どうしてこうなってしまったのかを解き明かす為の物語です。
恐らくZEROと言う物語の中で彼女が一番
『絶望から立ち上がっていく強さ』を体現しているのでは
ないでしょうか。
【1998年 8月8日 千葉県 松戸(まつど)市 群青(ぐんじょう)学園小学校 校内】
世の中には、常に大多数の庶民と少数のエリートがおり、エリートが国を動かしている。
東郷(とうごう)恵(めぐみ)はそんなエリートになる事を夢見ていた。
「御父さん、御母さん、行ってきます」
「車には気を付けるのよ」
「日が暮れる前に帰ってくるんだぞ」
小学校指定の夏服を着た少女が、一橋駅を目指して駆けていく。
小学5年生の夏休み中に仲良しの生徒達と小学校で勉強会を行う事になったのだ。
当時携帯は既に発売され彼女も親に持たされていたが、GPS機能は搭載されていなかった。
幼少期から抜群に頭が良かった恵は、成功者への階段を確実に登っていた。
県議会議員の父親と証券会社で働く母親との間に生まれ、幼稚舎からスムーズに小学校への入学を果たす。
そこから今に至るまでもトップクラスの成績を保ち、この実力が継続されれば東京群青大学への入学も決して夢では無いと言われていた。
小学生の頃から過酷な椅子取りゲームが行われ、僅かな生徒しか入れない『特Aクラス』の生徒となる。
夏休みの間も勉強漬けの毎日を過ごしていたが、今回は互いの知識を出し合って結束を深める事となった。
「この正方形の中に書かれている一回り小さな正方形の面積は、ピタゴラスの定理を使えば簡単に解けるよ。
大きな正方形の面積を求めたうえで、その正方形の面積の9分の1と9分の4を足したものが答えになる」
群青学園小学校の中でも、選び抜かれたトップ20だけが入る事が出来る特Aクラス。
そのトップ5が一堂に会し、図書室の片隅で中学入試の予習を行っていた。
「与えられたヒントから答えを導き出す面積の問題ね。
応用力が試される問題だけど、数学の入試はこれが序の口。
ここからペンタグラムの一部分の面積を求める問題や、立体図形の容積を求める問題が次々に出てくる。
単なる暗記力ではとても解けないわ。
必要なのは、頭の中で正解を導き出す力。
まるでその場にあるかの様に図形を思い描いて、地雷を除去していく様に1つ1つ確定要素を探り出していけばいい」
古文を含めた国語、大学入試クラスの問題が次々と登場する数学。
科学・物理を含めた理科、六法を含めた社会。
そしてリスニングによるテストまである英語。
天才・秀才で無ければ絶対に解けない難問だらけの中学入試。
だがこれを突破しない限り志望する中学への扉は開かない。
「豊徳(ほうとく)付属中学に、5人全員が合格出来る様全力を尽くそう。
豊徳高校から東京群青大学へ入る。
それが出来れば、僕達の将来は約束されたも同然だ」
恵を含めた5名が頷く。
皆優秀な親を持ち、医者や警察官僚を目指して戦いを続けていた。
「恵は御父さんが議員だったわよね。
貴方もその道を目指すの?」
特Aでは恵に次ぐ成績を誇る少女がそう言うと、恵は真顔でこくりと頷く。
「私は御父さんがヒーローだと思ってる。
県政に携わり、人から悪口を言われる事も殆ど無い。
常に『私を追い抜いていけ』って言われているから……
私はその上を、国政を目指す」
他の生徒達から一斉に拍手され、恵は赤面しながら恐縮だと言わんばかりに頭を掻いた。
「出来るよ、恵なら。
僕達の中で一番優秀なのが恵じゃないか。
国会議員になれるよ。
革新党に入って、総理の力になる事だって夢じゃない」
エリートが国会を目指す場合、圧倒的な議員数を誇る革新党に入るのがこの世界での常識だった。
衆議院の議員定数465名の内、400名が革新党所属の議員である。
残る65名を野党4団体が分け合い、見せかけの政権批判を行っていた。
その為、野党議員であれば大卒で無くとも議員になれる可能性すらあるが与党議員になる為には難関大学に合格するしか無い。
恵には間違いなくその力があった。
普段通りの実力を発揮すれば、間違いなく天武日本が誇る逸材になる。
特Aのクラスメイトだけで無く、彼女自身も輝く自身の将来を疑っていなかった。
松戸市の群青学園小学校から松戸駅までは徒歩15分。
一橋駅まで15分程かかり、自宅までさらに15分かかる。
天武日本では凶悪な連続児童殺傷事件等は発生していなかった為、児童に対する安全が若干ルーズになっていた。
学園内には常に監視カメラが設置され、不審者が侵入した事が容易に解る様になっている。
加えて校門には監視カメラ以外に守衛が付き、生徒達の安全を常に見守っていた。
「さようなら、また来ます」
「変な人についていっちゃいけないよ。
気を付けてお帰り」
にこやかに微笑む老いた守衛に見送られ、恵は午後4時頃家に帰る為学園の外に出た。
特Aのクラスメイト4人とは早々に別れ、松戸駅を目指す。
(御父さんも言ってたな……
絶対に見知らぬ人の甘い話には乗っちゃいけないって。
特に車に乗ったまま近付いてきて話しかけてくる人がいたら相手にしないで逃げろとも)
学園内は安全だったが、松戸駅までの道は決して安全では無い。
監視カメラも殆ど設置されておらず、GPS装置も持っていないので攫われても親にはそれが解らないのだ。
「とにかく、寄り道は厳禁。
