外道を出して、道を無理やり踏み外されていく人の悲哀が
出せたらなぁと思いました。特にヒロインの霧原冴子はこの物語の
中でダントツの黒髪美人と言う設定なので、
美しさをどう表現したらいいか解らず困りましたね。
London Bridge is Falling Down
(ロンドン橋落ちる)
Falling Down Falling Down
(落ちる 落ちる)
Set a Man to Watch All Night
(寝ずの番を置きましょう)
My Fair Lady
(麗しの御嬢様)
【1955年 7月22日 東京都千代田区秋葉原 東京都立(とうきょうとりつ)倫橋(りんばし)高等学校】
蔵崎(くらさき)源三(げんぞう)は、机に座ったまま何をするでも無く窓の外を眺めていた。
雲1つ無い快晴。
部屋の中にエアコンなど設置されていない為、うだる様な暑さの中生徒達は授業を受けている。
「コラ蔵崎。
ちゃんと私の話を聞いているのか」
教師から名指しで呼ばれた源三は、自分が呼ばれている事に気付き即座に姿勢を正した。
「すいません。
空があまりに綺麗なもので……つい見とれてしまいました」
「文学少年の様な事を言ってる場合か。
今の所を読んでみろ。138ページだ」
頭を掻きながら愛想笑いを振りまく源三の姿に、他の生徒達も思わず笑いそうになってしまう。
「138ページですね。
天武日本国が合衆国と同盟を結び、第三帝国と冬将軍に勝利したと」
「そうだ。
人を人とも思わぬ非道な行いを続けていたドイツと、合衆国と睨み合いを続けていたロシアは敗れた。
合衆国は2度とこの様な悲劇を招かぬ様、敗戦国の資源を奪ったり国の体制を変えさせたりしたのだ。
我が天武日本も合衆国に従い軍を海外に派遣した。
その結果決して少なくない犠牲者が出た。
我々が学ばなければならない大切な事。
それは、もう2度とこの様な大規模な戦争が起きてはならないと言う事だ」
教師は生徒達の顔を見回していたが、黒板に目を向けるとチョークで大きく字を書いた。
「我々の国を守っていく為に必要な事。
そして戦争を防ぐ為に必要な事。
『防衛力』と言う言葉を覚えておいてほしい。
国が何故攻め込まれて滅ぼされるのか。
それは、相手の国が『攻め込めば滅びるだろう』と思う程度の防衛力しか持っていないからだ。
そういった国は早晩世界の地図から姿を消してしまう。
織田総理は太平洋戦争での教訓を得て、さらに自衛軍を強化するおつもりだ。
防衛費に金をかけるのは最早世界の常識。
堅固な城砦を築けば、敵は反撃を恐れて近付いたりはしないからな」
黒板に『防衛力強化』と言う言葉を書いた後熱弁を振るっていた教師は、机の上に置いてあった教科書を閉じた。
「お前達も来年はこの倫橋高等学校を卒業する事になる。
学期末の試験に出る範囲は学んできた事の集大成。
日本史及び世界史も先程話した部分以外がどんどん出てくる。
しっかりと予習して良い成績を残す様に」
教師がそう言い終わった頃にチャイムが鳴り、静まり返っていた教室が生徒達の声で賑やかになり始めた。
「明日の期末試験、ちゃんと予習した?」
「俺はちゃんと勉強したから問題は何も無いな。
一夜漬けなんて馬鹿のする事だ」
「皆、追い込みかけたいなら今日の夜じゃなくて明日の朝にしろよ。
その方が何倍も頭に入るから」
3年C組の担任は『翌日の期末試験の為にしっかりと勉強する様に』と釘を刺し、教室から姿を消す。
担任がいなくなった後の教室は、何時もよりも多くの生徒が残って会話を弾ませていた。
「ゲン、お前はどう?」
「空を見てても大丈夫な位には勉強してるよ。
東大は目指してないけど、留年はしたくないからさ」
源三が両手を頭の後ろで組みながらそう言うと、男子生徒は爆笑して次々と彼の周りに集まってくる。
「本当、お前って面白い奴だよな。
こんな偏差値の高い学校にいる器じゃねえよ」
「コメディアン向きなんじゃねぇの?
