この物語のテーマとして『結ばれない人々』と言うのがありました。
憧れても、お互いに好きであったとしても色々な事があって出来ない。
そして不幸になっていく者達を沢山書いてきました。
だから最後はせめて、この終わりに近い世界で幸せな結婚を描きたい。
そこに変な『裏』も無いし絶望も無い。
世界そのものはお世辞にもハッピーエンドとは言えませんが、
そういう話で締めくくりたいですよね。
【西暦2100年 ?月?日 午後1時30分 メゾン・ド・ノワール 黒沢永久の自宅 寝室内】
ベッドの上で股間を晒し、舌で膣を舐められる快楽と恥ずかしさで顔を覆う美代子。
その痴態を見ながら、雫は化粧台の上に置かれたスマートフォンと子供チケットに視線を向ける。
(YES・NOアプリは当然3人ともYES。
子供チケットの利用により美代ちゃんと黒沢さんは懐妊するまで避妊する必要が無い。
逆を言えば避妊さえちゃんとしてれば生でやろうが咎められないんだけど……)
例え彼等がセックスを互いの了承のもとで行っていたとしても、勝手に妊娠する事は許されない。
セックスをより身近で手軽なものとする為、避妊薬はコンビニでも購入出来る様になっていた。
この世界で子供を産むには1000万円以上の金が必要。
そんな状況でも当然子供が欲しいと言う需要はあり多くの一般人が子供チケットの購入に対して積極的になる。
チケットを購入する事を人生における目標の1つとしている者も決して少なくなかった。
「どう、気持ちいい?
私の舌で痛くならない様によくほぐしてあげるからね」
決して荒々しくない、優しいタッチ。
男性らしくない細い舌がクリトリスを刺激したり、膣の中に潜り込んだりする。
美代子ははしたないと感じ我慢していたが、喘ぎ声を抑え続ける事は出来なかった。
「あッ、やあッ!
おかしくなっちゃう、アソコが熱いのぉ」
膣から愛液が滴り落ちていても、永久は入念に舐め回すのを怠らなかった。
処女では無いと言っても、濡れていない状態で挿入すれば当然痛い。
微笑みながら、相手をいたわる事を忘れない彼の態度はある意味男の姿の時と変わらなかった。
(本当に黒沢さんなのか、何故か脳が混乱する。
私よりずっと綺麗な女の人にしか見えない。
女の人にしか見えなくて、でも股間には凄く大きなアレがついていて。
性行為に対する心の準備が全然出来てないわ……)
男の顔とまるきり変わっているわけでは無い。
顔の輪郭等の面影は残っている。
それでも美代子は人の顔と言うものは化粧で劇的に変化すると言う事実に驚いていた。
化粧・ウィッグ・表情の作り方・動きの所作……
どれも一朝一夕で身につくものでは無く、時間をかけて会得したのだと言う事が解る。
永久は膣を刺激するのを止め、相手の股を左右に広げると自身の欲望を近付けた。
「いくよ」
短い言葉に全てが詰まっている。
これから始まる性行為への期待。
美代子に対する気遣い。
溢れんばかりの慈愛の裏に隠れた、獣の如き性欲。
美代子は今まで自分の身に起きた出来事は全てこの時の為にあったのだと思った。
(雫さんとエッチをして、仲良くなって……
性行為から始まる強い絆が存在する事を知った。
そして今、1つのゴールを迎えようとしている)
黒沢永久と結ばれると言う夢の実現。
そしてそのゴールもまた別の夢へと向かう始まりにしか過ぎないのだと彼女は考えていた。
恐らくこういう時に言葉はあまり要らないのだ。
人は1つになる事でお互いを深く理解し合う事が出来る。
そして繋がれば繋がる程もっと相手の事を知りたくなるのだと。
「はい、宜しくお願いします」
彼女の瞳には涙が滲んでいた。
哀しいのでは無い。
これは3人が揃って一歩を踏み出し前を向く為の嬉し涙。
美代子は永久を迎え入れる様に左右に手を広げ前に差し出す。
彼女の動きに呼応する様に永久は熱く滾る肉棒の先端を膣口に添えた。
亀頭が、竿が、美代子の体内へと潜り込んでいく。
美代子の花は濡れる事で太い砲身の侵入をいとも容易く受け入れた。
(入ってきてる。
黒沢さんの大きいのが、私の中に)
肉棒は根元まで突き刺さり、膣の中で軽い膨張と収縮を続け脈を打っている。
永久が抜き差しを開始しようとした瞬間、美代子は痛いとも聞こえる様な声を出した。
「大丈夫?