真っ直ぐ帰ろう」
勉強漬けの毎日で疲れているとはいえ、恵は元々真面目な性格だった。
無駄な刺激を求めず、誘惑にも屈しない。
勉強を続けるのは辛かったが全て自分や両親の為と思って耐えていた。
駅前の商店街を目指し通学路を歩く。
そこは夫婦やその子供が行きかう住宅街でもあった。
「ッ……苦しい……」
電柱によりかかり、そのまま崩れる様に倒れ込んだ女性の姿を見て、恵は思わず声をかける。
「大丈夫ですか?」
「む、胸が痛いの。
立っていられない……救急車を呼んで……」
スーツを着た若いOLが苦しそうな表情を浮かべ、何とか電柱にしがみつきながら恵に助けを求めた。
「わ、解りました。
今すぐ呼びます!」
若い『女性』と言う事もあり、恵は警戒心を持つ事無く素直にランドセルを地面に降ろし中から携帯を取り出そうとする。
電話をかけて女性の容態を伝えようとする事で頭が一杯になり、後ろから近付いてくる人間の気配に気が付かない。
「あった、今かけますから」
救急車を呼ぶ為に携帯を開こうとした瞬間、恵は意識を失った。
「間抜けなガキだぜ。
まんまとお前の演技に騙されやがった」
「さ、何時もの様に手際良く行こう。
誰かに見つかったら面倒な事になる」
背後から恵に襲い掛かり、スタンガンで彼女を気絶させた男は慣れた手つきで彼女を抱きかかえると歩き出す。
女性もその後からついていき、かなり大きなワゴン車の中に恵を押し込んだ。
「このランドセルはどうする?」
「途中で捨てろ。
見つからない様にな。
目を覚ます前に薬を打っておくんだぞ」
女性はバッグの中から注射器を取り出し、恵の腕に注射針を刺すと薬液を体内に注入する。
「よし、すぐにココから離れるぞ。
目撃されてないだろうな」
「ちゃんと周りに人がいねぇかどうか確認したよ。
大丈夫だって」
2人が乗り込んだ事を確認すると、運転席に座っていた男がすぐに車を発進させた。
「とびきりの上玉だな……
こりゃ俺達にすりゃ天国だぜ。
ガキは地獄を見る事になるけどよ」
「ちょっとは僕の演技力にも感謝したら?
今まで可愛い女の子6名を首尾よく攫えたのは誰のおかげか解ってるよね」
髭の生えた大柄な男性は『女性』のカツラを取り、大仰に頭を下げる。
「へいへい、そりゃ全てミッツ様の御力でございますよ。
有難い事で」
「いちいちそんな事でくだらん諍いを起こすな。
その子が主役のパーティが台無しになる」
リーダー格の男はそう言うと、人気のない場所へと車を走らせた。
千葉県のごく平凡な大学、南条商業大学。
そこで集まった4名の大学生はつまらない毎日にすっかり飽きて刺激を求め始める。
スリルと快楽を同時に満たせる行為。
つまり性犯罪。
彼等は密かに動き始め、今までに6名もの少女を毒牙にかけていた。
そして恵が不運にも7人目の被害者となってしまったのだ。
万が一にも職務質問されない様に細心の注意を払いながら運転を続け、30分程走った後車を停めた。
「ココなら問題無い。
周囲は見渡す限りの田畑。
農家の人間も仕事を終えて家に帰っている。
警察がうろつく様な要素は何処にも無いから、ゆっくり楽しめるぞ」
女装をしていた青年と大柄な男性は服を脱ぎながら、完全に意識を失っている恵の服も脱がし始める。
「大声を出されると面倒だからな。
ガムテープで口を塞ぐんだ。
筋肉弛緩剤を打っているから逃げる事は無いと思うが、誰か1人は必ず両腕を掴んでおけ」
身体の動きが一時的に麻痺して殆ど動けなくなる薬を投与された恵が、この化け物達の狂気から逃れる事は不可能だった。
「おっほー!
綺麗なマンコしてるじゃねぇの。
堪らんぜ、早く入れてぇ」
下着を取り靴下を脱がし、生まれたままの姿となった恵の清らかな膣を大柄な男が粗雑に広げる。
「いいか、スモールは一番最後だからな。
お前の後は入れても気持ちよくならないんだ」
「スモールってのは皮肉な渾名だね。
持ってるのはビッグマグナムだってのに」
運転席に座っていた男が助手席にいた男にそう釘を刺すと、完全に女装を解き全裸になった青年が笑った。
「おい、誰が先に入れる?
スモール以外なら誰でもいいだろ」
「君はこの間1回目だったじゃないか。
今度は僕が最初に入れるべきだ」
粗野な男性を窘める様に青年が発した声は、見た目を考慮しなければ女性の様に高い。
運転席にいた男が振り返り、無言のまま『彼に譲れ』と言わんばかりに睨み付けると男は渋々その命令に従った。
「いやぁ、無垢な少女の膣内に入れるのは何時もの事ながらゾクゾクしちゃうねぇ」
女性の様に華奢な身体つきをしている青年だったが、股間に付いている『それ』は既に勃起し、激しく脈を打っている。
淫らな事等知るハズも無い恵の股間に肉棒の先端をあてがうと、青年は遠慮する事無く彼女の体内にそれを潜り込ませていった。
「あー、キッツキツでたまんないよ。
きゅうきゅう締め付けてきちゃってまぁ……
幼い子供とのセックスってのは癖になるね。
一度味わったら止められないって」
完全に意識を失っていた事は、恵にとって逆に幸せだったのかもしれない。
聖なる入口を無理やりこじ開けられ、鮮血が膣から漏れ出る。
邪悪な滾りは一切躊躇する事無く奥へと突き進んでいった。
「良いよー、良いよー。
ガッチリ僕の亀頭も竿も咥え込んでるよぉ!
