※この作品はR-18です。

ZERO ~格闘ゲームに翻弄される者達~   作:夜月光介

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今回、描写が足りない部分があり加筆を致しました。
適当にやってる所を流すより、ちゃんと書いた方が良いと言う判断からです。
やっぱり、いやらしいパートと言うのは難しいですね。
どういやらしく書くべきなのか、解らない事だらけです。


戦国番外編 1577 泥棒大作戦! 後編

【1577年6月 奈良県(ならけん)生駒郡(いこまぐん) 信貴山城(しぎさんじょう) 中庭】

 

「凄い数の紫陽花(あじさい)やな。

 これ、全部絹はんが手入れしとるんか?」

「流石に全ての手入れを私1人で行う事は出来ないので、他の人に手伝ってもらっていますが……

 綺麗でしょう。

 洗練された美しさがある。

 ココに来て紫陽花を眺めていると、心が落ち着くんです」

 

 絹はそう言うと、一列に並んだ紫陽花の1つに触れ、笑顔を見せる。

 山の中に築かれた城とは思えぬ程広い庭で、絹は久秀に『観葉植物を育てたい』と訴えそれを許されたのだ。

 逆を言えば、そんな事位しか許されない。

 彼女はこの城の中に幽閉されたも同然だった。

 

「ウチもこんな綺麗な紫陽花は見た事が無いわ。

 弾正はんが女を愛でるのも、綺麗なモンが見たいからやろ?」

 沙鬼はワザと彼女を憤慨させる様な言葉を口にし、絹はその罠に引っかかる。

 

「祖父がしている事と私がしている事は違います!

 祖父は女の人達を無理やりココに連れてきて、閉じ込めている。

 私は紫陽花を陽の光の下で育てているじゃないですか。

 それとこれとは……」

 

「違う、と。そう言いたいんやな?

 アンタの本音を聞こうやないか。

 本当は、非道な事を行うのを止めてほしいと思っとるんやろ?」

 沙鬼は他の兵士に聞かれない様に小声でそう耳打ちした。

 絹は俯き、沙鬼から目を逸らしつつ頷く。

 

「私だって……あんな事は止めさせたい。

 本気でそう思っているんです。

 でも、私にはそんな力はありません。

 彼女達を庇えば、祖父に殺されてもおかしくない。

 逆らえないからこそ、何も言わずに黙っている事しか出来ないんですよ」

 

 沙鬼は瞳を紫色に輝かせると、絹と向き合い彼女の両肩に手を乗せた。

 

「アンタの本音は確かに聞いたで。

 その願い、ウチが叶えたろうやないか」

「えッ?一体何を……」

 不穏な空気を感じ、逃げ出そうとする絹を、沙鬼は掴んだまま離さない。

 

「弾正はんを殺したりはせんよ。

 それはウチが保証する。

 ちょっと手伝ってほしいんや。

 ウチの『外にいる仲間』と協力して、囚われた女達を救い出す為にな」

 

 絹は催眠術の影響もあり、沙鬼の顔を見つめる。

 幼さが残っているが、彼女の精神は既に大人と同じかそれ以上だった。

「祖父を殺さない……

 それは真実なのですね?」

 

「嘘はつかへんよ。

 その代わり、ウチも女を助ける見返りが欲しいんや。

 茶器を根こそぎ盗ませてもらうで。

 アンタは女達が助かって嬉しい。ウチは茶器が手に入って嬉しい。

 これやったら納得出来る取引やと思うんやけどな」

 

 沙鬼の言葉に対して、絹は周りの目を気にしながら返答する。

「……祖父は一度、痛い目を見るべきなんです。

 殺したいとは思いませんが、罰を受けるべきだと常々思っていました。

 貴方はこの城に潜入した忍なのですね。

 私に、何をしろと仰るんですか?」

 

 沙鬼は微笑むと、絹に自分の本当の名前と、彼女にしてほしい事を伝えた。

 

 敵地で任務を全うする為に必要なのは、協力者を作る事である。

 松永久秀が心から信頼を置く腹心、岡国高と可愛がっている孫娘、絹が裏切れば久秀は丸裸にされたも同然であった。

 燈と沙鬼が内容を絹に伝え、彼女が手紙を書いて岡に渡す。

 岡は女達を攫う任務の為に城下町に繰り出す為、その時に手紙を燈の仲間に渡す機会等幾らでもあった。

 こうして信貴山城の内部は虹忍のメンバー全員が知る事となり、後は決行の日を決めるだけになる。

 

「岡様から預かった手紙です」

 絹から手紙を受け取った燈は、内容を把握するとすぐに手紙を燃やした。

 

「何て書いてあったんや?」

「茶器を盗み、女達を牢から救い出すのは蒸し暑くなる葉月の頃にするべきだって書いてあったわ。

 まぁ、それが最初で最後の機会でしょうね。

 その後には戦が始まっちゃうんだから」

 

 絹は『戦』と言う言葉を聞いて哀しそうな表情を浮かべた。

「……1つ、お願いがあります。

 茶器を盗み、女の人達を解放する。

 それは良いんです。

 ですが、それを行う際に人を傷付ける事だけは避けてください」

 

「出来るだけ努力するわ。

 鈴(れい)が作る薬には兵士を眠らせる力があってね。

 既に少しずつその薬が入った容器が届けられている。

 準備は確実に進んでいるのよ」

 

