大体陰惨な物語が展開する中で箸休め的な回が欲しいので
2人には助かってます。2人とも死んではいるんですが……
【天国 井島豊の居住スペース 現世では西暦2006年7月】
何をするでも無く日々が過ぎていくと言うのも、人間にとってはまた『生き甲斐』を感じられなくなるものである。
毎日拷問の様な詰め込み教育を施されていた桜華も、今では鏡で過去の映像を見る事によって暇を潰していた。
「豊、こういうのが好みなんですわね」
鏡に映った映像を指差しつつそう呼びかけると、ベッドに座り本を読んでいた豊が彼女の方を向く。
「何の話だ?」
桜華は何も言わず、ただ指差しを続けながら微笑んでいた。
『うわぁ、引くわ~』
鏡の方から火村あかりの声が聞こえてくる。
豊はベッドから離れ鏡の前まで来たが、その瞬間身体が硬直した。
『コレ……きっつい趣味ね。
豊がまさかロリコンだったとは』
過去の映像。
井島豊が亡くなり、他に部屋を片付ける人間もいなかった為あかりが部屋の片付けを行っていた時のものだろう。
引き出しの奥に隠されていたのは、幼い小学生位に見える少女が描かれた成年向け漫画ばかりだった。
『オナホとかならまだ良かったんだけどなぁ。
流石にこの趣味は笑えないでしょ』
薄く口元に笑みを浮かべ、呆れた様な表情のまま片付けを続けるあかり。
まさに『死体蹴り』と化した光景が目の前で展開される中、豊は膝から崩れ落ちて悶絶する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!
止めてくれぇぇぇぇぇ」
「死んでも評価を貶められると言うのは私が一番解っていて経験もした事ですけれど……
こういう形での辱めが無かっただけ、マシなのかもしれませんわね」
幼馴染に変態的な性癖を知られ、さらに幼児体型の桜華が馬鹿にしてくると言うのは彼にとって耐え難い事だった。
涙を流しながら床を転がり、桜華の足にしがみついた状態で開き直る。
「そうだよ、そういう趣味だよ!
でも世間様に迷惑をかけてたワケじゃねぇだろ!!
それに三次元には一切手を出してないし、シスコンの方が業が深いじゃねぇか」
弁解をする豊を見下ろす桜華の表情は、画面の中のあかりとほぼ同じものだった。
「……まぁ、零がシスコンである事を知った時もキツかったですけれどね。
妹の下着の匂いを嗅ぎながら自慰行為とか、時間が止まりましたわよ本当に」
死んだ人間は、生きている人間が墓場まで持っていきたい秘密を簡単に知る事が出来る。
暇潰しに見始めた様々な人々の秘密も、見続けていると感覚が徐々に麻痺しそうになっていた。
(美香も私の名前を叫びながら全裸の状態で自慰行為を……
知らなければ良かったと思う気持ちと、もうこうなったら相手の内面を全て知り尽くしてみたいと言う気持ちが半々ですわね)
毒を喰らわば皿までと言う慣用句があるが、今の桜華はそういった思いを抱えながら人々の秘密と向き合っていた。
「桜華は……
逆に凄いよな。
死ぬまで自慰行為とか一度もした事が無いんだろ?」
「そういう事をする人間はふしだらで、まともな人間では無いと言う認識でしたもの。
今となってはその反動なのかあかりより節操の無い女になってしまいましたけど」
綾小路家のトップとして相応しい振る舞いをすべき。
この言葉に囚われ、桜華はありとあらゆる自由を失っていた。
だが抑圧された感情は何処かで決壊する。
桜華は性行為に溺れる母親と同じ道を辿りつつあった。
(結局私も豊の性癖を笑えない立場……
これから未来永劫現世では天武日本を滅ぼそうとした悪鬼と語り継がれるワケですものね。
その現実から目を背ける為に豊の身体を利用して、逃げ続けているだけ)
絶望と言う名の黒い霧が彼女を覆っていたが、桜華は無理やりその霧を払いのける。
「私も貴方も、もう現世に何の影響も与えられない存在。
ならば、苦しむ事無く楽しむ事だけ考えましょう。
私を満足させてくださいまし」
「……ああ、その意見に関しては俺も賛成だ」
後悔ばかりの人生だった。
同じ様な思いを抱えて出会った2人が結ばれるのは必然だったのかもしれない。
豊もまた、自分の好きな体つきをしている桜華と性行為を行う事が出来るのは有難い事だった。