おマンコにフェラされてるみたいで……
奥に入れれば入れる程きゅうって締まるのが最高だね」
悪意を持った肉の塊が、彼女の肉壁を押し広げ快感を求めて暴れ回る。
「中出ししても構わんが、中に出すのならその後しっかり掻き出すんだぞ。
全て終わったら消毒液で精子を全て洗い流すんだ。
精液から警察に情報を得られたら面倒だからな」
4人全員、過去に何らかの犯罪を犯して逮捕されたと言う経験は無かったがリーダー格の男は特に慎重だった。
「僕達が今までに手をつけた女の子は皆壊れちゃったらしいから良いけど、顔を晒しているのに何を今更。
あーもう、こんなの腰が止まらなくなっちゃうよ!
精液吐き出しちゃうって本当に」
舌を出し、発情期の犬の様にひたすらピストン運動を続ける青年。
粗野な男性の方も意識を失っている恵の頬に肉棒の先端を這わせ、すべすべした肌に擦り付ける。
狂った笑顔に囲まれた少女を主役とした鬼畜の宴は、まだ始まったばかりだった。
「あー良いよ。
そろそろイクよぉ……」
誰に言っているのかよく解らない言葉を発しつつ、さらに激しく出し入れを続ける青年。
そして数秒後、快楽が弾け肉棒の先端から白濁液が噴出し、膣の中を汚した。
「締め付け具合が最高だよ。
久しぶりに出し切ったかも……」
女性の様な顔をした青年が膣から肉棒を引き抜き、零れた精液を大柄な男性が拭き取る。
「次は俺だ。
今日も色々な道具を持ってきてるぜ。
コイツを使って試してやる」
「壊すなよ。
少なくとも俺が相手をするまではな」
車の中に用意されていた『大人の玩具』を両手に持ち、下卑た笑いを浮かべる男性。
菊穴に差し込む様のバイブを少女の中へと潜り込ませ、クリトリスにローターの先端を添えた。
「……!?」
恵は昏睡状態から覚醒したものの、すぐには自分の置かれている状況を認識出来ない。
だが即座に股間の激痛と尻の穴に入っている異物の存在だけが伝わってきた。
「ん――!!
ん――ん―――ッ!!」
自分が生まれたままの姿にされ、見知らぬ男達に囲まれている事を悟った恵は涙を流す。
必死に逃げようと腕や足を動かすが、その動きは緩慢で痺れた様に身体が動かなかった。
「おっと、やっと御目覚めか眠り姫。
俺達に突き破られたマンコの調子はどうだ?」
「逃げようとしたって無駄だよ。
今の君の力は生まれたての子馬より弱いんだ。
暫くの間はまともに動けない。
勿論、その間に楽しませてもらうんだけどね」
痛みでより敏感になっているクリトリスがローダーの振動をまともに受け、驚異的な快楽を恵に与える。
ワケが解らない内にその快感に対して身体が反応し、小刻みに全身が震えた。
「いっちょまえに感じてやがる。
幼くてもクリトリスの敏感さはもう大人並って事か」
「ゾクゾクしちゃうよ。
僕もまた大きくなってきちゃった……
ザーメンかけてもいいかな?」
自分の精液塗れになっている剛直を握り締め、手で扱き始める青年。
大柄な男性は我慢出来ないとばかりに肉棒を膣口に当てると、一気に貫く。
「おむぅ、ん―――ッ!!
ん―――――ッ!!!」
恵は今までに味わった事の無い激痛と快楽に悶え、助けを求めて泣き叫ぶ。
ガムテープを口に貼られている為何を喋っているのか解らないが、その目には絶望を示す暗闇が広がっていた。
「おお、凄ぇ!
生き物みたいにひくつきやがるぜ!
やっぱりローターを当てると違うな」
「この光景は最高のオカズだね……
ふうぅッ、高ぶってきちゃうよぉ」
運転席にいる男も助手席にいる男も、邪悪な笑顔を浮かべながら彼等の所業を見守っている。
「もうちょっと遊んでやろうか……
虐げられると痛みを快感と身体が勘違いする事があるって言うしな。
洗濯バサミを用意しておいて良かったぜ」
大柄な男性が洗濯バサミを恵の僅かに膨らんだ胸に近付け、乳首を挟んだ。
敏感な部分が痛み、その直後すぐにローダーによるクリトリス責めが再開される。
「痛いか?苦しいか?
そうだよ、その顔をもっと俺達に見せろ!
お前が痛がれば痛がる程、苦しめば苦しむ程俺達は興奮するんだ」
男性は片手でローターを持ち、もう片方の手で細長いアナルバイブを抜き差ししながら自身の肉棒も同じ様に動かしていった。
「やばッ……
こんなのAVでも見れないよ。
僕もまた出そうになっちゃってるぅ……」
女性の様な喘ぎ声を発しながら恵の顔にペニスを近付け、先端から根元まで手で包み込みひたすら擦る青年。
男の方もクリトリス責めにより膣の収縮運動が余程心地良かったのか、人に見せられない様な呆けた顔を浮かべている。
「嫌がる相手を無理やり押し倒す!
レイプの醍醐味だ!!
しかもこんな小さなガキ相手にだぜ。
興奮しねぇ方がおかしいだろうが……」
僅かに残った力で弱々しく首を振り、止めてほしいと懇願する恵。
その願いも虚しく、激しく脈動する肉棒が再び彼女の中で暴れ白濁液を膣の中にばら撒いた。
「んんッ!?
おぐぅ、んん―――――ッ!!」
ほぼ同時に青年も達し、恵の顔や胸に容赦無く精液をかけていく。
「じゃあリーダー、アンタの番だぜ」
「……考えが変わった。
コイツの絶望する顔をしっかり見ていたい。
スモールが相手をしてやれ」
助手席にいた男がニンマリ笑い、抵抗出来ぬまま涙を流していた恵の目がゆっくりと澱んでいった。
後部座席に移動した男は、既に服を脱いで裸になっていた。
先程恵を強姦していた男2人よりも遥かに巨大なペニスに、恵は激しく抵抗する。
(やだやだ、助けて御父さん、御母さぁん!!!)
