」

 

 優一は思わず否定してしまったが、彼女に惚れているのは間違いない事実だった。

 思わず雷に打たれた様な衝撃を受け、試合にも全く集中出来ない。

 そのまま優一は珍しくストレート負けを喫し、筐体から離れた。

 

「こんなに沢山の人達がこの店で対戦してるんですね」

「いっぺん案内しておきたかったんだ。

 アンタの母親も恐らくアンタがこの場所に来る事を望んでいたと思う」

 超がつく程の美少女の隣に立っている金髪の女性は、彼女と異なる雰囲気を纏っている。

 耳にピアス、金のネックレス、派手な化粧と危険な香りを漂わせていた。

 

「あの、すいません」

 優一は彼女に声をかけ、後ろから声をかけられた少女は彼の方に視線を移す。

 彼の顔を見た瞬間、少女は一瞬石になった様に動きが止まってしまった。

 (かっこいい人……)

 

 優一が彼女に惚れたのと同じで、彼女もまた優一に一目惚れしてしまう。

 それはまさに2人にとって『運命の出会い』であった。

「このゲームセンターでは初めてお見掛けする顔だなと思いまして。

 それで挨拶を……

 俺は月山優一と言います」

 

「鶴野(つるの)響(ひびき)です。

 これからこの店にお邪魔させてもらう事も増えると思います。

 宜しくお願いしますね」

 しっかりと握手を交わす2人。

 そんな2人の姿を、金髪の女性は薄笑いを浮かべながら見つめていた。

 

 (血の繋がりはやっぱり互いの興味を引くものなのかねぇ。

 アタシがもうちょっと押してやれば容易く恋人同士になりそうだ。

 なぁ椿、アンタだってこうなる事を覚悟して彼女を産んだんだろ?)

 戦場(いくさば)希望(のぞみ)はそう思いながら心の中で2人を嘲る。

 恋のキューピッドを装った悪魔は2人の仲をさらに深いものに変えようとしていた。

 

 2人を『堕とす』のは希望にとってあまりにも簡単過ぎるミッションだったのかもしれない。

 優一と響は急速に近付き、頻繁にエターナルナイトで顔を合わせる様になった。

 響もまたZEROプレイヤーとしての才能に溢れており、試合を重ねる事で距離を縮めていく。

 2人の実力は互いに高め合っていく事でみるみる上昇していき、大きな成果を挙げた。

 

「響ちゃん、千葉県認定ZEROゲーマー就任おめでとう!!」

 数か月後、エターナルナイトで行われたささやかな祝賀会には多くのZEROプレイヤーが集まっていた。

 火村あかり、雨宮比呂子、遠藤咲、九龍玖留美といったメンバーが彼女を祝福する。

 普段は電脳皇帝で講師を務めている瀬川美奈子も駆け付けていた。

 

「認定ZEROゲーマーは強さの指標になります。

 私も女性として世界大会で何度か優勝させて頂きました。

 貴方の様な新時代を牽引する女性が出てくるのは喜ばしい事です」

 美奈子は一貫して響の実力を高く評価しており、この日も彼女をベタ褒めする。

 月山優一も素直に彼女の実力を認め、響に励ましの言葉を送った。

 

「俺がちょっと前までは勝ってたけど、追い抜かれちゃったね。

 でもいずれは追い付いてみせるよ」

「はい!

 これからも一緒に練習して一緒に強くなっていきましょう」

 

 見つめ合うその目に温かい愛情が込められている。

 2人が何名かのZEROプレイヤーと共に練習している姿はエターナルナイトの名物となっていた。

 

 格闘ゲームを通して育まれていった恋だった。

 月山優一と鶴野響は既に多くのZEROプレイヤーから『似合いのカップル』として扱われている。

 全国大会の予選である2on2では当然の様に2人で出場。

 決勝トーナメントには届かなかったものの予選決勝で健闘するなど一定の結果を残した。

 海外プレイヤーとの親善試合で大金星を挙げるなど順調に成長を続けていく。

 

 そしてその近くには時折戦場希望の姿があった。

 何を言うでもなく遠目から2人の恋路を見守っていたのだ。

 (こりゃもう『次』に進むのは時間の問題だろ。

 アタシが口を挟む必要も無かった。

 とんでもなく太くて赤い糸で結ばれてるみてぇだな)

 