 燈にも絹の気持ちは痛い程理解出来る。

 血みどろの殺し合い等、本来あってはならない。

 だが、戦になれば犠牲者が必ず出る。

 その犠牲者が少なくなる様に祈るしか無かった。

 

 決行日は葉月、満月の夜と決まった。

 燈は沙鬼と共に松永久秀を1つの部屋に釘付けにし、その間に鈴の作り上げた『睡眠香』が城の内部を満たす。

 牢に閉じ込められている女達は絹から『妙な匂いがしたらすぐに伏せて、その後息を止めて逃げ出す様に』と言われていた。

 城の外部は虹忍が兵士達を誘き出したり戦闘不能にする事で対処する。

 そして亥と妖、涼が茶器を盗み出す役目を担っていた。

 

「満月の夜にしたんは、女達が月の光を頼りに逃げれるからや。

 ただし、山頂近くの兵士しか攪乱する事は出来へん。

 逃げ延びれるかどうかは運次第やな」

 

「それは私も解っています。

 結城様ではありませんが、神に祈るしか無いでしょう。

 彼女達も一生飼われるよりかは、死ぬ可能性があっても逃げ出したいと申していますし」

 松永久秀と彼女達が夜伽を行う部屋には睡眠香を仕掛ける事が出来ない為、彼を部屋の中に釘付けにする必要がある。

 ある意味、燈と沙鬼がこの計画の鍵を握っていると言っても過言では無かった。

 

 満月が僅かに地を照らす8月の夜9時。

 燈と沙鬼は夜伽の部屋で松永久秀と対峙していた。

「今夜も楽しませてもらうで。

 お前達も気持ちよくなれや」

 

 裸の屈強な老人と女が5名。

 燈と沙鬼の他にも3名の女性が呼び出されている。

 勿論この3人は忍の技など持たない普通の女達だが、計画の一部始終を絹から聞いて把握していた。

 

 (私達が弾正を釘付けにしないと、皆が逃げる時間を稼ぐ事が出来ない。

 重要な役目……)

 農家の娘、商家の娘、貧しい武家の娘。

 出身は様々だが類稀なる美貌を持つと言う点では共通している。

 弾正の魔の手から逃げ出す為に失敗は許されない。

 

 そう思っているせいか、何時もより彼女達は緊張していた。

 (駄目よ、何か違う所があれば弾正はすぐに気付く。

 落ち着いて)

 燈は心の中で彼女達にそう呼びかけたが、彼女達が落ち着く前に久秀がその違いに気付く。

 

「フフ、何や震えて……

 最近は燈と咲ばかり相手にしとるからなぁ。

 久しぶりで勘が取り戻せんのと違うか?

 儂がすぐにほぐしたるわ」

 

 久秀は2人の女をその場に立たせると、両手でそれぞれの膣をまさぐる。

 荒い息を吐いて悶える女性達を横目に見ながら、燈はホッと胸を撫で下ろした。

 

 ほぼ同時刻、城の内部と外部で忍達が動き始めていた。

 胡桃が敵の兵士達を誘き出し、その隙に涼がいち早く城の中に潜入。

 城の各所に『睡眠香』を置くと、蓋を回して薬を部屋の中や廊下にばらまいた。

 廊下で見回りを行っていた兵士達は立っていた為、その匂いを嗅ぎすぐに昏倒。

 牢屋の中にまで漏れ出た香りを察知した女達は、すぐに伏せ絹が来るのを待つ。

 

「近くにいた兵士から鍵を手に入れてきました。

 服を着る猶予が無い事を許してください。

 散らばって逃げれば山を降りる事が出来るでしょう……

 幸運を」

 布で鼻と口を覆った絹は、もう片方の手で牢屋の鍵を開けると、彼女達を解き放った。

 

「くそッ!なんだあの曲者は。

 韋駄天の如き素早さで全く追い付けん」

 城の外では、胡桃(くるみ)がわざと兵士に見つかり逃げ続けていた。

 彼女は『稲妻』と言う異名の通り、火縄銃でも狙いが定まらない程の速さで地面を駆ける事が出来る。

 彼女を追って堀の近くまでやってきた一部の兵士は、洪の餌食となっていた。

 

「うぼッ!?お、おごごご……」

 2人の兵士が足を取られ、一瞬で水の中に引き摺りこまれる。

 やがて気絶した兵士を、洪は地面に置いた。

「なるべく犠牲は出さないと言う約束ですからね。

 命は取りませんよ」

 

 その騒ぎの中で、女性達が裸のまま大人数で逃げ出すのは実に奇妙な光景だった。

 羞恥心等この際関係無いと、胸も股間も隠す事無く自分の命の為に走り続ける。

「な、何だあれは。

 裸の女達が逃げていくぞ!」

「弾正様に報告……がッ」

 

 逃げる女達に気付いた兵士達は、背後から亥に殴られ意識を失った。

「さぁ、彼女達がココから逃げるのを見届けたら茶器を盗みに行きましょう」

 妖の言葉に対して亥は無言のまま頷くと、茶器が置いてある城の中を目指した。

 

 夜伽の部屋の中では、淫らな宴が繰り広げられていた。

「もっとええ声で鳴けや!