セックスの概念もうっすらとしか理解していない恵であったが、これから待ち受けている地獄の内容はすぐに解った。
あの化け物が、自分の中に入ってくるのだ。
股間を引き裂くのではないかと思う程の巨砲が。
「ミッツもショウも随分派手にやったものだな。
クリトリス責めのおかげで結構潤っているし、大丈夫か……」
リーダーと呼ばれた青年が恵の口に貼られたガムテープを剥がし、すぐさま肉棒を口の中に入れる。
「噛んだりしたらコレで首を切り裂くぞ。
冗談や酔狂で言っているワケでは無い事は解るだろう」
青年の右手には切れ味が鋭そうな小型のナイフが握られていた。
この大きさでも、小さな恵の首を傷付ける事は容易い。
恵は死の恐怖からその命令に従った。
アナルバイブを乱暴に引き抜き、男の巨根の先端が膣の入口と『キス』をする。
そこから腰を前にゆっくりと突き出していき、恵は激痛に耐えかね思わず歯を食いしばろうとした。
「チッ、俺の言った事も解らないのか。
どうしようも無ぇガキだ」
直感でそれに気付いた青年はギリギリの所で口から肉棒を離し、左手で彼女の口を塞ぐ。
「おッ……
これ、入るんじゃないか。
今までやった女は無理やり感が強かったんですけどね。
もしかしたらわりかしスムーズに入るかもしれません。
このガキ、将来は大物になりますよ」
アルミ缶ほどの直径を持つ凶器が、ずぶずぶと膣の中に潜り込んでいく。
熱い肉塊は意識が飛ぶ程の激痛を恵に与え、彼女が白目を剥いて気絶した直後にそれは根元まで入り込んだ。
「なんだコイツ、スモールのペニスを全部飲み込んだぞ」
「末恐ろしいガキだぜ。
ガキの癖にどんなマンコしてやがるんだ」
6名もの少女の理性を破壊したペニスが、奥までしっかりと埋まっている。
幸か不幸か、彼女が生まれついて持っていた『淫らな才能』が彼女の人間としての理性を繋ぎ止めていた。
「初めてだ……
膣を壊す事無く全部入ったのは。
とことん楽しませてもらうよ」
玩具で遊ぶ少年は玩具に対して雑で乱暴な扱いをするが、彼女に対する扱いも同じ様なものだった。
気絶している恵の状態等気にする事無く太い滾りを子宮近くまで捻じ込み、抜き、また貫いていく。
その容赦の無い抽送作業が耐え難い痛みを生み、意識を失っていた恵を無理やり現実へと引き戻した。
「ふぐううぅ、むぐぐぐッ」
「おい、大きな声を出すんじゃねぇ。
今度こそしっかり咥えろ。
2度目は無いぞ」
ナイフを握り締めていたリーダー格の男が再び肉棒を恵の口の中に押し込み、オナホールの様に扱う。
「信じられない。
今まで相手をしてきたどのガキより中の具合が良いですよ。
チンポに肉壁が纏わりついて、まるでしがみつかれている様だ。
ああ……」
被害者となった少女達の精神が壊れてしまったのも、充分に理解出来る事であった。
人間としての尊厳を奪われ、痛みを与え続けられれば、幼い身体がそれに耐えられるハズが無い。
恵は明滅している様な意識の中、両親への愛が彼女の心を支えていた。
(会いたい……
御父さんに会いたい。
お母さんに会いたい。
私は……約束したんだ。
立派な人間になるって。
御父さんを助けるって……)
肉の凶器が何度も抜かれ、前に突き出され、その度に痺れる様な快感が青年の全身を駆け巡る。
「快楽の渦だ……
今までに味わった事の無い甘美な感覚だ。
もう耐えられない。
吐き出すぞ……
全部出すぞッ、ううッ!!」
先程の2人よりも遥かに多い量の精液が膣内どころか子宮まで満たし、注がれた。
口の中にも出され、激しく脈動するペニスの感覚が上でも下でも彼女に痛みと絶望を植え付けていく。
「さぁ、マンコが壊れていないみたいだし次は俺だ。
たっぷり出してやるから有難く思え」
「じゃあ騒がれても困りますから、またガムテープを使いますか。
ほーらお嬢ちゃん、動かないでねぇ。
動いたらもっと酷い事になりまちゅよぉ~」
誰がどう見ても人間では無い怪物達が、1人の少女の心を喰らい思うがままに蹂躙する。
その後また交代で恵を犯した青年達は、自身の体内に溜まっている欲望を全て注ぎ込んだのだった。
永遠とも感じられた地獄の1時間が過ぎ、男達は彼女を裸のまま地面に置くとニヤニヤ笑いを浮かべる。
「いやぁ、面白いお遊びだったぜ。
これだけ乱暴に扱って壊れなかったガキは初めてだな」
「良いんじゃないの。
僕達には逮捕歴も無いし、最悪調べられても大丈夫でしょ」
身体中に精液が付着し、膣からは血と精液が混ざり合った桃色の液体が流れ落ちていた。
「これ、破瓜の血とは違いますよね?
乱暴にし過ぎたかなぁ。
一期一会だし問題無いか」
「勿論だ。
このガキに今後会う事は二度と無いだろう。
悪いが、お前の服は売り捌かせてもらう。
ランドセルは捨て、携帯電話は破壊した。
もうすぐ薬の効果も切れるだろうから、近くの農家にでも行って助けを求めろ。
網膜と脳に俺達の顔を刻み付けておけ。
いや、あまりにも辛くて忘れちまうかな?