「しかし……
ずっと同じ事をしてると飽きてくるってのはあるな」
「こういう事に飽きると言う概念が適用されると言うんですの?」
ベッドで互いに生まれたままの状態になり、桜華に覆い被さった後ぽつりとそう呟く豊。
勃起した陰茎は熱く滾っていたがまだ桜華の膣口に触れてはいなかった。
「そりゃセックスにだって飽きると言う概念は当然あるだろ。
お前とやる事に飽きたって言うとお前は怒ると思うけどな……
マンネリ化してるんだよ。
何か新しい要素が欲しい」
「そんな事を私に言われても、どうしようも無いですわよ。
新しい要素と言っても……
あッ」
桜華は上体を起こし、長い髪の毛に手を当て目を瞑る。
「確か天使の方が、『特殊なアイテム』がどうとか言ってましたわよね。
新しい要素ならば、そういったものを使う事で実現出来るかもしれませんわ」
「ああ、そういえばそんな事言ってたな。
霊体を交換するアイテムだとか……
貰って試してみるか」
何時の間にか気配を消して2人の真横にいた天使が視界に入り、桜華が妙な声を出しつつ後ろに下がった。
「ヒィッ!?」
「なッ」
『お呼びでしょうか?』
背中に生えた羽根を使いふわふわと浮遊している天使が、リング状のアイテムを手渡す。
『コレはモーフリングと言う腕輪です。
このボタンで輪っかを外した後装着してください。
カチッと音がするまではめ込んでくださいね。
この青いボタンが『モーフィング』、桃色のボタンが『チェンジ』になります。
貴方の記憶に強く残っている相手を想像しながら青いボタンを押すとその相手に変身する事が出来ますよ。
ピンク色のボタンは2人の人間が互いにリングを装着し、同じタイミングで押す事で霊体を交換する事が出来ます。
元に戻りたい場合はこの黒いボタンを。
腕輪が外れて元の姿に戻れますので。
予備も含めて3個渡そうと思うのですが、宜しいでしょうか?』
前にルミナと名乗った少女はそう言うと、両手に持ったリングをベッドの上に置いた。
「あ……有難う」
常に監視されている事は解っていたが、それでも突然現れると怖いものだ。
桜華は怯えていたが何とか感謝の言葉を絞り出す。
『いえいえ。
天国にいる皆様に多くのサービスを提供する事が私達の仕事ですから。
こういったアイテムを渡す事によって天国でのトラブルは大幅に減少しているんですよ。
また何か困った事がありましたら何時でも呼んでくださいね』
その場から煙の様に姿を消す天使。
その場には2人と3個のリングだけが残された。
「……いや、呼ぶつもりではいたけど呼んではいなかっただろ」
唖然とした表情を浮かべながら、ぽつりと呟く豊。
いちいち羞恥心や恥等を考えていたらきりが無い。
そう思うしか無かった。
「さて、早速使ってみるか」
先程裸を見られた事実をスルーするかの様に、豊はベッドの上に置かれた腕輪を装着する。
桜華も同じ様に腕輪を手首にはめ、様子を伺う様に豊の方を見た。
「まずは、条件がややこしくない方法を試してみる方が良いですわよね?」
「そうだな。
モーフィングはすぐに上手くいくかどうか解らねぇし、チェンジの方が確実だろ。
向き合って同じタイミングでボタンを押すだけとか言ってたし」
横一列に配置された青・ピンク・黒のボタンのうち、ピンク色のボタンを同時に押す。
その瞬間、豊は自分の股間で存在を主張していたモノの感覚が変わったのを感じた。
「お、おおー……
すげぇ簡単に変わるもんだな。
よくもまぁココまで長い髪の毛を……
肌も全然ざらざらしてねぇぞ」
艶のある金髪とエステに行ってきたばかりの様なすべすべした肌。
桜華の肌を触った事はあるが、自分が彼女の身体になるとまた違った驚きがある。
「見ている視界が全然違うんですわね。
体格もがっしりしていて顎鬚も生えていて。
それに……
この突っ張って痛みすら感じる男性自身の象徴も」
桜華と豊とでは、身長に20cm以上の差があった。
小動物の様に華奢な桜華の目線から見ると、予想以上に自分の姿が大きく見える。
(涼介が俺を見上げてる位かな……
鏡でしか見た事が無い自分の姿をまじまじ見てるってのは不思議な感覚だ。
勃起してるし……
そもそもコレってどういう状態なんだ。
人格・記憶だけが入れ替わってるのか?)