でも、ホラ最近はそういうのが『トレンド』だって話もあるよな」
覚えたばかりの和製英語を使って源三をからかう生徒達。
仲間達の笑顔に囲まれながら純白の歯を見せている源三の姿を、霧原(きりはら)冴子(さえこ)は遠目からじっと見つめていた。
「どうしたのよ冴子、ボーッとしちゃって」
「あ、ううん……
何でもないよ、帰ろう」
クラスメイトの鯛良(たいら)鮎美(あゆみ)に肩を叩かれた冴子は机の上に置いてあった鞄を手に取り、教室から出ていく。
「はぁ……」
「なぁゲン、諦めろって。
冴子の親父は綾小路(あやのこうじ)財閥(ざいばつ)の傘下、古橋(ふるはし)産業(さんぎょう)の取締役なんだぜ?
庶民と金持ちの令嬢じゃあ住む世界が違う。
告白して相手が受けたとしても、向こうの両親に止められるのがオチだよ」
「そうそう、ああいうのは将来結婚する旦那様が決まってるの。
撃沈以前の問題だからなぁ」
冴子の背中を眺めながら溜息をつく源三を、周りにいる男子生徒が慰めた。
古橋産業は電化製品を扱っている企業で、天武日本ではトップクラスのシェアを誇っている。
無敵と言われていた綾小路財閥の後ろ盾もあった為、当時は『古橋に勝てる者無し』とまで言われていた。
「いや、頭では解ってるんだけどさ……」
源三はこの学校に入学してからずっと霧原冴子に思いを伝える事が出来ずにいた。
美しい黒髪、雪の様に白い肌、スレンダーな体型……
世界三大美女に匹敵するかの様な美貌を彼女は持っている。
日本一と言ってもあながち嘘では無い華麗な高嶺の花に多くの男子生徒が魅了されていたが、皆告白する勇気を持っていなかったのだ。
「それより、夏休み中はどう遊ぶ?
高校生活最後の夏休みだ。この前海難事故があったから海はパスするとして……
プールとか山とかさ。
富士山は難易度が高いから筑波山とかどうよ。
皆で登れば一生の思い出になるぜ」
机の上に地図を広げてああでもないこうでもないと議論を繰り広げる生徒達を見ながら、源三は椅子に座り頬杖をついた。
天武日本の1955年は、いわゆる『戦後特需』に沸いた年だった。
合衆国と同盟を組んでイタリア・ドイツ・ロシアを撃破すると言う『勝ち馬』に乗った天武日本。
その空前の好景気は秋葉原を活気に溢れた街へと変貌させていた。
「安いよ安いよ!
白黒テレビがこの価格で販売だ!」
「氷の冷蔵庫より、今は電気冷蔵庫の時代。
電気代もお安く済みます。
この機会に是非購入を!」
一家に一台車・冷蔵庫・テレビは当たり前。
裕福な層になるとクーラー・船・小型飛行機をも所有する時代。
冴子の実家も例外では無く、家に帰れば豪華な装飾品と大勢の使用人が出迎える形となっている。
(恵まれた人生だって皆は言う。
だけど私は……)
鮎美と共に帰り道を歩いていた冴子はそんな生活よりも束縛の無い自由な生活を望んでいた。
男子生徒が話していた様に彼女には既に結婚相手がいる。
快活で明るい好青年だ。
古橋産業が飲み込もうとしているライバル会社、香取(かとり)電気の社長の息子だった。
(悪い人じゃないのは解ってる。
誠実な人。私を愛そうとしてくれている。
でも実態は政略結婚。
私と彼が結婚すれば買収が波を立てずに成功するだけ。
どうして、親が決められたレールの上を歩かなければならないの?
