※この作品はR-18です。

ZERO ~格闘ゲームに翻弄される者達~   作:夜月光介

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ふたなりとノーマルのセックスシチュエーションは
さんざん書いてきたんですが、色々変えていきたいとは思っています。
そもそもこれが最後の話なので今まで無かったものを
取り入れていきたいですね。


ZEROFINAL3 『箱舟の子供達』3

【西暦2100年 ?月?日 午後2時 ノア内 月山雫の自宅】

 

 昼に行われた店舗大会での優勝。

 1つの目標を達成した鏑木美代子はその興奮が冷めやらぬまま雫の自宅に案内された。

 マンションに住んでいる人間が多いノア内において、一軒家に住んでいるのは金持ちの証。

 それはZEROの世界大会で優勝した先祖を持つ美代子も同様だった。

 

『ちょっと待っててね。

 大したものは用意出来ないんだけど、ジュース位ならすぐに持ってこれるから』

「有難うございます」

 感謝の言葉を述べながら部屋の中を見回す美代子。

 雫の家はフローリングの床と白い壁で構成されており、汚れは殆ど見当たらない。

 

 キッチン・風呂・寝室と必要なものは一通り揃っていたが、居間はスッキリしている様に見える。

 TV、電動バイク、本棚とソファ、ZEROをプレイする為の携帯機が2つ。

 観葉植物や掛け軸の様な『機能性が無い』ものは排除されている様に感じられた。

 本当に必要なものしか欲しない雫の性格が部屋の内装に表れている。

 そう思いながら部屋を見渡していた美代子の眼前にジュースの入ったコップが差し出された。

 

『どうぞ』

「わざわざすいません」

 

 人々の生活、家の中の生活で最も大きく変わったのは『ファッション』だろう。

 家の中以外で服を着る事を禁止している現在、服は貴重品であり金持ちの嗜好品と化している。

 雫の家にも美代子の家にも箪笥が無い。

 服や下着を買う必要が無いのだからハンガーも服の為の収納スペースも要らないのだ。

 その為『服を着る』と言う行為そのものが富豪の遊びと言う扱いになっていた。

 

『練習に集中出来る環境になってると良いんだけど……』

「いえ、凄く集中出来る環境だと思いますよ!

 無駄なものが無くて埃1つ落ちていない綺麗な部屋。

 別の事に気を取られる事が無いのがとても良いですね」

 

 美代子はお世辞では無く正直な気持ちを伝えた。

 練習に集中する為の部屋としては少なくとも自室より効果が高そうだと感じる。

 自分の部屋で練習していてもつい他の事を考えてしまうのは目移りするものがあるからかもしれない。

 彼女は雫に1対1の濃密なレッスンをしてもらう事でさらなる強さを手に入れたかった。

 

『じゃあ、始めようか。

 まずは5先をやって、その後に勝った時と負けた時の差とかを考えていこう』

「はい、宜しくお願いします」

 ソファに座った美代子に対して、雫は床に座った状態で携帯機を構える。

 正直勝てる相手では無かったが、少しでも勝って食い下がりたいと考えていた。

 

 5先の結果、ストレート負けこそ回避したものの雫が5回勝つまでの間勝てたのはたったの1回。

 それも相手の牽制が嚙み合わず不調気味になった所を突いての棚ボタ的勝利。

 美代子は雫との差を思い知らされ、俯きながら溜息を漏らす。

『アグレッシブに動けてないよね。

 私が大会中に教えた事を守っていた時にはそれが改善されてたんだけど』

 

 思い切りが足りない。

 守勢に入ると耐え切れずに崩れてダウンを取られる。

 攻守それぞれに明確な欠点があり、名人級の相手と戦うとその欠点がさらに浮き彫りになっていた。

「イケイケになれないんですよね。

 攻めてる時も相手の反撃を過度に恐れてしまって……」

 

 頭では理解出来ている。

 だが実際に動くとついその動きが手癖で出てしまう。

 格闘ゲームでは特にそういった事が顕著だ。

 じっくり考えて行動に移せるシミュレーションゲームとは異なり、格闘ゲームは常に目まぐるしく変化する状況に対応しなければならない。

 その為、ベストでは無い行動を条件反射でつい取ってしまう事が多々あった。

 