痛かったら何時でも言ってね」
永久の顔が彼女の眼前にあり、心配そうな表情でこちらを覗き込んでいる。
ああ、どんなに姿が変わっても中身の最も大事な部分は不変なのだ。
常に美代子の身を案じ、身体を張って守ろうとする黒沢永久と何が違うと言うのだろう。
美代子は彼の一言で『今身体を張るべきは自分なのだ』と覚悟を決めた。
「大丈夫です。
貴方のお好きな様に動いてください」
もう怖いとは思っていない。
痛みも感じない。
愛する人との繋がりを楽しむべきなのだ。
美代子の覚悟を感じたのか、永久は微笑んだ後ピストン運動を始める。
肉の凶器が何度も彼女の中を出入りし、膣内の快楽を味わっている彼に切ない表情をさせた。
(黒沢さん……
気持ち良くなってください。
私の身体が貴方の心を癒す力になれるのなら本望です)
ずぶずぶと深く潜り込み、そして抜けそうになってまた戻る事の繰り返し。
その反復作業が永久に凄まじい快感を与えている事は何となく解った。
「ああ、凄いぃ……
私のオチンチンがぬるぬるに包まれてとっても気持ち良いの。
私、こんなだから今まで女の人とセックスなんて1回もした事が無かった。
扱いて吐き出すより、もっと素敵な行為があっただなんて」
永久の言葉に呼応するかの様に、彼の竿が膨らみ硬くなった様な気がする。
肉の槍が何度も膣奥を突き、美代子もまた永久が与えてくる快楽に酔っていた。
(両性具有者の雫さんとした時とは感じ方が違う。
ペニスがまるごとクリトリスになっている雫さんのモノが入ってくるのと全然違っていて……
正直どちらとしている時の方が気持ち良いのかは解らない。
ただ、愛されているのを強く感じる)
雫とのセックスで感じたのは相手の凄まじい性欲だけだった。
永久とのセックスには美代子への気遣いや愛情を感じ取る事が出来る。
それだけ性欲に溺れる事無く一定の理性を保てている永久が凄いとも言えた。
『もう私も我慢出来ない。
美代ちゃん、気持ち良くしてぇ』
美代子の眼前に性欲の権化が突き出される。
完全に勃起し脈を打っている両性具有者の肉棒。
全てが薄桃色のそれを美代子は優しく握り締め、己の口へと導いた。
「仲間外れにはしませんよ」
先端を舐め、そのまま咥え込み口内で包み込む。
『フェラ気持ち良い。
美代ちゃんの口が、舌が、私のオチンチンを刺激してくるのぉ』
全裸の女性が股間に生えた肉棒を咥えられて悶絶している。
視線を移すと完璧な女装をした男性が自分の体内に入ってきている。
とんでもない光景だな、と美代子は思った。
雫との性行為の時よりまるで現実感が無い。
しかし夢を見ているわけでは無いと言う事は己の身体が証明していた。
膣に出入りしている肉の槍。
口の中で膨らみビクビクと震えるピンク色の砲身。
2人の快感が絶頂へと近付いているのが肌で感じられる。
「大好き!