私は、ゲン君の事を愛しているのに……)
クラスの人気者で成績優秀、決して偉ぶる事無く常に誰とでも同じ目線で会話する事が出来る男。
入学して初めて彼に会った時に冴子は一目惚れした。
彼の事を知る度にどんどん彼に魅了されていった。
それでも、好きだと言う勇気が出なかった。
傷付く事が、失恋するかもしれないと言う恐怖が彼女を躊躇させたのだ。
そうして何も言えないまま3年間が終わろうとしている。
もう、何にも逆らえずに日々が過ぎていくのだろうか。
そんな事を考えていた冴子は、鮎美が肩を組んできた為我に返った。
「冴子、『ゴーゴー喫茶』に興味無い?」
冴子が初めて聞く単語だった。
鯛良鮎美は入学当初からずっと仲良くしてきたクラスメイトで、今では姉妹の様に何でも話せる仲になっている。
「音楽がかかってるダンスフロアで楽しく歌って踊るのよ。
嫌な事なんてすぐに忘れられるわ。
浮世は辛い事だらけだけど、少しの間だけ忘れても罰は当たらないでしょう?」
「でも、明日は期末試験じゃない。
そんな事している暇なんて……」
「大丈夫大丈夫。
1時間かそこらで帰れば勉強も間に合うから。
新しい事への挑戦は視野を広げる事にも役立つでしょ?」
腕を組んで満面の笑みを見せる鮎美に対して、冴子は僅かに微笑んだ。
「1時間なら……」
「決まり!じゃあ早速案内するからね」
喜んで彼女の手を引き、冴子を引っ張っていく鮎美。
半ば強引な行動だったが、冴子は束縛から逃れる事が出来ないと言う現実に少しだけ反逆したい気持ちになっていた。
(確かにこのまま家に帰っても、決まりきった息苦しい日常が待っているだけ。
それなら、ちょっと冒険しても罰は当たらないわよね)
鮎美が言う『ゴーゴー喫茶』で踊れば、憂さ晴らしにはなるだろう。
そんな考えを抱いていた冴子はこの時、自分の身に降りかかる恐ろしい災厄に気付く事が出来なかった。
秋葉原の大通り、つまり電気街から少し脇道に入ると怪しげな裏路地が姿を現す。
自分1人でなら絶対に足を踏み入れる事の無い場所にいると言う事実が、恐れと高揚感を冴子に与えていた。
「ココが『ゴーゴー喫茶 テトロドトキシン』でーす。
早速入りましょ」
ずっと冴子と手を繋いでいた鮎美はもう片方の手でドアを開け、滑り込む様に中に入っていく。
裏路地のさらに奥にある店の中は薄暗く、僅かな光源が広いダンスフロアを照らしていた。
「いらっしゃい鮎美ちゃん。
一緒にいるのは御友達かな?」
スーツに蝶ネクタイと言う気取った格好で現れた中年男性が冴子を品定めするかの様に見つめている。
「そうなの、この店の素晴らしさを彼女にも教えようと思って。
冴子、この人は河豚田(ふぐた)繁友(しげとも)さん。
このゴーゴー喫茶のオーナーよ」
「宜しくお願いします」
「いやいや、そんなに硬くならなくても良いんだよ。
ココは歌って踊る事が目的の楽しい喫茶店だからね。
ホラ、皆楽しく踊っているだろう?
そろそろ別の音楽がかかる所さ」
口髭を生やした男性は笑顔を見せ、踊っている人々を指差した。
激しい曲調の音楽がフロア全体に流れると、女性達は熱にうかされた様に踊り陶酔状態に陥ったかの様な笑顔を浮かべている。
冴子が若干不審に思ったのは、ダンスフロアで踊っている者達の全てが女性であると言う事と部屋の隅に黒服を着た男達が立っていると言う事実であった。
「どうして、御客さんに男性がいないんですか?
