ただ、現実世界と同じ様に人々の戦いは決して終わらず
続いていくのです。だからこそ、物語を終わらせるのは
難しいのだと思います。
ユファール・シャインスピリアの妹分を自称したクロンとの戦いから100年の月日が経過し、俺達は平和を謳歌していた。
天界人と戦っていた頃とは違い、今は誰かに虐げられる事も誰かが命を落とすと言う事も無い。
都市部の者達は街を発展させ文明を形成し、田舎に住む者は農耕民族としての使命を全うする。
俺とトモコに与えられた使命は、ひたすら子作りを行い仲間を増やすと言うものだった。
「私達の子供がクロンによって殺されていった時も、生き残っていた子供達がいましたからね。
でも、こんなに早く復興するとまでは思っていませんでした」
洞窟の外に広がっているであろう広大な農地や街を見ながら、トモコは嬉しそうにそう言った。
平地を見渡せる場所に居を構えたいと言うトモコの願いを聞き入れた俺は、岩山の頂上付近にある洞窟を見つけ出したのだ。
週に1度2人で食料を息子達に分け与えてもらう時以外は、ずっとこの洞窟内で暮らしていた。
「1年に1回、俺達が子供を作り下では子供達が同じ様に子供を作って増えていく。
クロンが襲撃してくる前と何も変わりはしない。
変わった事があるとすれば……」
俺は後ろからトモコを抱き締め、彼女の背中に怒張した肉棒を押し当てる。
「俺達がより性行為に特化した生活を送る様になった事だろう」
トモコは俺に背を向けたまま頷き、暫くの間外の景色を眺めていた。
トモコの願いを叶えた俺は、トモコにも俺の要望を聞いてもらう事にした。
前に住んでいた洞窟と違い、息子達が俺達を訪ねてくる事は最早皆無に等しい。
その為、山を下りる時以外はお互いに全裸でいると言う約束を交わしたのだ。
クロンとZEROが消えた直後、俺達は生まれたままの姿で互いの身体を貪り合った。
あの興奮と快感が忘れられず、俺は常に全裸で生活する事で欲情する心を保ちたいと思う様になる。
トモコも最初の頃は恥ずかしがっていたが、2人だけの時間が圧倒的に長い為徐々に慣れていった。
「子供が生まれてから1ヶ月経ちましたからねぇ。
そろそろまた励まないと」
「ああ、この世界を繁栄させる為には俺達の交尾が必要不可欠だからな」
俺は戦い続ける事に疲れていたからこそ、ただひたすら交わると言う道を選択したのだろう。
俺の我儘のせいで多くの仲間が犠牲になり、世界そのものが一度白紙に戻った。
後悔が全く無いかと言えば嘘になる。
だが悔やんでも何かが変わるワケでは無い。
俺は今すべき事をトモコと共に行うのだ。
そうする事でしか俺は今の世界をより良い方向へ導く事が出来ないし、トモコを幸せにしてやる事も出来なかった。
水色の淡い光に包まれ、キラキラと輝いている様に見えるトモコの裸体。
人間しか見る事が出来なくなった俺は、彼女の美しさを確かめるかの様に彼女を凝視していた。
「毎日毎日見ていて、飽きたりしませんか?」
「飽きていたら何百年もお前と交わったりしないだろ。
完璧な美貌を持つお前との交わりに飽きたなんて贅沢な事を言ったら罰が当たる」
今度は前から彼女を抱き締め、舌を絡ませ合う。
熱い滾りが、我慢出来ないとばかりにトモコの腹に触れたまま激しく脈を打っていた。
「御世辞だったとしても、嬉しいですよ」
「馬鹿、俺は心からそう思ってるんだ。
お前ほどの女はそうそういない」
股間の疼きが、トモコを愛し続けていると言う何よりの証明になる。
気が遠くなる程の長い時間の間に、何度肌を重ね合わせたのか最早数える事など出来ない。
そして何百回、何千回も交わり続けた結果、トモコの肉体に飽きるどころかもっと多く繋がりたいとさえ思っていた。
「俺がそこに寝るから、お前は俺の上に乗ってくれ」
息子達が作ってくれた石のベッドの位置を手で探り当てると、そのまま冷たい石の上に寝そべる。
ほぼ垂直に反り返り猛っているであろう俺の肉棒を握ったトモコは、愛おしそうに頬擦りをした。
「何回触っても凄いですね……
ヴォルフさんのこれ。
生命力を感じます」
毛に覆われた股間から飛び出ている性欲の塊に舌を這わせ、刺激を与え続けるトモコ。
愛おしくてたまらないと言った表情を浮かべ、俺を気持ちよくさせる事に全力を尽くしてくれていた。
「くッ……
そんなに激しくされると、出そうだ」
「出しちゃってもいいんですよ。
1回出した位じゃ、ヴォルフさんのは小さくならないでしょう?」
甘いものを貪る子供の様に、俺の剛直を舐めた後先端を咥えさらなる刺激を与えてくる。
欲望が弾けそうになる寸前でトモコが一旦咥えるのを止め、いきり立つモノを見つめた。
「ああ、凄いです。
こんなに血管が浮いて、硬く張り詰めているなんて。
何度もした事があっても、コレを受け入れると思っただけでゾクゾクしちゃいますよ」
初めての交わりから暫くの間、トモコは初々しく緊張する事が多かったが今は俺と交わる事に慣れ切っている。
今も片手で俺の肉棒を握り締め舐めながら、もう片方の手で自慰行為を行い準備を整えていたのだ。
「私の中に入れたいですよね?」
「ああ、勿論だ。
お前の中に入って、欲望の全てを解き放ちたい」
2人きりでいる時でもなかなか見せない、少し意地悪そうな笑みを浮かべるとトモコは石のベッドの上に乗った。
片方の手で欲望の滾りに触れ、その先端を膣口に当てる。
そのまま腰を沈めると彼女の中にそれがずぶずぶと飲み込まれていった。
脈動する肉棒の先端から根元までが、にゅるにゅるとした肉の壁に呑み込まれていく。
トモコは根元まで受け入れた後、俺の胸に両手を伸ばし優しく微笑んだ。
「この大きさは、なかなか慣れないです……
ヴォルフさんのが大き過ぎて」
「気持ちいいよ。
俺のに絡み付きながら、時折きゅっと根元を締め上げてくるのが堪らないな」
本能的に手を伸ばし、決して大きくは無いが小ぶりで美しいトモコの胸に触れる。
「全部貴方のものですよ。
胸も、私のお腹の中も……ヴォルフさんに捧げます」
「動いてくれ。
お前の中でもっと快感を感じたいんだ」
暗闇の中に見えるのは青白い光に包まれたトモコの裸体だけ。
トモコが俺の肩に両手を乗せた状態で腰を上下に振ると、形容し難い程の快感が全身を駆け巡る。
「俺のモノが擦られて……
この調子だとすぐに達してしまいそうだ」
「何度でも出してください。
ヴォルフさんが私の身体で気持ち良くなるのは、私にとっても嬉しい事ですから」
緩急をつけながら、俺の張り詰めたモノに刺激を与えていく。
トモコも最初こそ俺を悦ばせる技術など備えていなかったが、何度も交わる事によって直感的にその力をつけていった。
今ではサイファとした時よりも強烈な快楽を俺に与えてくれている。
「あぁ、凄いです……
私の中で、どんどん大きく硬くなっていっているのが解ります」
「射精する時には根元が膨らむから、もっと解り易いぞ」
トモコは単に上下に擦るだけでは無く、腰を右や左に振ってグラインドさせる事で異なる刺激を与えてきた。
俺も与えられている快楽を貪りたいと言う本能に抗えず、下から上へと肉棒を突き上げる。
「あッあはッ、ヴォルフさんのが私の奥まで入りたいって動いてるぅ」
「中に出したくてウズウズしてるんだ。
限界が近いな」
幸せだった。
多くの者達の屍、尊い犠牲の上に俺とトモコの幸福が成り立っている。
世界がリセットされたからこそ、俺はこうして肉欲に溺れる事が出来るのだ。
(皆、許してくれ……俺は疲れたんだ。
命をかけたやり取りをずっと続けていく事に。
新しい世界の創造主となって、子を成し続ける方が俺にとって幸せな事だったから……)
目の前に、欲情して全てを俺に預けているトモコの姿がある。
汗ばんだ肌、いやらしい表情……
肉の交わり以上に素晴らしい事がこの世にあるのだろうか。
少なくとも俺には交わり以上の幸福など思い浮かばなかった。
この営みをずっと続けていたい。
「そろそろ……出すぞ」
「出してください。
私の中に!ヴォルフさんの全部!!」
トモコも欲情する気持ちを抑えられなくなったのか、今まで以上に激しく腰を振ってくる。
結合部分が溶け合って、本当に『1つに繋がった』様な錯覚すら覚えた。
「うッ、ウオオオオオッ!!」
「あ、ああッ、出てる……
ヴォルフさんのがビクビクしながら、私の中にぃ」
最奥まで突き入れ、根元が玉葱の様に膨らんだ瞬間、俺は果てていた。
獣人特有の、一滴も外に出す事無く精液を相手の体内に吐き出す為の変化。
膨張と収縮を繰り返しながら、白濁液をトモコの中へと注ぎ込んでいく。
「ま、まだ出るんですか?
硬いままで、こんなに出るなんて……」
快感に負け俺に覆い被さってきたトモコを抱き締めながら、俺はさらに精液を放出していった。
「暫く、このままの状態でいてもらってもいいか?」
「構いませんよ。
私も疲れちゃいましたから……
ヴォルフさんの、全然萎えないんですね。
そんなに溜まっていたんですか?