大好きだよ、美代ちゃん。
私ので沢山気持ち良くなって。
私も美代ちゃんの膣内で凄く気持ちよくなってるからぁ」
ハァハァと聞こえてくる荒い息。
肉同士が叩き合う様な淫らな音。
間近で聞こえてくる喘ぎ声。
その全ての要素が2人を興奮させ、射精と言うゴールへ導いていく。
美代子は彼等の獣じみた性欲にただ身を任せる事しか出来なかった。
「れひゃうッ。
おひんひんはられひゃうおぉ……」
「私もそろそろイク……
美代ちゃん、全部受け止めてぇ」
雫の肉棒から発される強烈な『雌の匂い』。
男のものとは違うその匂いに包まれながら美代子はそれをしゃぶる。
永久の腰を振る速度が速くなり、射精を強く欲している事が解った。
奥へと叩き付けられ、先端が美代子の大切な部分に近付く。
かなりのスピードで行われていた抜き差しが急に止まった。
「あうッ、うぐぅぅぅぅ」
「あへぇぇ、れうぅぅ」
激しく突いていた肉棒が膣の最奥で弾ける。
雫のモノも大きく膨らみ、膨張と収縮を繰り返しながら何度も欲望を口の中に吐き出した。
先端からびゅるびゅると噴き出す精液が美代子の口と股間を容赦無く汚していく。
「ああッ、止まらない……
私の射精止まらないのぉ。
美代ちゃんのが出してる間もぎゅって締め付けてくるからぁ」
「むふぅぅ、うむぅ。
おふぅぅぅ、おうッ……」
永久の言葉に何かしら返答したいが、口が塞がっている為何も言えない。
もどかしさを感じつつ、今口から肉棒を離したら悲惨な事になるのでそれも出来なかった。
透明な粘液が口の中で発射され、その度に雫が身体全体を小刻みに震わせる。
「ひんふぉ、ひゃへえひてきおひひぃお。(チンポ、射精して気持ち良いの)
ほんろはあはひふぁみほひゃんひひれはい……(今度は私が美代ちゃんに挿れたい)」
雫の言葉が聞き取れなかったのか、聞こえなかったのかそれは解らない。
永久は達した後一旦勃起したままの肉棒を抜き、ある程度精液が膣から流れ出たのを確認する。
その直後に身体を上手く動かせない美代子の態勢を無理やり変え、四つん這いの状態にさせた。
「ごめんね、興奮が全然静まらないの。
オチンチンをもっと入れていたい」
美代子が四つん這い、永久が膝立ち状態での後背位。
再び熱を帯びた硬い肉棒が美代子の膣内に侵入してくる。
「あふッ」
獣じみた欲望が貫入してきた瞬間、美代子は思わず変な喘ぎ声を発してしまった。
だがそれを恥ずかしいと思ったり、取り繕ったりする余裕も無い。
ただ流されて相手の欲望に身を任せているだけの状態だった。
『あ~、ズルい!
私が美代ちゃんの中に入れたかったのに。
まぁ良いや。
空いている穴はまだあるんだから』
雫はそう言うと、へこへこ腰を前後に動かしている永久の背後に回る。
すべすべした女性の様な尻に手を振れ、軽く擦った。
『ふふッ、麗さんは『女の子』だもんねぇ。
少なくとも今はそうなんでしょう?
私のもその綺麗な『穴』で受け止めてほしいな』
男性の菊穴とは思えない、汚れなど見当たらない清らかな部分だった。
女の子に憧れると言う事は、『挿入される自分』を想像すると言う事。
常に清潔さを保つのは勿論として、永久は肉棒ほどでは無いが長い棒を入れる事に快感を感じていた。
長い棒の出し入れと手淫で欲望を吐き出すと言う痴態も多々経験している。
尻に『女の本物』を押し当てられ、彼は頬を赤く染め口から涎を垂らした。
「良いよ……
雫さんのそれ、私の穴で受け止めてあげる」
『そうこなくっちゃ。
話が早くて助かる~!』
雫は棚の上に置いてあったローションを自身の肉棒に塗り付け、永久の菊に先端を添える。
『麗さんのお尻の『初めて』、私がもらってあげるねぇ』
全てが薄桃色をしている肉の槍が、亀頭に該当する箇所からずぶずぶと潜り込んでいく。
竿を含めた全てが根元まで菊穴を貫いた瞬間、永久は思わず奇声を発した。
「おごぉッ」
先端がぐりぐりと奥を刺激し、その快感が別の器官にも伝わる。
(黒沢さんのが、私の中で太くなってる!?)
