※この作品はR-18です。

ZERO ~格闘ゲームに翻弄される者達~   作:夜月光介

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最後にどうしても『ゼロ』と言うタイトルに拘りたかったと
言うのが本音です。そしてZEROと言うキャラクターも
登場させておきたかった。
本当の最終章に相応しい物語になったと思います。


ZEROFINAL3 『箱舟の子供達』8

【西暦2102年 ?月?日 午前11時 ノア内 プラチナプライダルホテル結婚式場】

 

 鏑木美代子と黒沢永久の結婚式は、美代子の18歳の誕生日に合わせて行われる事となった。

 この結婚式の間にも色々な事があった。

 ZERO世界大会において鏑木美代子がベスト8入り、月山雫3位、黒沢永久優勝。

 ノア内で行われた『ミニ全国大会』において鏑木美代子が初優勝。

 ZEROのゲーム熱は3人を中心として動いており、多くのゲーマーが彼等を称賛していた。

 

 実質ZEROの業界トップとナンバー2の結婚と言う事もあり、式場には多くのゲーマーが駆け付ける。

 流石に全員は会場に入れなかった為、代表グループ何名かが会場の中に入っていた。

 その他にも黒沢グループ幹部、他の企業幹部、市長の部下達を含めた政治関係者等ゲストも豪華。

 まさに『ノア』の中で生き残っている者達全員が結婚を祝福する為に集まった様なものだった。

 勿論そこに何の思惑も無かったとは言い切れない。

 

 ZEROのプレイヤーである前に彼は『黒沢グループの御曹司』だ。

 直接経営者として矢面に立っているワケでは無いが彼の息子がグループの総帥に抜擢される可能性もゼロでは無い。

 自分達の待遇が少しでも良くなる様に媚びを売っておかなければ。

 腹の中でそんな事を考えながら参加した者達も決して少なくなかった。

 5万総監視社会であっても『人の心の中』までは覗けない。

 

 それこそが監視社会の限界であり、『ノア』を運営する側が警戒している事案でもあった。

 (美代ちゃん、今の貴方は凄く輝いてるよ)

 会場入りした招待客は約100名。

 芸能人でも無い『一般人』の結婚式にこれだけの人数が集まるのは異例の事だ。

 黒沢永久が優れたゲーマーであり、彼と美代子の間に生まれるであろう子供に期待が集まっている証でもあった。

 

「これより、誓いの儀式を始めます」

 トランクス姿の神父が2人の前に立ち、お馴染みの台詞を口にする。

 美代子は純白のケープに白のニプレスとランジェリーパンツ。

 永久は白いネクタイを首に巻き下は黒いトランクスだけと言う服装。

 大人数が集まる場所では手荷物・身体検査も入念に行われていた。

 

「永久さん、貴方はこの女性を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も、愛し合い敬い慰め助け、変わる事無く愛する事を誓いますか」

「誓います」

 花嫁と花婿が永遠の愛を誓う時。

 2人の心はとても穏やかな晴天の様に晴れ渡っていた。

 

「美代子さん、貴方はこの男性を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も、愛し合い敬い慰め助け、変わる事無く愛する事を誓いますか」

「誓います」

 美代子にとってどれだけ待ち焦がれた瞬間だった事か。

 この日から2人は正式に夫婦として認められ、大手を振って交際出来る様になるのだ。

 彼女の満面の笑顔は喜びを隠し切れない証拠でもあった。

 

「貴方がたは自分自身をお互いに捧げますか」

「捧げます」

 この誓いの前から既に捧げていた。

 自分の差し出せるものを全て。

 美代子は初めてを捧げ無償の愛を注ぎ、永久は美代子に自分の持っている知識全てを渡した。

 

 美代子は全て自分の技術に出来る天才だったのかもしれない。

 この2年間で彼女の格闘ゲーマーとしてのスキルは飛躍的に向上した。

 永久ですら驚いたのはピアノとバイオリンの腕。

 達人級とまではいかなかったがどちらも『上手い』と人から言われる程に上達する。

 特にバイオリンがどちらかと言えば不得手であった永久は既に追い抜かれてしまっていた。

 