身体を鍛えていると自慢した事は無いが、社会人になってから腰を痛めかけた事があり寝た状態で上体を起こす運動を続けていた。
その為マッチョと言う程では無いにせよ腹回りは意外と硬い。
(俺の身体に比べると、本当に人形みたいな手足だな。
膨らみすら無ぇ身体……
コレで4歳しか歳が離れてないとは信じられねぇ)
女性と男性では身体が大きく変わる時期が異なる。
小学生~中学生間で一気に身長が伸び、胸が膨らんでくるのが女性。
高校生あたりで女性の身長を抜かし、がっしりした体型に変わるのが男性。
豊は普通に成長したが、桜華は睡眠をロクにとっておらず屋外で日の光を浴びる事も殆ど無かった為成長する事が出来なかった。
そういう意味で言えば、大人が子供と入れ替わったかの様な感覚に陥るのも当たり前の事だろう。
「股間が熱くて……
脈動してますわ。
コレが殿方の勃起なんですわね」
桜華は男とは言え『大人の身体』に変わった事に対して困惑していた。
臆病で繊細な小動物の様な彼女が突如成人男性の身体を手に入れ、しかも股間が勃起している。
心配そうに豊の方を見つめるその顔は、昔を思い出させるものだった。
(うわぁ、虐められてた時の俺じゃんか。
暴力に怯えてる感じで。
自信が無いのが目の動きですぐ解る。
まずは緊張を解いてやらねぇと……)
彼女を刺激しない様ゆっくりと近付き、怒張した肉棒に手を伸ばす。
火村あかりがしていた様に、左手で肉棒を扱きながら右手で膣の中を刺激した。
「あッ、やぁぁん。
駄目ですわこんなのぉ」
互いに膝立ちの状態で、桜華は我慢出来なくなったのか豊の肩に両手を乗せる。
(あ、何だこの感じ。
身体の中から熱くなって、全身にその熱さが行き渡っていくみてぇだ。
ふわふわしてやがる。
この状態で挿入されたら、どうなっちまうんだろう)
豊は完全に包皮が剥け、露出した亀頭を刺激する様に指を這わせた。
雌の表情を浮かべている『自分の顔』から目を逸らし、拙い攻めを続ける。
(全身の熱が股間に集まって膨張している様な……
こんなに切ない状態になったのは生まれて初めてですわ。
私の膣にこの槍を差し入れたら、どんな快感に襲われてしまうのか想像も出来ませんわね)
豊は自分の陰茎であるが故に扱いには慣れていたが、敢えて左手で刺激を与える事によって相手の暴発を防いでいた。
勿論桜華にしてみれば快感は得るが絶頂には達せない生殺しの状態である。
「も、もう我慢出来ませんわ!」
桜華は少々乱暴に豊をベッドに寝かせると、爆発しそうな程存在を主張している肉棒を割れ目に近付けた。
豊が右手で刺激を与え続けた結果、膣口からは愛液が漏れ滴っている。
「いきますわよ豊ぁ」
「あ、ああ……
ゆっくり、な」
獣じみた行動を取ってしまうのは、男特有の性欲によるものなのか。
気弱で大人しい桜華の変貌に戸惑いながらも、豊は受け身にならざるを得ない自分の心の変化に気付いていた。
(やっぱ男はがっついて、女はそれを受け入れるって言う構図なのか……
身体が入れ替わると当然立場が逆転するんだな。
構図自体には何の変化も無いって事だが)
男の時の興奮、高揚感が殆ど感じられない事に豊自身が驚いていた。