 儂を楽しませるんやで」

 

 本丸まで誰にも見つからずに辿り着ける程の忍が騒ぎを起こしている事等久秀には知る由も無い。

 久秀は後ろから燈の膣に剛直を滑り込ませると、両手で這いつくばった格好をしている女2人の膣を弄った。

「ウチの魔羅で感じてもらいたいんや。

 熱いのが解るやろ?入っとるんやから」

 

 一方沙鬼は寝そべると、長い黒髪の女性に自分の肉棒を受け入れさせ喘ぎ続けている。

 この部屋に面している廊下の先には茶器が収蔵されている和室がある為、物音を聞かれまいと燈達は必至だった。

「おほッ!ええで。

 女陰が魔羅を擦ってくるわ。

 熱を持って包み込んどる」

 

 下から腰を上げて彼女を攻めると、膣奥に肉棒がぶつかり淫靡な嬌声が部屋中に響き渡る。

 人の命と自分達の命がかかっている為、燈や沙鬼以外の女達も久秀を盛大にもてなしていた。

「よぉし、交互に入れて楽しむか。

 咲、使ってへん女の女陰はお前が使っても構わへんで」

 

 久秀も肉棒に塗り付けた強精剤の効果が出ているのか、何時も以上に興奮している。

 滾った砲身を無理やり短い黒髪の少女に捻じ込むと、両手で尻を掴みながらピストン運動を繰り返した。

 扉が開いている部屋や廊下には薄紫色の煙が充満していたが、結城忠正は部屋の中で祈りを捧げていた為意識を失ってはいなかった。

 

「おお、聖なる慈愛に満ちたデウス様。

 あまねく民に光を当て、永劫の幸福を与えてくだされ……」

 ロザリオを握り締めながら、忠正はキリスト像に祈りを捧げる。

「マリア様の美しい慈悲の心が、日ノ本を含めた世界に届かん事を」

 菩薩像と同じ方法で作られた『マリア像』は、当時まだキリスト教が禁止されていなかった為、明らかにそれと解る様になっている。

 

 頭にローブを被り、両手を合わせ僅かに微笑むマリア像は、まさに『聖母』の輝きを放っていた。

 神を信じ、聖母マリアを崇める。

 忠正は美しく清らかな絹に対して、同じ様な尊敬の念を持っていた。

 彼女を守りたい。

 そして、叶うならば戦で人を殺めてきた己を彼女に赦してもらいたい。

 

 そんな事を考えながら祈り続けていた忠正であったが、僅かな物音に気が付き立ち上がった。

 (なんだ、このこそこそ歩いている様な音は。

 見張りの足音では無い)

 

 キリスト教に心酔しているとは言え、元々忠正は戦上手の屈強な武将である。

 不穏な空気を感じ取った忠正は槍を手に取ると、廊下の外に出た。

 

 久秀は夜伽の最中に忠正が邪魔してこない様にする為、夜伽を行う部屋とは離れた場所に忠正の部屋を作っている。

「妙な匂いだ。

 これは嗅ぐべきではない」

 そう呟いた忠正は息を止め、急ぎ足で廊下を歩く。

 すると前方に大柄な男の影が見えた。

 

 (曲者か!)

 咄嗟に相手を敵だと判断した忠正は槍で相手を突こうとしたが、後ろから睡眠香の入った容器を頭にぶつけられて昏倒する。

 

「危なかったわね。

 まだ起きている敵がいたなんて……」

「急ぐぞ。

 さっきの物音を聞かれたかもしれん」

 

 妖と亥は先に和室に入って茶器を物色していた涼と合流した。

「全部持っていくのは無理だから、価値が高そうな茶器は選別しておいたよ。

 僕もこの日の為に勉強したからね」

 平蜘蛛の茶釜以外の茶器の価値を知る為に、涼は堺でどういった茶器が『名物』であるのか予習したのだ。

 

 堺衆の手駒である沙鬼と協力して茶器を取り戻そうとしている旨を商人達に伝えると、彼等も涼に自分達の知識を惜しみなく披露した。

「平蜘蛛は私が持つわ。

 亥は平蜘蛛以外の茶器をお願い。

 涼は外に出て兵士達を混乱させて」

 

「え、手伝わなくていいの?」

「貴方じゃそんなに重いものは持てないし、逃げ出す女達を守ってあげるっていう任務が追加されたからね。

 左近様からの命令じゃ無いけれど、そうしてあげた方が良いでしょう。

 早く行って」

 

 涼は頷くと廊下の外に出ていった。

 妖は手際良く大きな風呂敷に沢山の茶器を包んでいく。

「壊さない様にね」

「保証は出来ないから平蜘蛛だけはお前がしっかり持てよ」

 亥は大きな風呂敷を背負うと、妖と共にゆっくりと部屋の外へ出た。

 

 どすんと言う何かを殴った様な音が、遠くから微かに聞こえた。

「ん?何や今の音は」

 立ち上がろうとした久秀の肉棒を、沙鬼は慌てて優しく握り締め咥える。

「待ってくれや弾正はん。

 ウチらに火を付けておいて外に行くのは許さへんで」

 

 沙鬼の凄まじいテクニックに、久秀の疑念も消えていった。

「そうや、もっと舌で舐め回す様にな……

 よし、燈はそいつと貝合わせするんや。

 儂は咲の女陰を攻めるで」

 沙鬼の肉棒を握り締めながら、久秀はその肉棒の下にある膣に己の象徴を埋めていく。

 