「それでは、指輪の交換です。

 指輪は永遠の円環、つまり終わりなき愛を表現しており貴金属である事から『価値あるもの』としての側面も持っています。

 永久さん、貴方はこの指輪を愛の証として彼女に渡しますか?」

「はい」

 

 この殆ど終わってしまった世界で、愛だけが価値があり確かなもの。

 永久も美代子もそう思っていた。

 愛など不確かで脆いもの。

 人によってはそう言う者もいる。

 だが2人にとってこの愛は永遠であり、どちらかが死ぬまで続くだろうと信じていた。

 

 先が全く見えない暗闇の世の中だからこそ、最後は善性に縋りたい。

 その善こそが愛であり、慈しみであり、友情や絆だった。

 雫との友情は変わらず続いており、この結婚式は『3人』のものだったと言える。

 世間的には2人が結ばれた様に見えるが、本当は雫も合わせて愛を貫いていく。

 言葉には出せなかったが、美代子は雫に対してウインクをしそれを示してみせた。

 

 (そんなもんだよ、人生なんて。

 適当にセックスして、一生懸命自分の進みたい道で努力して……

 性行為に足跡なんて要らない。

 大切なのは自分が世の中に対して何を残せるか。

 そういう意味ではもう充分美代ちゃんも黒沢さんも功績を残してると言えるけどね)

 

 まだ美代子は永久を『名前』で呼ぶのが恥ずかしかった。

 同じ苗字になるのだから黒沢さんなんて呼んではいられない。

 だがどうしても少し距離を置いた所から相手を見ていたくなる。

 愛は間違いなく本物であったが、美代子はその癖を治せなかった。

 人は死ぬまで『自分』と言うものを完全に変える事は出来ない。

 

 それは女装癖を止めるつもりが無い永久においても同様だった。

「これから写真撮影を行います。

 新郎側、新婦側の関係者はこちらにお集まりください」

 

 100人全員を写真に収めると主役の2人がぼやけてしまう。

 かと言ってただでさえ厳選して選び抜いた100人から篩にかけるのは手間がかかり過ぎる。

 その為、25×4+2の27名を4回繰り返して撮影すると言う妥協案が採用された。

 ゲーマーはゲーマー同士で、企業関係者は企業関係者同士で集まりグループを構成する。

 どの集団の中でも永久と美代子が笑顔を崩す事は無かった。

 

「笑って笑って、皆さん良い笑顔でお願いしますよ。

 2枚撮りますからね。

 今から撮るのが1枚目です。

 はい、チーズ!」

 

 どの客と一緒に写っているかなどどうでも良かった。

 強いて言えばゲーマー達で撮影した時隣に雫がいたのを少しだけ気にした事位である。

 永久と美代子は既に2人の世界の中にいた。

 これからのささやかで、とても幸せな生活を想像していた。

 ただ隣に愛する人がいてくれるだけで充分。

 

 欲を言えば、その愛する人との間に子供が産まれてくれれば……

 それが2人の偽りの無い本音であった。

「黒沢(くろさわ)美代子(みよこ)、ブーケトスします!

 私の様に幸せを掴む人が現れます様に!」

 

 後ろ向きにブーケを投げ、それを取った女性が次の花嫁になると言われているイベント。

 ゲーマー集団の中に女性が何名かおり、彼女達がブーケ争奪戦に参加する事となった。

「はい、どうぞ!」

 飛んでいくブーケ、地面に落ちる前にキャッチしようと駆け寄る女性達。

 ゲーマー故に『勝ち負け』がある事をするとつい熱くなってしまうのだった。

 

『随分本気になってるね~。

 皆そんなに結婚したいもんなのかな。

 私には解らないや』

 永久の隣に雫が立ち、遠くから彼女達を傍観している。

 参加しないのかと言う永久の問いに対して、彼女はわざとらしく手を広げながら首を横に振った。

 

『結婚なんて無理なの、解ってるでしょ?