悪く言えばセックスの時ですら冷めていて、自分と相手を冷静に見る事が出来ている。
一方桜華の方は初めて与えられた強烈な性欲をコントロール出来ず、暴走気味になっていた。
相手が『自分の身体』だから乱暴に扱ってはならないと考える理性など、今の桜華には殆ど残っていない。
「はぁ、はぁぁぁ……
入りましたわ」
膣口に肉棒の先端をあてがい、腰を前に突き出す事によって肉壁の中へと潜り込んでいく。
少し痛みすら感じる程の狭さは、常に互いの性器が擦れ合う事を意味していた。
「あ、先端がムズムズして何かがこみ上げてくる様な」
余裕が無いまま豊の身体を抱き締め、一心不乱に出し入れを繰り返す桜華。
(うわぁ、腹の中に異物が入ってきたのがダイレクトに伝わってくるな。
腹の中を先端で押し潰されて、気持ち良いと言うよりちょっと苦しいぞコレ)
桜華の場合は膣の中が小さく、豊の肉棒の長さでは楽に子宮口まで届いてしまう。
子宮の入口を欲望のままに押し潰す様な作業が何度か続き、突然呆気ない幕切れとなった。
「出るぅ、何か出てしまいますわぁ」
身体自体は何度も肌を合わせているが、桜華本人は今まで一度も自身の膣内の感触を味わった事が無い。
つまり身体を交換するセックスにおいては当然『童貞』であり、強烈な快感に屈する事となってしまった。
(すげぇ、俺の中でビクンビクン痙攣してるのが解る。
射精したって事か)
脈動と共に、精液を放出し全身を震わせる桜華。
絹の様に滑らかな『自分の身体』を抱き締め、短い余韻に浸る。
「凄いですわね、コレ……
一気に導火線に火が付いて爆発したかの様な……
殿方の射精がこれ程の快楽に満ちているとは思いませんでしたわ」
「俺もきっと、あかりに対してこんな事ばっかりしてたんだろうな。
一方的に気持ち良くなって射精して、女側は置いてけぼりにしちまう感じで」
豊はあかりとのセックスにおいて、肉棒によって与える快感で彼女を絶頂に導いた事が殆ど無い。
強烈な快感に身悶え、気付いた時にはもう果てていると言う状態が日常であった。
「お前が慣れれば女性側の『イク』ってのを体験する事が出来るのかなぁ。
今の段階では入れられて出された感覚しか無ぇんだけど」
豊が不満を漏らしながら身体を後ろに引くと、萎えた陰茎がそのまま抜ける。
「私だって、豊のモノでイった事……
全体で見れば半分位ですわよ?
そちらがそういう状態なのですからお互い様ですわ」
現状の不満を言い合う2人。
男性が容易く快感を得られる事に対して、女性はそうでも無い。
それは男女の身体的構造の違いと言ってしまえばそれまでなのだが、豊はセックスでの絶頂を望んでいた。
折角女の身体になったのだから、女性の絶頂を体験してみたい。
そう思う豊に対して、桜華は一度射精した事で身体のだるさを感じていた。
(普段と違って、凄く動くのが億劫ですわね……
白い液体と同時に生命エネルギーまで放出したかの様ですわ)
男性の射精は、一説によると100mを全力疾走した時と同程度の疲労があるとも言われている。
所謂『賢者タイム』に突入した桜華と違い、身体の昂ぶりがまだ収まっていない豊はまだ性行為を続けたかった。
「なぁ、もう1回やろうぜ。
さっきは初めての快感だったから即射精しちまったんだろ?
