※この作品はR-18です。

ZERO ~格闘ゲームに翻弄される者達~   作:夜月光介

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この話は多分、これまでの総まとめみたいなものになると思います。
伝えたい事を縮めてると言うか、恐らく今まで書いてきた話が
あるから書ける話なんじゃないかと。
政治と格闘ゲームと不器用で歪な恋。
そんな物語の終わりは近い様ですね。


ZEROFINAL3 『箱舟の子供達』4

【西暦2100年 ?月?日 午後3時 ノア内 月山雫の自宅 寝室】

 

 何時もの変わらない日常がそこにあるだけだと鏑木美代子は思っていた。

 月山雫の家でZEROをプレイして、稽古をつけてもらってから帰る。

 それだけだとしか思っていなかったのだ。

 

『ホラ、いやらしいおつゆが出てきたよ。

 感じてるって証拠だからね』

 人に見せた事の無い性器を雫の眼前に晒し、快感に溺れる。

 体験している事の全てが非日常であり美代子にとって未知の世界だった。

 真っ赤になった顔を手で覆い、喘ぎ声を抑える事しか出来ない。

 

 (ああ、恥ずかしい……

 何で、雫さんが私のアソコを舐めてるの。

 これから私と雫さんがセックスする事になるなんて)

 自分の意思で決断した事とは言え、怖いものは怖い。

 痛みだけでは無く、感じた事の無い快感によって我を失ったらどうしようと言う不安もあった。

 

『もっと気持ち良くしてあげるからね。

 私もコレで刺激すると凄く良くなるんだ』

 雫は壁側の物が置ける様になっている箇所から電動マッサージ機を持ち出してくる。

 勿論通常は肩や腰に押し当てて痛みをやわらげる為の道具だが、そういった用途で使用される事があった。

 スイッチを入れた後、振動している部分を直接クリトリスに当てて刺激する。

 

「ふぎッ!?」

 細かい振動がクリトリスに凄まじい勢いで快楽を与えた。

 雫はそれと同時に舌を膣口に入れ、さらに快楽を増してあげようとする。

 美代子は宙を浮いているかの様な快感に溺れる事しか出来なかった。

 (あッあッ、何これぇ……)

 

 元々赤かった顔がさらに赤くなり、自分の意思とは無関係に涙が出てくる。

 涎を垂らしながら声にならない声を出す姿は本能に従う動物そのものだった。

「あッやあ、駄目ぇぇぇ。

 おかしくなっちゃう、止めて止めてぇぇぇぇ」

 美代子は股間に手を伸ばしたが、雫の手がそれを制した。

 

『監視カメラで見られてるけど、私達の痴態を密告する人間は誰もいない。

 人間は皆本能で行動する時があるんだから素直になればいいんだよ。

 絶頂を迎えるなんておかしな事じゃ無い。

 皆何処かで絶対に経験する事なんだから』

 

 脳が痺れる様な凄まじい快楽に美代子は抗う事が出来ない。

 全身をがくがくと震わせ、快感の波に身を委ねる。

 (身体全部が熱い。

 変になっちゃう、変になっちゃう……

 股間に、何かがきてるぅぅぅぅ)

 

 獣の様な嬌声を発しながらの絶頂。

 クリトリスに常時与え続けられる快感によって膣から潮が噴出した。

「あッあッ、何これぇ!?

 私、こんなの感じた事無いよぉ」

 

 自慰行為で達した事はあったが、潮まで出す程の快感を味わった事は今まで一度も無い。

 絶頂を迎え痙攣を続けている膣の中に、肉の凶器が容赦無く侵入してきた。

『あはッ、嬉しいな。

 私もこれで『童貞卒業』出来たよ。

 イッてる最中に挿入したからそこまで痛くないと思うんだけど、どう?』

 

 体内の肉がぷちぷちと引き裂かれる様な感覚。

 通常時であれば耐え難い激痛に悶え苦しんで暴れるだろうが、今は事情が違う。

 (えッあッ、入れられてるの?