 彼女の『悪戯』は思っていたよりも簡単に成功し順調に進んでいた。

 結ばれてはならぬ2人をくっつけ、一線を越えさせ結婚させる。

 2人が付き合っていると言う情報は椿の耳に入っていても不思議ではなかったが特に干渉される事は無かった。

 

【2030年7月 千葉県宮本市 アパート貧荘 月山優一の自室】

 

 親に束縛される事を嫌った優一は、高校2年生の頃からアパートでの1人暮らしを始めていた。

 やんわりと反対された1人での生活を成立させる為に彼はアパート貧荘に住む事を申し出る。

 火村あかり、海野亜津子と言った信頼出来るZEROゲーマーが住んでいる場所。

 部屋こそかなり離れていたが困った事があれば何時でも頼れる者がいると言う事実は大きい。

 それが決め手となり優一は親と離れて暮らす事が出来た。

 

「偉大な父親と母親の近くにいると、どうしても気が散っちゃってね。

 感情を乱されない練習環境を作る為には、ココに住むしか無かった。

 今は全部親父が金を出してくれてるけど、いずれは出世払いで返したいよ」

 夏の夕立から逃れてきた優一はそう言うと、連れてきた響の方を見た。

 綺麗な黒髪が雨に濡れ、どことなく色気すら感じさせる。

 

「理由はそれだけ?」

 響にそう聞かれ、優一は痛い所を突かれたとばかりに頭を掻いた。

「いや、正直に言うとそれだけじゃない。

 君と一緒にいれる時間を出来るだけ長くしたかったんだ。

 君が近くにいると凄く心が落ち着くから」

 

 彼女を家に連れ込んで、何時間一緒に練習してもとやかく言われない状況を作りたかった。

 響がベッドで寝て、優一が床で寝ると言う形で泊まらせた事もある。

 2人はどんどん近付き、互いが離れがたい関係になっていた。

 ずっと相手が側にいてくれる時間が続く事を願う。

 励ましてくれる異性がいて、その相手を心から愛していたのだ。

 

「不思議ね。

 貴方に初めて出会った時から赤の他人とは思えなかった。

 顔立ちもちょっと似ているし、食べ物の好みも音楽の好みも殆ど同じ。

 時々、まるで鏡を見ているんじゃないかと思う時があるわ」

 響はそう言うと濡れた髪をかきあげながら微笑む。

 

「君と会って言葉を交わす度にどんどん君の事が知りたくなった。

 君と一緒にZEROをして強くなって、同じ夢を見たくなった。

 俺は君の事が好きだ。

 君が同じ様に思っていてくれたらとても嬉しい」

 

 外の雨音が激しさを増している。

 まるで響に対して『今日はココにいろ』と命令している様だった。

「私も貴方の事が好きよ。

 凄く素敵で恰好良くて、皆を引っ張っていくリーダーシップも持っている。

 大好きなの」

 

 雪の様に白い肌、艶やかな唇。

 絵画から飛び出してきたかの様な美しさに優一は魅了されていた。

 童話のお姫様の様にお淑やかで、それでいて困難に立ち向かう凛々しさも備えている。

 思いが弾け、優一は思わず彼女を抱き締めていた。

「君の事を心から愛してる」

 

 響は一瞬時が止まった様な感覚に襲われた。

 驚きと喜びに包まれたが、同時に哀しみが彼女の心を覆う。

「ユウ君、私も貴方の事が好きよ。

 愛してる。

 でも私には貴方を愛する資格なんて無いの」

 

 優一から身体を離し、俯く響。

 彼女の真意が解らない優一は怪訝な顔をしながら尋ねた。

「資格って何の事なんだ?

 俺は君を愛しているし、君も俺を愛している。

 相思相愛の俺達には、壁なんかありはしない」

 

 彼女と恋仲になる事を諦めるなんて考えられない。

 優一の揺るがぬ覚悟を感じ、響も秘密を告白する決意を固めた。

「私の身体は普通の女性と違うの。

 私が抱えている秘密を誰にも話さないと約束してくれる?」

 

 立ち上がり、座ったままの優一を見下ろしたまま響は言葉を投げかける。

 優一が薄情な男だとは思っていなかったが、万が一の可能性すら消しておきたかったのだ。

 彼女の秘密が漏れれば今の自分が持っている地位や名誉を全て破壊してしまう危険すらある。

 だからこそ、彼にしっかりと約束させておく必要があった。

 