慣れればピストン運動も出来るって。
乗り気じゃ無ぇなら俺が勃起させるのを手伝ってやるからさ」
空中で肉棒を扱く様な動作を行う豊を見ながら、桜華は首を横に振る。
「普段私が豊のモノを逞しくさせる為に行っている事をすると言うのならば、考えないでもないですけれど……」
薄ら笑いを浮かべる桜華の姿は、自分自身に嘲笑されているかの様だった。
(そ、それって……
フェラチオしろって事か!?
流石に自分のを口で咥えるってのは嫌だな)
だが、豊はかなりの頻度で桜華にフェラチオを要求した事があり、桜華はそれを不満に感じていた。
「さぁ……
どうするんですの?
私は別にどちらでも構わないんですわよ。
不完全燃焼で終わると言うのならそれも良し。
どうしても私をその気にさせたいと言うのならば、口で奉仕するしかありませんわね」
自分の肉棒を口に含んで刺激を与えるなど、考えただけで気持ちが悪くなる。
(……でも、俺は桜華にそれをかなりの回数強要してるんだよな。
桜華にしてみりゃ、不公平にも程があるだろ。
ココでやっておかないと、通常のセックスすら拒否されかねねぇし……)
相手が不快に感じている理由も含めて、自分自身で体験すればもうそれを要求する事も無くなる。
豊は桜華とこれからも共に日々を過ごしていく為にも、歩み寄らなければならないと思った。
「じゃあ、やってみるか……」
「先に言っておきますけれど、私が豊に言われて遂行した事は全て行わなければ駄目ですわよ。
私が何を言いたいか、それ位は解りますわよね?」
桜華の言葉が、豊の心に鋭く突き刺さる。
(最後まで、やれってか……
自業自得の極みだな。
俺から言い出した事とは言え、身体の交換なんてするんじゃなかったぜ……)
男にしてみれば、征服感に満ち溢れる『精液を相手の女性に飲ませる』と言う行為。
当然、役割を交換すれば地獄の苦しみを味わう事になる。
「吐かない様に、全力を尽くしますよ……」
「フフン、良い気味ですわ。
普段私を虐めているバチが当たったんですわよ」
床に両手を置き、勝ち誇った様な表情を浮かべる桜華。
豊は懸命に『自分の肉体でする事では無い』と心の中で自己弁護を続けたが、肉棒を咥えた瞬間全てが無駄となった。
(不味いソーセージっつーか……
こんなモンをしゃぶらせてたのか、俺は)
目に涙を滲ませながら、己に返ってきた唾を飲み込もうとする豊。
一方桜華の方は拙いフェラチオで勃起出来るワケも無く、ストレスだけが溜まっていく。
「もっと上手く出来ないんですの?
私は一応練習して悦ばせられる様になったと言うのに」
「今まで一度もやった事の無い作業をそつなくこなせと言われたって無理だろうが。
まは、もうふぃっとがんはるけどふぉ……」
相手を気持ちよくさせようと努力を続ける豊の苦しそうな表情が、桜華の欲望を膨らませた。
(ああ、成程……
相手を屈服させ、涙まで流させると言う行為。
つまり豊を下に見ている優越感が興奮に結び付くんですわね)
萎えていた肉の砲身が、ゆっくりと大きく、太く、硬くなっていく。
既に皮が全て剥けている状態ではあったが、完全に勃起した事で亀頭の感触が伝わってきた。
(やっぱ、亀頭をしゃぶったり舐めたりすれば気持ち良くなるのか?