 一方燈は久秀の注文通りに、年端もいかぬ少女の陰部に陰部を擦り付け始めた。

「は、恥ずかしい……」

「今までされてきた事に比べれば、どうと言う事は無いでしょう?」

 優しく少女にそう言いながら燈は久秀の行動に最大限の注意を払い続ける。

 

 また物音が聞こえてしまうかもしれない。

 そうなった時にどう彼を引き留めるかと言う事だけを考えていた。

「穴が空いとるやないか。

 咲、その女に入れたり。

 もう1人は自分で自分の女陰をまさぐるんや」

 

 黒髪の女性に沙鬼の肉棒が入り、沙鬼の膣に久秀の肉棒が刺さる。

 栗色の髪をした16か17程の女性は、意を決すると自慰行為を開始した。

 腹を括った女程強い者はこの世にいない。

 久秀も物音を聞いて異変を感じ取ったが、彼女達の淫らな姿を見る事でそれを忘れてしまった程だった。

 

「駄目だ、女の数が多くてとても捕まえられん」

「弾正様に知れたら我等全員首を斬られるかもしれんぞ。

 今の内に逃げるか」

 大勢の女の裸に目を奪われている間に、見回りの兵士達は捕らえられていた女達を全て逃がしてしまう。

 狼狽した兵士達の中には極刑を恐れて逃げ出す者もいた。

 

 堀の近くにいた兵士達は洪に絡めとられ、水の中に沈んで気絶してしまう。

「下の連中が女達を捕まえる事を祈ろう……

 な、なんだあれは!?」

 1人の兵士が水面から顔を出す巨大な肉棒を目の当たりにし、思わず立ち竦んだ。

 それは男根と言うより男砲と呼んだ方が適切と言える程の巨躯を晒し、雄々しくそびえ立っている。

 

 脈打つ巨大なモノを呆気に取られながら見つめていた兵士は胡桃に殴られ気絶した。

「涼は相変わらず相手の視線を釘付けにする魔羅を持ってるわね。

 おかげで助かったわ」

 

 その言葉に反応したかの様に肉棒がゆっくりと水の中に沈んでいき、それがあった場所から涼が姿を現した。

「亥達を発見されそうになってたからね。

 恥なんて気にしてられないよ。

 僕達にとって大事なのは任務を成功させる事だけさ」

 身体中が濡れた洪も合流し、平蜘蛛を持った妖と巨大な風呂敷包みを持った亥を護衛しながらその場を後にした。

 

 自慰行為に没頭する女を凝視しながら、腰を振り続ける久秀。

「もうすぐ出るわ……

 咲、全部受け入れるんやで」

「解っとるわ弾正はん。

 ウチの中に仰山注いでぇ」

 

 久秀に突かれながら、相手の膣の中で暴れ回る肉棒の快感を味わう沙鬼。

 燈は貝合わせを続けながら、その時をじっと待っていた。

 催眠術を最初にかけた時と同じ様に、久秀の意識が完全に混濁する瞬間を。

「おふッ」

 

 沙鬼の中に射精し、陰茎を入れたまま身体全体を震わせる久秀。

 燈は相手が無防備になったのを見逃さず、素早く立ち上がると相手の頭に飛び蹴りを見舞った。

「うくッ!か、堪忍な……」

 最早止める事の出来ない精液を黒髪の女性の中に放ちながら、沙鬼は倒れ込んだ久秀の胸を思い切り踏みつける。

「ごッ」

 

 倒れた時は若干意識が残っていた久秀も、胸に凄まじい衝撃を喰らってしまってはたまらない。

 完全に気絶した久秀を尻目に、燈は部屋の扉を開けると彼女達に対して手招きをした。

 

「息を止めて一気に走り抜けて……

 何をしているの、沙鬼。逃げるわよ」

「そんな事言うたって、すぐには止まらへんよ。

 ふううう……」

 

 脈動する肉棒を彼女の中に入れたまま少しの間身体全体を震わせていた沙鬼であったが、ようやく我に返り膣から肉棒を引き抜いた。

「服を着る時間は無いわな。

 脱出が最優先や……燈はんの仲間がちゃんと茶器を盗めてればええんやけど」

「きっと大丈夫よ。

 私達は逃げる事だけを考えましょう」

 

 先程よりももっと奇妙で、ある意味滑稽な光景だったのかもしれない。

 金髪の女が怒張した肉棒の先端から粘液を滲ませながら廊下を走り、その後を膣からぼたぼたと精液を垂れ流す女が追いかける。

 全員が汗まみれで最低1回は久秀に可愛がられており、身体の何処かに精液が付着していた。

 そんな全裸の女性5人は何とか城の外に出ると、逃げ出したか気絶しているかで姿の見えない兵士達に見つからぬ様気を付けながら走り去っていった。

 

 松永久秀が目を覚ましたのは、明け方になった頃の事だった。

 途中で意識を取り戻し、憤怒の表情で立ち上がったが部屋に充満していた睡眠香の匂いを嗅いでしまいまた昏倒してしまったのだ。

 頭と胸の痛みを感じながら何とか起き上がった久秀だったが、既に彼女達が逃げた事を察していた。

 (やられた……

 儂が精を放つ時を見逃さずに倒すとは……)

 

 部屋中に愛液と精液の凄まじい匂いが充満している。

 久秀は白い着物だけ羽織り廊下の外へ出ると、気絶している兵士達を目の当たりにした。

「くそッ。皆眠らされとる」

 苛立ちながらも思い通りに動かない身体を何とか動かし、和室に向かう。

 

 和室の棚に飾られていたはずの平蜘蛛の茶釜が部屋の中から消えていた。

「お、おのれ……おのれぇぇぇぇ!!