それに、あの人達は……」
「表の看板を見なかったの?冴子。
このゴーゴー喫茶は女性しか入れないのよ。
男性が無理やり入ろうとしてきた時があって、その時からボディーガードを雇う様になったんですって」
四隅に立つ男達はサングラスをかけ、中には頬に傷がある者すらいる。
「さぁ、何もかもこの瞬間だけは忘れて踊りましょう」
不安がどんどん膨らみ、帰ろうかと思った瞬間冴子は鮎美に手を引かれ、ダンスフロアの中央に引っ張られた。
「ミラーボールを!」
河豚田がそう言った瞬間、天井からミラーボールが姿を現し、赤やピンクの光を発する。
「あら、随分可愛い子じゃない。
一緒に踊りましょう」
「歌って、騒いで!
思いっきり『今』を楽しみましょうよ」
髪の毛を染めた女性達が有名なダンスナンバーに合わせて歌い、時折狂った様な叫び声を上げる。
酔っぱらったかの様な動きで動いている彼女達の姿は不気味だった。
「ねぇ、鮎美。
ココってちょっとやばい所なん……」
踊り狂う大人の女性達に気を取られていた冴子は、謎の液体を霧吹きで吹きつけたハンカチを持つ鮎美の接近に気が付かなかった。
「むぐぅ!?」
振り向いた瞬間、冴子はハンカチで鼻を塞がれ悶絶する。
柑橘系の爽やかな匂いが鼻腔を刺激し、あっと言う間に鼻の穴を通り抜けていった。
「ゲホッ……
な、何をするの鮎美!」
「コレを吸うとね……
とっても気持ちが良くなるの。
ホラ、音楽を聴いて。この光を見て。
とっても素敵でしょ?
吸う前に見ていた時と全然違って感じられるんだから」
当たり前の様にハンカチを鼻に当て、思いっきり鼻で薬を吸い込む鮎美。
(ココは、違う。
普通の場所じゃない。逃げなくちゃ……)
意識が突然朦朧とし始め、足取りがおぼつかなくなる冴子。
そして聴こえてくるダンスミュージック。
明滅する光に意識を奪われた冴子は、何時の間にか踊り出していた。
「あっつい。
あっついのぉ……」
身体が火照る様に熱い。
踊っているとますます暑くなってくる。
そしてその火照りは下腹部にも及んでいた。
膣が潤み、愛液がパンツを濡らしていく。
「気持ちいい、最高!!
もっと踊っていたい!!」
発作的に冴子は制服の上を脱ぎ捨てていた。
猛烈に淫らな気持ちに包まれ、トランス状態へと導かれる。
男達が入口に鍵をかけ、『本日休業』の看板をかけた事にも冴子は気付いていなかった。
数分後に繰り広げられていた光景は、通常ならば考えられない異様なものだった。
若い女性客十数名が、全ての衣服を脱ぎ捨てて全裸で踊り狂っている。
その中には当然、霧原冴子と鯛良鮎美も含まれていた。
とにかく服が邪魔だった。
身体が火照る。
淫靡な気持ちに支配されて身体が止まらない。
強烈に男を求めている身体を鎮める為に踊り歌っていた冴子だったが、我慢の限界が近付いていた。
(したい……セックスしたい……身体が疼く)
身体の各部分の感覚が鋭敏になり、クリトリスが包皮から顔を出しひくついている。
太ももに滴り落ちていく愛液の量は尋常では無かった。
横を見ると鮎美もにやけた顔をしながら腰を振っている。
「ねぇ、河豚田さぁん。
友達を連れてきたんだから……
今回の御代は紹介割引にしてぇ」
「あぁ、解っているよ。
約束通り『ブリッジ』の値段は今回だけ3割引きだ。