「君の秘密は俺が守る。

 誰にも話さず墓場まで持っていくと誓うよ」

 優一の言葉を信じた響は、何も言わずに歩き出すと部屋の電気を点けた。

 外は雨が降り続き、すっかり暗くなってしまっている。

 明るくなった部屋の中で響は無言のまま服を脱ぎ始めた。

 

「えッ!?」

 響が何故そんな事をするのかワケが解らず呆然とする優一。

 響はTシャツとブラジャー、スカートと靴下を脱ぎパンツを穿いているだけの状態になった。

「私の両親も私の身体の秘密を知っているけれど、実際に『それ』を見せるのは貴方が初めてよ」

 少し膨らんだだけの胸が、彼女の幼さを強調している様に見える。

 

 さらにパンツまで脱ぐと、粘着性の強そうな白いテープが股間に張り付いていた。

「普段は空っぽにしてからコレを貼っているから、大きくなる事は無いんだけど……」

 察しの悪い者でも、ココまで言われれば嫌でも彼女の秘密がどういうものか解ってしまう。

 (まさか、そんな……)

 優一は彼女が『そういう身体』である事が容易には信じられなかった。

 

 彼も噂では聞いていた。

 天武日本人の女性の中には、クリトリスがペニスの様に変化する者がいると言う事を。

 透明な粘液を射精し、男性よりも遥かに性欲旺盛で硬さも大きさも男性を上回っている……

 そんなとんでもない噂を耳にする度に、そんな話があるものかと笑い飛ばした。

 モノが生えている女性などこの世に存在するはずが無いと思っていたのだ。

 

 響はテープを剥がし、生まれたままの姿になるとクリトリスを指で刺激する。

「でも、こうして直に刺激するとすぐに大きく、なっちゃうから」

 歯を食いしばり、大声を出さない様片手で口を塞ぎながらもう片方の手で股間をまさぐる。

 変化はすぐに起こり、クリトリスが長く太くなって男性器の形状へと姿を変えた。

「これが私の本当の姿なの……」

 

 涙を流しながらそんな言葉を発する響の身体は、とても美しかった。

 そのバランスの取れた美しい身体に、その美しさとは異なるピンク色の槍がそびえ立っている。

 (嘘だろ、本当に俺のよりでかい)

 己の肉棒が完全に勃起した時の長さと太さは理解しているつもりだったが、響のペニスはそれより長くて太い。

 一回り太く、優一のより5cmは長い肉棒が存在を主張するかの様に激しく脈動していた。

 

「ごめんなさい、一度勃起してしまうと抑えがきかなくなっちゃって」

 ビクビクと痙攣を繰り返す薄桃色の肉棒。

 所々に青筋が浮かび亀頭にあたる部分の先端から透明な粘液が滴り落ちる。

 眼前にあるそれをまともに見ている状態のまま優一は暫くの間硬直していた。

 どう言葉をかければいいのか解らず直感的に思った質問を投げかける。

 

「それは突然変異なの?

 それとも、遺伝……?」

 両性具有者はある日突然健常者の両親から偶発的に産まれてくるパターンと遺伝の2パターンに分かれると言う。

 両性具有者の母親と普通の父親の間に生まれた女性は高確率で母親の特徴を受け継ぐと噂されていたからだ。

 響は一瞬躊躇う様な振る舞いを見せたが、隠しても意味が無いと思ったのか正直に答える。

 

「私のお母さん、鶴野椿も両性具有者よ。

 他の多くの両性具有者を救う為に両性具有者専用の銭湯を経営しているわ」

 その話も当然優一には初耳だった。

 両性具有者だけが入れる銭湯があり、そこでは両性具有者同士で性欲を発散し合っているらしい。

 当時は全ての噂をただの噂と一蹴したものだ。

 

 それは恐らく、そんな話が現実だと認めたくなかったのだろう。

 そんな悍ましい身体を持った女性がこの世にいるはずが無い。

 少なくとも愛する女性である鶴野響がそんな身体のはずが……

 その全てが完全に破壊された。

 目の前にある『それ』をもう認めざるを得ない。

 

 何故自分がそうしたのか解らないが、優一は思わずその竿を右手で掴んでいた。

「あッ、ユウ君。

 触っちゃ駄目、汚いわ」

「君の身体に汚い所なんてあるものか」

 実際に手で感じる事で、認めたくない気持ちを抑えつけようとしたのかもしれない。

 

 肉棒を軽く握った瞬間、男の男根とはまるで違う触感に彼はまた驚かされた。

 (なんだこれは……

 常に血流が漲り触っているだけで脈打っているのが伝わってくる。

 男性のモノが完全に勃起したとしてもここまで硬くなるだろうか?