『私が考えるに、美代ちゃんの『悪い所』はゲームの練習で改善するものじゃないと思う。

 そこはもう意識改革しないと治らないよ。

 引っ込み思案な性格を変える為には貴方自身の殻を破らなきゃいけない』

 雫はそう言うと立ち上がり、彼女を見下ろした。

 

 強くなって黒沢永久に褒めてもらいたい。

 もっと彼に近付いて仲良くなりたい。

 その願いが叶わないかもしれないと言う『現実』に美代子は怯えている。

「どうすればいいんでしょう。

 私にはもう解決する方法が解らなくて……」

 

 ぽろぽろ涙を零す美代子の姿を見て、雫は『貰った』と感じた。

 もう彼女は雫の言葉に耳を貸すしか無い。

 雫はこの荒療治が美代子のためになるとも信じている。

 そしてそれを『単なる性欲の為』と思われない事も肝要だ。

 カーテンを閉めた後電気を点け、雫は美代子の目をじっと覗き込む。

 

『私の先祖である月山新二も美代ちゃんと同じ様に悩んでいた。

 試合をいくらこなしても結果が出ない。

 練習を続けても勝てない。

 どうしたらいいのだろうともがき苦しんでいた。

 その状況を変えたのが火村あかりと九龍玖留美の2人だった』

 

 感情を挟まない機械音声が静まり返った部屋に響き渡る。

 美代子は縋る様な気持ちで雫の言葉を聞いていた。

 

『九龍玖留美は月山新二に様々な技術を教えた。

 試合中の駆け引きとか、牽制における押し引きの方法とかを。

 彼は確かに進化した。

 でも戦術は彼の爆発的な成長には繋がらなかった。

 それなのに、ある時から突然彼は伸びた』

 

 雫は神では無い。

 全てを見通す目は持っていない為全ては推測に過ぎない。

 それが自分にとって都合の良い推測である事も解っている。

 だが彼女はその推測が真実であると信じて疑わなかった。

 

『火村あかりがある日、月山新二を自分の住んでいるアパートに泊めた。

 その次の日から突如彼は今までの未熟なプレースタイルから脱却して羽ばたいた。

 月山新二は美代ちゃんの様に『思い切る』戦い方が出来なかったのに突然それが出来る様になった。

 美代ちゃんと彼は双子の様によく似てる。

 月山新二が体験した事を美代ちゃんが同じ様に体験すれば、今の状況が改善する可能性は非常に高い』

 

 月山新二は英雄であり、自伝が飛ぶ様に売れる程の人物であった。

 その中で彼はオブラートに包みこそしたものの、未熟な自分を変えてくれたのは火村あかりであると明言していたのだ。

 皆口には出さなかったが『そういう事があったのだろう』と想像した。

 彼にとってその体験はハッキリ公言してはならないが刺激的で自伝に書き残しておきたいと思う程のものだった。

 そして今では火村あかりが彼を変えた事は称賛に値するとむしろその行為を褒める者の方が多くなっていた。

 

「一体何だと言うんです、新二さんの殻を破った『体験』って……」

『セックスだよ。

 童貞を卒業した事により月山新二は大人になって自分を大きくする事が出来た。

 美代ちゃんも同じ様に処女を失えば、彼の様に『今までの自分』から変わる事が出来るはず』

 

 美代子は唖然としたまま雫の顔を見る。

 彼女が冗談を言っているわけでは無いのは明らかだった。

 (私が、性行為をする事で変わる……!?

 そんな出鱈目な話が本当にあると言うの?)

 

『これは、格闘ゲームが『メンタルの勝負』でもある事に起因しているんだよ。

 美代ちゃんのメンタルはハッキリ言ってしまえば未熟で、勝負弱さに繋がっている。

 童貞を捨てた月山新二には『自分は童貞では無い』と言う自信がついた。

 自分自身を誇れるか否か。

 そんな僅かな差がプレイスタイルにも如実に表れる』

 

 精神論と馬鹿にする者もいるかもしれない。

 だが全てのスポーツ・格闘技において『気持ち』と言うものが大事である事は明らかだ。

 ボクシング選手も『負ける事を考えない』と言う強靭なメンタルを培おうとする。

 逆にどんなに強くても何かのきっかけで『負けるかも』と思えばあっさり崩れたりする事もある世界。

 美代子の練習量や技術には問題が無く、あとは『絶対に勝てる』と思える心だけが足りなかった。

 