ハッハッハ……」
4人は服こそ着込んでいたがサングラスやマスクは付けておらず、敢えて素顔で少女と向き合った。
自分達がお前の初めての相手なのだと言わんばかりに顔を見せ付け、恵に憎悪の感情を植え付ける。
「よし、行くぞ。
今度はどんな女にするかな……」
「今度はちょっと遠出しましょうよ。
ガキがいるんで何処とは言えませんけど、良い所知ってますから」
悪鬼の如き所業を行ったにも関わらず、まるで立小便を済ませた後かの様な緩い会話をしつつ車に乗り込む4人。
車が発進して暫く経った後、恵はようやく身体の自由を取り戻しゆっくりと起き上がった。
「……は、はは……
ははは……は……」
大粒の涙を流しながら、全く面白くも何とも無いのに笑ってしまう恵。
フラフラと歩きながら、全身に当たる夜風を感じて遂に彼女の中で何かが切れた。
「あ――――ッはっはっはっはっは!!!
ははははッ!!!
はは、ははは……」
狂気を帯びた目からとめどなく涙が流れ、全裸のまま仁王立ちの状態でひたすら笑い続ける。
「はっは……
あーあ、こんなの笑っちゃうよね。
傑作」
どす黒い怒りの炎が彼女の心を焦がし、哀しみの波が幾度も打ち寄せ、絶望を煽った。
「……とにかく、裸のままこんな所をうろついてたら大変。
誰かに助けてもらわないと」
自分でも不思議に思う程、恵の心は冷静だった。
壊れているのかいないのか、自分でもよく解らない。
不気味な程の落ち着きを見せ、痛む股間を手で抑えながら何とか歩き出す。
自分がこんな目に遭ったと言うよりも、別の自分が自分を俯瞰で見つめているかの様な妙な気分になっていた。
(あー、あそことお尻が痛いなぁ。
消毒してもらったらもっと痛いのかな?
このくっついてるの、べたついてて最悪。
すぐにでもシャワーで洗い流したい。
農家の人の家にもシャワー位あるよねぇ)
本当は怒りに震え、泣き叫び自分の悪運を天に呪い喚き散らすのが当たり前の反応なのかもしれない。
恵は逆にその怒りと哀しみを軽く超える程の絶望に身を置いていた為、まるで何事も無かったかの様な振る舞いを見せていた。
その後、恵は付近に住んでいた農家の老夫婦に保護され救急車で病院へと搬送される。
両親は報せを受けてすぐに病院へと駆け込み、青い薄手の衣服を着せられた恵とベッドで対面した。
「御父さん……」
「ああ、何て事だ。
大変だったろう。恵……」
「どうして、何で恵がこんな目に遭わなければいけないの」
涙を流し、恵を抱き寄せて愛を示す母親。
闇の中にいた恵の心に僅かな明かりが灯る。
「御母さんと会えて良かった。
私、乱暴されている間その事だけを考えていたの」
「恵!
もう絶対にそんな目には遭わせないわ。
遭わせるものですか!
警察に頼んで、すぐに犯人を逮捕してもらいましょう。
その人達の顔は見たの!?」
母親は犯人達への憎悪の炎を燃やし、犯人に地獄の苦しみを与えたいと思っていたが父親の対応は異なっていた。
「いや、農家の人が警察に連絡しなくて助かったよ。
警察には届け出ない」
恵は呆気に取られた顔をし、母親も唖然とした表情を浮かべ父親の身体を激しく揺さぶった。
「な、何を言っているの!?
娘が男達に辱めを受けたのよ。
逮捕してもらわなければまた犠牲者が出るわ」
「お前こそよく考えろ冬美。
もしこの事が世間に知れたら、県議会議員としての私の立場はどうなる。
娘の身を守る事が出来なかった杜撰な政治家としてマスコミが騒ぎ、私はあっと言う間に職を失うだろう。
お前だって同じだ。
出来の悪い親として同僚がお前をこれ幸いとばかりに叩き出す。
2人が職を失ったら、どうやって食べていくと言うんだ。
娘はまだ11歳なんだぞ」
「そんなもの、幾らでもやり直せるじゃない」
母親は反論したが、父親は首を横に振り諭す様に彼女の肩に手を置いた。
「この世の中は理不尽だ。
加害者が守られ、被害者が非難されるのが世間の道理だ。
私達の顔写真がテレビに映り、誰もが私達の顔を知る事になる。
再就職は絶望的だ。
誰も、私達の様な面倒くさい人間を雇おうとは思わない。
生きていく事が困難になる。
確かに犯人を捕まえられない事は痛手だが、私達の人生を守る事が最優先なんじゃないのか」
落ち着いてくれとばかりに苦悶の表情を浮かべる父親に対して、母親は肩に置かれた手を跳ね除けた。
「貴方は自分の立場が一番大事なんでしょう!?」
ヒステリックにそう叫ぶ母親の態度に逆切れした父親は、母親の胸を掴む。
「ああ大事さ。
県議会議員になる為にどれだけの苦渋を舐めてきたと思っている。
十数年以上、時には泥水を啜り時には人に踏み付けられながら権力の階段を登ってきた。
それが一瞬で無に帰すんだぞ。
政治的には何の落ち度も無いのにだ。
これから私が国会議員を目指すと言う時に、その階段を壊すワケにはいかない!!」
母親は般若の様な顔で父親を睨み付け、父親はそれを見て反射的に母親を殴ろうとした。
「やめてッ!!」
恵の心の叫びに、手をあげようとしていた父親もハッと我に返り、娘の顔を見つめる。
「私が……
私が我慢すればいいんでしょ?