俺自身、そうされてると射精しそうになるしなぁ)
剛直が、口に含みきれない程長くなり、脈動を始める。
心臓の鼓動と同じ様に血液が肉棒に集まる事によって、それは激しく痙攣していた。
「才能がありますわね、豊。
気持ち良くなってきましたわよ。
もう少し……
もう少しで絶頂を迎えられそうですわ」
桜華は豊の口の中に欲望をぶちまけるつもりでいたが、豊は口での愛撫を止める。
「ちょっと、何故止めるんですの?」
「もう1回セックスしたいってのが俺の願いなのに、射精されたら困るんだよ。
ココ使って気持ち良くなった方がお得だって、お前にも解るだろ?」
御世辞にも上手いとは言えない駆け引きだが、桜華にしてみれば反論する事が出来ない。
屁理屈も射精したいと言う欲望の前では容易く受け入れられてしまう。
(うう、本当に卑怯ですわ豊は……
こんな状態で止められたら、屈するしか無いでしょう?
膣を使って絶頂を迎えたいと思う気持ちが勝ってしまいますもの)
犬の交尾の様に、膝を立てた状態で後ろから肉棒を膣の中へと沈めていく。
「こ、こうなったらとことん泣かせて差し上げますわ!」
女よりも、男の方が性欲に忠実であり、また耐える力が劣っている。
攻める側と受け身になる側の違いを、桜華は嫌と言う程痛感していた。
(多少乱暴でも絶頂を迎える前に激しく動いてしまえば、相手側に快感を与える事が出来るかもしれませんわね)
肉棒から与えられる刺激に対して敏感になっていただけに、無理やり自分から動いていく。
当然自殺行為であったが、ただピストン運動を続けるよりは耐えられた。
叩き付ける様に奥へと進めば、自分もまた多少の痛みを感じて絶頂を迎えるまでの時間を稼げるからである。
(うわ、激しく突かれると結構身体が熱くなるな。
まさか俺ってMっ気があるのか?)
敏感な奥の部分に亀頭がぶつかり、快感が豊の全身を包み込んだ。
「これぇ……
凄く良いですわ。
また、出そう……」
凄まじい快楽に涎を垂らしながら腰を振り続ける桜華。
「も、もう少し踏ん張ってくれねぇかな……
もう少しで解る様な気がするんだ」
男の様に股間に熱がこもり、射精と共に股間から熱が抜けていく様な感覚とは明らかに違っている。
全身がゆっくりと熱くなっていき、熱が逃げる事無く巡っているかの様だった。
(身体が火照るって言葉があるが、そんな感じなんだな。
出し入れされるだけで、こんな変な感じになっていくもんなのか)
自分でクリトリスを刺激すれば、アシストになるかもしれない。
相手が果てる前に自分が絶頂を迎えたいと思う一心で、豊の手が股間に伸びる。
「も、もう駄目……
私のが、私のがぁぁぁぁ」
その刹那、全体が大きく膨らんだ肉棒が、欲望を膣の中へと注ぎ込んでいった。
(あー、クソッ……
思い付くのが遅かった)
桜華だけ達し、今度は豊の方が絶頂を迎えられない蛇の生殺し状態に陥ってしまう。
「や、やぁ……
私のが、ビクンビクンって跳ねてますのぉ」
奥へと押し付け、放出される精液を全て豊の体内へと流し込んでいく桜華。
暫くの間ガクガクと身体全体を震わせていたが、やがて身体の力が抜けたのか背中から豊に覆い被さった。
「私の身体って、膣の柔肉もきめ細やかな肌も全部最高ですわね。
こんな快楽を毎回提供していると思うと、豊が羨ましいですわ」
「結局、女の側が一方的に損をする局面が多いのがセックスなんだと言うのが解っただけでも良しとしよう……
もうちょっとで女の絶頂の感覚を掴めそうだったんだがなぁ。
セックスでは体験出来ずか」
豊は火照ったままの身体を動かし、そのままベッドへと倒れ込む。
桜華は再び萎えた肉棒が膣から抜ける感触を楽しみながら、『自分自身』を抱き締めた。