『美代ちゃんは性体験と言う己の世界に対する認識が大きく変わる体験を経験していない蕾なんだよ。

 蕾のままでは世界と渡り合えない。

 日本一を目指すなんて今のままでは夢のまた夢。

 美代ちゃんが嫌だと言うのならこのままの状態が続くだけ……

 でも首を縦に振ると言うのなら、私が美代ちゃんを『花』にしてあげる』

 

 雫の提案を、美代子はすぐには受け入れられなかった。

 そもそも黒沢永久以外の人物と性行為をする事自体に抵抗がある。

 初めてをあげるのなら、間違いなく彼にあげたかった。

 だがここで救いの手をはねのけたら、もう彼に二度と振り向いてもらえないかもしれないのだ。

 彼が美代子の強さだけを見ているわけでは無いと頭では解っていたが、強さが無ければ自分の存在に気付いてもらえなかったのも確かだった。

 

 (どうしよう、どうすればいいの……?)

 美代子は明らかに迷っている。

 雫はココでもう1つ大きなカードが必要である事を理解していた。

 彼女の背中を押して、決心させる為のカード。

 雫は本棚から本を一冊手に取り、その本に挟まれていた『チケット』を取り出す。

 

『実物を見た事は無いだろうけど、コレが何であるかは解るよね?』

 雫の手には『CHILDREN TICKET』と書かれたプラスチック製の薄いカードが握られていた。

「子供チケット……」

 光に当たり、キラキラと七色に輝いている。

 美代子はそれを心から欲していたが、とても手が出ない代物だとも思っていた。

 

 1つの巨大な施設で5万人の人間を生活させる。

 口で言うのは簡単だがその人口を維持させるのは至難の業だ。

 子供が欲しい夫婦は大量にいた。

 この滅びかけた世界で、自分の生きた証でもある子供を残したいと言う思いは強くなっている。

 問題は、人々が子供を生み過ぎるとあっと言う間に人口が爆発し施設の限界を超えてしまう事だった。

 

 小さな政府の長である織田市長はどうしても人口統制が必要であると訴える。

『この施設は5万人の人間を受け入れる広さしかありません。

 人口爆発は即我々天武日本人の滅亡に直結してしまう。

 今後は『子供チケット』を購入し、使用した人間のみ1回の出産を許す事とします』

 

 チケットの数しか子供が生まれなければ人口抑制が可能である。

 欲しい人間の手に渡るのだからチケットが腐る事も無い。

 そうして発行されたチケットであったが、とんでもない高値で取引される様になった。

 即座に完売して市場には出回っておらず、一般人が購入したいとなればオークションで購入するしか無い。

 オークションでの平均落札価格は1000万円にもなった。

 

 (私の先祖は確かに偉大な人だった。

 瀬川美奈子にはZEROの世界大会優勝経験が幾度もある。

 真国人でさえ無ければ、その手に入れた金が政府に吸われる事も無かっただろう。

 ノアに入る為に持っている資産を全部吐き出した。

 黒沢さんと同じだ。

 だから今の私には、子供チケットを自力で手に入れる程の力が無い……)

 

 黒沢永久も鏑木美代子も、先祖が偉大であったがケチが付いていると言う共通項がある。

 そして月山新二を先祖に持つ月山雫には、そういった『汚点』が殆ど無かった。

 彼女はシンプルな生活こそ営んでいたものの富裕層である事は疑いようが無い。

 余計な事に金を使わないからこそ、簡単にチケットを購入出来たのだろう。

 目の前に差し出されたチケットを見て、美代子は思わず唾を飲み込んだ。

 

『無理な事や、貴方の人生を邪魔する様な事は願わないよ。

 美代ちゃんが黒沢永久と身体で繋がるまでの間だけ、私のセックスフレンドになってほしいんだ。

 私はまだ未成年だから『天女の湯』には入れないし』

 チケットは渡す、でも当然タダでは無い。

 美代子の脳裏に、同級生から聞いた噂話の内容がよぎる。

 

 自分達がいるこの『世界』には両性具有者がいるのだと。

 重い病気・身体欠損者がノアに入れなかったと言う事実。

 そして両性具有者が見た目では判断し難いと言う理由で潜り込めたと言うもう1つの事実。

 ノア内に『両性具有者が性欲を発散する為だけの銭湯』が作られている事は知っていた。

 だが自分の人生には関わりの無い事だと思って長い間無視し続けていたのだ。

 

 (つまり、雫さんは両性具有者……!?)