美代子は自身の中に入っていた永久の砲身が一気に硬くなり膨張するのを感じた。
実は男性も尻の中に棒状の物を入れられて快感を得る事がある。
穴の奥に位置している『前立腺』を大いに刺激されるからだ。
前立腺はペニスとほぼ直結しており、菊穴で得た快楽は即座にペニスへと還元されるのだった。
「おひりッ、おひり気持ち良いのぉ。
もっと奥突いてぇ、ぐりぐりしてぇ」
『望むならいくらでもやってあげますよぉ。
こっちに挿れるのは初めてだけど、オマンコとはまた違った良さがあるね~。
私のオチンチンを麗さんので出させてもらおうっと』
美代子は無性に振り向きたくなる気持ちを懸命に抑えていた。
(今、黒沢さんがどんな表情をしているのか見てみたい。
でも見てしまったら幻滅してしまうかもしれないと言う思いもある。
ああ、きっととんでもない顔してるんだろうなぁ……)
生まれたままの姿の女性を背後からドレス姿の男性が突く。
その後ろにこれまた生まれたままの姿の女性が股間についているモノを使って男性を突いているのだ。
第三者がこの場所にいたら、滑稽な絵面だと思っただろう。
監視員がこの痴態を全て見ていると思うと余計に恥ずかしい。
職務上この部屋の画面だけをじろじろ見つめている者はいないだろうがそれでも羞恥心で顔が真っ赤になった。
「いひッ、おひりもオチンチンも凄いのぉッ。
おひりずこずこされて、オチンチン漲っちゃうッ。
突かれて、気持ち良くなって出しちゃうよぉ」
『今だけは思いっきりケダモノになって思う存分喘ぎましょうよ。
誰に迷惑かけてるワケでも無いんですし』
美代子の中で暴れる肉棒が射精の前兆なのかビクビクと痙攣しているのが解る。
そうだ、雫の言う通りだと美代子は思った。
自分達はこの部屋の中で快楽を貪っているだけではないか。
この秘密が守られる限り、誰も自分達を非難したりはしない。
ならば我を忘れて思い切り楽しむべきなのだ。
太い肉棒で膣を激しく突かれながら、美代子は下品な喘ぎ声を発していた。
それは最早人間の言葉では無く、獣の吠え声に近い。
雫も永久も同じ様なものだった。
声にならないよがり声を出し、本能のままひたすら腰を振り続ける。
今だけは性欲を一切我慢しない。
それが3人の共通認識だった。
「ふッ、ふうううッ、おうう、おおッ」
「い、イグッ、イグよほッ」
「あひひッ、えううあ」
肉を叩く様な音とぐちゅぐちゅと鳴る水音が混ざり合う。
その音が重なり合い、静かな部屋を騒がしくする程音量が増していた。
(膨らんでる。
黒沢さんのオチンチンがビクビクしてる。
もうすぐ膣内に出される……)
絶頂に達した時の声を聞かれまいと、美代子は咄嗟に目の前にあった枕で顔を覆う。
その直後、水鉄砲かと思う程の激しい精液が彼女の膣内に溢れた。
そして永久の菊穴も同様に透明な粘液で満たされていく。
「やああ、出されてる。
私のお尻の穴に、雫さんのがいっぱい出てるのぉ」
「ふおひ、いっはいでふ……」
荒い息を吐き出しながら、雫は抜けた肉棒をベッドのシーツに付着させ後ろから永久にしがみついた。
よほど興奮しているのか、永久の硬い肉の槍はなかなか美代子の体内から出ようとしない。
(ああ、オチンチンが私の中で何度も何度も痙攣してる。
ビクビクって膨らんで縮んで、精液を全部出し尽くそうとしてる……)
もうこれ以上醜態は晒せないと、美代子は顔を隠したままなるべく声が出ない様振る舞う。
やがて永久の肉棒も満足したのかようやく萎み、ぬるんと美代子の膣から抜けた。
3人はそのまま倒れ込み、ダブルベッドの上で川の字を作る。
「ハァ、ハァ……
あうぅ、お尻の穴がヒリヒリする。
今までそんなに大きなの入れた事無かったから」
『あは、私の大きかった?