私は何もされなかった。
今日、何も起きなかった。
それで良いんだよね。
御父さんと御母さんにとっては、それが最良の選択なんだよね」
「何を言っているの、それで良いワケが無いでしょう」
母親は涙を流しながら偽りの笑顔を浮かべている娘の手を握り締め、激しく首を横に振った。
「それで良いんだ。
お前も群青学園にいられなくなる。
折角の出世コースが台無しだ。
私とお前が『立派な人間』になる為には、全てを闇に葬り覆い隠すより他に無い」
当たり前の様にそう言い放つ父親の姿を見て、母親は心のバランスを崩してしまう。
ベッドによりかかりながら床に崩れ落ちた母親を心配する素振りも見せず、父親は恵の頬にそっと手を添えた。
「犯人を捕まえる事は出来ない。
絶対に出来ないんだ。
その代わり、お前の望むものは何だって与えてやろう。
出来る限り望みを叶えてやる。
何が欲しい。どんな生活がしたい。
『県議会議員』である限り私はそれを実現出来る」
権力にしがみつく、哀れで愚かな父親。
今まで彼女が信じてきた『優しくて立派な父親』と言う理想像は、脆くも崩れ去った。
「もう私に構わないで。
干渉しないで」
希望の光が全て消え、心の中に暗黒だけが残る。
恵の心の中に巣食う闇は、どんどんと大きくなっていった。
群青学園小学校から逃げる様に、即日恵は公立虹見中学への進学を見据えて何の変哲も無い普通の小学校へと転校する。
トップ5の仲間は突然の転校に戸惑い彼女を引き留めようとしたが、彼女の決意は固いものだった。
(もう、どうでもいい。
私の身体も、心も、おかしくなってしまえばいい)
恵の心は荒み、自分が犯されたと言う事実を塗り潰すかの様に不特定多数の男子とセックスを行う。
売女(ビッチ)と罵られようが彼女にとってはどうでも良かった。
そうする事だけが彼女の壊れそうな心を守る為の方法で、父親に対する少しばかりの抵抗だったからだ。
母親は心も身体もおかしくなり入院生活を送る事になり、父親が最低限の治療費を払って県議会議員として邁進する。
たった1つのボタンの掛け違いから3人の人生が壊れてしまった。
あの事件さえ無ければ……
恵もそう思う事があったが諦めるしか無かった。
高校に入ってから彼女はさらに自暴自棄になり、積極的に援助交際を始める。
身体を売って金を稼ぐ事に喜びを見出していると自分を騙しながら、一心不乱に突き進んだ。
そんな精神的に疲れ果てていた彼女を癒やしてくれたのが、格闘ゲームとその格闘ゲームにハマっている仲間達だった。
自分が置かれている惨めな世界とは全く異なる、異世界を舞台としたゲーム。
この世界には子供の頃の自分を知っている人間は1人もいない。
そして雨宮比呂子や南屋朋美と言った優しい人間が彼女を励まし、共に笑い、共に泣いてくれる。
恵は彼女達に救われ、数少ない心の安らぎに感謝していた。
人間不信に陥っていた彼女が唯一心の拠り所としていたのが、『NEWSZERO』だったのだ。
そして彼女は高校卒業後、すぐに風俗嬢となる為修行を重ね風俗の聖地とも言われる吉原で働く事になる。
天罰だったのか、自業自得だったのか。
県議会議員と言う肩書にしがみついていた父親は信じていた腹心の不正献金疑惑によって詰め腹を切らされる形で辞職した。
母親は精神的なショックが余程響いたのか、認知症が進み今では夫の顔も娘の顔も思い出せない。
そんなダンボール箱に入れられた捨て猫の様な両親を助けたのが、皮肉な事ではあるが恵だった。
吉原では最高のソープランドと言われている『パラダイス』のナンバーワン風俗嬢となり、男に抱かれて大金を稼ぎ出す。
それは手厚い医療費と最低限の生活費を親に送ってもまだ余る程の額だった。
大金を貯金して、その金で人生を送る。
そう決心した恵はその金で遊ぶ様な事は絶対にしなかった。
当然服やランジェリーは最高級のものを購入していたが、住まいは御世辞にも綺麗とは言えないアパートの一室。
食事も質素なもので、洗濯機も買わずコインランドリーで済ませ風呂も極力入らずシャワーで済ませる毎日。
その節約は端から見れば狂気じみていたかもしれないが、彼女はそうする事で自分の心を守ろうとしていた。
(風俗嬢として生きているのも、当然の事。
お金を得る為。そして全てを忘れる為。
それが私にとって『最良の選択』。
比呂子だって、朋美だって頑張っている。私も頑張らないと)
小学校の頃とは全く違った容姿となり性格も変貌した恵だったが、大切だと思っている人間に対する素直さは変わらない。
西暦2010年の11月、彼女は何時もの様に『パラダイス』で仕事をこなし店を後にしようとしていた。
「ミフユちゃん、今日も御客さんの評価が全部☆5つだったよ。
風俗嬢の優等生だ。
これからもウチのナンバーワンとして頑張っておくれ。