 痛いんだか気持ちいいんだが、もうワケが解らない。

 股間が色んな意味で熱くて、目の前がチカチカするぅぅ……)

 

 電動マッサージ機の先端を押し当てられた影響でまだ美代子のクリトリスはじんじん痺れていた。

 垂れ流され続ける愛液が潤滑油の役目を果たし、雫の砲身を容易く奥まで受け入れる。

『あったかい、コレがオマンコの中……

 今までずっと、どれだけ気持ち良いのか解らなかったけど想像以上に凄い。

 ずっと、自分のオマンコに入れる事が出来たらって思ってた』

 

 両性具有者の悲哀がそこにあった。

 肉棒のすぐ下に膣があるのだから、己の棒を己の穴に突っ込む事が出来ればどれだけ楽だろう。

 男性器の性欲も女性器の性欲も両方満たす事が出来る。

 誰かの身体を使って発散する必要も無い。

 だがそれはあくまで妄想であり、そんな事が出来るはずも無かった。

 

 (私は最低だ。

 美代ちゃんの弱みにつけ込んで処女を奪った。

 子供チケットをちらつかせて断ると言う選択肢を潰した。

 でも、それでも私は……)

 

 自己嫌悪に陥っても尚、月山雫は己の性欲を最高の形で処理したかった。

 女性の体内に潜り込み、抜き差しを繰り返した後中で果てる。

 その行為を狂おしい程望んでいた。

 たまたま近くにいて、相手になってくれそうだったのが鏑木美代子だったというだけの話とも言える。

 待ち望んでいた夢が現実となり、雫の肉棒は大いに猛っていた。

 

『激しくすると思うけど、我慢してね』

 雫は己の欲望を激しく出入りさせ、肉壁に扱かれる快感を存分に味わう。

 美代子は容量の限界を迎えてオーバーフローを起こしている様だった。

 強烈な快感と痛みが混ざり合い、殆ど思考をしていない。

 涙を流しながら魚の様に口をパクパク開け閉めする事しか出来なかった。

 

 (思っていた以上に、セックスってオナニーとは別次元の快楽を与えてくれる……

 ううん、どっちかが特別優れているってワケじゃない。

 オナニーとセックスは別物で、それぞれ違った快感があるだけなのかも)

 

 膣の中を出し入れするのと手で扱くのとでは、当然手の方がスピードが出る。

 だが膣の包み込んでくる様な熱さ、ぎゅっと握り締めてくる様な壁の収縮は手では味わえない。

 雫はセックス以外の様々な自慰行為を試していたが、膣が与えてくる心地良さはどの自慰行為とも異なっていた。

 声を入力する余裕を失い、獣の様に腰を振り続ける。

 荒い息と肉が肉を叩き付ける様な音だけが部屋の中で聞こえていた。

 

「ふええぇ、へッ、へええええ……」

 美代子もまともな声を発する事が出来ない。

 クリトリスに与えられた強烈な快感は人生において初めて体験したもの。

 潮まで噴き、その直後に肉棒を挿入された為一時的に理性が破壊されてしまった。

 脳がフリーズした様なもので、こうなるとされるがままになるしか無い。

 

 気持ち良い・痛いと言った感覚すら今の美代子には曖昧で、状況があまり把握出来ていなかった。

「あッあッ、ひい……

 おあんこひい、ふおくひい……!!」

 膣によって肉棒を刺激され、雫は陶酔状態に陥っている。

 口から涎を垂らし、普段の彼女からは想像出来ないだらしない表情を浮かべていた。

 

 お互いに理性が吹き飛び、一方が一方の身体を貪っている。

 美代子は捕食されるだけだったが、それすらもよく解っていなかった。

 (オチンチン、美代ちゃんの壁に擦れて気持ち良くなってるぅ。

 オチンチンが漲って、今にも出てしまいそう……

 ああ、出したい自分ともう少しこの快感を味わっていたい自分がいるのぉ)

 

 頭が真っ白になりそうな程の強烈な快感。

 両性具有者と女性のセックスは男性と女性のセックスよりも互いに感じる快楽が段違いに強い。

 男性の肉棒と両性具有者の肉棒の形状が全く異なるからだ。

 男性の肉棒は剥けても先端部分、つまり亀頭が敏感な部分として露出するだけでそこでしか快楽を得られない、

 だが両性具有者の肉棒は先端から根元全てが露出したクリトリスであり、器官全てが強い快感を得れる様になっている。

 