 あの女(あま)、やりおったな!!」

 久秀は激昂し、和室に飾ってあった日本刀を手に取ると、まだ夢の中にいる兵士達をあの世へ送り始めた。

 

「屑共が!

 儂の宝一つ守れんのかこの役立たず!」

 怒りで我を失った久秀は、鬼の如き形相のまま次々に兵士の首を斬り落としていく。

 別の部屋の扉を開けると、そこには倒れている絹の姿があった。

 

 絹は『倒れていないと怪しまれる』と言う燈の言葉通りに、女達が逃げ出した後わざと睡眠香を嗅いで意識を失っていたのだ。

 (この様子やと下手をすれば儂が集めた女達も……

 終わった。儂の全ては終わったんや)

 怒りと絶望が久秀を静かに蝕んでいく。

 久秀は目を覚まさない絹の服を脱がすと、再び自分も生まれたままの姿になった。

 

「も、申し訳ありません弾正様。

 敵の罠に嵌ってしまい……!?」

 絹と同じ様に意識を失っていた岡は、部屋の扉を開けた後あまりの光景に身体全体が凍り付いた。

「お前ほどの男が何も出来ずに……

 フフフ、やられたわ。完全にしてやられた」

 

 絶望をその瞳に宿した絹は、久秀に犯されながら涙を流しだらしなく口を開け涎を垂らしている。

 久秀も正気を失ったかの様な瞳を岡に向けたが、実の孫を犯すのを止める気配は微塵も無かった。

「ま、マリア様が……

 うわああああ―――ッ!!」

 

 岡の背後では久秀と絹の禁断の交わりを目撃してしまった忠正が頭を抱え半狂乱になって叫んでいる。

「ほれ、どうや儂の魔羅は美味いか?

 後でたっぷりと儂の精を注いだるわ」

 狂った笑みを浮かべて絹の身体を蹂躙する久秀。

 岡は何も言わずに踵を返すと、廊下で叫び続けている忠正を無視しつつその場を後にした。

 

 (終わった……松永家の全てが終わった。

 私は私の富を享受するのみ。

 絹様がもし御存命であれば助命嘆願をすべきであろうが……

 いや、死んだ方がいっそ幸せかもしれぬ)

 久秀は言葉にならぬ声を発して涙を流す絹を押し倒し、『淫らな宴』の続きを堪能していた。

 

 山道を駆ける裸の女達は、結果的に燈達が逃げる為の『囮』の様なものだった。

 事前に山道を調べる事が出来ずとにかく逃げようとする女達は容易く中腹に陣を構えていた兵士に見つかり、殺されてしまう。

 燈達は獣道や普段人が通らない裏道を通って逃げたので、彼等に見つかる事無く山を下りる事が出来た。

 久秀への恐怖から容赦なく女を殺す兵士と、彼女達を憐れに思い見逃す兵士の数は半々。

 だがそのどちらも巨大な風呂敷を背負って逃げる数名の男女を発見する事は出来なかったのだ。

 

「危険な地帯は抜けたが、まだ安心は出来んな……」

 山を下り、人里から離れた別の山の中に身を潜めた虹忍達は、交代で仮眠を取りながら油断する事無く周囲を見回っていた。

「裸のままでは何かと都合が悪い。

 妖、着物を調達してきてくれ。

 左近様に平蜘蛛を渡しに向かうのはその後だ」

 

「解ったわ。

 亥はココで見張りを続けていて頂戴。

 城下町は大変な事になってるでしょうけど、私なら買いに行けると思う」

 

 妖は一度忍装束を脱ぐと、服の裏表を逆にした。

 忍装束が旅芸人の衣装に早変わりする。

 こうした早変わりは忍の使う常套手段だった。

 敵の目を欺き、その場から逃げる為の技術の1つだ。

 

 妖がその場から去った後、亥は燈がいる方を見て溜息をつく。

「それにしても節操が無いなお前達は……

 敵に襲われるかもしれん状況だと言う事が解っていないのか?」

 亥が呆れるのも無理は無かった。

 

 燈は興奮した涼に身体を預け、沙鬼は成り行きで行動を共にしていた女とセックスを堪能していたからである。

「まだ魔羅の疼きが止まらへんのやからしゃあないやんか。

 それにあんた等も無傷で逃げる事が出来たんやからこれ位役得があってもええやろ?」

 栗色の髪の女性を樹に寄りかからせ、後ろから肉棒を挿し込んでいた沙鬼はそう言いながら腰を振り続けていた。

 

 短い黒髪の少女と、長い黒髪の女性は考えられない程巨大な魔羅を飲み込んでいる燈の方を凝視している。

「す、凄い……

 あの様な大きさの魔羅がこの世に存在するだなんて」

 

「私は慣れっこよ。

 涼の性欲は私が処理してあげてるから……

 妖は貴方達の分の着物も買ってくると思うわ。

 それを着たら元いた所に帰りなさい」

 

 燈は時折喘ぎ声を発しながらそう言うと、根元まで凶器を沈め、ゆっくり引き抜く動作を繰り返した。

「うわ、やっぱり燈の肉の壁が凄く気持ちいい!