 男の人に受け入れられて結ばれるなんて不可能だよ。

 貴方達がいなかったらずっと独りで泣いてる所だった。

 他の『そういう女の子達』と違って私は幸せ者だと思う』

 

 両性具有者としての悲哀がそこにあった。

 自分達が他の大多数の『普通の人間』とは違う事を死ぬまで隠し通さなければならない。

 信頼出来る相手が奇跡的に見つかりでもしない限り。

 それでいて人並み以上の強烈な性欲を抱え発散したいと願っている。

 不器用で、何と惨めな生き物だろうと雫は自らの立場を心の中で皮肉った。

 

『知ってる?

 私みたいな子の中にはストレスを抱え過ぎて心を病んでしまう人もいてね。

 最悪の場合鬱病になって自殺してしまう人もいる。

 結婚出来なくても私は恵まれてるんだって事を自覚しなきゃいけない。

 私の『溜まったもの』を受け入れてくれる相手がいるんだし』

 

 性欲を受け入れてくれる相手が目の前にいる。

 黒沢永久に、そして美代子に感謝していると雫は告白した。

 騒がしい部屋の中で彼女の声は向こうにいる美代子達には届いていない。

 永久は溜息をつきながら雫の耳元で囁いた。

「また、入れたいって思ってるんでしょ?」

 

 一瞬だけ見せた永久の『雌の顔』。

 耳に届いた『女性の声』を聞き取り、雫は舌を出して笑う。

『勿論。

 これからも宜しくね』

 

 歪な関係だと人は思うだろう。

 世間的には褒められたものでは無い。

 それでも雫にとっては幸せだったし、永久も本音は同じだった。

 快楽に溺れ獣の様に交わる事が『一時の気晴らし』になるのならそれで良いではないか。

 人生のメインロードを忘れていない彼等だからこそ許される戯れだった。

 

 

「結婚式は今の所何の問題も無く行われている様だね」

「はい。

 ノア内に潜伏していると言われる『破滅派』の介入がある可能性が高いと思われましたが、杞憂に終わるかと……

 ですが気を緩める事無く引き続き警備を続ける予定です」

「そうしてくれると助かるよ」

 

 監視センターの一室において市長と市長秘書が会話を行っていた。

 ノアの中には『破滅派』と呼ばれる過激な組織が暗躍していると言う噂がある。

 2年前に捕まり外送りになった引ったくり犯もその一味である疑いが持たれていた。

 

「彼等は我々が監視を行っている事を承知している。

 ゆえに重火器はおろか刃物も迂闊には持ち歩けない。

 連絡も手の込んだ暗号で行っていると言う。

 あの引ったくり犯も『合図役』の可能性があった為あの後暫くは警戒を解く事が出来なかった」

 

 簡単に言えば破滅派とは『全員一緒に死のう』と言う思想を強制しようとするカルト組織である。

 核の炎による急激な人類の減少はそういった組織の終末思想をさらに強くさせる結果となった。

 彼等の目的は支配ですら無い。

 ただ人類が滅亡する事を望み、自爆テロを行おうとする者達である。

 彼等の野望を阻止する為、体制側は『国民総監視』を徹底せざるを得ないと言う事情があった。

 

「今回の結婚式も政治・経済の中枢を担う者達が多数客として招かれていましたので、厳重な警備体制が必要でした。

 警備員に銃の携帯を義務付けさせ、客の手荷物検査も実施。

 警備員に組織の人間が紛れ込んでいるといけないので何度も事前調査を。

 勿論100%の安全など確保出来ませんが、やるべき事はしっかり行いそれに近付けようと努力しています」

 秘書である女性はそう言いながらモニターの画面を見つめていた。

 