沢山出したのに硬いままだなんて……」
寝そべったままの状態で、激しく脈動を続ける剛直をトモコの中に差し込んだまま俺は荒い息を吐いた。
根元の膨らみは収まった為、恐らくトモコの膣から精液が漏れ出ているだろう。
「久しぶりに激しく交わったせいか、興奮が全く収まらないな。
続けさせてくれ」
「もう、ヴォルフさんは性欲の塊ですね。
でも、動けませんよ」
俺と同じ様に汗だくの状態になっているトモコの姿が愛おしい。
股間がさらに漲ってくる。
「お前は動かなくてもいいんだ。
俺が勝手に動くから」
軽くトントンと腰を突き上げると、トモコは抱き合った状態のままだらしない表情を浮かべた。
「あうッ。
さっきより大きくなってませんか?」
「かもな……お前の中は飽きないよ。
出来る事なら、ずっと繋がったままでいたい位だ」
お互いがお互いを離さない様にしっかりと抱き締めたまま、下半身だけが欲望を解き放ちたいと動いている。
肉棒に快感を与える事しか考えられない。
彼女の身体も快感に震えているのか痙攣を繰り返していた。
「私もです。愛しています……
ヴォルフさんと、何時までも一緒にいたいです」
「好きだよ、トモコ……
俺もお前とずっと一緒にいたい。
一緒に生きていこう。
もう、お前の手を離さない」
繋がったままキスを交わし、互いの気持ちを確認する。
仲間の姿や、恋い焦がれていた妹の姿が脳裏をよぎった。
後悔が無いと言えば、嘘になる。
俺はきっと、永遠なる時間の中で懺悔し続けながらトモコと共に歩んでいくのだろう。
俺はそういう生き方しか出来なかったし、トモコには純粋無垢な『子供』のままでいてほしい。
悩み苦しむのは俺1人だけで充分だ。
俺は目の前にトモコがいてくれる幸せを噛み締めていた。
ヴァルーも、スカイロンも滅びた。
この世界で産声を上げたのは獣人と天界人の間に生まれた全く新しい種族だ。
そして俺達が子供を作り、繁栄させていく。
俺にとっての幸福な世界は終わりを迎える事無く続いていくだろう。
【2010年 9月5日(日) 午後7時 東京都 プラナス本社ビル地下監禁室】
黒沢美香にとって、氷室零は己の野望を実現させる為の手駒に過ぎなかった。
氷室零が黒沢グループの為に働く『広告塔』になれば、預金を行う顧客も増大するだろう。
クリーンなイメージが付けば、融資を頼んでくる客も増える為銀行としての儲けも増える。
そして、天才的な頭脳と溢れるばかりの才能を持つ零と美香が1つとなって子供が生まれればその子供が優秀な跡取りになる事もほぼ決定と言って差支えが無い。
黒沢グループにとって不利益になる事は何も無い。
そして美香は零を虐げる事に残りの人生の意味を見出そうとしていた。
「だらしないわね、こんなに大きくしちゃって」
全裸の状態でベッドに寝かされた零。
手足が縛られ身動きが取れない。
失明していたが不必要なハズの黒いアイマスクで目も塞がれ、勃起した陰茎の痛みに耐えていた。
「フフ……苦しいでしょ。
何せカタクナールΩを投与された後、1時間もこのままの状態だったハズだから。
カッチカチになったモノを自分で慰める事も無く、激痛を受け入れ続ける。
辛いでしょうね。
でも私が姉様を失った痛みや苦しみに比べたら大した事は無いわよ」
監禁室に零を運び込み、絶対に監禁室に人を近付けない様部下に命令した後扉の鍵をかける。
密室となった冷たいコンクリートの部屋の中で美香もまた生まれたままの姿になっていた。
「アンタなんか、こういう扱いで充分よ。
どう、気持ちいいんでしょ?」
零を縛り付け、自由を奪っていると言う征服感に満たされている美香。
ベッドの高さと同程度の椅子に座った状態で足を伸ばし、両足で肉棒を挟み込む。
「小さいのかと思ってたけど……
結構大きいのね。生意気だわ。
ホラ、私の目の前で無様な姿を見せなさいよ。
醜態を晒して射精しなさい」
擦る事で相手は快楽を得ると言う最低限の知識だけは持っている美香。
足の裏を皮が剥け露出している亀頭に擦り付け、上下に動かす事で刺激を与える。
「く、うううッ……」
零は言葉を発する事だけ許されており、情けない声をあげた。
美香の心に眠っていたサディズムが大いに満たされる。
「ハハッ!
天才ピアニストが聞いて呆れるわ。
無様な姿を晒してよがってる!
コレがアンタの本当の姿なのよ!
万人に持て囃される優しい人格者なんてのは仮の姿。
アンタは姉様を殺し、アンタの親友を見殺しにした。
そして実の妹とセックスをしたいなんて思ってる。
社会から拒絶されても仕方の無い変態野郎。
私がアンタを引き取ってあげたんだから!」
身動きが取れない零を嘲笑い、罵倒しながらさらに激しく硬い剛直を足の裏で扱き上げる美香。
一定の快感こそ得られるがあまりにも硬くなった陰茎は少々の刺激では射精する事が出来ない。
「あらあら、汚い液体がアンタのモノから漏れ出てきてるじゃない。
我慢出来ないんでしょう?
だったら、私に懇願しなさい。
アンタの口からそういう言葉が聞きたいわ。
『入れさせてください』って頼むのよ」
陰茎から足を離し、足を組んだ状態で意地悪な笑みを浮かべる美香。
零の股間は爆発しそうな程に膨らんでいながらも、射精が出来ず耐え難い程の激痛が襲ってくる。
「……ずっと、君の目の前で謝りたかった」
痛みに耐えながら、零は何とか言葉を発した。
物を見ると言う機能を失った瞳から、涙だけが流れ出る。
「君の言う通りだ。
僕は桜華に辛辣な言葉を投げつけ、彼女を自殺に追い込んでしまった。
目が見えなかったからと言う言い訳も豊の死の前では通用しない。
瞳に対する欲情に対しては言い訳そのものが無意味だ。
最低の人間だよ、僕は」
「そうよ!
アンタはアンタが思っている以上に非情で、人の気持ちを理解出来ない奴なの!
そのうえアンタを支えてきた妹と結ばれたいとすら思っている。
性欲に支配された獣じゃない。
私が引き離してあげて正解だったわ。
襲われてたかもしれないものね」
美香が言い放つ言葉の1つ1つが、零に重くのしかかり、彼の心を抉っていった。
償いたいと言う気持ちは嘘では無い。
だからこそ零は美香と結婚した。
美香の暗闇を払う事が、自分の生きている意味に繋がると思ったからだ。
「僕は、酷い人間だ。
桜華の心を、気持ちを、理解する事が出来なかった。
彼女があれほど心の綺麗な人間である事を解っていれば、あんな事にはならなかったのに……
美香、君は被害者だ。
許してくれ、心から君に謝罪したい」
目の前で面と向かって謝る事が出来なかった。
零はそんな気持ちを抱えており、自分の心を偽る事無く美香に己の率直な気持ちを伝える。
一方美香は零に謝罪されても尚、心に負った傷は消えないままだった。
「……私がこの5年間どれだけ苦しい日々を送ってきたか、アンタには解らないでしょうね。
私にとって姉様はこの世界そのものだった。
どんなものを犠牲にしてでも守らなければならない私の全てだった。
憧れていた。慕っていた……
アンタが私から姉様を奪ったのよ!
灰色の日々を過ごしてきた。
姉様の後を追う事すら考えた。
私に残されたのはアンタへの復讐心だけ。
アンタの仲間のせいでそれすら奪われた。
どんな気持ちで私に生きていけって言うの?
ねぇ、教えて……教えなさいよ!!」
椅子から立ち上がり、大粒の涙を流しながら思いのたけをぶちまける美香。
零の側に寄り、頬を何度も平手打ちしながら泣き崩れた。
「僕の人生も灰色だった。
醜い自分と世間から評価を受ける自分とのギャップに苦しんできた。
君が僕を殺して、解放してくれると思った。
でもその考え自体が間違っていた。
君が僕を殺してしまったら、君にさらなる罪の意識と苦しみを与えてしまう事になる。
傷付け合うのでは無く……共に歩いていくんだ。
一生をかけて、君に償いたい。
僕に償わせてほしい。
君が望んだ事なら、何でもすると誓うよ」
零の『謝罪したい』と願う気持ちは、心の底から出たものだった。
美香も零が本心からその言葉を発している事を悟り、ベッドの上に乗る。
「……さっきの続きよ。
『入れさせてください』って私に頼みなさい。
アンタとするのは嫌だけど、脂まみれの中年親父とするのはもっと嫌。
アンタとの間に子供を作る方がまだマシだわ」
「入れさせてください」
美香が零にアイマスクをさせたのは、『万が一にも自分の醜態を見られない様にする為』だった。
零が視力を失っている事は美香もよく解っている。
だがそれでも潜在的な恐怖を感じ、零の視界を塞がずにはいられなかった。
「光栄に思いなさい。
私とこういう事が出来るって言うのは本当に幸運な事なんだから。
プラナスの女社長、天武日本の首都を牛耳る巨大銀行のトップがアンタの相手をしてあげるのよ。
殺したい程憎いアンタと……
ひぐッ!?」
美香は零の前で自慰行為に及ぶ事を拒絶した。
それ故に膣は前戯を行っていない為湿っていない。
硬くなった肉棒の先端を強引に押し付け、美香の膣内に沈めていく。
繋ぎ目から鮮血が滴り落ち、想像を絶する程の痛みが美香に襲い掛かった。
「ふ、フフフ……
本当はアンタの妹とこういう事をして、童貞を卒業したかったんでしょう?