そうだよね、麗さんのより一回り太いもんねぇ』
雫の肉棒はまだ萎えずに股間で己の存在を主張している。
肉棒が自身で放出した粘液塗れになっており、時折ヒクヒクと脈を打っていた。
「でも、でも凄く気持ち良かったのぉ。
普段お尻の穴に色々突っ込んでオナニーしてたけど、本物は全然違う。
熱を纏った硬いのが入ってくるとゾクゾクしちゃうわ」
永久はかなり濃度の高い変態の様だった。
男で日常的にアナル自慰に励んでいたと言う事実を知り美代子はショックを隠せない。
(黒沢さん、とんでもなさ過ぎるわ……
もっととんでもないのはこの秘密を私達の前でおくびにも出さなかった事。
私が黒沢さんの立場だったらきっと何処かでボロが出てる。
それを隠し通したと言うのは褒めるかどうかは別として凄いとしか言えない)
秘密を隠し続けると言うのは並大抵の苦労では無いだろう。
それが己の『本性』であるならば尚更だ。
もし自分の『血』をずっと隠して生きろと言われたら完遂出来るだろうか。
何処かで自慢したくなったり、ボロが出たりして破綻するのが関の山。
そう思うからこそ、雫と永久にはただただ感心させられるのだった。
『良かったぁ。
麗さんがアナルOKな人で……
話が早かったよ。
私と麗さんが文字通り『繋がれる』間柄になれた。
距離が縮まって仲良くなれたのが本当に嬉しい』
純度の高い変態同士の共演。
その宴を見る事無く終わった美代子であったが、いずれは目の当たりにするのだろうなと思った。
尻の穴を掘られて悶絶し、トコロテン射精する永久の姿……
想像する事全てに現実感が無く、今ですらこれが夢ではないかと考えてしまう。
だが彼女は永久に手を握られ我に返った。
「こんなどうしようも無い変態の私だけど、貴方にあげられるものは全部あげる。
私が今まで培ってきたZEROのテクニック。
バイオリンやピアノの弾き方も教えてあげられる。
表の名声も富も地位も美代ちゃんが私の代わりに得るべきだわ。
お願い、私と結婚してください」
美代子は突然告白され、自然と熱い涙が目から流れ落ちる。
(ああ、私が先に言いたかったのに)
漠然と、告白するなら奥手そうな永久では無く自分が切り出すのだろうなと思っていた。
だが今の『彼女』は非常に積極的で愛を示す事を躊躇わない。
告白されてしまった事自体は残念だったが、拒否する理由は何処にも無かった。
「……私からもお願いします。
貴方と一緒にいたい。
喜びも悲しみも全て分かち合って、同じお墓に入るまで。
大好きなんです、黒沢さんの事が。
その愛を、結婚を私は喜んで受け入れます」
美代子は自分が今、ホッとしている事を感じていた。
きっと相手も同じ様な気持ちでいる事だろう。
負い目を抱えた者同士が拒絶される事を怖がりながら、ようやく結ばれた。
長い様で短い『恋愛期間』だったが、これで終わりでは無い。
きっとこれからも色々な場所で愛を育んでいくのだろうと思った。
『2人なら、苦しい事があっても乗り切れる。
3人ならもっと。
美代ちゃん、私の事を忘れないでよ~?