「地下に武器庫を作り、監視していても防げない状況を作り上げる。

 世間ではそんな噂も流れている。

 それが真実であるかどうかはこの際どうでもいい。

 我々にとって大事なのは国民の安全を守りこのノアを永遠に繁栄させていく事だ。

 もし5万人の中にそういった『異物』が誕生したのなら、即刻排除しなければならない」

 

 国民からは『やり過ぎだ』と言う声も聞こえてくる。

 だが市長はこれ位やらなければ駄目だと言う気持ちを強く持っていた。

「かつてノアの運営が始まる前、天武日本と言う国があった頃国家内の暗部は惨憺たるものだった。

 黒沢グループと天武日本最大の暴力団『血生会』が裏で手を結び、そういった者達の影響は政府にも及ぶ。

 政府も国家を裏から操る程の力を持つ二大グループに強く出る事が出来なかった」

 

 黒沢グループは性的虐待を受けていた男女2名の保護程度で済んだが、血生会はそのレベルでは済まなかった。

 邪魔な対立組織の排除、地下に作られた巨大な裏風俗ビジネス。

 舐めた態度を取ったと言うだけの理由で監禁され、全裸で性的奉仕を強制される多くの女性達……

 全国規模の広がりでは無かったが違法薬物の売買も平然と行われており、犠牲者は数えきれない程だった。

 そういった悪行の数々が過去の資料によって明らかとなり、戦慄した事を市長は決して忘れてはいない。

 

「平和の為と言う名目で総理大臣を含めた政権担当者は皆目を瞑って見ないふりをしてきた。

 戦って根絶を目指そうとすればどれだけの死者が出るか見当も付かない。

 だから多少の犯罪を見逃して、政権維持の為に協力してもらうのだと。

 愚かな、実に愚かな国家運営だった。

 多少とは言えない犠牲を出しながら『平和』を謳うなどあってはならない事」

 

 そんな時に降ってきた『光の矢』は、被害の大きさを無視すれば国のあり方を変える唯一の方法だったのかもしれない。

 黒沢グループのさらなる弱体化・抑え込みに成功し、血生会を完全に葬り去る事に成功した。

 今ノア内部にある『天女の湯』においても血生会の関与は一切無い。

 世界は大きくリセットされ、少し歯車が狂っただけで滅亡する様な危うい状態が続いている。

 だからこそもう二度と同じ過ちは繰り返さないと市長は決意を固くしていた。

 

「汚い闇の組織と手を組んで裏表で国を支えていく無様なやり方は終わりにしよう。

 これからノアに求められるのは何処までもクリーンで美しい国家運営。

 血生会を認めた事で出た多くの被害をゼロにする。

 何も知らずに楽しく生きている『善なる国民』の命を二度と軽んじてはならない。

 これからは『悪なる国民』を炙り出し、どんどん外に送っていくべきだ」

 

 織田市長の覚悟はある意味『危うい正義』である。

 祖先である総理大臣・織田信虎は『清濁併せ呑む正義』で国家を運営してきた。

 全ての悪を滅ぼす事など出来ないのだから『許容出来ない犠牲を出そうとする悪は滅ぼす』と言う考え方だ。

 地下に潜って見えない様に立ち回る血生会の悪行を把握出来なかったと言う理由もある。

 市長は全てを可視化して把握すれば、あらゆる犯罪を根絶出来ると思っていた。

 

「……それも全ては、世界が小さくなり『5万人の世界』となったからこそ出来る事です。

 5万人の総監視は出来ても天武日本国1億人の総監視など到底無理な話でした。

 地下に潜ろうにも床は放射能を通さぬ様特殊な鋼鉄で覆っています。

 全ての建物に監視カメラをつける事が出来たのもこの場所が最初から監視を想定して作られたからこそ。

 あとは市長自ら陣頭指揮を執り『間違い』が起きない様対処し続けるだけですね」

 