 信じられなかった。

 常にクールで聡明で、挑んでくる敵を全て返り討ちにしてきた天才格闘ゲーマーである彼女が。

 優しく親切で自分の事を何時も気にかけてくれていた彼女が。

 性欲のままに暴れる獣と言う一面を持っていたなんて。

 

『君の知っている僕は、サイコロの一面に過ぎないんだよ』

 永久の言葉を思い出す美代子。

 (そうか、これが雫さんの『隠された一面』……

 普段私や他の人に見せるはずの無い部分だったのね)

 

『美代ちゃんはどっちを選んでもいい。

 このチケットを受け取るか、そのまま自分の家に帰るか。

 でもよく考えて。

 美代ちゃんが今後の人生でこのチケットを手に入れるチャンスが訪れると思う?

 それに美代ちゃんの『弱さ』も改善されないままになるんだよ』

 

 雫が放つ必殺の殺し文句。

 弱いままで永久との距離が縮まるのかと言えば非常に怪しい。

 そして目の前に差し出された『子供チケット』と言う垂涎ものの一品。

 永久と結ばれて子供を作る事は美代子にとってあまりにも大きな夢だった。

 純潔を失うと言う代償を払ってでも、手に入れたい。

 

 美代子は思わずチケットの端を掴んでいた。

 それはかつて自由と言う夢を掴む為に恋を犠牲にした美子(ミジャ)と同じだったのかもしれない。

『初めてを失う覚悟は出来ているんだよね?

 受け取ったら、もう後戻りは出来ないよ』

 雫は念を押したが、ここまで来て引き返すと言う選択肢など彼女の中には存在していなかった。

 

 震える手でチケットを自分の手におさめ、胸の部分でギュッと抑える。

 この瞬間、美代子と雫が『身体で繋がる』事が確定した。

『優しくするから、心配しないで』

 微笑みながら美代子の頭を撫でる雫。

 下心は多分にあったろうが、彼女を変えてやりたいと言う思いは本物だった。

 

 ノア内での『性行為』は勝手に行う事が許されていない。

 勿論監視カメラが街中・部屋内に張り巡らされている中で強姦事件を起こす馬鹿はなかなかいないが、それとは話が別である。

 性行為はどんなものであれ『両者の合意のもと』で行われなければならない。

 天女の湯で行われている強姦まがいの乱痴気騒ぎもこの法律制定後そこまで過激ではなくなっていた。

 雫はバッグの中からスマートフォンを取り出し、美代子もそれに倣う。

 

『YES・NOアプリはダウンロードしてるよね?』

 美代子は返答せず頷き、画面を雫に見せた。

 緑色の枕と赤色の枕が横一列に並んでいる。

 雫は監視カメラが設置されているであろう辺りにスマホの画面を向けると、自分の横に美代子を立たせた。

『私達はこれから、互いの合意のもとでセックスを行います』

 

 緑色の枕には『YES』と大きく書かれており、これを押せば『契約成立』となる。

 脅迫によって、泥酔状態で等の特殊な状況で無い限り、交わされた契約を無効とする事は不可能だった。

『誓います』

 美代子は覚悟を決め、枕の部分を指で押す。

 緑の枕のみが画面内に映し出され、2人の間での性行為が了承された。

 

 両性具有者との性行為が通常の性行為と異なるのは、避妊対策をする必要が無いという点だ。

 子供チケットを持っていない場合、男女間の性行為はコンドームか避妊薬が必須となる。

 チケットを持たない対策無しでのセックスを行えば即座に警察が家に踏み込んで拘束されるだろう。

 両性具有者と女性が性行為を行っても妊娠する可能性が皆無である為、それは便利だとも言えた。

『じゃあ、早速始めよっか』

 

 雫はそう言いながら、冷蔵庫から瓶に入った薬剤を2本取り出し机の上に置く。

 2本の瓶にはそれぞれ異なる色のラベルが貼られており、名前が書かれていた。

『私の様な『ふたなり』が身体の秘密を隠し通すには厳しい時代になった。

 半日ごとに『性欲抑制剤』を注射しなければ容易く勃起してしまう。

 逆にこんな『強精剤』を飲んだら、注射していても興奮は避けられない』

 