私だって貴方に色々なものを与えてあげられるんだから』
雫は身を起こして美代子に手を差し出し、美代子もそれに応じて握手する。
「雫さんともずっと仲良くしていきたいです。
だって、私と黒沢さんの仲を深めてくれたのは雫さんなんですから」
彼女が2人を結んでくれた恋のキューピッド。
その事に何の疑いも無い。
きっと色々な歯車が嚙み合った事でこの幸せな結末に辿り着いたのだろうと美代子は考えていた。
(私が血の事で悩んでいなかったら黒沢さんは私に本当の姿を曝け出せなかったかもしれない。
雫さんも同じ。
私に負い目があったり悩み抱え込んでいる事があったから秘密を共有出来た。
そういう意味では、私が『真国人の末裔』なのは良い事だったのかも……)
美代子はそう思っていたが、永久と雫の2人が持つ秘密と違い彼女は最初から世間に悩みが知られている。
悩んでいたと言うのは1つの好材料だったかもしれないが、それだけでは無かっただろう。
彼女の優しさが、誰にでも平等に愛を与えようとする誠実さが彼等の心を掴んだのだ。
そして愛を与えていた彼女自身も幸せになる事が出来た。
3人にとってこれ以上は無いと言う程の理想的な決着だっただろう。
『ねぇ、私美代ちゃんの中に入れたい!
もう1回だけ私に付き合ってよ。
お願い』
雫が手を合わせ、わざと怒張している股間を見せ付ける。
先程少し萎え気味だった肉棒が、興奮した姿を取り戻していた。
「……仕方ないですね。
良いですか?黒沢さん」
「承諾を求めなくてもいいよ。
美代ちゃんをがんじがらめに束縛しようなんて思ってないし。
私はシャワーを浴びるから御自由にどうぞ」
そう言って永久は立ち上がり、一旦寝室から出た。
それには『黒沢永久に戻る準備』も含まれていたのだろう。
雫は美代子に覆い被さりキスを求め、美代子もそれに応じる。
彼女達の『痴態』はもう少しの間だけ続きそうだった。
「随分とお盛んですなぁ。
最近の若い奴等は」
「しかし惨めなもんだよ。
全盛期ほどの勢いは無いとは言えあの黒沢グループの御曹司が女装好きの変態とはな。
彼自身にまるきり経営能力は無いようだし、凋落ぶりが酷いとしか言えん」
国民監視センター。
家の中・外に関わらず大量に取り付けられた監視カメラにより国民を監視する場所。
ココで得たプライベートな情報を監視員が世間に暴露する事は固く禁じられている。
監視員も『外送り』にされるのは嫌なので、今までその規則が破られた事は一度も無かった。
「黒沢永久の個別監視、誠に御苦労」
部屋に入ってきた人物が市長であると解った瞬間、監視員達は一斉に深々と頭を下げる。
「……しかし良かったよ。
黒沢永久がこういった思想や性格を持った人物で。
女装好きの変態など私にしてみれば大した問題じゃない」
織田市長の発言が監視員には理解出来なかった。
「そうでしょうか?
性癖がおかしいと言う事はまともな人物では無いと言う事。
実際頭は良いですが経営にまるきり興味が無くこんな『遊び』に興じてばかり。
国民からしてみれば優秀な御曹司であってほしかったのではないかと思うのですが」
「国民は『安全』を強く求めている。
この施設が誰かの狂った思想によってテロ被害に遭えばたちまち5万人の生き残りが全滅してしまうんだ。
大切なのは上に立つ可能性のある人物が危険な思想を持っていないかどうか。
だから私はこの施設内にいる大規模な企業の関係者には特に目を光らせている。
もし彼がそういった他者を傷付けようとする思想を持っていたら、早々に『処理』していた事だろう」
監視員達はその発言に驚き、部屋の中は静まり返った。
当然それは当該人物を殺す事に躊躇いが無いと言う事である。
「国が栄え平和である事は当然望ましいが、その環境の中で必ず『悪』が現れる。
この国の国土・金・国民を全て自分の思うままにする事が出来たらどんなに素晴らしいかと。
過去そういった者達は実際に現れた。
綾小路財閥・真国人・明智醍醐。