 その為肉棒が膣壁に擦られるだけで、意識が飛びそうになる程の強い快感が全身を駆け巡るのだ。

 女性も同じで、男性の肉棒が膣内を移動するより両性具有者の肉棒に突かれる方が余程気持ち良い。

 両性具有者は本人が望む望まないに関わらず、『性行為の上位種』として誕生していた。

 美代子はそれに加えてクリトリスを刺激され、潮を噴く程興奮している。

 その状態で挿入され、痛みがどうでもよくなる程快楽に溺れてしまっていた。

 

「おうッ、おうッ、おお、おおおあ」

 アシカが鳴いているかの様な言葉を発しながら、なすすべ無く身体の中を蹂躙される美代子。

 四つん這いの状態で膝と手をつき、涙を流しながら情けない顔を晒す。

「おほッ、なふぁひいおお。(おほッ、膣内(なか)良いよぉ。)

 ほっほほうひはいあへえぇ」(もっと奥に入らせてぇ)

 

 雫はひゅうひゅうと言う風を切る様な掠れた声を出しながら激しく腰を振った。

 膝立ちの状態で相手の腰に手を当て、何度も何度も腰を前に突き出す。

 奥に先端を突き入れたいと言う思いが強くなり、自然と身体が前のめりになった。

 (ううッ、もう出そう……

 思っていた以上に美代ちゃんの具合が良過ぎるってぇ)

 

 襞の細かさ、先端を吸い上げて締め付ける様な吸着力。

 火村あかりほどの鍛え上げられた『名器』では無いものの、美代子の膣は普通の女性より快感を与える能力に秀でている。

 少なくとも、両性具有者特有の未熟な膣を持っている雫とは比べ物にならなかった。

「はあッ、あッあああッ……

 あううう、ああああ――――!!」

 

 獣となって腰を振りまくっていた雫に限界が訪れる。

 全身をがくがくと痙攣させながら美代子の背中に覆い被さり、己の欲望を思う存分解き放った。

 美代子の膣の中が熱くてどろどろした粘液で満たされていく。

 (出されてる、多分これ出されてる。

 雫さんの身体が何度も震えて、その度にオチンチンも私の中でビクンビクンしてぇ……)

 

 身体を支えていられなくなった美代子はそのままベッドの上でうつ伏せに倒れ、同じ様に雫も重なったまま倒れ込む。

 雫の肉棒はあれだけの欲望を吐き出したと言うのに、まだ美代子の膣内で硬い状態を保っていた。

『もう1回、もう1回お願い。

 いいよね?』

 雫の荒い息と機械音声が重なりながら聞こえてくる。

 

「ふぁい……」

 泥酔状態の様になっている美代子はただ頷く事しか出来ない。

 この後、美代子は雫と騎乗位や正常位で激しく繋がり合い果てる事になる。

 それは健気に受け止めていると言うより、ワケの解らない間に相手が射精していたと言う感覚だった。

 

 だからと言って雫との性行為は苦痛では無かった。

 美代子自身も快楽に酔い、雫と同じ様に初めて味わう美酒を存分に飲み尽くす。

 全てが終わりベッドに倒れ込んだ後も身体の火照りが全く止まらない。

 雫の肉棒は流石に萎えかけていたが欲望を吐き出し切れていないのか股間にぶらさがったままだった。

 美代子は放心状態だったが、雫に肩を叩かれ我に返る。

 

『ねぇ、どうだった?

 初めてセックスした感想、教えてよ』

 雫は子供の様に無邪気な笑顔を見せながらそんな事を聞いてきた。

 それが何故かおかしく感じられ、美代子は思わず頬が緩む。

 

「よく解らなかったです。

 気持ち良かったのは間違いないと思うんですけど、気持ち良過ぎたんですかね……

 気付いた時には射精されて、終わっていたと言う感じで」

 それが別に悪い事では無いとフォローしつつ美代子はそう答えた。

 雫は少し残念そうな顔をして顎に手を当てる。

 