残念だけど、アンタの初めての相手はこの私よ!
悔しいでしょうね、思っている事を全て見抜かれたうえにだらしない表情を私に晒すって言うのは」
内臓が腹から出てくるのではないかと思う程のきつい痛み。
繋がっているだけでも気絶しそうな程痛いが、零が射精する為には美香が動かなければならない。
「美香、痛いのなら今日は開通だけで終わらせておいた方が……」
零の美香に対する気遣いが、美香を苛立たせ天邪鬼にさせる。
「あ、アンタに心配されたくないわよ!
私の身体の事は、私が一番よく解ってるんだから!
私の中でサッサと射精しちゃいなさい。
アンタの仕事は種馬になる事なんだし」
美香の中は狭く、硬く大きくなった肉の砲身全てが強く締め付けられる。
カタクナールΩを服用していた零は完全に勃起していた為、絶頂に達しにくい状態になっていた。
「ほ、ホラ……出しちゃいなさいって。
早くしなさいよ、もう!」
本音を言えば、1秒でも早く肉棒を抜いて泣き叫びながら床の上を転がっていたかった。
誰もいないのならば、彼女は迷わずそうしていただろう。
だが零に対する敵愾心と彼女自身のプライドがそれを許さなかった。
(馬鹿、馬鹿、馬鹿!
早く出しちゃいなさいよ種馬!!
アンタの役目は白濁液を私の中に撒き散らして私を妊娠させる事だけなんだから。
私の中で気持ち良くなるだなんて論外なの。
射精して終わらせて!)
あまりの痛みに、腰を浮かせる事すら出来ない。
涙を流しながらゼエゼエと喘いでいる美香の腕を、零の手が掴んだ。
「美香……
君が痛くてどうしようも無いと言うのなら、日を改めよう。
君が苦しみ続ける事は、桜華だって望んでいないハズだ」
美香を思いやって咄嗟に出た言葉だったが、美香の心は激しくかき乱される。
「……アンタがッ!姉様のッ!
何をッ!解ってるって!言うのよッ!!」
激しい怒りで血がのぼり、痛みよりも怒りの感情の方が勝った。
零に余計な事を言わせない様に、怒りに任せて腰を何度も上下に振る。
「姉様の事なんて、何も解ってないくせに!
姉様は聖女なのよ。
汚れる事無く、最後まで純潔を貫いた。
私ですら姉様の光には及ばない。
その光を、アンタが消した!
アンタの身勝手な考えで……」
零は何を言われても我慢しようと心に決めていたが、遂に感情が弾けてしまった。
「僕は、綾小路財閥が天武日本を征服しようとした企てに巻き込まれる形で視力を失った!
桜華に罪は無いのは、今ならよく解る。
だけど、君の父親はどうだ?
間接的に僕の視力を奪った人間じゃないか。
そして君はその父親の娘だ。
君だって褒められた人間じゃない。
それは君が一番よく解っている事だろう」
殴られる事も、罵倒される事も覚悟して零はそう言ったが、美香の反応は意外なものだった。
「五月蠅い……五月蠅いわよ、零!
そんな事、私だって解ってる。
御父様は罪を犯した。
私だってそれを止める事が出来れば、姉様の自殺を食い止める事も出来たハズ。
でも出来なかった!
あまりにも幼かったから。
御父様の野望を見抜けなかった……」
美香は、誰にも話す事が無かった罪の意識を零に告白した。
自分が何かに気付いていれば、最悪の事態を回避する事が出来たのかもしれない。
13歳の美香には何もする事が出来なかった。
そして桜華の自殺も止める事は出来なかったのだ。
「しっかりした慰めの言葉を私がかけてあげられれば、何かが変わったかもしれない。
姉様の気持ちを死から遠ざける事が出来たんじゃないかって……
結局私も、アンタとそんなに変わりはしないのよ。
姉様を救えなかった」
零の胸の上で拳を握りしめ、やるせない気持ちに包まれる美香。
常に気丈に振舞ってきた美香であったが、破瓜の痛みと怒り続けると言う行為の苦しさが美香の弱音を引き出していた。
美香もまた、孤独だったのだ。
零と同じ様に、痛みを抱えながら5年と言う月日を過ごしていた。
「僕は、君を愛する事は出来ない。
僕は瞳を愛しているし、君も僕に愛される事は望んでいないだろう。
でも僕は、君に対して償う事、支えていく事は出来るハズだ。
君の心を癒やし、正しい感情、正しい方向へと導いていく事は不可能じゃない。
僕と一緒に歩いてくれないか、美香。
僕もまた、君を必要としているんだ」
零は一切嘘をつかず、正直な気持ちを口にした。
シスコンである事を隠さず、そして零もまた痛みを感じているからこそ美香が側にいてくれる事を望む。
瞳にとってもそれが幸せな結果を生むと信じていた。
妹から離れる必要があると感じていたのだ。
「……アンタみたいな変態と一緒に歩く?
笑えない冗談ね。
でも、そうするしか無いか。
アンタには姉様の代わりは出来ないけれど、他にしてもらう事が山程ある。
奴隷の様にこき使ってあげるわ。
覚悟しておきなさいよ」
涙を腕で拭い、美香は精一杯の強がりを見せた。
繋がっている状態は継続しており動く度にかなりの痛みが股間を貫くが、終わらせる為にも動かなければならない。
美香は覚悟を決めると、痛みに耐えながら上下運動を再開した。
「こうやって動いてるのも痛いんだからね。
早く射精してくれる?」
「君が僕にカタクナールΩを飲ませたからだろう。
自業自得だ」
お互いを覆っていた黒い霧が、晴れていくかの様だった。
本音を言い合い、本気でぶつかり合った事で奇妙な親近感が育まれている。
「ああもう、痛過ぎ……
動く度に身体が軋む様な痛みがやってくるんだもの。
アンタが射精してくれれば終われるのに。
まだ出ないの?」
「男だって射精する機械じゃないんだよ。
雰囲気ってものがあるだろう。
いやらしい気分になる必要がある。
薬で無理やり勃起させられても、そういう気持ちにならなければ絶頂は訪れない」
美香側がまるで感じていないのも零が射精出来ない理由の1つだった。
激痛で感じるどころでは無く、肉棒を刺激する要因の1つである愛液が殆ど分泌されていない。
「雰囲気って、アンタねぇ……」
「……今解った。
その遠慮無しに何でも言ってくる感じ。
誰かに似てると思ったら、あかりさんに似ているんだ」
唐突に出た名前に美香は面食らった後、歯を食いしばりながら愚痴を吐いた。
「あの女のせいで私は負けたって言うのに……
私とあの女が似てるですって?」
「そう思わないか?
あかりさんだって、相手の心に土足で上がり込んでくる。
そして相手の心をしっかり掴むんだ。
それは才能の1つだよ」
美香が社長として成功を収めてきた要員の1つに、美香の物怖じしない性格があった事は確かだ。
白鳥の大きな助けこそあったが、銀行の看板でもある彼女が人間関係を築けなければ話にならない。
相手を憤慨させる事もあったが、自分の心を嘘をつく事無くストレートに表現する彼女の性格は喜ばれる事もあった。
「君は嘘がつけない。
思った事は自分の言葉で言うし、間違っていると思った事は実行出来ない。
最後の最後君が僕を撃つ事が出来なかったのもそのせいだ。
君は心が綺麗なんだよ」
「私が……?」
人から初めて言われた言葉だった。
美香は今まで、父親である輝にも褒められた事が無かった。
ただああしろこうしろと命じられていただけで、そこには何の喜びも無かった。
唯一美香を評価してくれたのは桜華だったが、そういう褒め方をされた覚えが無い。
「ま、まあ……
私はアンタと違って出来る女だから。
そうよ、私に出来ない事なんて何も無い。
アンタをその気にさせる事だって訳無いわ」
美香の様なプライドの高い人間は、褒められたり、おだてられたりする事に対して非常に弱い。
プライドが高ければ高い程正当な評価を望んでおり、社会に認められたいと思っているからだ。
「動けるわよ、さっきよりかは……
どう、兄さん」
零がどういう人間であるか、美香はよく知っている。
相手の懐に入り、瞳の声色で零の耳元にそう囁いた瞬間肉棒がさらに太くなった様に感じられた。
「あははは、単純!
そうよね、アンタは妹とセックスする事が望みだものね。
どうせ目が見えないんだから妹としてる気分にでもなりなさい。
射精してくれれば私も助かる」
零は自分があさましい、最低の人間である事を美香によって改めて認識させられる。
美香の声は瞳の声より若干低いが、その気になれば瞳の声を美香が真似する事自体は簡単だった。
「ねぇ、兄さん……
私も兄さんと繋がりたかったの。
解るでしょう?
私の中に入っているのが。
兄さんの為なら、何だってしてあげられる。
兄さんに尽くす事が私の喜びだから」
そういう才能があるのではないかと思う程に、美香の声は瞳の声を完璧に真似てみせる。
加えて演技も相当なもので、零は相手が美香である事を知りつつも欲望が膨れ上がっていくのを感じていた。
(あ、ああ……瞳、瞳ぃ……
大好きなんだ。
僕は瞳の事が……)
獣と化した零は下半身をうねらせ、肉棒を下から何度も叩きつけようとする。
美香も甘い言葉を囁き、零を興奮させる事だけに集中した。
「ああ、兄さん!