 中に鉄の棒でも入っているかの様だ)

 

 見れば見る程、触れば触る程目の前にあるものの『異物感』が拭えない。

 人間の器官と言うより、宇宙人の触手を握っているかの様な感覚だった。

 (膣もあるのか……

 ペニスの生えた『女性』と言うのが正しい表現だろう)

 優一は両手で秘密の花園を開き、愛液でべとべとになっている女性器を確認する。

 

「あッ駄目。

 そんな所見ないで、恥ずかしい」

「君が勇気を振り絞って俺に全てを見せようとしたんだ。

 俺もその気持ちに応えなくちゃ……」

 

 膣に指を入れない様注意しながら丁寧に刺激すると、肉棒も漲りを増していった。

 反り返った竿の先端からだらだらとだらしなく粘液が流れ落ちていく。

「本当に駄目ぇ、身体と心の制御が出来なくなっちゃう。

 性欲に、性欲に負けちゃうのぉ」

 

 両性具有者は獣じみた性欲を持っており、一旦勃起してしまうと理性を失ってしまう。

 全ての噂が真実であった事に愕然としながら、優一は彼女の蕩けた顔を見ていた。

 (ああ、綺麗だ。

 その髪も、瞳も、顔立ちも、胸も、スタイルも全て。

 なのに何故神は彼女に余計なものを与えてしまったのだろう)

 

 巨大な魚肉ソーセージに見えなくもない砲身が、響の股間で己の存在を主張している。

 自分にとっても彼女にとってもこの身体は不幸そのものだ。

 優一にはどう考えてもそうとしか思えなかった。

「ごめんなさい、ごめんなさいぃ。

 こうなっちゃうと、もう我慢が出来ないの……!」

 

 勃起の痛みに耐える事が出来なくなった響は、片手で口を押さえつつもう片方の手で竿を上下に扱き始める。

 その度にピンク色の肉の柱が激しく脈を打ち、硬度を増していく様に見えた。

「許して、許して頂戴。

 こんな私を、私をぉぉぉぉぉぉ」

 

 力強く右手が上下に動き、肉棒の尿道に該当する部分からびゅるっと精液が発射された。

 それは男性の精液とは違い透明で、少し粘性がある以外は愛液とそこまで変わらない。

 荒い息を吐きながら涙を流し続ける響。

 その光景に圧倒されつつ、優一は父親との会話を思い出していた。

 

「お父さん!

 僕、いずれ好きな人が出来たら結婚したい」

 

 子供の頃、優一は無邪気な笑顔を見せながらそういった記憶がある。

 父親である月山(つきやま)新二(しんじ)は彼の憧れであり英雄だった。

 ZEROゲーマーでは数少ない全国大会制覇及び世界大会の複数優勝経験者。

 九龍玖留美、瀬川美奈子と共に『天武日本三強』と呼ばれ国民から敬愛されていた。

 

 総理大臣から国民栄誉賞を授与され、ZEROゲーマーからは神の様に慕われている。

 そんな天下一の称号を持つ父親が放つ言葉は優一にとって重要なものだった。

 

「優一、結婚と言うのは軽はずみな気持ちでするものじゃない。

 結婚と言うのは別名『人生の墓場』とも呼ばれている。

 自由は無くなり、待っているのは束縛。

 無償でも有償でも愛を与え続けなければならない。

 子供が出来れば金銭的な問題も絡んでくるんだ」

 

 そう力説する父親に対して、優一は素朴な疑問を口にする。

「じゃあ何でお父さんとお母さんは結婚したの?」

「束縛があっても、無償・有償の愛があっても、お金がかかっても……

 俺が母さんを愛していたからだよ」

 新二はあくまで真面目な態度でそう言った。

 

「母さんには母さんの負い目があった。

 そして俺にも負い目があった。

 そういう負い目をお互いに全部受け入れて、2人は結婚したんだ。

 結婚と言うのは相手の全てを受け入れて相手の奴隷になる事でもある。

 相手がどんな要求をしてもその要求を呑まなければならない。

 勿論、俺の要求だってある程度吞んでもらえる。

 でも基本的には相手を立てる寛容な心が必要になるんだよ」

 

 新二は一度も優一から目線を逸らさず真剣な表情でそう言った。

「結婚は、凄く大きな覚悟が無いと駄目な事なんだね」

 