また割り引いてほしかったら新しい御友達を連れておいで。
若ければ若い程大歓迎だからね」
そう簡単には開けられないであろう鍵のかかった部屋の中で、河豚田は醜悪な笑みを浮かべていた。
黒服を着ていた者達が全裸になり、荒い息を吐いている女性達に近付いていく。
滾った陰茎を尻に擦り付けられた女達は、当然の様にその剛直を自らの身体の中へと導いていった。
6人いた黒服とは別の男達が部屋の奥から姿を現す。
「どうだ河豚田、上玉はいるか?」
「今日来たばかりの客が絶世の美女ですよ。
是非お召し上がりください」
河豚田も上こそ先程と同じスーツ姿だったが、下半身には何も身に付けていない。
黒服達と同じ様に全裸の姿で現れた若い男は、興奮して踊り続けている冴子を見て唸った。
「確かになかなかの美人だな……
おいお前等、あの女は俺が手を付ける。
無用な喧嘩はするんじゃねぇぞ」
20代だと思われる若い男が、40代の河豚田や30代の男達を睨み付け、命令する。
彼等は文句を言うでも無くその若い男の指示に従った。
「熱い……
変な気持ちなのぉ」
高ぶる身体と心を抑える事が出来ない冴子は、後ろから若い男に抱き締められた。
「心配するな、すぐに俺の『蛇』でその疼きを鎮めてやろう」
男は胸を揉みながら、既に猛っていた肉棒の先端を膣にあてがい、一気に貫く。
純潔の花を散らされた冴子の全身に凄まじい痛みが襲い掛かったが、薬のせいなのかその痛みすらも快感に感じられた。
(わ、私……犯されてる……
強姦されちゃってるぅぅ)
肉棒が容赦なく奥へ奥へと叩き付けられる。
その痛みと快感に耐えられなくなった冴子は床にへたり込んだ。
「どうだ?俺の熱い『蛇』の味は。
お前の中で漲っているだろう?
俺の名は羽生(はぶ)晃(あきら)。
俺の蛇でお前を飼い慣らしてやるぞ」
下卑た笑い声をあげながら腰を振る男。
冴子は涎を垂らし、男のされるがままになっていた。
(あ、鮎美……?)
意識が混濁する中で冴子は鮎美のはしたない姿を見ていた。
2人の男の肉棒を片方ずつの手で扱きながら口でもう1本の肉棒の面倒を見つつ、騎乗位で4本目の肉棒を受け入れている。
「もっと、もっとこれ頂戴ぃ……
好きなの、この硬くて熱いのぉ」
理性をかなぐり捨てた表情でそう言い放つ鮎美。
呂律が回っておらず、その瞳は輝きを失い濁っていた。
「お前は具合も良いし、顔も合格点だな。
俺の情婦にしてやろう。
ブリッジを吸わせてやるから、俺の『蛇』を受け入れ続けるんだ。
いいな?」
羽生と名乗った男はそう言うと、膣の中でビクンビクンと脈動している肉棒をさらに奥へと突き入れる。
冴子は気絶してしまいそうな程の痛みと快楽に完全に心を許してしまっていた。
「う、受け入れます。受け入れますから……
もっとそれで私を突いてくださいぃ」
生まれたままの姿で、肉棒を抜き差しされる甘美な感覚。
今まで一度も味わった事の無い『自由』で淫らな宴が、彼女から正常な意識を失わせてしまっていた。
「素晴らしい締まりだ。
中に出すぞ。出すぞッ!!」
床に寝そべっている様な状態でさらに激しく腰を振られ、冴子はとても人には見せられない様な表情を浮かべる。
「はぁ、はぁ……
ひぃぃぃぃッ!?」
「おおッ……俺の蛇も喜んでいるぞ。
今まで味わったどの女の穴よりも心地が良い」