私は君を全力でサポートするからね」
パラダイスは評価制で、通常の日給とは別に人気の高い風俗嬢のレベルに合わせた額が別途支給される。
その合計額は月収に換算すると約150万。
つまり1800万の年収となっていた。
パラダイスは男性側が10万円もの大金を払う高級風俗店で、当然風俗嬢へのバックも大きい。
「昔は本当の優等生だったんですけどね~」
ボソッと小声で自虐的な言葉を発する恵だが、オーナーには聞こえていない様だった。
「気を付けておくれよ。
君の身体に傷が付いたりなんかしたらウチも大変だ。
最近は嬢に対するストーカー被害も増えているみたいだから、ミフユちゃんも帰りは特に気を付けてね」
藤村(ふじむら)修(おさむ)。
35歳と言う若さでパラダイスのオーナーとなった天才である。
そんな天才も、彼女が過去に傷を負っている事を知る事は出来なかった。
「今日はこれで失礼します」
「明日も宜しくね。
いやぁ、週7日出てくれる頑張り屋さんはミフユちゃん位のものだよ。
他の嬢も見習ってほしいものだね。
君は店の皆から『鉄人』と呼ばれつつある様だし」
恵は20歳から『パラダイス』に入店し、瞬く間に頭角を現すと僅か数ヶ月でナンバーワン風俗嬢となる。
凄まじいのは他の風俗嬢からの妬みが殆ど無い事だ。
皆彼女を心から尊敬していた。
圧倒的な実力を発揮する者に対して、人は嫉妬より羨望の眼差しを向ける。
2位と圧倒的な人気での大差を付けて爆走する恵を止められる風俗嬢は1人としていなかった。
(頑張り屋、かぁ。
セックスで全部無かった事にしたいだけなんだけどね~。
この仕事……
特にこのお店で働けるのは多分35歳が限界。
今の藤村オーナーと同じ歳位。
計算上、2億7千万位は稼げる。
後はランクを落としても40歳までには3億位いけるでしょ。
母さんも父さんも今の状態じゃ生きているかどうかも怪しいし。
2人が死んだら後は全て私のお金……)
不思議と心が冷めていた。
両親を足枷の様に扱うなんてどうかしている。
恵はそう思った。
だが、何時の間にかそう思う様になってしまった。
自分を自分と認識する事も出来ない母親。
世の中を恨み『俺のせいじゃ無い』と叫び続ける父親。
両親の心は荒み、恵の心もまた荒んでいた。
「あー、何でこんな事になっちゃったんだろうなぁ。
本当なら良い人生になるハズだったのに。
あの4人のせいで私の人生プランが滅茶苦茶。
勘弁してほしいよね~」
冬の冷たい雨が、傘を差していても長靴に当たる。
頬に触れる雨と自分自身の涙が重なった。
(帰ろう。
昔の事を思い出したらまた鬱になって悪夢を見る羽目になる)
気持ちを無理やり切り替えようとして歩き出した恵の目の前に、傘を差した男性が現れた。
(えッ、何……ストーカー!?
そんな御客さん、いないと思ったんだけどな~)
彼女の前に立ち塞がる様に姿を現した男性の顔は、傘のせいでよく見えない。
無理やり走って逃げようとした恵の耳に、すっかり忘れていた懐かしい声が聞こえる。
「探したよ」
恵はその声に聞き覚えがあった。
思わず振り返り、相手の顔を見る。
傘を手に持った男性は子供の頃と変わらない、屈託の無い笑顔を見せていた。
「受験勉強で、お前を探す暇も無かった。
やっと少しだけ余裕が出来たんでな……
驚いたよ。
探偵を雇って、探してもらっていたんだ。
こんな所にいるとは思わなかった」
恵にとっては最早遥か昔の出来事の様に感じられる、群青学園の特Aクラス時代。
特Aナンバーワンの彼女の背中を常に追いかけていたクラスメイト、柳瀬(やなせ)繁(しげる)の姿がそこにあった。
「柳瀬君……」
「お前が風俗嬢になっている事を知ったら、皆驚くだろうな。
汚い商売だとは思ってないよ。
お前にもそれ相応の理由があってこの仕事をしてるんだろう。
お前の望んだ道かどうかはさておき」
諭す様な口調だったが、父親とは違い繁の目は透き通っている。
小学生の頃輝いていた自分を見るのと全く同じ、羨望の眼差し。
あの時から繁が彼女に抱いている尊敬の感情は、今も全く変わっていなかった。
「喫茶店で何か飲みながら話そう。
俺が奢るから」
汚れてしまった自分に、昔と同じ目線で話してくれるかつての仲間。
高校生の頃の恵ならば逃げだしていただろうが、今の恵の心境は少し変化していた。
(比呂子とも朋美とも……
昔のメンバーとすっかり疎遠になっちゃったからね~。
こういう仕事をしている以上仕方ない事なんだけど。
それにしても、柳瀬君は変わってないなぁ)
子供の頃から身だしなみに人一倍気を遣い、髪の毛は小学生の頃から七三分けにして、整髪剤で固めている。
黒縁眼鏡にしっかり着こなした制服。
その制服こそスーツに変わっていたが、見た目と中身は殆ど変わっていなかった。
「奢ってくれるの?