黒沢美香も彼等ほどでは無いがお世辞にも為政者の器とは言えない女性だった。
何の対策も打たなければ再びそういった悪が現れ、この国は崩壊してしまうだろう」
市長はそういった悪によって発生する被害に心を痛めていた。
彼等の悪しき計画が完全には掴めなかった為に井島豊が死んだ。
黒沢美香によって2人の男女が性的虐待を受け、心を病んでしまった。
事前に解っていれば防げた被害が山ほどある。
勿論国民のプライバシーを害してしまうのは間違いないが、彼は国民総監視に全てを託したのだ。
「私は歴代総理大臣と同じ様に『覚悟』を持って国民の平和を守る。
邪悪な芽が顔を出したらそれを即座に摘み取る覚悟だ。
毒の花が1つでも咲けばその花のばらまく毒によって全ての美しい花が枯れてしまうだろう。
そしてそれはこの天武日本国の生き残りである人々の絶滅にも繋がってしまう。
だから私は美しい木々の為の剪定を続ける。
黒沢永久と鏑木美代子の間に子供が産まれ、その子供が万が一邪悪になったとしたら……
いや、地位も肩書も関係無い。
あらゆる者達に目を光らせ、処分する事を躊躇わない様にしたまえ」
監視員達は市長の言葉に愕然とし、心の中でこんな事を考えた。
もし芽を摘み取る側、剪定する側が『邪悪』になったら誰がそれを止める事が出来るのだろうか?
ノア内における市長の発言力・権限は絶大である。
今の管理・運営は全て市長の性善説に則った『良い独裁』でしか無い。
これがもし『悪い独裁』に変貌したら一体どうなるというのか。
監視員の不安を感じ取ったのか、市長は一度わざとらしく咳をした後言葉を続けた。
「心配しなくても良い。
私の息子は私だけで無く君達皆がしっかりと教育してやってくれたまえ。
こんな小さな世界を悪しき心で支配する事に何の意味も無いと。
国民が生き延びる為には『正しさ』が何よりも大切なのだとね」
この施設の幸福が永遠に続く為には、善性を信じるしかない。
唯一良いと思える点は市長が権力に対して金持ちでは無いと言う事だった。
市長の年収は500万。
妻の年収と合わせても800万にしかならない。
息子への英才教育には力を入れているが、それ以外は実に質素な生活をしている。
市長の『金を必要以上に求める者は腐る』と言う自説によって定められた法律だった。
そして市長の自宅や職場である職務室や議場にも監視カメラが設置されている。
監視員は権力者特権など無く誰でも平等に監視し、いかなる犯罪が発生しても未然に防ぐ事が出来るのだ。
これは『ノアの基本原則』として市長が定め、絶対に改憲してはならないと規定している。
市長は彼自身を含めた『5万総監視社会』こそが『国家の最善』であると信じて疑わなかった。
「君達に命じる任務はただ1つ。
国民の生活を脅かす『悪』が出現した時その悪を即座に滅ぼせる様にする為監視を続ける事だ。
誰がどんな秘密を抱えているとか、性癖を持っている等関係無い。
そんな下世話な情報を知る事に何の意味も無いのだ。
肝心なのは監視対象が『悪であるか否か』の一点だけ。
今一度気を引き締めて仕事を続ける様に」
「はい、了解致しました」
だらけていた監視員達が真剣な眼差しで監視を再開する。
その光景を市長は複雑な気持ちのまま見つめていた。
(私が発破をかけなければ真面目に仕事をしないと言うのは滅びの兆しだ。
これからは今まで以上にこの場に出向かなければならないな……)
腐るのは簡単なのだ。
市長が腐るのも監視員が腐るのも簡単。
大切なのは『相互監視』によってその腐敗を防ぐ事。
ノア内の秩序はそのやり方でしか保てない。
市長は先祖から託された『方舟の人々』を守り続ける事を改めて心に誓った。
鏑木美代子と月山雫は全裸の状態でベッドに寝転がっていた。
雫の性欲はようやく尽きたのか肉棒は萎えてクリトリス大の大きさに戻っている。
美代子の膣からは透明な粘液と白濁液が混ざったものが零れ出ていた。
「ちょっと前まで随分激しく『してた』みたいだね。