 秘書は『破滅派』の存在自体に疑問を抱いていたが、市長はその噂を最大限に利用するつもりだった。

「犠牲を出さない悪に染まるのは私1人で充分だ。

 破滅派と言う組織が存在するしないの議論も私としてはどっちだって構わない。

 大切なのは『総監視社会』が正しいと言う理念を国民の意識に植え付ける事。

 危機を煽る事で犯罪を未然に防げると言うのなら私はどんな手段だって使うよ」

 

 何処にでも監視カメラがある世の中。

 外ではまともな服を着れず殆ど裸に近い恰好でいなければならない世の中。

 どんな痴態も秘密も監視され筒抜けで、羞恥を感じなければならない世の中。

 ノア内に住んでいる人々が『おかしい』と思った瞬間平穏はあっと言う間に壊れてしまう。

 だからこそ存在自体が怪しい危険を叫んででもこの体制を維持しなければならなかった。

 

「歴代の総理大臣が自分は地獄に堕ちるだろうと語っていた様に、私もまた同じ運命を辿るだろう。

 だが私は後悔しないし、後戻りするつもりも無い。

 何故なら私には、5万人の『幸せな生活を送りたい国民』が見えているからだ。

 もう誰にも不幸な人生を歩ませたりしない。

 薬のせいで性奴隷になり人生が狂ってしまった少女。

 恵まれた人生を約束されながら強姦され破滅的な人生を歩む事になった少女。

 そんな悲劇を誰が望むのか。

 私は壊れつつある世界の崩壊を食い止める為死ぬまで戦い続ける道を選ぶ」

 

 秘書は微笑んでその言葉に同調し、肯定の意味で頷く。

 ボタンの掛け違いが即座に人類滅亡に繋がるであろう混乱した世界で為政者が出来る事。

 市長は自分に出来る事は何でもやり、現状維持を心に誓う。

 笑顔で人々に手を振る黒沢美代子の晴れ姿を見ながら、彼はその気持ちを一層強くしていた。

 

 

 結婚式から数日後、美代子と永久の幸せな日々は特に変わりなく続いていた。

 美代子が永久の住んでいる部屋に引っ越し、雫がそこに遊びに来る。

 黒沢グループの運営に全く関与していない永久にとってやるべき事はそこまで多くなかった。

 ピアノに関する音楽イベントへの出演。

 ZEROの大会に出場する事以外にするべき事はただ1つだった。

 

「子供が出来たら、どんな名前が良いと思う?

 男の子だったとしても女の子だったとしてもどっちでも通じる名前が良いな。

 湊(みなと)とかどう?

 奏でるって漢字を使ってるから演奏家としても良い名前になるし」

「うん、私も良いと思います」

 

 秘密の閉ざされた寝室。

 そこに置かれた大きなベッドの上で美代子と永久は1つになっていた。

 永久が上から覆い被さり、彼女の中に肉棒を挿している。

 全裸になっている美代子が永久の背中に手を回し、キスをした。

 永久はピンクを基調とした花柄のビキニを身に付けている。

 

 長髪のウィッグと化粧、ビキニには詰め物をしている為上半身だけ見れば女性にしか見えない。

 下半身には何も付けておらず、熱を帯びた剛直が丸見えになっていた。

「だからぁ……

 いっぱい出して、美代ちゃんを妊娠させてあげるねぇ。

 若い内に産んだ方が身体の負担も軽くなると思うから」

 

 硬くなった永久の一部分が、容赦なく美代子の中に潜り込んでくる。

 潜り込み抜き、潜り込み抜き、深く突き刺さる事の繰り返し。

 互いに荒い息を吐き、頬も赤く染まっていた。

『いいね~、愛し合ってるって。

 近くで見てると妬いちゃうよぉ』

 

 化粧台の前に置かれた椅子に座り、頬杖をつきながら2人の性交を見つめる雫。

 薄桃色の膨張した肉棒が股間で存在を強く主張している。

「雫さんも後で私としてください。

 今はな……麗さんとするのが先ですから」

 雫もまた美代子と同じ様に生まれたままの姿を晒していた。

 