私、結構お金持ってるのに」
「ハッハッハ。
俺の方が持ってるよ。
詳しい話は喫茶店でしよう」
お金の話をしても、快活な笑顔を浮かべ嫌味な所が全く無い。
繁の両親は医者と看護婦と言う典型的な医学者一家だったが、子供の頃から彼は常に皆と同じ目線で会話をしていた。
カフェ『北野大茶 日暮里店』は都会のオアシスとして人々の癒しの場となっていた。
値段設定が高めの珈琲も、雰囲気と和やかな時間を考えれば決して高くないと考えている客は多い。
「本格焙煎珈琲を2つ。
彼女は甘めのやつが好きだから砂糖とミルクを1つずつください」
「かしこまりました」
モノクロを基調とした店内は冬は黒が温かく見え、夏は白が清涼感を演出する。
白いコートを脱いだ恵のセーターも黒だった為、まるで店と同化している様だった。
「最初私と会った時、すぐに私だって解った?」
「正直な所を言うと最初は戸惑ったよ。
随分黒くなったなーって。
でも顔が変わったワケじゃ無いんだし、他の奴等もすぐに慣れるさ」
白かった肌は中学時代から黒く日焼けしており、今も日焼けサロンで定期的に焼いている。
その方が男性客の受けが良い事を恵は知っていたが、元々は昔の自分との決別と言う意味を込めてした事だった。
「……あれから、皆はどうしてるの?」
「寿(ことぶき)はプラナスの支店で働いてる。
松波(まつなみ)は警視庁の刑事。
階級は……警部だったかな。
平野(ひらの)は北条(ほうじょう)さんの特別秘書をやってるよ。
年収は1400万だと。
まぁ俺はそれより稼いでるけど」
寿(ことぶき)節子(せつこ)、松波(まつなみ)徳治(とくじ)、平野(ひらの)珠美(たまみ)。
特Aのトップ5は全員東京群青大学に合格し、それぞれの道へと進んでいた。
「柳瀬君は?」
「俺は当然医者だよ。
天武日本総合病院で患者を診てる。
体調が優れないと思ったら、すぐに電話してくれ。
昔のよしみだ。
お前なら別の予約があっても無理やり捻じ込んで必ず面倒を見るよ」
綺麗な純白の名刺を渡され、恵はそれをコートのポケットの中に入れた。
「頑張ってるんだねぇ……
でも、年収でなら私、タマちゃんの年収を抜くんだよ。
凄いでしょ」
「そりゃ凄いなぁ。
馬鹿にする奴もいるけど、馬鹿に出来ない仕事だよ。
俺よかずっと頑張ってるよ、恵は」
風俗嬢である事を知りながら、嘲ったり軽蔑したりしない。
繁はただ、彼女の内側を見ようとしていた。
ナンバーワンであるが故に拙いながらも何とかリーダーシップを取ろうとしていた時の姿。
ナンバーワンになれずに悔しがっていた繁を励まし、寧ろ追い抜いてほしいと応援までしてくれた姿。
その全てが眩しい思い出であり、繁は純粋に恵の事を好いていた。
だからこそ、突然自分達の目の前から姿を消してしまった時は辛かった。
「今だから言うけど、俺……
お前の事が好きだったんだ。
告白出来なかったけど、本当に好きだった。
色々あって別の女性と結婚したけれど、お前の事が好きだと言う気持ちだけは変わっていない」
医者と言う立場上、繁は医学界を巡る権力争いから発生する政略結婚から逃れられない運命にあった。
隣に恵がいてくれたらと思った事は一度や二度では無い。
探偵を雇って見つけるまでかなりの時間を費やしてしまった。
そして繁も恵も、時間を巻き戻してやり直す事は絶対に出来ないと言う事実を深く理解していた。
「柳瀬君となら、ロハで良いよ?
私を抱きたいのならお店に来て。
奥さんに見つからない様にね~」
「馬鹿を言え。
知らないかもしれないが俺は超有名人なんだ。
名医師としてテレビに出演した事もあるんだぞ。
そんな危険な橋は渡れない。
そんな事より、今度皆と小さな同窓会をしよう」
繁は常に誠実だった。
恵のジョークも真剣に受け取り、真剣に返す。
人によっては『つまらない人間』と言う烙印を押されるかもしれない。
だが、恵はそんな彼の事が好きだった。
「……考えとく」
「ああ。
もし参加する気があるのなら、さっき渡した名刺の裏に俺の携帯番号が書いてある。
そこに電話してくれ。
皆お前と会って話がしたいんだ。
昔の話をさ」
恵は複雑な心境だった。
特A時代の事も本当は忘れてしまいたかったが、彼等の事が嫌いなワケでは無い。
寧ろ両親より好きと言っても良い位一緒にいると癒やされる。
それでもあの辛い出来事を思い出してしまうのは、恵にとって酷な話だった。
お互いにコーヒーを飲み終わり他愛も無い話をしていた時、繁は唐突にある事を聞いてきた。
「……あれからずっと気になっていたんだ。
どうして、俺達の前から姿を消したんだ?」
その質問には答えてほしいと言う切実な思いが込められていた。
心から恵の事を心配しているのが伝わってくる。
それでも答える事は出来なかった。
「ごめんねぇ。
それはちょっと、言えないんだ。
色々あったから」
口にする事が出来ない程の事があった。
苦痛・絶望・悲嘆・落胆……
信じていた者の裏切り。
自分が憧れていた存在が自分を裏切り、堕落していった過去。
それは思い出したくも無いあの日の出来事以来、当然の成り行きの様にも感じられる。
「……そうか、すまない。
嫌な事を思い出させてしまったのなら謝る」
「1つだけ言っておくけど、特Aの皆には全く責任が無い事だから。
そういう邪推をしているのかもしれないから念を押しておくけど、柳瀬君には感謝してるんだよ」
学校でとても嫌な事があったのではないか。
繁がそう思っている可能性を考慮して、恵はそう言った。
「有難う。
そう言ってもらえると助かる」
「有難うって言うのはこっちの台詞だよ~。
あの頃はホント良かったな。
未来に希望があった」
過去を懐かしむ様な言葉を発した恵に、繁は彼女の人生を覆う黒い霧の様なものを見た気がした。
「今は希望が無いのか?」
「……あんまり、ね」
それ以上何も言えず、繁は押し黙ってしまった。
沈黙が続いた後、繁の『スマートフォン』の着信音が鳴る。
「私だ。
そうか……いや、近くは無いがすぐに行く。
待っていてくれ」
慌ただしくバッグと傘を手に持った繁は名残惜しそうに恵の顔を見つめた後、立ち上がった。
「こんな時間に救急患者だ。
高速道路でトラックと乗用車がぶつかる事故があったらしい。
トラックの運転手は無事だったが、乗用車に乗っていた夫婦が重傷だそうだ。
居眠り運転は止めてほしいものだな……
ちゃんと支払いは済ませるから、お前はココでゆっくりしてから帰ると良い」
会計を済ませ、足早に去っていく繁の後ろ姿を、恵はずっと見つめていた。