「自分が感じる側になると……
女性の肌が男性の肌を優しく包み込むのが解りますわ。
男性は女性に対して、性欲と母性の両方を求めているのかもしれませんわね……」
「じゃあ女は男に対して何を求めるんだろう?」
「それは、女性を守る力強さと、相手を思いやる優しさだと思いますわよ」
男は女の優しさに甘え、女は男の逞しさによって外敵から身を守る。
太古の昔から、男と女は互いを利用し合って生きてきた。
それは単なる利害関係を超えた、もっと深いものだったのかもしれない。
「一度火照ってしまうと、熱を逃がすのが大変ですわ……
殿方はその気になればものの数分で絶頂を迎えられるんでしょうけれど」
黒いボタンを押し、元の姿に戻った桜華は豊が抱え込んでいた状態をそのまま受け継ぐ事となった。
豊の方は2連続の射精の影響が大きくベッドから立ち上がれない。
(霊体だから気のせいって言うけど、結局気持ちがそうなってたら同じ事なんだよなぁ。
病は気からと同じで、心と体は繋がってるんだよマジで……)
流石に豊を無理やり叩き起こして『続行』するのは気の毒だと思ったのか、桜華は1人で事態を解決しようと試みていた。
「フフ……
ちょっと面白いですわね。
豊の身体の時に感じた射精の余韻と、今の身体の火照りが同時に来ているなんて。
まさに『生きていた時には味わえなかった貴重な体験』ですわ」
手で陰部をまさぐり、指で膣に刺激を与える事で絶頂を迎えようとする桜華。
(桜華の自慰行為を間近で見るのも結構贅沢だな。
やってみせてくれと言ってもなかなか見せてくれねぇもん。
役得役得)
男の力を借りずに絶頂を迎えるには、自分で自分を慰めるしかない。
当たり前の事ではあったが、今の桜華にはそれを見られていても恥じらう程の心の余裕が無かった。
(とことん女性は男に比べて不公平な生き物ですわね……
死んでから生理痛が綺麗さっぱり無くなったとは言え、それでも理不尽な点は多いですわ)
男性の『気楽さ』は女性には殆ど無い。
桜華は人よりも遥かに厳しい道を進んでいたからこそ、豊が楽をしているのが余計に羨ましかった。
そんな事を考えつつ、足を延ばしたまま女としての絶頂を迎える。
「ハァ、ハァ……
事が済んでも暫くの間熱が消えないのも厳しい点ですわね。
豊みたいに、男として生まれてくれば私も……」
一瞬桜華はそう考えたが、すぐにそうでは無い事に気付かされた。
男として生まれていれば、より厳しい『綾小路家の跡取り』としての苦難が待ち構えていただろう。
巴も女性としての桜華程自分に優しくしてくれたかどうか解らない。
妹分の美香との関係も、最初から淫らなものになっていた可能性を考えると現状の方がマシだと思えた。
「やっぱり、私は女で良いのかもしれませんわね」
「俺はお前が女でいてくれて嬉しいよ。
そうじゃなきゃココまで親密な関係になってねぇし」
結局、高望みしても手に入らないものはあるのだ。
桜華はそう思った。
生きている時、どんなに手を伸ばしても届かなかったものが今自分の近くにある。
安息の日々と、生意気で憎たらしい所もあるがいざと言う時は一番頼りになる相棒。
それを手に入れておいて、贅沢を言う権利は無い様な気がした。
(こんなものですわよ。
自分の理想なんてそう簡単には叶わない。
現実と折り合いを付けて、ゆっくり歩いていくべきですわ。
私も……そして豊も)
身体を交換した事で見えたもの。
それは単なる性欲だけで無く、自分自身の姿だった。
自分が一番可愛いのは誰でも同じだ。
だが2人は隣にいる相手も同じ位可愛く見えた。
だからこそ、2人は互いに離れずずっと側にいる。
どちらかが離れぬ限り、この微妙な距離を保った関係は続いていくだろう。