「美代ちゃんのアソコが、私のオチンチンをギュッと締め付けてくるのぉ。

 その度に硬くなって熱くなって、ゾクゾクしてきちゃう」

 正常位の状態から少し変化し、上から下に肉棒を突く永久。

 雫の視界からは彼の菊門がよく見えていた。

 そのまま彼女は永久の背後に回り、穴に肉棒の先端を添えて押し当てる。

 

『よいしょっと』

 何度も彼女を受け入れてきた穴は、今回もすんなり異物である槍の侵入を受け入れた。

「あああ―――ッ」

 永久は獣の様な喘ぎ声を発し、両性具有者の肉棒が与えてくる快感に酔いしれる。

 その瞬間、美代子の膣に貫入していた男性器が一回り膨らんだ様に感じられた。

 

 (黒沢さん、すっかりお尻の穴で感じる様になっちゃって……

 今では私としていない時でも積極的に掘られてる時がある。

 でも、それもきっと彼が彼である事の証明だろうから)

 美代子はある意味悟りの境地に達していたのかもしれない。

 彼女を愛している永久も、雫に背後を許している永久も同一人物である事を受け入れていた。

 

 人にサイコロの面と同じ様に様々な面があると言うのならば、六面全てを愛するだけ。

 美代子を優しく抱き締めて甘い言葉を囁く永久も、女装して彼女を抱いている永久も愛の対象。

 自分もそこまで大きな違いは無いのだとすら思った。

 美代子にも人に見せない一面があるのに、妙だと思える一面を否定する権利は全く無い。

 むしろ黒沢永久と言う人間が完璧では無いと理解したからこそ彼が余計に愛おしかった。

 

「あッあッ、オチンチンもお尻も良い。

 とっても気持ち良いよぉ。

 美代ちゃんの中に私の全部出してあげる。

 お願い、私の子供を産んで。

 私と一緒にその子を育てていこう」

 

 熱にうかされた様に興奮したまま喋る永久。

 美代子はその言葉を全て受け入れただ頷いた。

 それは私の望みでもある。

 私こそ言いたい、貴方の子供を妊娠したいのだと。

 生まれてくる子供を幸せにする事こそが私達2人にとっての責務なのだと。

 

『麗さんの中、あったかくて狭くって素敵。

 私のオチンチンも弾けちゃいそう。

 ラストスパートかけていい?

 良いよねッ』

 

 深く沈めては抜く行為を繰り返していた雫が、背後から激しく腰を打ち付ける。

 永久は大口を開け涎を垂らし、とても人には見せられない様な表情を美代子に晒した。

 (ああ、あの時には見れなかった顔……

 なんて欲望に忠実な表情なんだろう。

 この顔を見る事が出来るのは、監視員を除けば私と雫さんだけなんだ)

 

 殆ど白目を剥き、舌を出し、顔を真っ赤にして快楽に身を委ねている姿。

 美代子は彼を無様だとは思わなかった。

 きっと自分自身もこんな顔をする時があるだろうし、誰もがそうなのだ。

 世間的には見せていないだけで……

 その秘密を共有する事が出来る自分は幸せ者だとしか思えなかった。

 

「いひ、いひおぉ……

 れひゃふ、へぇえひれちゃふぅ」

 激しくパンパンと腰を叩き付け、永久の菊穴を貪る雫。

 掘られている永久も美代子を抱き締めたまま愚直にピストン運動を続けていた。

 部屋の中が肉同士が触れ合う音、息遣い、獣の様な嬌声で満たされる。

 

「美代ちゃん、受け止めてぇ!

 私の精液全部オマンコで受け止めてぇ!!」

「はい、全部受け止めます。

 麗さんのオチンチンも精液も全部!