 すぐに出ちゃいそうだよ」

 草叢に寝転がっていた涼は快感に酔った様な表情を浮かべ、燈の動きに合わせて腰を上下に突き上げる。

 

「がっつかないで。

 ただでさえ涼のは大筒みたいに太くて私の中を圧迫してくるのに……」

 裸の女性達の淫らな宴は信貴山城から逃げ出しても尚続いていた。

 勿論そこに久秀はいなかったのだが。

 

 燈が騎乗位で涼の相手をしているすぐ近くで、咲は2人の女性を草むらの上に寝かせた。

「いやらしいなぁ、ウチの魔羅がますます滾るわ」

 3人の女性が股間を露わにした状態で横並びになり、咲は手を使って空いている膣に指を突っ込む。

「ああッ、凄い。おかしくなっちゃう」

 女達も極力大声を出さない様に時折口を塞いでいたが、凄まじい快楽に抗う事は出来なかった。

 

 指で、舌で、肉棒で……

 古今東西相手の心を自分のものにするのに最も手っ取り早い方法はセックスである。

 忍は相手を手籠めにする方法を幼少期から叩き込まれており、そのテクニックを遺憾なく発揮していた。

 逆を言えば、そういった快感でなびかない相手をもっと強烈な快楽で黙らせる方法もある。

 咲はそうやって、何人もの女性を篭絡し従わない物を破壊してきたのだ。

 

 抵抗する力を持たない普通の女性が乱れるのも当たり前の事であった。

「ほぉれ、ウチの熱を感じてみたいやろ?

 ええ締まり具合やんか、アンタのは。こっちはどうや」

 舌を出し、大きく息を吐きながら目の前の天国を堪能する咲。

 弾けそうな程膨れ上がった肉棒を抜いては他の女性に挿し込み、腰を振る作業を繰り返す。

 

 女性達はあまりの快楽に大声も出せず、ただ意味不明な喘ぎ声を発するだけだった。

「そろそろアンタ等もウチも限界やな。

 たっぷり出すから全部下の口で受け取るんやで。

 あッあッあッ、もう我慢がぁ、出るッ、イク……」

 楽しむ事を止め射精に意識を切り替えた咲は、右端にいた女性の膣に深く砲身を突き立てる。

 

 彼女は相手の上から覆い被さり、思い切り抱き締めたまま透明な液体を膣内に放った。

「はッ、はあああ……メッチャ出るぅ。

 ウチの身体がまぐわいの快感に酔っとるわ……」

 全身をビクビク痙攣させながら、股間の竿全体で快楽を享受する咲。

 3人全員が気絶しかける程の淫らな宴は彼女が達した事により終焉を迎えた。

 

 ほぼ同じタイミングで、涼も肉棒から大量の精液を燈の体内に流し込む。

「気持ちいい……何度果てても具合が良過ぎて止められないよ」

「感謝、しなさいよ。

 アンタの大きいのを受け入れてあげられるのは私位なんだから……」

 荒い息を吐きながら己の腹に手を当てる燈。

 

 肉棒の先端から注がれた大量の白濁液は、彼女の腹を膨らませる程の量を誇っていた。

 立ち上がって抜けた瞬間、そのままどぼどぼと精液が涼の股間に滴り落ちていく。

「とんでもない量を出すじゃない。

 拭くものも無いし、地面に落としておくしか無さそうね」

 

「まだ出したりない位だよ。

 無事に逃げれたら、自分の両手を使って残りも全部吐き出さなきゃ」

 涼の言葉に対して、燈はついていけないと言う表情をした。

 (私ですら扱いきれない凶暴さを、誰かが受け止めてあげられれば良いんだけどねぇ……)

 虹忍として一流の強さを持つ彼女でも、涼とのセックスは毎回苦戦を強いられる。

 

 燈と涼の2人が後片付けを始めるのを横目に見ていた咲はようやく動ける様になった。

「はぁ、はぁ……いやぁ、堪能したわ。

 堪忍な……折角こういう事から解放されたハズやのに」

 欲望の塊を相手の中に吐き出した沙鬼はようやく萎えた肉棒を長い黒髪の女性の膣から引き抜く。

 

「着物を買ってきたわよ。

 貴方達の分もあるからすぐに着て逃げなさい。

 また弾正が魔の手を伸ばすかもしれないからもっと遠くに逃げるべきなのかもしれない。

 どう動くかの判断は貴方達に任せるわ」

 妖は異様な光景に対して全く動じる事無く、何時も通りの態度で喋っていた。

 

 凄まじい勢いで攻められた女達は立ちあがる事が出来ず、虚ろな瞳のまま涙を流している。

 いっぽう燈は涼とのセックスを終えた直後だと言うのに、もう平静を取り戻していた。

 

「ぐずぐずしてはいられないわ。

 平蜘蛛を持ってここから逃げましょう。

 この沢山ある茶器は沙鬼、貴方が堺衆に渡してあげて……

 ココでお別れね」

 着物を羽織り、先程乱れていたのが嘘だった様な姿となった燈は咲の方を向きながらそんな言葉をかけた。

 

「流石やな。

 あんなごっつい魔羅が腹の中に入ってもケロリとしとるとは……

 アンタとは敵として再会したくないモンや」

 沙鬼も着物を身に付けると亥から巨大な風呂敷包みを受け取り、何とか背負うとその場から姿を消す。

 燈は3人の女性達が着物を身に付けた事を確認すると、他の忍達と目を合わせ風の様に走り去っていった。

 