一番奥で男の肉棒の先端から精液が吐き出され、子宮の中へと注がれていく。
鮎美も中に出されたらしく、身体をビクビク震わせていた。
「念の為にもう1回やっておきましょうか」
霧吹きでハンカチに薬液を散布した河豚田が、そのハンカチで再び冴子の鼻を塞ぐ。
「この薬の名前は『ブリッジ』と申しましてね。
人間を性的陶酔へと誘う違法ドラッグなんですよ。
嗅ぐと身体が疼き、セックスの事しか考えられなくなる。
思考能力も著しく低下し、一定時間が経過すると強烈な禁断症状が始まります。
大体24時間位でその症状がピークに達するんですよねぇ。
とにかくこの薬を吸いたくてたまらなくなるワケです。
まぁ……今の貴方が私の言葉を理解出来るかと言えば甚だ怪しい所ではありますが」
「そんな事を今コイツに言ったってしょうがねぇだろ。
小難しい話なんか理解出来ねぇよ。
それより俺はこの女が本当に気に入った。
個室に連れて行くが、構わねぇよな?」
「勿論ですよ。
ウチの出世頭だ。
貴方に逆らう者なんているワケが無い……」
蛇の様な凄みのある目で睨まれた河豚田は、冷や汗をかきながらお喋りな口を閉じた。
「お前達は他の女で好きなだけ楽しんでおけ。
明日も新しい客をココに連れ込むんだぞ」
「了解しました」
女の身体を貪り続ける部下達を尻目に、羽生は冴子を奥にある別室へと運んだ。
ブリッジ。
『夢の世界への橋渡し』と言う意味の名を持つ禁断のドラッグ。
このドラッグは紅虎(こうこ)明命(みんめい)と呼ばれる組織が作り上げ、密かに天武日本に持ち込んだものである。
当時若くして官房長官を務めていた竹中(たけなか)尚人(なおと)がこのドラッグの精製方法を教え、大量生産に踏み切らせた。
しかし大っぴらに捌けばすぐに織田政権に目をつけられてしまう為、紅虎明命は別の反社会的組織にその薬をばら撒いてもらう様に頼んだのだ。
血生会(けっせいかい)。
天武日本の裏社会を牛耳る暴力団、その頂点に立つ超巨大組織である。
まずはすぐに悪事が露見しない様、大都会の片隅に小さなゴーゴー喫茶を開き、女性客を集めた。
そして人数が増えてきた所で一気にブリッジを嗅がせて万単位の金を要求する。
客も吸わずにはいられない為どんどん払い、暴力団の組員にしてみれば簡単に抱ける女が手に入るので良い事尽くめだった。
紅虎明命の最終目標は天武日本にいる女性全てをブリッジの力で変態女に仕立て上げ、無力化する事。
それが終われば男性。
戦わずして天武日本を自分達の支配下に置くと言う青写真を彼等は描いていたのだ。
ダンスフロアの奥にあった別室は、羽生が自由に使う事が出来る性行為専用の部屋だった。
明るく照らされた部屋の中に豪華なダブルベッドと3人は座れるソファが置かれている。
「これは最新式の高級カメラだ。
30万円はする代物でな……
『今』をハッキリと残す事が出来る。
俺の蛇が欲しいのならこっちを向いて笑顔を見せろ。
お前の美しい裸体を保存しておかなければな」
1955年当時、カラー写真はまだ一般的では無かったがフィルムによるカラー写真の技術は既に海外で完成されていた。
富裕層ならばカメラを購入し、高級な専門店で現像する事も不可能では無かったのだ。
「な、何でもします。
何でもしますぅぅ……」