兄さんの熱いのが、私の中で暴れているの!
もっと動いて兄さん、私の身体を滅茶苦茶にして!」
まるで自分が黒沢美香で無い様な声と演技は、美香自身の身体にも影響をおよぼす。
自然と腰が動き、愛液が潤滑油となって勃起した陰茎に快感を与えていった。
「瞳、瞳ィ!!
愛しているよ、瞳!!」
「兄さん、兄さぁん!!」
何時の間にか激しく動いていた美香の身体。
そして艶めかしい『瞳の声』……
零の興奮が頂点に達した瞬間、彼は美香の中に己の欲望を躊躇なく吐き出す。
疑似近親相姦と言う状況に異様な興奮を覚えたのか、射精量も回数も尋常なものでは無かった。
「本当に妹の事が大好きなのね、この変態!
でも、まぁ良いわ。
コレでアンタとセックスするって言う目標は達成出来たんだから」
瞳の演技を止めた美香の声を聞き、零は我に返る。
凄まじい自己嫌悪に包まれた零は、今すぐ何処かの崖から飛び降りたい衝動に駆られた。
「ああああああ!!
僕は、最低だ!!」
「フン……
結構楽しめたわよ。
興奮するポイントさえ解ってしまえば案外楽だったわね。
1回で妊娠すれば良いんだけど、面白かったからまた相手してあげてもいいわ……
兄さんの為なら」
ぬるりと肉棒が抜けた後、その声色に反応して萎えかけていたモノがまたむくりと起き上がろうとする。
あまりにも解り易い零の性欲を目撃した美香は思わず笑ってしまった。
「駄目だ……
僕は、本当に駄目な男だ……」
「良いんじゃないの?正直で。
アンタの事は嫌いだけど、その腐った性根は面白いわね。
その醜態を私に見せてくれるなら、何回だってさせてあげるわよ。
何なら瞳に今の一部始終を動画にして送りつけてやりたい位……」
零は身体を拘束されてはいたが、美香の非情な言葉を聞いた瞬間暴れる。
「それだけは、それだけは勘弁してくれ!
何でもする、何でもするから!」
半分勃起したペニスを振り回しながら身体を揺らす零。
美香の方も全裸の状態で膣から血と精液を垂らしつつ思い切り笑った。
「あははは、もう傑作!
アンタほど笑える愚かな人間はいないわね。
これからもアンタで遊ばせてもらうわよ。
嫌とは言わせないわ。
結婚と言う奴隷契約を結んだ様なものなんだから。
返事は?」
零は自分の性癖の全てを美香に見せてしまったと言う絶望感に苛まれる。
逆に、美香は零の滑稽な姿が自分にとっての救いになる事に気付き始めていた。
「はい……」
完全なる敗北宣言だった。
零は美香に服従する事を受け入れ、逆らう事が本当に死を意味する事を理解する。
その一方で美香は、零の堕落しきった人間らしさに魅力を感じていた。
(コイツ……
気取ってる嫌な奴って言う印象しか無かったけれど、こういう愚かな一面も持ってるんだ。
ちょっと共感しちゃうな……
私も本当はアンタと同じ類の人間なのよ、零)
美香もまた、桜華と結ばれたいと願う屈折した心を抱えている人間だった。
男に性的興味を持てない、レズビアンだったのだ。
勿論、それは口が裂けても言う事が出来ない秘密だった。
美香にとって、男性とのセックスは『行為』でしか無かった。
そこに愛は無かったし、心から欲情する事も皆無に等しい。
彼女は『レズビアン』に分類されるタイプの人間だが、一般的なレズビアンと異なる点がある。
それは勿論、『女性との性行為を人生の中で経験した事が無い』と言う点だ。
彼女にとって愛情を捧げる唯一の存在は桜華であり、性的対象として見る唯一の人物でもあった。
だがそういう感情を抱く前に桜華が自殺してしまった為、彼女は『女性に対して欲情するが性的経験が無い』と言う特殊な状況に陥ってしまったのだ。
もし桜華と思いを遂げていたとしたら、例え子供を作る為だとしても男とセックスする事に対してより抵抗が強くなっただろう。
美香はセックスそのものが初めてだった為、男性とそういう行為をする事自体に大きな抵抗は無かったのだ。
勿論、相手が誰であれ桜華以外の人間に自分の欲情した姿を曝け出す事は絶対に無いとも思っていたのだが。
美香は自分が『潜在的レズビアン』である事を薄々理解していた。
特殊性癖を持っているのは自分も同じで、本当は零を責める事が出来る立場には無いと言う事も。
だが、それが零に知られていない以上、とことん零を弄び蔑んでやろうとも思っていた。
「コレで終わりになんかしてやらないわよ。
アンタが己の恥を認識する為の行為はまだまだ続く……
あそこが痛いからもう『下』は使わないけれど、『上』で遊んであげるわ」
身動きが取れない零の股間に舌を這わせ、それほど大きくない胸が根元付近に触れる。
「強精剤の効果が確実に出てるわね。
大きくしちゃって……
アンタは今私に恥ずかしい所を全て見られているのよ。
アンタは私の裸が見れないけど。
シスコンらしく妹の裸でも想像してなさい」
亀頭部分を舐めながら、手で乱暴に扱く。
痛くて気持ち良くないと感じる男の方が多いが、零の怒張した肉の竿はよく硬くなり重力に強く逆らっていた。
「僕の人生において近くにいる女性は瞳だけだった。
妹が僕の性の目覚めとなり、愛したい対象へと変わっていくのは自然な事だったんだ。
君と同じだよ、美香……
愛する者を簡単に変える事は出来ない。
例えそれが実の妹であったとしても」
「アンタみたいな変態と一緒にしないで頂戴。
私は姉様の事を神聖視してるのよ。
汚れの無い身体。透き通った肌。
誰にも汚させない。絶対に守るって誓った。
結局、守れなかったけれど……
そんな事をしたいと望んだ事は一度も無いわ」
それは嘘だった。
13歳から18歳へと成長していく間に、美香は桜華への性的衝動を強く感じていた。
この世に存在しない者に対する欲望。
他のどの女性でも美香の性的欲求を満たす事は出来ない。
桜華の下着の匂いを嗅ぎながら自慰行為に及ぶなど日常茶飯事で、そういう意味でも美香は零と同類だった。
「また声真似でもすれば、射精するんでしょ?
あっけなく私の前で汚液を噴き出しなさい。
アンタの命は私が握ってる。
私にかかればアンタの人生なんてすぐに潰せるって事を忘れないで」
射精した直後の勃起した肉棒に刺激を与えれば、初回よりも刺激に対して敏感になっているので射精し易い。
縛り付けられた身体を震わせながら、零の欲望の先端から白濁液が放たれた。
「美香……もう許してくれ。
これ以上、僕を虐めないでくれ……」
「こんなに楽しい玩具が近くにあるって言うのに、遊ばなかったらつまらないじゃない。
罵倒されながらも射精するなんて、アンタにはマゾの気があるみたいね。
たっぷり遊んであげるわ。
どんな時だろうが、アンタを使い倒してやるんだから!」
精神的にボロボロになった零であったが、美香の欲望はまだ満たされてはいなかった。
零は夜の営みにおいて辱めを受け続ける事になる。
完全には満たされずとも、美香は零の醜態を見る事で憎しみや怒りを解消していった。
【2010年 9月23日(木) 東京都府中市 御霊(みたま)霊園(れいえん)敷地内】
千葉県に住んでいた者でも、墓は東京都にある事が多い。
御霊霊園はそれだけ多くの墓があり、この時期になると大勢の人々が先祖の墓に訪れ手を合わせる。
「広くて同じ様なお墓ばかりだから、豊さんの墓が何処にあるのか解り辛いですねぇ」
「ええ、本当に……
区画番号を覚えていなかったら絶対に見つけ出せないでしょう」
空を見上げれば雲1つ無い快晴。
うだる様な暑さも和らぎ、秋の気配が感じられた。
祝日を利用してエターナルナイトのメンバーは豊の墓参りに来ていたのだ。
「あ、あったわ……
比呂ちゃん、桶に水をくんで、柄杓も持ってきて頂戴。
線香と備える花の準備は出来てる?
……あっちゃん、有難うね、ワザワザ来てくれて」
「いえ、短い間とは言え、私も豊さんにお世話になった者の1人ですから。
あかりさんにも恩義がありますし、御一緒しなきゃ嘘ですよ」
大所帯での墓参りだった。
あかりと玖留美の呼びかけに応じる形で、親しい者達が一堂に会する。
「お墓とその周辺も綺麗に出来ましたし、まずは優さんから」
「そうさせてもらおうか」
狩谷夫妻も墓参りに参列していた。
柄杓の中に水を入れ、墓の上部にかけた後手を合わせる。
(今日はお前に見せてやる事が出来なかったけど、俺達に子供が出来たよ。
今度は娘も連れて来るからな……
いつかお前の所に行くから、それまで待っていてくれ)
家族の墓参りであれば桶一杯分の水で足りるが、想定以上の人数が集まった為桶を余計に用意しなければならない。
だがそれは、井島豊と言う人物が多くの人々に慕われていると言う証明でもあった。
「地元の墓参りにはどう頑張っても行けないんで、こっちに参加させてもらってますけど……
お邪魔でしたかね?