 雫が自分の『正体』を明かしても、まだ美代子は半信半疑だった。

 素っ裸に近い恰好を強制され、何処にいても女性の裸が目に映ってしまう時代。

 女性の裸に興奮する両性具有者にとってそれは『毒』と言える代物。

 彼女は鋼の精神力と事前の射精、抑制剤の効力によって己の中にいる獣を抑え込んでいた。

 そして今、その仮面を投げ捨てて本性を露わにしようとしている。

 

 美代子にしてみれば恐怖と興味、両方の感情があった。

 どんな恐ろしい性欲を見せ付けるのかと言う恐怖。

 人には絶対に見せないだろう素の雫を見る事が出来ると言う好奇心。

 見えない様にしている『隠された一面』は、美代子が最も気になっている事だった。

 それを考えると、頭の中に何時も永久の笑顔が浮かぶのだ。

 

 (黒沢さんの隠された一面も、雫さんの『獣じみた』本性に似ているのかしら?)

 そんな事を思っていた美代子は、雫の言葉で我に返った。

『このピンク色のラベルの薬剤は『性欲促進剤』、つまり媚薬だよ。

 皮膚や性器に対しての触覚を敏感にして身体を大いに火照らせる。

 破瓜の痛みも軽減出来るだろうから、飲んでおいてね』

 

 織田政権の頃から『あらゆる薬が薬局で簡単に購入出来る』のは常識だった。

 そして監視カメラでの犯罪抑制によりようやくバランスが取れてきたとも言える。

 昔は子作りが盛んに行われていたが性犯罪も多発していたと言う話はよく聞かされていた。

 (簡単に人を快楽に溺れさせる事が出来た時代……

 もっと昔だと、性的なドラッグすら闇のルートで手に入れる事が可能だった)

 

 それを流行させてしまったのも撲滅に追い込んだのも織田政権。

 毒か薬かと言うのは益虫・害虫の区別と同じで人間や政治の都合でしか無い。

 美代子はぼんやりとそんな事を考えつつ、薬を飲みほす。

 雫も薬を飲み、美代子に対して股間に貼っているテープを剥がす様命じた。

『多分貼ったままだと余計に辛くなると思うよ』

 

 彼女は雫の言葉に従い、青いテープを剥がす。

 剥がしている時から既に効果が出始めていたのか、何時もより剥がす時の痛みが強くなっている様な気がした。

 お互いが正真正銘生まれたままの姿になり、部屋の中で向かい合う。

 雫の息遣いが荒くなり、表情も何時もの凛としたものでは無くなっていた。

『多分、両性具有者のアレを見るのは生まれて初めてだよね?』

 

 腕に装着した言語装置を打つ姿にも、余裕の無さが見えている。

 本当はすぐにでも襲い掛かりたい衝動を理性で懸命に抑え込んでいる様にも感じられた。

『見せてあげる……』

 優しい微笑みとは異なる、小悪魔の様な怪しい笑顔。

 雫は自分のクリトリスを指でつまみ、上下に擦る。

 

「あはッ、あッ。

 はああああ……」

 声にならない吐息が彼女の口から漏れた。

 クリトリスは太くなりながらぐんぐん伸びていき、やがて肉棒と同じ形状へと変化する。

「うわッ……」

 

 現実とは思えぬ光景に、美代子は言葉を失った。

 薄桃色の肉棒の先端から、透明な粘液が一筋滴り落ちていく。

 目の前で脈動するそれは、まるで1つの生命体の様に見えた。

『どう、私のオチンチンを見た感想は。

 他の人と比べた事は無いけど、結構大きい方だと思ってるんだよね』

 

 熱を放つ砲身が美代子の眼前でビクビクと震える。

「す、凄いです……

 コレ自体が別の生き物みたいで、まるで現実感がありません」

 雫の表情から、彼女に余裕が無くなっている事が容易に理解出来た。

 頬を赤く染め息を荒げ、性欲に身を委ねている。

 

 ニヤニヤ笑いも若干恐怖を感じさせる様なものだった。

『触ってみても良いんだよ。

 美代ちゃんがもししてくれるのなら、咥えてほしいな』

 フェラチオ。

 それはクラスメイトから聞いた事しか無い言葉だった。

 