冴子は頭が痺れる様な感覚に身を任せ、カメラの前でポーズを取り惜しげも無くその美しい裸体を晒す。
「今度は座って膣を広げるんだ。
女性器だ女性器。
お前の股間を両方の手の指で広げて見せろ」
どんな屈辱的な命令であろうと今の冴子は逆らえなかったし、また逆らうつもりが全く無かった。
ただ相手の肉棒を突き入れてほしいと言う一心で、火照る肉体を存分に見せ付ける。
「お前は素晴らしいぞ。
今までに相手をしたどの女よりも美しい。
薄桃色の膣の形状も完璧だ。
俺の女にしてやる。
例えお前に恋人がいようと強引に奪い取るだけだ。さぁ……俺の蛇をねだれ」
羽生は冴子をベッドに移動させると、彼女の眼前に屹立した肉棒を晒した。
「そ、それを、私のココに入れてください。
早く……早くぅぅ」
ベッドの上で先程と同じ様に膣を広げ、はしたなく『おねだり』を行う冴子。
虚ろな瞳に酔っぱらった様な口調、涎を垂らし常に荒い息を吐いている。
「ならば俺の蛇をもっと硬くする為の努力をしろ。
舌を這わせ、しゃぶるんだ」
カメラを構えながらおぞましい笑みを浮かべる羽生。
全裸の写真や、膣のアップを写真を撮る理由は2つあった。
1つは、単なる保存。
もう1つは、当然彼女に対する脅迫の材料にする為である。
己の貞操観念をかなぐり捨て、骨にしゃぶりつく犬の様に男の亀頭を咥え込む冴子。
「そうだ。
やれば出来るじゃないか。
先端部分を舌で刺激しろ。
上手に出来たら御褒美をやるからな。
解っているだろうが」
「解ってます、解ってますから……」
まるで玩具を取り上げられた幼児が取り返す為にだだをこねるかの様に、上目遣いで羽生の顔を見る冴子。
その、あまりにいやらしい顔と行為に甘美な背徳感を覚えた羽生はその姿も写真に残した。
「よし、口の中に出すのも良いものだが……
やはりお前の中にマーキングをしておかなければな。
お前は俺の所有物だ。
永遠に消えない印を刻み付けてやる」
一度カメラをベッドの端に置き、彼女の両足を手で広げさせた後片手で肉棒を膣の入口にあてがい、一気に突き入れる。
激しく腰を振りながら、時折カメラを両手で構えて何度も彼女の痴態を写真におさめていった。
「肉の壁が俺の蛇に絡み付き、扱きあげてくる。
美女で名器持ちとは、欠点が見当たらない女だなお前は。
俺は血生会の若頭だ。
お前が俺に尽くせば、何一つ不自由の無い生活を送らせてやる。
多少の我儘も聞いてやろう。
その代わり……お前は俺の愛を全て受け入れるんだ。
いいな」
「はい、愛します。
全てを受け入れます。
だからぁ……」
「欲しいのか?
俺の蛇から吐き出される白濁液が欲しいのか?」
肉棒を根元まで埋めた状態で羽生がそう聞くと、冴子は涙を流しながらこくりと頷いた。
羽生の征服欲が大いに満たされ剛直がさらに太く、硬くなる。
「精を注いでやるぞ。
いずれはお前に俺の子供を孕ませてやる。
俺はいずれ血生会の頂点に立つ男だ。
生まれてくるのが男だろうが女だろうが、お前と俺との子供をその後釜に据えてやろう」
羽生の脳内では既にそんな未来絵図が描かれていた。
女を好きな時に好きなだけ抱いてきた彼が、生まれて初めて本気で好きになり妻にしたいとまで思わせた女。
それが、霧原冴子と言う1人の少女だったのだ。
「出すぞ、出すぞッ!!