俺、豊さんと直接会った事が一度も無いのに」
「豊の死を悼んでくれる、その気持ちだけで嬉しいわ。
新二君が来てくれた事、きっと豊も喜んでると思うから」
あかりは大勢の仲間達が次々に手を合わせていくのを見ながら、豊の影響力が大きかった事を改めて実感する。
(皆、アンタの事が大好きだからね。
何時も太陽みたいに明るくて、哀しい気持ちになった時も場を盛り上げてくれた。
誰かの為に一生懸命になれるアンタだからこそ、こんなに人が来てくれたのよ)
本来ならば、数百名もの人間が墓に手を合わせていてもおかしくなかった。
天武日本の格闘ゲーム界を大いに盛り上げ、活気に溢れる大会の空気を生み出した1人。
彼が死んだ後もその影響は大きく、『井島豊から学んだ』と公言する者は多い。
「あかりさんの番ですよ」
玖留美、涼介、比呂子と続き、比呂子があかりに桶と柄杓を手渡す。
(本当はゆっくり話したいんだけど、時間が無いから……
ごめんね豊)
あかりはたまに豊の墓を訪れ、『対話』する事があった。
自分の事、周囲の出来事、これからの事……
様々な事を豊の墓の前で報告する。
何の意味も無いと言ってしまえばその通りなのかもしれない。
それでもあかりは『対話』を止めはしなかった。
あかりにとっては自分の心を慰め、前を向く為に必要な行為だったのだろう。
「ビックリしたでしょ、零と美香が結婚したって話……
『そっち』はきっとすぐにそういう事が伝わるだろうから。
でも私は悲観してはいないのよ。
むしろ良い事なんじゃないかって思う。
心に傷を負った者同士で繋がれば、励まし合って生きていく事も出来るしね」
墓に水をかけながら、豊に語り掛けるあかり。
何気なく視線を移したその先に、美香と零の姿が見えた。
「後で豊の墓に、君も手を合わせてもらえないかな。
この通りだ」
何度も頭を下げる零の熱意に根負けしたのか、美香は大袈裟に両手を上げ露骨に嫌そうな顔を浮かべる。
「ハイハイ、行けばいいんでしょ行けば。
何で私が姉様の敵だった奴に手を合わせなきゃいけないのよ。
アンタがどうしてもって言うから行くんだからね。
そこはちゃんと忘れない事」
豊の墓から少し離れた位置にある桜華の墓。
綾小路一族の魂が眠る場所。
本来ならば天武日本を崩壊させようとした諸悪の根源として墓が壊されても不思議では無い。
だがこの国では『死んだ人間に罪は無い』と言う考えが浸透しておりそういった事態が起こらずに済んでいた。
「零!」
駆け寄ってきたあかりの声に反応した零は声がした方向に振り向く。
その両目にはゴーグルの様な装置が取り付けられていた。
「貴方も御霊霊園に来ていたの。
桜華の墓参り?」
「美香がどうしても行きたいって言うし、僕も行かなきゃいけないとは思っていたからね。
そっちが落ち着いたら豊の墓にも行くよ。
美香にも豊の冥福を祈ってもらおうと思ってる」
「私の立場とすれば、アンタを庇うなんて余計な事をした奴って印象しか無いわ。
そんな事をしさえしなければ、染井が私の復讐を果たしてくれていたのに……」
ここぞとばかりに悪態をつく美香の横を通り過ぎ、あかりは桜華の墓に柄杓で水をかけると手を合わせる。
「貴方の事を、私は最後まで理解してあげる事が出来なかった。
ごめんなさいね」
目に涙を浮かべながら桜華に対して許しを請うあかりの姿を見て、美香もそれ以上何かを言う事が出来なかった。
「これで、貴方が豊の墓に手を合わせる理由が出来たでしょ?」
「……しょうがないわね。
いい?勘違いしないでよ。
全てを許したワケじゃない。
私はアンタと零が姉様の為に祈る返礼としてそっちに行くんだから」
腕を組み、頬を膨らませながらそんな言葉を発する美香。
互いの全てを賭した勝負が終わり、美香は己の敗北を認めた後も黒い服を一貫して着続けている。
「先輩、私にも祈らせてください。
桜華さんは私の御友達ですから」
桜華の墓に向かうべきか決めかねている者達の中で一番先に動いたのは比呂子だった。
エターナルナイトのメンバーが桜華に対して良い印象を持っていない事は承知の上で、自分からその流れを断ち切ろうとしたのだ。
「あ、比呂ちゃん。
この桶と柄杓を使って……
それにしても零、その変なゴーグルは何なの?」
零は両目を覆っているゴーグルに手を触れつつ、この装置を付ける事になった経緯を語り始めた。
「結論から申し上げますと、美香様の旦那様が失った視力をある程度まで回復させる事は可能です」
旧綾小路財閥が保有していた科学技術班のメンバーは、零の視力を取り戻す為の装置の開発を美香から命じられていた。
「旦那様が視力を失ったのは、網膜の機能を失ったから。
ですが詳しく調べた結果、網膜以外の機能が失われてはいない事が判明しました。
5年前からそうだったのか、5年と言う月日が経つ事で回復してきたのかは不明ですがね」
プラナスの子会社で働く社員として再出発を図る事となった者達は、研究開発室を立ち上げプラナスの為に様々な機械を開発していた。
ATMのスキミングを防止する為の装置や、サイバー窓口を広く展開する為のネットワーク構築等に着手する。
そしてその社員の中から数名を美香が選出し、特殊なゴーグルを作らせていたのだ。
「網膜の代わりになるものを作り出せれば、旦那様は周囲の景色や人物を見る事が出来る様になるハズです。
ですがそれが非常に困難でして……
我々の技術力をもってしても白黒の映像を見せるのが精一杯でした」
「色彩を認識する事が出来ないって事かしら。
見えないよりはマシでしょう。
目が見えないからって動けなかったら私が困るのよ。
私が買い物をする時に荷物運びをする事も出来ないなんて」
机の上に置かれていたゴーグルを手に取ると、美香は車椅子に座っていた零にそれを手渡した。
「私に感謝しなさい。
ただの頭でっかちの木偶の坊のままじゃ私もプラナスも困るでしょ。
視力さえ取り戻せれば広報活動を含めた音楽活動もよりしっかり出来る様になるし、ウチの仕事も任せられる。
私がやっていた仕事の半分はやってもらわないといけないんだから」
零は目が全く見えなかった為車椅子に乗っていたのであり、視力を取り戻せればその必要は無い。
自分の足で何処へでも行く事が出来、目で見る事でより正確なピアノ演奏が可能になるだろう。
「ほ、本当だ。
見える……見えるよ」
ゴーグルを装着した零の眼前に、不機嫌そうな顔をしている美香の姿がハッキリと映っていた。
「5年前に見ていたものから記憶が止まっていたから、ココまで君が綺麗になっているとは思っていなかった」
「何よそれ。
まるで私の事をブスだと思っていたみたいな言い草じゃない」
零の発言に苛立ち、歯を食いしばりながら零の頬を引っ張る美香。
「いたた、痛いって。
いや、そういう意味じゃ無くて」
必死にフォローしようとする零の頬に、何時の間にか涙が伝っていた。
「えーッ、じゃあ私達の顔も見えるの?」
驚くあかりの手を、零はしっかりと握り締める。
「モノクロだけどね。
イメージで言うと、凄く綺麗な白黒映画の映像を見ている感じかな。
だから物や人自体は凄く鮮明に見えるよ。
比呂子さんも大人びた格好をする様になったね」
視線を移し、零が濃い紺色のスーツを着た比呂子に対してそう言うと比呂子は顔を赤くした。
「こ、こういう時だけですよ。
普段は5年前とそんなに変わってません」
あかりは目に涙を浮かべつつ、零の手をしっかりと握り返す。
「良かったわね、見える様になって」
「5年間も盲人としての生活を送っていたから、最初は逆に戸惑ったけどね。
光の差さない洞窟の中を歩いていたら、突然出口に辿り着いた様な感覚だよ。
美香には本当に感謝してるんだ。
彼女が僕の目に光を取り戻させてくれた」
零がそう言いながら美香の方に視線を向けると、美香はばつの悪そうな表情を浮かべた。
「わ、私はアンタをこき使うのに視覚障害者のままじゃ困ると思っただけよ。
前も言ったけど、私が買い物をする時には荷物運びをやってもらうからね」
「それ位の事なら、喜んでやるさ」
嫌味を言ったハズだったが、零が心から喜んでいる様子だっただけ美香は複雑な気持ちになる。
(見えないままの方がコントロールし易かったかしら……
姉様の仇である零に光まで与えて、私は何をやってるんだろう)
美香は自分の考えが自分でもよく解らなくなっていた。
実の所、彼女は無意識の中で零に好意を持ち始めていたのだ。
紳士的に振る舞い、誰にでも優しく親切。
相手の望みを常に優先させ、不快感を全く与えない。
シスコンでさえ無ければ、まさしく零は理想の男性だった。
これまで零と積極的に関わる事が無かった美香だったが、零と共に暮らす事でそういった零の優しさを肌で感じる様になっていく。
さらにプラナスにも絶大な貢献をしていたが、美香に全く不満が無いワケでも無かった。
(……アンタは良くも悪くも『天才』なのよね。
どんな事でも出来るけど、内側に問題がある。
親切だけど人の痛みが理解出来ない。
姉様がコイツに傷付けられたのも頷けるわ)
美香が零を理解する事が、互いにとって重要な事だった。
今まで何も知らなかった者同士が共に暮らす事で良い所、嫌な所を見ていく事になる。
その中で美香は零がどうして桜華を『殺してしまった』のか、解った様な気がしていた。
「私はこれから、零の腐った根性を徹底的に叩き直すつもりよ。
人の心の中にある『善意』ってものを理解させなきゃ、プラナスで交渉の場に立たせる事なんか出来やしない。
あかり、アンタだって解っているんでしょ?