喘ぎ声がシャワー室にまで届いていたよ」
黒沢永久は女装を止め、何時もの全裸にトランクスと言う姿に着替えている。
先程まで菊穴に肉棒を差し込まれ猿の様に喘いでいたのが嘘の様だった。
「駄目だよ~、元に戻ったからって私達をそんな風に言うのは。
黒沢さんだってさっき私に攻められてた時凄い大きな声を出してたでしょ」
雫が頬を膨らませながらそう言うと、永久は照れながら頭を掻く。
「それを言われると困ってしまうなぁ。
僕は時折どちらが本当の自分なのか解らなくなるよ。
もしかしたらどちらも僕なのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
その辺りは僕自身じゃ無く他の人に判断してもらうべきなのかもね」
そう言って微笑む永久の顔は、しっかりと『雄の顔』に戻っていた。
クローゼットの中にあの黒いドレスが無ければ、夢だったのかと錯覚しそうになる。
女の顔・声で美代子に愛を囁いていた永久の姿はもう何処にも無かった。
「でも、1つだけハッキリしている事がある。
僕が鏑木美代子と言う女性に恋をし、結婚したいと思っている事だ」
彼自身にも、何が正しくて間違っているのかは解らない。
ただ彼女に注ぐ愛だけは絶対に揺らがないし嘘では無い。
美代子は彼の本気を感じ、そして今こそ自分の方から言うべき時だと思った。
「私からも言わせてください。
貴方に初めて会った時から魅了されていました。
ZEROを教えてもらっている時も、デートをしている時もずっと黒沢さんに夢中で……
私も貴方を愛しているし、ずっと一緒にいたいと思っているんです。
結婚したいって、私の口からも言いたかった」
相思相愛だった。
2人にとって幸運だったのは、その恋路を阻む者がいなかった事。
そして2人が結婚しても不幸になる心配が無かった事である。
相思相愛であっても問題が立ち塞がり結婚出来なかった男女が天武日本国には沢山いた。
結婚して子供を産む事自体が道徳上の罪になる者さえ……
美代子と永久は気付いていなかったが、その当たり前がどれだけ尊い事か。
犯罪が未然に防がれる監視社会で無ければ、その幸せすらも無かったかもしれない。
核が落ちた後の終末世界を支えているのはガチガチに固められたシステムだけだ。
誰もが絶望して犯罪に手を染めてしまいそうな恐ろしい世界。
ノアは何とか絶望から逃れユートピアを作る為に努力を続けていた。
「愛しているよ」
「私もです」
ベッドから上体を起こして手を左右に広げる美代子。
そして永久は迎え入れられそのまま美代子を強く抱き締める。
雫は2人が抱き合う姿を目にしながら、心の中で彼女達を祝福していた。
(美代ちゃん、幸せになってね。
私も美代ちゃんと黒沢さんについていくよ。
出来れば私が最後までいてあげたい)
雫はこの先、もっとずっと先の未来に思いを馳せていた。
子供が産まれて、その子供を育てる手伝いをして、2人を看取って……
ずっと2人の助けとなって、2人にとって替えのきかない存在になりたかった。
いや、絶対にならなければならない。
昼に働いている時も、夜の営みに励んでいる時も。
2人をくっつけたのは自分であり、後押ししたのも自分。
その責任を果たさなければならないと雫は思っていた。
「きっと子供が産まれたら、美代ちゃんみたいな利発な子に育つだろうね」
「黒沢さんみたいな、優しくて素直な人になると思いますよ」
そして2人も『輝かしい未来』に目を向けていた。
愛を育み、子孫を残して未来へと繋いでいく。
それが残された者としての責務だと感じていたからだ。
2人は身体を寄せ合い、長い間キスをする。
それは獣じみた性欲では無く、自分の愛を相手に示す為の行為だったのだろう。
鏑木美代子と黒沢永久はこの日、身体も心も繋がり1つになって結ばれた。
2人は政府にも睨まれておらず結婚を邪魔される事は無い。
美代子が花嫁となり2人が夫婦となる日もそう遠くは無かった。