『彼ったらさぁ、私が力入れてしゃぶってあげたらあっけなく出しちゃってね。

 もうちょっと逞しかったら良かったのに』

『美代子もいずれ王子様が現れたら、やってあげるんだよそういう事を。

 その前にまずは貴方の王子様を探す所からかもしれないけど』

 

 そうやってからかわれた事を思い出す。

 (あの時は何も想像していなかったけど、いざ目の前に突き出されると緊張する……

 こんなのを、口で気持ち良くしてあげるなんて)

 我慢が出来ないとばかりに肉棒の先端からだらだらと粘液が垂れていた。

 美代子は意を決して肉棒をゆっくり掴み、上下に扱きあげる。

 

 (とても熱い。

 心臓の鼓動の様にドクドクしてるのが解る……)

 彼女には既に硬くなっていたものが、さらに漲り膨れ上がっている様に見えた。

『ああ、気持ちいいよ美代ちゃん……

 自分でするのより興奮しちゃう』

 

 雫は指を舐めつつも音声を入力していた。

 抑揚の無い声は何時もと変わらないが、本来ならば艶っぽい声になっていたのだろうと想像出来る。

 肉棒がさらに膨張し、射精を求めて己の存在を主張している様に見えた。

『お願い、私のオチンチンを口に含んで。

 この欲望を一度解放させてぇ』

 

 つやつやしているピンク色の熱いのを……?

 美代子は性欲に溺れる事に対してまだ若干の抵抗があった。

 だがいずれ黒沢永久と恋仲になってそれ以上の関係を築くとなれば、恐らくフェラチオは避けられない。

 意を決して恐る恐る舌を出し、肉棒の根元から這う様に舐めていく。

 舐めている間も、その熱と淫らな匂いが美代子の感覚を麻痺させていった。

 

「気持ちいいですか……?」

『とっても気持ちいいよぉ美代ちゃん。

 お願い、おしゃぶりして。

 この勃起したオチンチンをイカせてぇ』

 

 常に冷静でリーダーシップを発揮して、誰からも慕われる才女。

 今の雫はそれとは対極の存在だった。

 己の欲を解放して淫らな表情を浮かべ、射精したいと言う思いに支配されている。

 我慢出来なくなった彼女は先端を美代子の唇に添え、そのまま咥える様促した。

 美代子は一瞬躊躇したが、覚悟を決め欲望の塊を口の中へと導いていく。

 

 根元まで飲み込んだ瞬間、雫を縛り付けていた理性の糸がぷっつりと切れた。

「うあ、ああッうはうあ」

 ひゅうひゅうと風が吹いている様な言葉にならない声。

 もう文字を入力する事すら放棄した彼女は両手で美代子の頭を掴み、口の中でピストン運動を繰り返す。

 その獣の様な激しさは、美代子の想像を遥かに超えているものだった。

 

 (あの雫さんがここまで自分を失って暴れるなんて。

 鼻で呼吸しなきゃいけないけど上手く出来ない。

 息が苦しい……)

 鼻腔をくすぐるいやらしい匂い。

 口の中で暴れる熱を帯びた物体。

 

 美代子の脳は蕩け、視界すらぼやけて見える程だった。

 意識がはっきりしないまま、雫の暴走に身を委ねる。

 (何か変……

 むせ返る様な匂いに頭がクラクラする。

 アソコが身体の奥から熱くなっていく様な……)

 

「ひよおひゃん、ほおあえ。

 ああひ、えあう……」

 (美代子ちゃん、もう駄目。

 私、出ちゃう……」

 

 呂律の回らない風の様な声。

 何を喋っているのか美代子には解らなかったが、相手に余裕が無い事が感じられた。

 顔を真っ赤にした雫が、彼女の頭を両手で掴み肉棒を喉の奥へと突っ込む。

「うはッ」

 

 だらしなく口を開け、舌を出し涙を流しながら快感に全身を震わせる雫。

 彼女は股間に溜まっていた欲望を容赦無く美代子の口の中で解き放つ。

 硬い肉棒の先端から透明な粘液がびゅるびゅる飛び出し、美代子の口内を汚した。

 (う、粘っこくて気持ち悪い。

 口の中がどろどろしたもので満たされていくぅ……)

 

 口の中で脈打つ肉棒の熱と、先端から飛び出し続ける粘液。

 その両方に耐え切れず、思わず美代子は肉棒を口から離してしまう。

 床に美代子が口から吐き出した粘液と放出されている粘液が落ちていった。

『ゴメンねぇ、一度火が付くと止まらなくなっちゃって……

 私のオチンチン、凄く気持ち良かったよ』

 

 床に手をつき悶える美代子。

 喉に絡みつく粘液の残りを幾度も吐き出し、涙を流しながら雫の方を見る。

 (えっ嘘。

 こんなに出したのに全然大きさが変わってない!?)