コイツに人の痛みが理解出来ないって事くらい」
「……まぁ、ね」
あかりも零の事を見ていて、零のその様な態度に気付いてはいた。
優秀ではあるが、感情が何処か欠落していてたまにアンドロイドと会話している様な気分にさえなる時がある。
それでも桜華の内面を勘違いしていたと言う点においてはあかりも同罪だった為、彼女がそういった指摘をする事は出来なかった。
「すぐには変えられないかもしれないけど、君の為に変える努力はするつもりだよ。
変わると思っているからこそ、美香は僕に光を与えてくれたんだ。
その期待に応えないとね」
多くの者達が、この数年間で様々なものを失い苦しみ続けてきた。
だが取り戻せたものや、新たに得たものも確かに存在する。
あかりはこの秋から闘戦興の副編集長補佐と言う重要なポストに就く事が決定しており、比呂子は店長の道こそまだ遠いもののフロアを任される立場へと成長を遂げた。
懸命に足掻き続け、皆が掴んだものも確かにある。
美香も彼等と行動を共にする事で、少しずつそれを理解し始めていた。
黒沢美香があかりや玖留美達の視線を浴びながら豊の墓に手を合わせる。
(……本当に、アンタの事は何にも知らないのよね……
敵とか味方とか区別する以前に。
アンタを慕ってる連中に聞けば良い評判は聞けるんでしょうけど、それだけじゃね)
美香にとって、『知る事』はとても大事な事に変わっていた。
ピラミッドを絵画や写真で見て、解ったつもりになったとしても真の理解にはなっていない。
間近に見てその巨大さを感じ取る事には及ばない。
美香はその思いを一層強くしていた。
(多分アンタにも人に言えない性癖や、口が裂けても言えない秘密があるんでしょ?
でも、結局皆そうなのよね。
そういう思いを抱えて生きている。
姉様にも、もしかしたらそういうものがあったのかもしれない)
目を閉じて、笑顔を浮かべる桜華の姿を心に思い描こうとした美香であったが、それは非常に難しかった。
心から笑っていた姿など、見た事が無い。
桜華もまた、とてつもない重荷を背負っていたのだ。
「私も姉様の為に変わらなきゃいけないって思ってる。
まずは、アンタ達と仲直りする所から始めたい。
エターナルナイトに顔を出す事も考えてるんだけど……」
俯きながら、玖留美に自分の考えを伝えようとする美香。
玖留美は微笑みながら美香の手を握った。
「貴方の為に、私達の為にそうするのが一番良い事だと思うの。
歓迎するわ。
笹森夫妻もきっと貴方の事を待ってると思うから……
ねぇ、あかりさん?」
「今日は仕事で来てないけど、美香が来る事を望んでると思うわ。
そして、私もそれを望んでる」
わだかまりはまだ残っている。
溝を埋める事にはさらに何年もかかる事だろう。
だが美香もあかりも、和解の為の第一歩を踏み出した。
それが一番大事な事であった。
「美香さんは強いから、戦えるのを楽しみにしてるよ。
ワクワクしちゃうな」
「私も妖さんに敗れたと言う借りがありますから、別の形でリベンジを果たしたいと思ってました」
涼介も亜津子も美香の来店を好意的に捉え、彼女の決断を尊重する。
今まで敵対していた者達の笑顔に囲まれ、美香は何時の間にか涙を流していた。
【2010年 9月26日(日) 千葉県宮本市本郷 エターナルナイト店内】
午前10時50分。
11時と言う約束の時間が近付く度に皆の緊張が高まる。
美香はこの日の為に前倒しで必要な仕事を片付け、時間を作る事に全力を尽くした。
零も美香の日曜日を完全オフにする為に協力し、零が社長代理として椅子に座る事になっている。
「白鳥に対応マニュアルを作成してもらったわ。
日曜日とは言え銀行は完全に休むワケにはいかない。
とんでもないトラブルが起こった場合社長自らが対応を迫られる事もある。
白鳥や他の幹部もアンタと一緒に頑張ると思うけど、どうしようも無いと思ったらすぐに私に連絡して」
「心配は無用だよ。
僕も畑違いの仕事とは言え、やる事にも慣れてきた所だから。
1つだけ不満があるとするなら、君と一緒に行けない事位さ。
君が初めてエターナルナイトに出向くからこそ、僕が側にいてあげたかった」
本社に寝泊まりして仕事の処理をしていたせいか、零の顔は若干やつれていた。
美香も普段の仕事量より遥かに多い作業をこなしたせいか、憎まれ口を放つ気力も無い。
「それじゃ、行ってくるわ」
「楽しんでおいで。
本当にあそこは良いゲームセンターだよ。
格闘ゲーム以外にも楽しい筐体が沢山置いてある。
少し前に中を改装していてね……」
嬉しそうに話す零を尻目に、美香は社長室の扉を開けて外へと出ていく。
「美香様の事は鵺に任せております。
我々は我々が出来る事をしましょう」
漆黒の椅子に座る零の隣にいた白鳥の言葉に対して、零は何も言う事無く頷いた。
11時10分前、黒塗りの車が駅前の駐車場に到着する。
「申し訳ありません。
エターナルナイトは通りに面していて駐車場が無いものですから……
ここから少しの間歩く事になりますが、宜しいでしょうか?」
「歩くしかないんでしょ?
でかいゲームセンターなら駐車場くらいあっても良いのに……
しっかり私を警護しなさいよ。
私の命はアンタ達の命よりずっと重いんだから」
「承知しております。
通常フォーメーションで行動を共に致しますので」
黒のビジネススーツを着た美香の周囲を、スーツ姿の男女が護衛していた。
美香の前に1人、左右の真横に1人ずつと背後に1人、4人の護衛係が美香の歩行を邪魔する事無く同じスピードでついていく。
今回はかつて敵対していた陣営の本拠地に乗り込むと言う事もあり、美香は己に警護をつける様命じたのだ。
「大きく看板も出ていますが、あそこがエターナルナイトです」
「アンタも青春時代をココで謳歌したんでしょう?
比呂子から聞いたわ」
美香の眼前にいた鵺(ぬえ)は美香から声をかけられると、その事実を素直に認めた。
「久緒先輩も楽しそうでした。
あかりさんも豊さんも、皆が楽しそうにゲームをしている姿は忘れられません。
私達も全員店内に入った方が?」
美香は暫くの間迷っていたが、やがて決心すると後ろから鵺の肩に手を乗せる。
「アンタは私と一緒に。
八咫(やた)、蓑亀(みのがめ)、金鵄(きんし)。
3人は店外で待機する事」
「承知致しました。
くれぐれもお気をつけて」
4人もの護衛を店内に連れていけばこれから和解しようとする相手に対して威圧感を与えてしまう事になる。
かと言って全く知らない場所に1人で踏み込んでいく程の勇気は無かった為、美香は鵺と共に入口の扉を通った。
「うわぁ、本当に変わりましたね。
前は壁が汚れていたりもしたんですが……」
エターナルナイトも変革を求められていた。
ゲームセンター=不良の溜まり場と言う負のイメージを払拭する為に改装を実施。
遊園地の様な雰囲気を作り出す為に壁の色、照明器具、トイレの内装にまで拘った。
そして従来のゲームセンターでは当たり前だった部屋内での喫煙を禁止。
喫煙スペースを設けて『分煙』する事で子供が気軽に立ち寄れるゲームセンターを目指したのだ。
改装にかかった費用は1000万程だったが、零が半分以上の資金を提供していた。
「ようこそ、エターナルナイトへ!
思う存分楽しんでいってくださいね」
笹森加奈が入口で彼女を出迎え、都合がつくエターナルナイトのメンバーが全員揃っていた。
「堅苦しいのは抜きにして、一緒に遊ぶ事だけを考えましょう。
ZEROは2階に移動してるからこっちに来て」
火村あかりと共に、美香にも見覚えがある顔ぶれが並ぶ。
九龍玖留美、月山新二、氷室瞳、海野亜津子、雨宮比呂子、長尾遼子、柏糸涼介……
玖留美は美香と同じ様にまだわだかまりを抱えていたが、皆の為に気持ちを懸命に抑え付けていた。
「久緒先輩、今日は美香様にかっこいい所を見せてくださいよ」
「え、何で俺の事を知ってるんだ?」
怪訝な顔をする久緒の目の前で鵺がサングラスを取ると、久緒は目を丸くする。
「お前、佳苗(かなえ)だったのか!
目が隠れてるだけで解らねぇもんだな……
今日は久しぶりに知里も来てるんだ。
2階にいるから顔見せりゃ喜ぶと思うぜ」
鵺は高校時代の同級生である万場知里の顔を思い浮かべ、昔を懐かしんだ。
「チィちゃんも来てるんですね。
ココに来ると心が落ち着くって言うか……
高校生の頃に戻った様な気持ちになります。
美香様にもきっと御満足して頂けますよ」
サングラスをかけ直した鵺は美香と共に階段を上がり、2階へと移動した。
ゲームセンターのイメージを変えようと思っても、置かれている筐体による年齢層の固定は避けられない。
1階にクレーンゲーム、メダルゲーム、パンチングマシン等一般向けの筐体を置き、2階に音ゲーや格闘ゲームを置く。
結果として子供や一般客は2階に近寄らず、馴染みの客は2階に入り浸ると言う状況までは変えられなかった。
「ココが新生エターナルナイトの格闘ゲームエリアです!