 私の身体で全部の愛を、愛をぉ!!」

 

 淫語を口に出す事で興奮がさらに増し、互いの肉体が終わりに向かって一直線に突き進んでいく。

 さらに早く、激しく腰を動かしキスを求めてきた永久。

 美代子はそれに応じ、上の口と下の口で結合した。

 雫は永久が与えてくる快楽に耐えられず、暴発気味に己の欲望をぶちまける。

 

「うぐッ、あふぅぅ……」

 菊穴の奥に向けて大量に吐き出される精液。

 透明な粘液が出る度に肉棒が陸上でのたうち回る魚の様に痙攣した。

 我慢が限界に達し、永久も美代子の膣内に白濁液を注ぎ込む。

 

「ああ、出るぅ……

 私のオチンチンから全部出ちゃってるぅ」

「いっぱい、いっぱいです。

 麗さんの子種が、私の中に沢山出てます。

 凄く熱いぃぃ」

 

 猛る肉棒が、ビクンビクンと脈動しながら精液を射出していった。

 先端から竿の根元までが熱く硬くなり、最後の一滴まで注ぎ込もうと奥まで貫いた状態で身をよじらせる。

 雫もすっかり具合の良くなった穴の中に出し切り、恍惚の表情を浮かべたまま肉棒を根元まで突き入れていた。

『あ、まだ出る。

 麗さんの中に私の精液全部出しちゃうよぉ』

 

 雫の身体全体がぶるぶると震え、その都度残っていた精液がぴゅるぴゅると菊穴の奥で漏れる。

 一方永久は精魂尽き果てたのか、美代子に覆い被さったまま掠れた様な音を口から出していた。

 美代子はそんな彼の姿を愛おしく感じ、頬にキスをして優しく頭を撫でる。

 最初は美代子も性行為後に疲れ果てていたものの、少しずつ余裕が持てる様になっていた。

「お疲れ様でした」

 

「美代ちゃんの膣内、ずっと入れていたいわ。

 何回でもそう思うし、こういう事をしている時はなるべく長い間繋がっていたいと思うの」

「私もそう思います。

 好きな人と繋がっている時、この時間がずっと続けばいいのになぁと思うんです」

 

 2人は愛の証明としてセックスをしていた。

 だがセックスは愛の証明だけで行われるものでは無い。

 相手を束縛する為に行われるもの。

 相手を壊す為に行われるもの。

 相手に屈辱を与える為に行われるもの等多岐に渡る。

 

 ノアの中ではそういった『悪のセックス』は決して許されない事として扱われている。

 核戦争前と異なるのは、そういったセックスを行おうとすれば即座に拘束されると言う点だった。

 今まで涙を流してきた哀しき女性達の仇を討つかの様にそういった性行為は根絶されている。

 市長は清らかな政治こそが過去も現在も、そして未来も良い方向に変えていく為の方法だと頑なに信じていた。

 

『私は純愛の間に挟まろうとするお邪魔虫になっちゃうかもしれないけどさ。

 2人とずっといたいんだよ。

 こういう事をして馬鹿な事やって笑って、のんきに暮らしていたい。

 それが悪い事じゃないのは美代ちゃんも麗さんも解るでしょ?』

 

 雫は少なくとも美代子にとっては邪魔者では無かった。

 むしろ自分と永久を結婚へと導いてくれた影の功労者だった。

 あの時彼女が子供チケットを渡してくれなかったら。

 彼女が自分の処女膜を貫いて勇気と覚悟を与えてくれなかったら。

 それこそ永久と結ばれるのとは違う未来が訪れていたかもしれない。

 

「雫さんと私達の距離感は今のままで良いと思いますよ。

 愛し合う私達を見守り、時々介入して支えてください。

 私にとっても麗さんにとっても、雫さんが『最高の友達』である事に変わりはありません」

 美代子にとって永久はかけがえの無い大切な伴侶だったが、雫もそれに匹敵する程大事な存在だった。

 だからこそ3人で歩んでいく道を彼女自ら選んだのだ。

 