「そうだ、結婚には常に覚悟が求められる。

 もし、これから先お前の前に美しい人が現れたとしてもその覚悟が無いのなら結婚は潔く諦めるんだ。

 相手が自分の負い目を全て告白して、ありのままの姿をさらけ出した時……

 その時に相手が出した要求を突っぱねる様な男は結婚はおろか恋愛する資格も無いと肝に命じなさい」

 

 相手を認める許容の心、そして要求を全て受け入れる懐の深さ。

 新二は過去に自分が体験した数々の事柄からそれが無いと結婚は出来ないと感じていた。

 父親の借金のせいで風俗嬢にまで転落していたかつての恩師、樽酒桃子。

 美しかった容姿は激太りにより変貌し、痩せた今でも家計における食費の割合は高い。

 色々なマイナス面を全て受け止めなければ自分も相手も不幸になるだけだと思ったのだ。

 

「解ったよお父さん。

 僕にもし好きな人が出来てその人に何か負い目があったら、全部受け入れなきゃいけないんだね。

 相手が何かを願ったら、それを叶えてあげるって事も」

 

「そうだ、それを決して忘れてはいけない。

 結婚と言うのは、『人生の墓場』に入る決意を持って飛び込む程の深い愛が無ければ成立しないんだ。

 妥協で結婚しても決して長続きしないしお互いに不幸になる。

 優一、お前もこれから俺と母さんの仲を見ながら学ぶんだぞ」

 

 優一はその言葉を受けてから父親の背中を見つめてきた。

 そして何年もの間月山新二に対する尊敬の念が揺らぐ事は一度も無かった。

 ZEROに対して真摯に挑み活躍する傍ら、家族サービスを休まず続ける父の姿。

 休みの日も桃子を手伝いプレゼントをかかさず渡し息子である優一を見守り続ける。

 無尽蔵の体力と精神力が無ければとても出来ない事だと優一は父の行動を見て感動していた。

 

「やっぱり、私みたいな女はユウ君に相応しくないよね……」

 涙を流しながらそう言う響の言葉が、過去を振り返っていた優一を現実へと呼び戻す。

 目を両手で覆い、勃起した肉棒を晒しながら嗚咽を漏らす響。

 ココで彼女を突き放す様な言葉を発したら、もう彼女との関係は終わりを告げるだろう。

 父が言った通り、己の覚悟を見せなければならないと優一は決心した。

 

「そんな事は無い。

 俺は君の事が好きなんだ。

 ちょっと人と身体の構造が違っていると言う理由だけでその愛が揺らぐ事はありえない。

 俺は君に愛を捧げる事を誓うよ」

 

 我ながら自分に酔っているかの様な臭い台詞だと優一は思った。

 だが、ここまで言わなければ響は優一と恋仲になる事を諦めてしまうだろう。

 犠牲を払ったものだけが恋愛の『次』に進む事が出来る。

 そう思い彼が思いつける限りの言葉で彼女を説得しようとした。

「私の身体が、気持ち悪くないの……?」

 

 響の顔が、ぐずりながらもほんの少し微笑んだ様に見える。

 一気に畳みかけなければ彼女は納得してくれない。

 そう思い優一は嘘も含めて一気にまくしたてた。

「気持ち悪くなんかないさ。

 君を愛しているのに、君の身体が気持ち悪いなんて思うワケ無いよ」

 

 今はとにかく、嘘をついてでも彼女の心を引き留めなければならない。

 彼女を愛している事自体は嘘では無いのだから。

 両性具有だろうが何だろうが愛せると断言出来る自信はまだ無かった。

 それでも、今そこまで言わなければ全てが終わってしまうのだ。

「ユウ君、そこまで私の事を好きでいてくれるなんて……」

 

 響は感激し、思わず裸のまま優一の身体を抱き締める。

 肉棒に付着していた粘液が優一の服に付着するが、優一は不屈の精神力で仮面を被り続けた。

「俺は君を生涯愛すると誓うよ。

 だから君も、俺に身体を預けてほしい」

 

 告白と、性行為をしたいと言う願い。

 潤んだ瞳のまま、響は優一の思いをしっかりと受け止める。

「私も、ユウ君の事が大好き。

 ユウ君にだったら、喜んで私の全部をあげるわ」

 

 しっかりと抱き合い、愛を確認するかの様に身体を寄せ合う2人。

 響の、そして優一の『全て』を捧げる瞬間が目前に迫っていた。

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