受け止めろ、全てを受け止めろぉぉッ!!」
「あ、あぐッ……
ハァ、ハァ……」
先端から吐き出された欲望の塊が、容赦なく彼女の身体の中を汚していく。
肉棒が何度も脈動し、その度に精液が冴子の膣の中へと注がれていった。
30分後、霧原冴子はバスタオルを羽織った状態で全身を震わせ涙を流していた。
「いいか、今日この場所で起こった事など何も無かった。
己にそう言い聞かせろ。
警察や両親に泣きつけば、お前の全裸の写真が全国にばら撒かれる事になる。
それだけじゃない。
2度とブリッジが吸えなくなるんだぞ。
その意味が解るか?」
バスローブを身に付けた羽生が葉巻を吸いながらそう言うと、冴子は首を横に振った。
「ではお前にも解る様に教えてやろう。
ブリッジの恐ろしい所は禁断症状だ。
1度でもブリッジを吸えばその24時間後に禁断症状が現れる。
身体が火照り、病的に男を求めるんだ。
街中でも構わず全裸になってしまうだろう。
その疼きを止め、正常な精神状態に戻る為にはブリッジを吸って男と性行為を行うしか方法が無い」
冴子は愕然とした表情で羽生の顔を見つめ、羽生は頷きながら下品な笑い声をあげた。
「ブリッジを吸わずに禁断症状を乗り越えようとしても無駄だ。
他の男とセックスを行ったとしても身体の疼きは決して消えない。
気が狂うまで男を求め続けるんだ。
そうなればもう、お前はお前で無くなってしまうぞ?」
犯され、脅されていると言う事実を冴子はハッキリと認識していた。
だからこそ、彼女の心は震えていた。
冴子は、自分を失っていた時の記憶が残っていたのだ。
(何であんな事を……信じられない。
薬のせいとは言え、私が自ら男を求めてしまうなんて。
私は暴力団の幹部とセックスしてしまった。
どうすれば……)
「深く悩み、考える必要など無い。
お前がすべき事はただ1つ、明日も同じ時間にこの場所を訪れる事だ。
そうすれば自分を失うと言う絶望から身を守る事が出来る。
河豚田には金を要求しない様に釘を刺しておくから安心しろ。
お前は何も無かったかの様に振舞って毎日俺に抱かれるんだ。
いずれは俺の家に住まわせてやる。
俺の家に来ても問題が起きない時期が来たら、解毒薬を注射してやろう」
ブリッジの薬効から逃れる手段は2つ。
苦しい禁断症状を耐え抜いて薬が完全に身体から抜けるのを待つか、血生会だけが所持している解毒薬を注射するか。
当然、解毒薬を注射する方が簡単で安全な方法である。
冴子は最早逃げ場所が何処にも無い事を自覚していた。
「今日は親に怪しまれてもつまらんから、早く帰れ。
お前と一緒に来た奴も既に帰宅している。
忘れるなよ、誰かに縋りついたとしてもその誰かは決してお前を助ける事が出来ない。
助ける術を持っていないからな」
羽生はそう言いながら冴子の顎に自分の手を添える。
冴子は歯を食いしばりながら涙を流す事しか出来なかった。
午後5時。
夏は夜の訪れが遅い為、橙色の夕焼けがまだ空を覆っている。
(どうして……どうしてこんな事に……
きっと鮎美も騙されてあの薬を嗅がされたんだわ。
またあんな風になってしまうの?
裸になって、男のアレが欲しいと言ったりして……)
ただひたすらに恐ろしかった。
自分がまた理性を失い、好きでもない男と寝てしまうかもしれないと言う恐怖。
そして写真と言う弱みを握られ脅迫されていると言う事実。
冴子は黒く塗り潰されてしまった自身の未来に戦慄した。
(助けて、誰でもいいから助けて!
壊れそうな私の心と身体を絶望から救い上げて!!)
赤子の様に泣き喚きたかった。
駐在所に駆け込みたかった。
だがそうすれば自分が破滅する事を冴子は一番良く理解していたのだ。
「ゲン君……」
怖気に包まれ、思わず自分で自分の身体を抱き締める様に両手で自分の両肩を掴む冴子。
精神的に追い詰められていながらも、自ら死を選ぶ事は出来なかった。
それもまた両親の破滅に繋がってしまうからだ。
心が苦しく感じられ、彼女の呼吸は乱れていた。
必死に深呼吸を行い、平静さを取り繕おうとする。
(もう、戻れない……
父さんと母さんをこの不幸に巻き込む事は出来ないのよ。
私が1人で背負うしか無いの。
私が沈めば、周りの人達が助かるんだから)
自宅の前で、冴子は何度も自分にそう言い聞かせた。
暴力団の幹部に目をつけられてしまった事で、冴子以外の人間に危険が及ぶ可能性が出てきている。
彼女はそれを理解しているからこそ、自分の異変を身内にも悟られるワケにはいかなかった。
「ただいま……」
ハンカチで涙を拭いた後、覚悟を決めて冴子は扉を開けた。
何時も通りの自分を演じなければならないと心に決めて……