『有難う。

 そう言ってくれると嬉しいよ。

 私は私で楽しませてもらったりもしちゃうんだけどねぇ』

 雫が『天女の湯』に行ってきたと言う話は既に美代子の耳にも入っていた。

 両性具有者の女性3人に囲まれ、口にも膣にも尻穴にも大量の精液を注がれてきたらしい。

 

 美代子は特に彼女の行動を咎めるつもりは無かった。

 互いに自由に生き、繋がりたい時に繋がればそれで良いではないか。

 誰かを束縛する様な関係は絶対に何処かで破綻し長続きしない。

 美代子は夫である永久にも同じ態度で接しようと思っていた。

 ただ、自分が全く知らない赤の他人に浮気・不倫をされるのだけは……

 

 その点だけは永久の真面目さを信じるしかなかった。

「心配しないで。

 私の目には美代ちゃんしか映っていないから。

 私は結婚式で誓った時と何も変わっていない。

 貴方への愛を守り、貫く事を死ぬまで続けると約束するわ」

 

 不安そうな美代子の顔を見て何かを察したのか、永久はそう言って彼女の不安を取り除こうとする。

 奔放に生きる雫の生き方を見て、美代子を裏切る様な生き方をするのではないかと思ったのだろう。

 永久の想像は的中しており、それを当てられた美代子は驚きと感動で涙を流した。

「私も、私も同じ気持ちです。

 麗さんを愛していると言う気持ちは一生変わりません」

 

 繋がったままキスをし、愛を与え合う2人。

 雫は萎えかけた肉棒を菊穴から抜き、2人の横に寝そべった。

『私は幸せ者だね。

 貴方達みたいな綺麗な心の持ち主と一緒にいられるんだから。

 この幸せがずっと続く事を私も祈ってるよぉ』

 

 小さい、守られた世界の中でならきっと2人は誰からも危害を受けずに生きていけるだろう。

 雫も美代子と永久、そして彼女と同じ身体を持つ両性具有者と仲良くやっていけるに違いない。

 世界はようやく光と影の理から脱して光溢れる時代を迎えた様に見える。

 強く抱き合い、互いが与えてくる身体の温もりに身を預ける2人。

 この奇妙な三角関係が長きに渡って続いていく事は疑いようが無かった。

 

 

 暗闇の中に、ぼうっと光が見えた様な気がした。

 黒い立方体に写る暖かな光を見つめる黒い影。

『こういう終わり方も素敵ですね。

 次はどんな物語を私に見せてくれるのでしょうか』

 

 男とも女とも解らぬ、妙な声が暗闇に響き渡る。

 やがて立方体の中の光が消えた事を確認すると、その人物は黒い立方体を床の上に置いた。

 大量に積まれた立方体の山。

 その1つ1つが『別の結末を迎えた世界』であり、世界が無限に広がっている事の証明でもある。

 

『フフ……

 もっと私に面白い物語を見せてください。

 この私、ZEROを満足させる様な物語を』

 遠くの方で誰かが扉を開ける音が聞こえてきた。

 黒い影は立ち上がり、口元だけで薄く笑みを浮かべる。

 

『おや、また勝ち抜けた者が現れましたか』

 近付いてくる足音に心を躍らせる黒い影。

 終わりの無い戦いが再び始まろうとしていた。




『正義の為ならば多少の犠牲に目を瞑る男』として描いた
織田信虎は、悪であっても目を瞑る男でした。
それは自分も必要悪である事を自覚しており
『どちらの道を選んだ方がより被害が少ないか』を計算していたからです。
現市長に関しては『今生き残っている人々を1人も減らせない』と言う
逼迫した状況であるが故に悪に目を瞑る余裕が無いとも言えますね。
こういう『正義の為には必ず何らかの歪みが出る』
と言うのはこの話を書いていて必ず残しておきたかったテーマの
1つでもあります。この後は恐らく最終章の造語解説を入れて
終わりになると思いますが、最後までついてきてくだされば幸いです。
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