『ちょっとやり過ぎちゃったかな。

 なるべく痛くならない様にクリトリスを刺激したんだけど……

 でもこれで膜は破れたんだし、次回以降痛くなる事は無いよね』

 そう言って笑っていた雫であったが、笑い終えると目を細めた。

 遠くを見る様な目線のまま、自分の正直な思いを美代子に伝える。

 

『私ね、美代ちゃんの事がずっと羨ましかったんだ。

 普通の身体で、背負わされた十字架を皆が知ってて受け入れてるって事が……

 今まで私は本当の自分を誰にも明かせずに生きてきた。

 こんなオチンチンが生えてる女だもん、しょうがないよね。

 でもそんな私でも、この秘密を1人で抱え続けるのは結構きつくて』

 

 美代子は雫の隠された『見えない一面』を知り驚いた。

 社交的で皆に愛され、成功者としての道を確実に歩んでいる女性。

 彼女に悩んでいる様な素振りは全く見受けられなかった。

 だがそれは彼女が周りの人間を欺き続けていただけに過ぎなかったのだ。

 美代子もこの事実を聞かされなければ一生知らないままだったと思われる。

 

『だから嬉しかったの。

 美代ちゃんに秘密を打ち明けて、繋がれるんじゃないかと思った時。

 卑怯な方法を使ってしまったけど、逆に言えばそこまでしてでもこのチャンスを逃したくなかった。

 このチャンスを逃したら親しいノーマルの人と秘密を共有する事は二度と無いと思ったから』

 

 美代子自身のメンタルを変える為。

 そんな言い訳と子供チケットと言う極上の餌。

 雫は鏑木美代子と言う魚をどうしても釣りたかった。

 快楽の為、そして『どんな事でも話し合える相手』を作る為。

 ある意味、もっとも人間らしい動機だっただろう。

 

「そうだったんですか……

 でも私だって、雫さんの事が羨ましかったんですよ。

 誰もが貴方の事を好きで、心から尊敬している。

 血の事で常にいじられている私とは対極の存在。

 人気でも経済面でも、とても勝てない相手だと思っていました」

 

 天武日本を滅ぼそうとした国家、真国。

 そして殆どいなくなったその国の国民の血を引く女性。

 正直血が8分の1程度に薄まっていてもまだ色々と言われてしまうのだ。

 勿論本気の悪口を面と向かって言われた事は一度も無い。

 監視国家となったノアでそんな暴挙に出る人間がいるはずも無かった。

 

「学校で何時も軽くいじられて、笑われる事が日常……

 気が滅入っている時は何時も『本当は影でもっと酷い悪口を言われているのではないか』と思ってしまいます。

 そんな私に一切そういういじりをせずに接してくれたのが黒沢さんであり雫さんでした。

 だから凄く嬉しかった。

 憧れている相手に受け入れてもらえたと思ったから」

 

 美代子も雫も、違った形で心に傷を負い誰かに救いを求めていた。

 そんな心の傷を埋める存在を互いに望み、そして仲良くなれたのだ。

 2人が性行為を経て距離を縮めたのは、結果的には互いの幸せに繋がるのだろう。

 雫は微笑みながら、美代子と顔を向き合わせ彼女の頬に手を当てる。

 

『私も凄く嬉しかったよ。

 普通ならこんな身体、化け物と罵られてる事も覚悟しなきゃならない。

 でも美代ちゃんは私を認めるだけじゃなく身体でも受け入れてくれた。

 自分は生きていていいんだ。

 ここに存在していて構わないんだと言われた気がして……』

 

 ぽろぽろ涙を零しながらデバイスでの入力を行う雫。

 生まれつき言葉が話せないと言うハンデ、そして両性具有者であると言うハンデ。

 重い物を背負わされていたのは雫も同じだった。

 美代子よりも遥かに重い業を背負いながら気にしない素振りを続けてきたのだ。

 美代子は雫の力にならなければいずれ彼女は潰れてしまうと思った。

 

 (気付けなかった。

 雫さんがこんなに苦しんでいる事に。

 声が出ないだけでも相当苦しい事なのに私は自分の悩みばかり……

 私が雫さんの近くにいてあげなきゃいけないんだ。

 彼女を救ってあげたい。

 それはきっと、私の為にもなる)

 