 数時間後、巨大な風呂敷包みを荷車に乗せて堺へ向かう1人の女の姿があった。

 その後の沙鬼の行方を知る者はいない。

 燈や妖を含めた6名の虹忍達は安土城に帰還すると滝川一益に平蜘蛛の茶釜と1枚の地図を献上した。

 その地図には信貴山城の頂上に陣取る本丸周辺の様子が事細かに描かれており、後に久秀を倒す際に活用される事となる。

 

 岡国高は信貴山城での戦いが始まる前に織田軍に投降。

 敵軍の将であったにも関わらず二千石の領土を安堵された。

 そして遂に、平蜘蛛の茶釜を失った久秀のもとに織田の大軍が攻め込んだのである。

 

【1577年 10月10日 早朝 信貴山城本丸】

 

「鉄砲隊、構え!

 邪魔な兵どもを1人残らず撃ち倒せ!」

 織田信長の息子である信忠(のぶただ)がそう叫んだ瞬間、信貴山城の戦況は一変した。

 味方だった森(もり)好久(よしひさ)の率いる鉄砲隊200名が突如裏切り、松永軍を背後から攻撃したのである。

 

 森は最早久秀の命運は尽きたと感じ、数日前織田軍に属していた筒井(つつい)順慶(じゅんけい)と面会し裏切りを公言。

 一時は篭城戦で織田軍を押し返そうとしていた松永軍は、この森の裏切りによって総崩れとなった。

 

 鉄砲隊は信貴山城の内部にいた為、味方を自由に攻撃する事が出来る。

 彼等は火を放ち逃亡。

 天守閣は火に包まれ、崩れ落ちようとしていた。

 

「森殿、裏切り!

 多くの兵が討死した模様。

 火の手は既にこちらに届こうとしております。

 早くお逃げくだされ!」

 松永久秀と絹だけがいる部屋の襖を開け、報告した兵士の首を久秀は斬り落とした。

 

「……今更何処へ逃げろと言うんや。

 終わった。儂の全ては終わったんや……」

 久秀の近くには、絹の父親である久秀の息子、久通(ひさみち)が倒れ腹から血を流している。

 絹は部屋の隅で恐慌状態に陥っていた。

 

 目の前で実の父親が久秀に刺し殺されるのを見れば、そうなってしまうのも理解出来る。

「さぁ絹、こっちに来るんや。

 儂と一緒に楽しい死に花を咲かせようやないか」

 絹は涙を流しながら首を横に振った。

 

 久秀と絹がいた部屋には大量の爆薬が置かれている。

 戦国時代においてダイナマイトはまだ登場していなかったが、硝酸を用いて爆薬を作る技術は既に伝来していた。

 火をつけた瞬間に大爆発を起こす。

 それは衝撃を与えるだけで爆発するニトログリセリンの様なものと考えれば解り易いのかもしれない。

 

「儂と一緒に花火になるんや。

 綺麗な花火にな……

 本当は平蜘蛛を抱いて死ぬのが夢やったが、それはもう出来へん……」

 狂気を宿した瞳のまま、日本刀を手にしたまま歩を進め絹に近付く久秀。

 絹は恐怖に駆られ叫び声を上げながら頭を抱えた。

 

「死ぬのなら、アンタ1人で死になさい!」

 その声と共に投げられた刀身の短い日本刀が、久秀の心臓を深々と貫く。

「お、のれ……」

 口から血を吐きながら憤怒の形相で刀が飛んできた方向を睨み付ける久秀。

 そこには忍装束を着た燈の姿があった。

 

「燈さん……」

「貴方は私を助けてくれた。

 その恩を返す時が来たのよ」

 久秀は刀を振りかぶろうとしたが、既に刀を振るう力が残っていない。

 そのまま床に刀を刺して歯を食いしばる。

 

「お前さえ、いなければ……お前、さえ……」

 喀血した久秀は意識を失い倒れた。

 動揺する絹の手を燈は無理やり引っ張り、外へ連れていく。

 

「大丈夫。

 貴方が襲われない様にする為の手は打ってあるわ。

 私に任せて」

 絹は半ば意識が朦朧とした夢遊病患者の様に、ただ引っ張られてついていく様な状態だった。

 

「マリア様、マリア様ァァァァ――――ッ!!」

 天守閣の一室が爆発した瞬間、捕縛されていた結城忠正は泣き叫んだ。

 その爆発を引き金として本丸全体が炎に包まれ崩れ落ちていく。

 信忠はその光景を無言のまま見つめていた。

 

 (明日は我が身と思わねば、足元を掬われる。

 弾正殿は、某にそれを教えてくれたのかもしれぬ)

 そんな中、燃える天守閣を見つめる兵士達に気付かれぬ様に歩く燈と妖、そして忍装束を着せられた絹の姿があった。

 

「祖父上も父上も死んでしまい、これからどう生きていけばいいのか……」

「這いつくばってでも生きていくの。

 死んじゃったら、何も残らないんだからね」

 

 饗談の忍装束を着ていた絹は織田軍に顔を知られていなかった為、万が一発見されたとしても助かるハズだった。

 織田軍が勝ち鬨の声を発する中、彼女達はその場所から離れていく。

 こうして信貴山城の戦いは終わりを告げた。

 

 信貴山の中腹に身を潜めた燈と妖は、機を見計らって山を下り戦場から離脱するつもりでいた。

 燈は吐き気を催した絹の背中をさすっている。

 絹は涙を流しながら哀しい事実を口にした。

 