ZEROの筐体は12台。
定期的に大会を行うには充分な数を揃えています。
美香さんも気軽に参加してくださいね」
「……出来ればそうしたいけど、私には仕事があるから」
筐体前の椅子に座り、無意識にレバーを握り締めボタンに触れる。
硬貨を投入していないのでデモ画面から切り替わる事は無いが、そうしているだけで美香の目頭が熱くなった。
(この場所に来て、こうして椅子に座り、時間を忘れて格闘ゲームに興じる……
新しく出来た仲間達と共に。
それだけの事も、姉様にとってはとても難しい事だった。
プラナスの社長である私ですら難しいんだから、それは当然なのかもしれないけれど)
桜華は孤独と言う苦しみから逃れたかった。
染井や黒沢から全国大会に挑めと言われて承諾した時も、その心の奥底では友達が出来るかもしれないと言う期待感があったのだ。
結局桜華は己の夢を叶える事が出来ず、妹分として愛情を注いできた美香にその夢を託す事となった。
「姉様が恋い焦がれていた場所……
私は生まれて初めてココに来たけれど、そういう場所に来れて良かった。
姉様の遺書を読んだ後、絶対に一度は訪れなきゃいけないって思っていたから」
何処か遠くを見つめている様な美香の視線に、あかりが強引に割り込む。
「しんみりしてる場合じゃ無いわよ。
貴方と戦いたいって言うプレイヤーがココには山程いるんだから。
時間が許す限り、挑戦を受け入れてくれるわよね?」
微笑みながら周囲を見るあかり。
周りにいた者達全員が頷き、美香の周りに集まってきた。
「フン、私に挑むなんて良い度胸じゃない。
全員まとめて叩き潰してあげるわ。
来るなら来なさい。
誰が相手だろうと絶対に負けない。
私はあの敗北を糧にして爪を研ぎ続けてきたのよ」
美香はお金をチャージする事で硬貨を入れずともプレイする事が出来るカードを懐から取り出す。
その場に集まっている者達を代表するかの様にあかりが目の前の席に座ると、同じ様にカードを取り出した。
「じゃあ、私から」
「あれが単なるまぐれだったと言う事を証明する良い機会ね。
今度は絶対に勝つ!」
敵意を剥き出しにして吼える美香を見ながら、あかりは彼女に『遊ぶ』事を教えようとしていた。
綾小路財閥の総帥と言う立場にありながら、全国大会の決勝戦まで辿り着いた桜華。
美香はその一部始終を見ていた。
限られた時間の中、時間を作っては血の滲む様な努力を続けていた事もよく知っている。
だからこそ、自分が同じ立場になった時にどうすれば強くなれるのかと言う問題の答えは既に出ていた。
「すげぇ、隠しキャラでチート級の強さを誇るクロンを使ってると言っても勝率8割ってのは異常な数字だぜ」
「強くても使いこなすのが難しいキャラクターだからな。
玖留美さんもよくあんな化け物に勝ったモンだよ」
10人と戦って8勝2敗。
美香にとっては月山新二に負けた事はともかく、玖留美に2度目の敗北を喫した事が痛手だった。
「私には負けられない。
そう思ってるって事ね……
そして私はアンタの気持ちを跳ね返せなかったと」
「頭では解っているんです。
貴方には何の罪も無いと言う事は。
でも私の兄を再起不能にしてしまったのは、貴方の御父さんですから……」
玖留美にも、美香を恨む気持ちがあった。
美香はそれを知り、自分だけが苦しんでいるワケでは無い事を知る。
「今度、私の兄にも会ってくれませんか?」
「……考えておくわ」
明確に答えず言葉を濁した美香だったが、病院に足を運ぶ事を既に決めていた。
敗北し、全てが崩れてしまったからこそ見える景色がある。
恨みや怒りに囚われ、美香は今まで地面に足がついていなかった。
ようやく地に足がついた時、美香の周囲には美香の気持ちを汲み共に歩き出そうとする者達が集まっていたのだ。
それは勿論、そうする事で傷を負ってきた自分達も歩き出せると彼等が信じていたからだった。
「姉様は、私の姿を見て喜んでくれているのかな」
俯きながらぽつりとそう漏らした美香の肩に、あかりの手が触れる。
「桜華がしたかった事を貴方が代わりにしているんだから、喜んでると思うわよ。
こうやって手を繋ぐ事を豊も望んでいると思うし……
こうなる事が皆の悲願だったんじゃない?」
気丈に振る舞い、涙を見せる事を嫌う美香であったが、感情が弾け涙を流した。
「私は、姉様が生きていてさえくれれば他に何も要らなかった。
姉様が生き返るのなら私の全財産を差し出したって構わない。
そう思った事もあった。
でも、どんなに願っても姉様は生き返りはしない」
「豊も生き返らない。
私も皆も辛かった。
それを自分の中で認めるまでどれだけの時間がかかったか……
誰だって大切に想っている人の死は受け入れ難い。
でも受け入れなければならない。
私達は前を向いて歩いていくしかないのよ。
どんな事があってもね」
集まっていた者達全員が、井島豊と言う男を慕っていた。
憧れていた者もいれば、愛する事を諦められない者もいる。
手で目を覆い隠す者、すすり泣く者も現れる中あかりは目に涙を浮かべながら言葉を続けた。
「前を向いて歩いていくって決めた以上、楽しくなければ人生はつまらないじゃない?
人生って言うのは楽しんだ者が勝つの。
一度きりの人生なんだから思いっきり楽しまないとね。
嬉しい気持ちや楽しい気持ちを持って、それぞれの日常へと戻っていくのよ」
哀しいけれど、敢えて笑う。
笑顔でいる事が豊の望みであると信じるから。
あかりはそう信じていた。
そしてそれが自分自身の幸せにも影響を与える事を美香に教えたかったのだ。
「貴方も笑ってみなさいよ、きっと楽しくなるから」
美香は弱い自分を誰にも見せたくなかった。
誰かに命令される事が嫌いだったからこそ、その言葉が余計に癪に障る。
だがココで喚き散らせば桜華の願いは永遠に叶わなくなってしまう事を、美香はよく知っていた。
「……笑えないわ。
この5年間、私にとって楽しい事なんて全く無かった。
復讐の為に生きてきた私には、この先の生き方すら解らない。
でも、姉様もきっと……
私が笑顔になる事を望んでいるハズだから、努力はしようと思ってる」
桜華はきっと皆に笑顔を見せたかったのだろう。
今ならば、そう思える。
美香の冷たく冷え切った心が、あかり達の優しさによって徐々に温かくなっていった。
「チィちゃん!
今度絶対そっちに遊びに行くからね。
約束だよ」
「遊びに来るのは良いけど、ウチの商品も買っていって頂戴ね。
慈善事業じゃなくて商売してるんだから」
気付けば、既に外は日が暮れようとしている。
鵺が万場知里の両手を両手で握り締めてはしゃぐ姿を横目に見ながら、美香は誰に言うでも無く呟いた。
「……こういうのも、悪くは無いわね」
美香もまた、幼い頃から孤独を味わっていた。
桜華に愛情を注いだのも、愛する対象が彼女しかいなかったと言う側面がある。
そして桜華がいなくなり、本当に1人になってしまった。
周りの人間は美香に従うが、友達では無い。
皆とふざけて笑い合う。
多くの人々から本気で応援される。
エターナルナイトのメンバーにとっての当たり前の事でも、美香にとっては生まれて初めての事だった。
「姉様が望んでいたのは、こういう景色を見る事だったんだ」
美香が負けそうになっても、絆を作る為にあかりや玖留美が全力で彼女を応援した。
一旦全てを封印して、美香が人としての心を取り戻せる様尽くしたのだ。
本社にいた時は無視していた燃える様な太陽が、彼女の未来を明るく照らしていた。
「私は……
ずっと今まで何かを見て感動したり、それに対して思いを馳せたりする事が無かった。
視野が狭くなって、大切な事を見逃していた。
精神的に余裕が全く無かったから……」
美香は自分が負けた理由は、そういった『余裕の無さ』が原因の1つだったのではないかと思い始めていた。
余裕がある人間は周りを見渡す事が出来る。
だが美香は復讐の炎に身を焦がし、勝利しか追い求めていなかった。
目の前の勝負を『楽しむ』事が出来なかったのだ。
それもこの場所に来てから少しずつ変わっていた。
「勿論、勝つ事は大事よ。
全国大会で優勝する為にはそういうモチベーションや気合が必要だと思うわ。
でも、ゲームをプレイする喜びを放棄して勝てる程、格闘ゲームの世界は甘くない。
ココで学んでほしいの。
格闘ゲームって言うのは、『楽しい遊び』でもあるって事をね」
店内大会の熱狂的な盛り上がり、相手をからかう野次、腹の探り合い、戦いが終われば健闘を称え合う。
格闘ゲームはコミュニケーションツールでもある。
見知らぬ人々を繋ぎ、友にしてくれる力を持っているのだ。
「また来るわ。
今度は鵺だけじゃ無く、妖も連れてくるから」
「待ってるわよ、美香。
誓いの握手!」
溌剌とした笑顔を見せながら手を差し出したあかり。
美香も目を瞑り、唇の端を上げながらその手を握り締める。
「今年の全国大会は私が優勝する。
何故かって?
アンタ達の技を盗ませてもらうからよ」
「それはお互い様でしょ?