 お互いに『大して気にしていない振り』をずっと続けてきた。

 だが人間である以上何処かでそれは壊れてしまう。

 天才と呼ばれたZEROプレイヤーの才能を守りたい。

 咄嗟に美代子は雫の手を両手でぎゅっと掴んでいた。

 

「黒沢さんと1つになったら終わり、そんなの駄目です。

 私は雫さんを支えてあげたい。

 雫さんの心を守ってあげたい。

 黒沢さんも『見えない一面』を持っている以上きっと私達と解り合えるはずです」

 

 ずっと貴方の側にいる。

 そんな宣言を唐突にされ、雫は面食らった。

 それと同時に嬉し涙が溢れる。

 半ば騙す様な形で処女を奪った相手が自分を愛そうとしてくれている事で彼女の涙腺が崩壊した。

 

『有難う。

 凄く嬉しいよ、そう言ってもらえて。

 でも『見えない一面』が黒沢さんにもあるって言うのは……?』

 大粒の涙を流しながら美代子を抱き締める雫。

 美代子は彼女の耳元で永久から聞いた話を全て語った。

 

「黒沢さんは『自分には人に言えない闇がある』と言っていました。

 人に話せば破滅してしまう様な秘密を抱えて生きていると。

 そしてその秘密は、一緒になれば君にも話さなければならないとも。

 だから雫さんの秘密を知ったとしても黒沢さんが周囲に漏らす心配が無いんですよ。

 仲間外れは絶対駄目です。

 私達が3人一緒に幸せになろうとするのは、そんなにいけない事でしょうか?」

 

 黒沢永久と結婚して夫婦になろうとも、月山雫と離れるわけにはいかない。

 愛を注ぐ相手は1人で無ければならないなんて誰が決めたのか。

 永久が大きな秘密を持っていると美代子に打ち明けたのは美代子にとっても雫にとっても朗報だった。

 誰にも話せない秘密を共有して共に生きていけると言う何よりの証拠。

 雫は美代子の大き過ぎる優しさを知り、彼女を強く抱き締めたまま離さない。

 

『ああ、本当に良かった。

 美代ちゃんに私の身体の秘密を明かしたのは間違いじゃなかったんだ。

 ずっと私と一緒にいてくれるなんて、素敵な事を言ってくれて。

 言葉にならない位嬉しいよ。

 夢ならどうか覚めないで』

 

 その強い歓喜の感情を興奮と捉えたのか、雫の肉棒は再び硬さを取り戻し美代子の腹に当たっていた。

 ビクビク震える肉の柱が熱を持ったまま美代子の身体に触れている。

 だが不思議と美代子には不快感は無かった。

 これがありのままの、何も隠し事の無い雫の姿だと思うと嬉しい気持ちにすらなる。

 美代子は彼女の身体を抱き寄せ、子供の様に泣く雫の頭を優しく撫でていた。

 

 美代子が雫とセックスを行った事は、美代子に良い作用をもたらす。

 悩んでいた彼女に対して、雫が『悩みを抱えているのは貴方だけじゃない』と言う現実を教えたからだ。

 永久が会話の中で教えたのとは段違いの効果がある。

 身体と心で強く繋がり、お互いを『何でも話せる真の仲間』と認識する事が出来た。

 心の中に巣食う漠然とした闇が晴れ、青空が広がっていく様な感覚だったろう。

 

「雫さん……

 私の心の中でずっと長い間引っかかっていた『小骨』を除去してくれたのは貴方です。

 この言葉に出来ない不安や辛さは、家族に相談する事が出来なかった。

 血の事で辛い思いをしているなんて言ったら、親が悲しみますから……

 黒沢さんがきっかけを与えてくれて、雫さんが実際に苦しみを消してくれた。

 今日は本当に有難うございました」

 

 お互いの身体の火照りが落ち着いた後、美代子と雫は前貼りを付け『日常の見た目』に戻った。

 雫は先程自分を無くしているのではないかと言う位の顔を晒していたのが嘘の様である。

 少し前まで獣の様にまぐわっていたのが夢だったのかと錯覚しそうだった。

 だが、膣の奥から感じる鈍い痛みが美代子に『現実』であった事を教えてくる。

 美代子が感謝の言葉を述べると、雫は照れくさそうに頭を掻いた。

 