「私のお腹には、呪われた子が宿っています。

 私はこの子と共に死ぬべきだった……」

「何を言ってるの。

 お腹の中に子供がいるのなら、その子供の為にも生きなくちゃ」

「私の中に宿った命が、私と祖父上が交わって生まれた子でも、ですか!?」

 

 妖は絶句し、燈の顔と絹の腹を交互に見つめる。

 まだ腹こそ膨らんでいないが、絹は懐妊した事を自覚していた。

「女達を失い、茶器までも失った祖父上は私を押し倒しました。

 そして私は腹の中に祖父上の子を宿してしまったのです。

 こんな私や子供が生きていく事自体が、罪になるのではないかと思って私は……」

 

「それでも生きていくのよ。

 貴方が死んだら松永の血が絶えてしまう。

 そんな経緯で生まれた子供でも、貴方の子供である事に変わりは無いじゃない。

 隠して産んで、育てていく事は出来るハズだわ。

 貴方自身が口をつぐんでいれば、何も起こりはしないのよ」

 

 燈は自殺を根底から否定していた。

 生きたくても死んでしまった仲間の姿を見てきた燈は、絹が自ら死を選ぼうとする事が許せなかったのである。

「燈さん……」

「誰かに助けてもらいたいのなら、私が側にいてあげる。

 妖、貴方も協力してくれるわよね?」

 

 両手で絹の肩をしっかりと掴み、妖がいる方に顔を向けた燈は懇願する様にそう言った。

「……ええ、そうね。

 彼女が弾正に孕まされたそもそもの原因は私達にある。

 私達が直接悪かったワケじゃ無いけれど、彼女を守る責任は請け負うべきかもしれないわ」

 

 妖はそう言いつつ、絹と顔を合わせる事が出来なかった。

 何の罪も無い彼女を不幸にしてしまったと言う罪悪感が妖の心を抉る。

 空に目を向けると、そんな哀しみや不幸とは無縁であるかの様な晴天が広がっていた。

 

 裏切り者は、いずれ裏切られる。

 歴史はそれを証明している。

 斎藤道三は我々が住んでいる世界において実の息子に殺され、松永久秀は家臣に裏切られて死んだ。

 そもそも松永久秀の裏切りの発端は、『信用されなかった』からではないかと言う説がある。

 

 元々裏切りでのし上がった久秀の事を織田家臣団は快く思っていなかった。

 裏切るのではないかと常に疑いの目で見られ、冷遇された。

 松永久秀が信長の説得にも応じる事無く死んだのは信じてもらえなかったからではないかと言われているのだ。

 勿論、裏切りを繰り返してきた久秀自身の自業自得であるのは事実である。

 

 だが、戦国時代において大名に登り詰める事が出来たのは余程の才覚を持つ秀吉の様な天才か、裏切りで相手の権力を奪う久秀の様な悪人の二通りの人間だけだったのだ。

 久秀は悪人の道を選びそれを貫いた。

 その極悪ぶりには一種の清々しささえ感じる事が出来る。

 欲に対して純粋で、茶器と女をこよなく愛した男は爆死と言う最期を迎えた。

 

「僕の作った薬が役に立ったのなら嬉しいよ」

 饗談が暮らす集落にある小屋。

 その小屋の中にいた鈴は燈や妖と話をしていた。

 

「鈴、悪いんだけど……

 貴方の所でこの子を預かってくれない?

 私も妖も出来るだけ面倒を見る様にするから」

 燈の隣には俯いたまま暗い表情を浮かべている絹の姿があった。

「この子って?」

 

「この間の戦いで弾正の孫娘を保護したのよ。

 下手をすれば上様に殺されてしまうかもしれない。

 私達の所で面倒を見た方が、灯台下暗しと言う意味でも安全だと思うの」

 鈴はゆっくりと絹に近付き、手を伸ばすと彼女の頬に触れた。

 

「綺麗な肌をしているんだね……

 この子で合ってる?」

 目が見えない鈴はそう尋ね、燈はそうだと返答した。

 

「可哀想に。親もいなくなってしまって……

 でもここで暮らせば確かに安全だ。

 僕達が守ってあげられるよ。

 ねぇ、だから泣かないで……」

 頬に触れた涙を拭おうとする鈴であったが、涙は次から次へと溢れて止まらなくなった。

 

 絹は自分が何故泣いているのか自分でもよく解らなくなっていた。

 その涙が哀しみから来ているのか、人の温かさから来る感謝の気持ちから出たものなのか、最早解らない。

 松永久秀の子供を密かに産んで育てる。

 絹は燈の説得によって自殺を思い留まり、生きていく事を決心していた。

 

 信長は安土城の天守閣にある一室で、平蜘蛛の茶釜を見つめていた。

「この茶釜には、思いが詰まっている。

 弾正殿の思いもその中には含まれているのだろう。

 儂は必ずやる。

 死んでいった者達が『良くやった』と褒める様な政(まつりごと)を行わねばならぬ」

 

 虹忍によって信長の手に渡った平蜘蛛の茶釜は、織田政権の在り方を示すものの1つとしてその役目を果たし続けた。

 世の中が『領地・石高の時代』から『物・金の時代』へと移り変わる象徴として。

 信長の目には、既に来るべき『世界との戦い』が映っていた。

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