貴方が私達を見ている時、私達も貴方の指の動きを見ているんだから」
その後彼等は記念撮影を行い、美香の姿が見えなくなるまで店の外に出て手を振り続けていた。
【2011年 2月下旬 千葉県宮本市本郷 エターナルナイト店内】
ZERO GALAXY BATTLE 2011。
合衆国で初めて開催されたZEROの『世界大会』は、SHIN(シン)こと月山新二の優勝で幕を閉じた。
2010年の年末に行われた全国大会で劇的な優勝を決め、この大会でのシード権を獲得。
予選を免除されたと言うアドバンテージも手伝い、合衆国最強のプレイヤーと謳われたCLOCK(クロック)との決勝戦を制したのだ。
『勝利を刻む男』と呼ばれた黒人青年、CLOCKの強さは規格外であった。
少しでも隙を見せれば負けてしまうと言う試合の連続。
それでも先に2セットを取り高らかに両手を上げたのは新二の方だった。
決勝トーナメントに進出する事が出来た天武日本人は新二1人だけ。
国際色豊かなプレイヤー達との勝負は少し勝手が違ったかもしれないが、戦いの中で順応していった。
ZEROの大会で2連続優勝を飾り、11億と言う大金を得た新二。
全国のプレイヤー達は血眼になり彼に続こうと腕を磨き続けていた。
「相手の起き上がりに反応して攻めるのは常套手段だ。
だが、それだけでは勝てない。
相手がその常套手段を封じる為の対策を練り、俺達はその対策を封じる為に少し違った動きを行う。
大切なのは、パターンを無数に保有しておく事。
Aが駄目ならB、Bが駄目ならCと言う様に、状況に合わせた的確な判断が出来るかどうか。
実戦も大事だが、常にイメージトレーニングを行い脳を鍛える事。
本気で10億を狙うなら地道にやっていくしかない」
エターナルナイトの店内では、大会から帰国したばかりの月山新二が能力を見込んだ若者達に勝つ為の秘策を授けていた。
11億と言う大金を得て2人の生活に何の心配も無くなった新二は、好きな事だけをやって生きていく道を選ぶ。
それは、次の覇者を自分の手で生みだして育てる事でZEROの世界を活性化させると言う道だった。
「君達は俺が出来ると思ったからこそ選び抜いた精鋭達だ。
目標を高く設定し、それに応えられない者は脱落していく厳しい世界。
だからこそ約束しよう。
篩にかけられても尚残った者は、必ず俺と同じ景色を見る事が出来るハズだ」
年齢も性別もバラバラな男女6名。
10歳の男の子もいれば、24歳の女性もいる。
「俺は君達全員について丁寧に教えると言う事は出来ないが、俺を高みに押し上げてくれた人達が1人1人についてくれる。
マンツーマンの指導で新たに覚えたり、目から鱗が落ちる様な発見がある事だろう。
俺は一旦この場所を離れるが、各自鍛練を怠らぬ様に。
さらばだ!」
熱血教師の様に熱く語り、去っていく新二。
後を任された玖留美達は溜息をついた。
「言うだけ言って帰っちゃったわね。
もう慣れたけど」
「しょうがないですよ。
新二さん、ココと同じ事を電脳皇帝でもやってるんですから。
毎日の様に千葉県と東京都を往復しながら、自分の時間を見つけて練習もしてる。
お金の為じゃ無いんですよ。
優勝した者としてのプライドです。
いや、本当に凄いとは思うんですけどね」
比呂子も新二の変貌ぶりには驚くばかりだった。
あれだけエターナルナイトのメンバーの強さに驚嘆していた新二が、全員を追い抜いて優勝したのだから。
そして優勝するまでの道のりで思う所があったのか、今では求道者の様にただ勝つ事だけを追求している。
「新二君もずっとあのままじゃいられないわよ。
防衛を続けるって言うのは優勝を目指す時以上に精神が擦り減っていく。
何処かで諦める時が来るでしょう。
勿論、脂が乗っている今の段階で諦める事は無いとは思うけど……」
エターナルナイトの主なメンバー、つまり常連が『金の卵』の面倒を見ていた。
6人に対して常時6人が面倒を見れるとも限らない為、半分ボランティアの様な感覚で彼等にZEROを教えている。
格闘ゲームを教えるのは楽しい作業であったが、国際大会での優勝を目指すとなれば全く異なる教え方をしなければならない。
あかりや玖留美はそういう教え方になってしまうのが嫌だったので、まず『楽しむ』所から始めさせていた。
優勝して手に入れた11億の一部を使い、月山新二は電脳皇帝の改装費用を提供。
最終的には電脳皇帝のオーナー権を手に入れ、エターナルナイトよりも力が入った教育を行おうとしていた。
「格闘ゲームが自分の人生の糧になる時代が、本当にやってきた!
10億円を得たいと思うなら、俺の言葉に耳を傾けてくれ。
そして我が盟友、鏑木修吾の指導を受けてくれ!
鏑木は俺のやってきた事、教えられた事を解り易く皆に説明出来るスキルがある。
映像や音声での指導で実力を伸ばせた者だけが、次のステップに進む事が出来るのだ!」
集まった訓練生は50名。
先程の6名よりも年齢層がバラバラで、男女比からすると圧倒的に男性が多い。
(エターナルナイトに預けた6人は最初から天才の片鱗を見せている正真正銘の宝石。
そして今ココに集まった50名は河原に転がる石同然だが、研磨していく事で宝石になるかもしれない者達。
俺とシュウの力で必ず世界に通用するプレイヤーを作り出してみせるぞ)
集まった50名の殆どが井の中の蛙であり、自分の腕は他の者よりも優れていると思い込んでいる。
だが自分はまだまだだと考える謙虚な人間の方が伸びると言う事実を、新二は過去の自分の経験から嫌と言う程理解していた。
「さぁ始めよう。
俺の優勝が確かなものであった事を証明する為に。
そして君達が夢と栄光を掴んで覇者の道を進む為の戦いが始まるのだ!」
轟音の様な声と室温が変化しているのではないかと思う程の熱気。
格闘ゲームの世界は変わりつつあった。
それでも、変化を望まず、考えを変える事を拒絶する者達もいる。
「どう、勝って嬉しいでしょう?
勝つ事も大事だけれど、その嬉しいと思う気持ちや楽しいと思う気持ちを忘れないでね」
「はい、あかり先生!」
ただ高いハードルを設けて挑ませるのでは無く、敢えて自由な時間を設ける事で人を育てる。
あかりや玖留美が電脳皇帝とは違う指導を行っている事は新二の耳にも入っていたが、彼はそれを黙認していた。
(俺が優勝出来たのは、玖留美さんやあかりさんのおかげだ。
その事実に偽りは無い。
つまり、あかりさんや玖留美さんの指導方法は正しいと言う事。
俺がここまでの人間になったのだから……
それでもどちらのやり方が合っているのか白黒ハッキリつけたい。
俺は『電脳皇帝』が勝つ事を心の何処かで望んでいる)
結論が出るまでには数年の月日が必要だと感じていたが、新二はそれも容認していた。
(急激に強くなるプレイヤーは滅多にいない。
俺はたまたま彼女達の教え方が抜群に良かったから大きくなれただけ。
長い目で見ていこう。
その間に、もっと凄い『金の卵』が見つかるかもしれないし)
今まで、ある意味天武日本の中でだけ流行っており無視する者もいた格闘ゲームと言う『閉じた世界』が突然変化した。
国際的な大会も開催され10億円と言う金も手に入る『開かれた世界』へと変わったのだ。
そういった流れの中でも、あかりは自分の実力を冷静に見つめ、そのままの自分を選択した。
(私は充分やった。
豊が私を引き上げてくれたけれど、これ以上は伸びない。
これからは色々な人に『ZERO』の楽しさを教えてあげたいな……
闘戦興の編集部員としても)
ZEROが天武日本で生きている全ての人々に認知され、人気が過熱したのは厳然たる事実である。
大切なのは、触れ方だった。
金を得る為の道具として、人々に考えてもらいたくは無い。
皆を1つにまとめる『絆』の代わりに成り得るもの……
あかり達はZEROをそういうものとして捉えていたのだ。
「面白くなってきたわよ、豊。
これからZEROがどういう方向へと転がっていくかは私達次第。
そのまま消えていくのか、恒久的に愛される宝物になるのか。
上から見ていて頂戴」
あかりはそう呟いた後、手を叩いて皆の意識を自分に向けさせた。
「ハイ、これから店内大会を始めましょう。
モットーは楽しく、元気に遊んで勝利を目指す。
それを絶対に忘れないでね!」
始まりは、格闘ゲームのソフトだった。
格闘ゲームを中心として広がった絆や繋がりは、今も消えずに残り続けている。
勿論、辛い事もあった。
苦しくて泣き出してしまう時もあった。
それでも1人1人がその苦しみから逃げ出す事無く前を向く事で、団結する事が出来たのだ。
黒沢グループをさらに発展させ、零に対して全幅の信頼を置く様になった美香。
美香の助けになる事を常に意識し、後に美香との間に3人の子供をもうけた零。
兄の面倒を見る傍ら、新二と共に次なる新世代の星を探し出そうとしている玖留美。
健太郎との再会を信じつつ、ファンシーショップで真面目に働き続ける比呂子。
生涯独身を貫き、様々な人と繋がる事で生きている実感を得たあかり。
あかりと繋がりながら、イラストレーターとしての新たな才能を開花させた沙織。
拓巳や剛が回復する事を祈りながら、千葉県でプールの監視員の仕事を続ける亜津子。
他にも大勢の人達がおり、泣いたり笑ったりしながら懸命に生きている。
今までも、そしてこれからもその流れは続いていくだろう。
生きる事も1つの『戦い』なのだから。
「ねぇ、貴方もZEROに興味があるの?
ちょっと触ってみて。絶対に面白いから」