『私は美代ちゃんに何もしてないって。

 チケットを渡して、セックスさせてもらっただけ。

 私の方こそ御礼を言わなきゃいけない立場。

 自分と血縁関係が無いノーマルの人に私の身体を受け入れてもらった。

 生まれて初めて性行為を体験出来た。

 嬉しい事だらけでビックリしちゃったよ』

 

 誰にも言えない悩み。

 自分だけが持っているものでは無く、それは誰もが持っている事。

 美代子のクラスメイトや学校の教師、日頃お世話になっている人達。

 きっと内容の差はあれど皆がそういったものを抱えて生きているのだ。

 彼女はそれを知り、いちいちくよくよしていられないと思える様になっていた。

 

「これからは前を向いて、胸を張って生きていける様な気がします。

 私が背負ったものなんて、大した事じゃ無いって。

 もっと大変な思いをしている人達が沢山いるんだから頑張らなきゃって。

 心からそう思うんです。

 そして私の近くにいて苦しんでいる人がいたら、出来る限り助けてあげたいとも」

 

 性行為そのものが美代子に変化を与えたのかは解らない。

 しかし美代子は月山雫を受け入れる事で彼女の心を救い自分の心も救った。

 失ったものはあれど、それ以上に多くのものを手に入れたのではないか。

 後悔は全く無かった。

 むしろもっと早くこういった関係になっても良かっただろうとすら思える。

 

『美代ちゃんは本当に優しいね……

 これからも宜しく。

 ZEROの事は私に任せて。

 教えられる事は全部教えてあげるから』

「はい、これからも宜しくお願いします」

 

 雫の自宅を後にして家路につく美代子。

 時刻は午後6時を回っている。

 まだそこまで怒られる様な時間帯では無い。

 でも今日あった事は誰にも話せないだろう。

 両親にそんな話をしたら驚きのあまり倒れてしまうかも。

 

 そんな思いが浮かんでは消えていく。

 処女を捨てる事を『大人になった』と言うけれど、自分は今日大人になれたのだろうか。

 大人になれたかどうかは解らないけれど、幸せな気持ちでいる事は間違いない。

 雫の笑いながら涙を流している姿が瞳の奥に焼き付いていた。

 表向きの綺麗さをかなぐり捨てた『本当の姿』をもっと見てみたい衝動に駆られる。

 

 (私は、黒沢さんの『本当の姿』を見てみたい。

 そこに衝撃やある程度の恐怖があったとしても、私は全て受け入れる。

 雫さんが見せた、あの姿。

 反り立つモノを隠す事無く晒したあの姿以上の秘密を黒沢さんが持っているのだとしたら……

 どうしても、見てみたいと思ってしまう)

 

 どんな気持ちで自分は秘密を知りたがっているのかと美代子は考えた。

 怖いものを見たいと思う好奇心なのか。

 見るなと言われたものを見たいと感じる人間の性なのか。

 それとも、雫と同じ様に永久の哀しみに満ちた心を救いたいと言う慈悲なのか。

 どれか1つに限定出来るものでは無く、全部当てはまるのかもしれないとすら思った。

 

 (彼を愛している気持ちに嘘は無い。

 恋愛したい、結婚したいと言う気持ちは全然変わっていない。

 でも、雫さんと言う守ってあげたい人が現れてしまった。

 3人で歩いていくと言うのは許されない事なのでしょうか?

 人は本当に生涯1人だけを愛さなければならないのでしょうか、黒沢さん……)

 

 歪な一夫多妻制を彼は許してくれるだろうか。

 そもそも両性具有者を受け入れるかどうかすらも解っていない。

 それでも美代子は黒沢永久と言う人物を心から信じてみたかった。

 信じ、自分の思い描いた未来と同じ様になる事を期待した。

 美代子は、今の自分なら全部思い通りになるかの様な全能感に包まれていた。

 

 (きっと全部上手くいく。

 何故そう思うのか説明は出来ないですが、そうなってくれると思うんです。

 私は黒沢さんも雫さんも幸せにしてあげたい)

 天井で輝く『描かれた星』を眺めながら彼女は2人の笑っている顔を思い浮かべる。

 丸い『偽の月』が美代子の姿を明るく照らしていた。

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