 

 欲望を一旦吐き出し終えた肉棒が粘液塗れのまま硬度を保っている。

 ほぼ垂直に反り立ったピンク色の柱は『この後』を期待しているかの様だった。

『勃起すると私のはそう簡単には小さくならないよ。

 何時もと違って強精剤も飲んでるからね。

 多分、あと3回か4回は射精出来るんじゃないかなぁ』

 

 当たり前の様に恐ろしい事を平然と口にする雫。

 その3回、4回分が何処で出されるのか薄々解っていたからこそ余計に怖い。

 今の乱暴なやり方で股間にアレを突っ込まれたら……

 どれだけの激痛が全身を走るのか想像もつかなかった。

 怯え切っている美代子の肩に彼女は手を乗せ、彼女を優しく宥める。

 

『大丈夫。

 薬も飲んでるし、ちゃんとほぐせば痛みも軽減されるよ。

 寝室に行こうか』

 

 今から寝室でセックスをするのだ。

 フェラチオを生まれて初めてした時も現実感が無かったが、性行為はそれ以上である。

 正直ワクワクするものでは無かった。

 怖いと言う感情が全身にまとわりついている。

 それでもチケットを受け取った美代子に断ると言う選択肢は取れなかった。

 

 真に生まれたままの状態である2人の若い女性が、手を繋いで廊下を歩く。

 1人は僅かに肩を震わせ、もう1人は期待に胸を膨らませていた。

 雫にしてみれば生まれて初めて女性にモノを咥えてもらい射精までしたのだから喜ぶだろう。

 しかも『男性側』で初体験に臨むのだから嬉しいに決まっている。

 そんな状態でも彼女は笑顔を見せ、相手の緊張をほぐそうと努力していた。

 

『美代ちゃんにとっても悪い話じゃ無いと思ってるんだよ。

 本当に心から愛している相手に、激痛を感じて泣き喚く姿を見せたいと思う?

 半狂乱になって暴れる姿を黒沢さんに見せないと思えばね』

 雫自身は処女であった為破瓜の痛みはまだ想像でしか無いが、相当痛いであろうとは思っていた。

 その言葉を聞き、美代子もそれはそうだと考える。

 

 (確かに、黒沢さんの前で痛い痛いと叫ぶのは抵抗がある。

 愛してる人に自分の惨めな姿を見られたくないって誰もが思うでしょう。

 でも、それは貴方が相手でも同じ事なんですよ雫さん)

 本当は彼女にも自分の情けない姿を見せたくない。

 そうは思っても契約は既に成立しているのだ。

 

 美代子は自分にそう言い聞かせなければ、落ち着く事が出来なかった。

『さぁ、始めましょう』

 ベッドに美代子を寝かせ、股を開かせた後雫は彼女の秘所をまじまじと見つめる。

 美代子の膣は綺麗なピンク色で、それは誰も受け入れていないと言う事実を示していた。

 雫は頬を紅潮させ顔を覆っている美代子をよそに舌を出す。

 

『ほぐす為に舐めるからね』

 舌が膣に触れ、ぺろぺろと各部に触れていく。

 膣を見られるだけでも恥ずかしいのに、舐められるだなんて。

 美代子は恥ずかしいと言う感情と快感で情緒がぐちゃぐちゃになってしまった。

 (やだ、こんなの……)

 

 舌が肉棒を受け入れる為の穴に潜り込み、壁に触れる。

 自慰行為では感じる事の無い感覚に、美代子は足を伸ばしながら悶えた。

 (おかしく、なっちゃうッ……!)

 淫らな宴はここから本番に向けて確実に動き始める。

 それは勿論、彼女の『扉』がこじ開けられる事を意味していた。

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