『現実世界に両性具有者が実在したらどうなるのか』と言うのが
あります。普通は迫害され、肩身の狭い思いをするでしょうね。
そしてこういった『両性具有者だけのコミュニティ』が
形成されていくと思います。
【2010年12月30日 東京都新宿区 大出みゆるの自宅兼仕事場】
イラストレーター、大出みゆる。
ペンネームはRUMI。
公の場には一切顔を出さないと言う完全秘密主義を貫く覆面イラストレーターだったが、彼女の絵を欲しがる者は多かった。
ポップアート、アニメ調、写真と見紛う程の正確な模倣……
どんな絵を描かせても超一級品であったし、彼女の絵を広告にすると商品が飛ぶ様に売れるのだ。
基本は駅の構内や街中の壁に貼るポスターを得意としており、ごくたまに本の表紙や挿絵も引き受ける。
超売れっ子であったが故に頼む際の金銭もかなりのものであったが、それ以上の利益を叩き出す為誰もが彼女に仕事を頼みたがっている状態であった。
「私達は顔とか、スタイルで勝負してるワケじゃない。
イラストオンリーで生きていこうとしてるのよ?
そこで自分の価値を上げれる時に上げないでどうするの。
少額でも良いから仕事をくださいなんて口が裂けても言っちゃ駄目。
自分の価値を下げる事になるから」
みゆるはそう言いながら、2人のアシスタントが持ってきた紙に色を塗る作業を開始していた。
大晦日が近くなってくると、何時もは1人か2人でこなせている仕事量を軽く超えてくる。
咲は別室でペン入れを行い、出来上がったものを廊下に置きアシスタントに回収してもらっていた。
「先生、正月の大セール用ポスターはこれで最後です。
今から年賀状購入促進キャンペーンのポスターに手を付けますね」
「明日ドーム内の壁に貼られるZERO全国大会のポスターの塗りをお願いします」
作業工程としてはみゆるが先に鉛筆でラフを書き、それに咲を含むアシスタントがペン入れ。
色塗りと仕上げはみゆると言う、ほぼみゆるが1人で絵を完成させている状態だった。
「このポスター塗る時はテンション上がっちゃうのよね。
あ、ゴメン。
咲の部屋の前に行ってペン入れされてるやつ持ってきてくれる?」
みゆるの凄い所は、短期間での集中力が常人のものでは無いと言う所だった。
数時間で20枚の絵を片付ける事も珍しくないし、クオリティが下がる事が全く無い。
おまけに彼女は2日間殆ど一睡もしていないにも関わらず、欠伸1つ出なかった。
「はい先生。
私が取ってきます」
アシスタントの女性が立ちあがり、彼女の部屋の前まで歩いていく。
ヘルプとして呼び出される彼女は、毎回この作業を行っていた。
(それにしても、咲さんってどんな人なんだろう?)
みゆるのアシスタントとして忙しい時期に手伝いをしている2人は、咲の顔を知らなかった。
顔を見れば遠藤咲である事がすぐに露見してしまうし、何より疲れている状態の彼女を決して人前に出してはならない。
その為、みゆるはアシスタントに咲と顔を合わせる事を禁じていた。
『何度も言うけど、咲の部屋のドアを開けたりしたら即クビだと思っていて頂戴。
冗談じゃなく本気よ。
貴方達だって美味しい仕事を無くすのは嫌でしょう』
みゆるの言葉が脳裏をよぎる。
彼女もみゆるから半年間は遊んで暮らせる程の金を受け取っているのだ。
見るなと言われれば見たくなると言っても、その報酬を受け取れなくなる様な事をする程愚かでは無かった。
「置いてあるの、貰っていきますねー」
既にペン入れが完了している紙を床から拾い上げ、声をかける女性アシスタント。
返事が聞こえてくる事は無い。
みゆるが絶対に声を出すなと厳命しているからだ。
『今の子は記憶力も勘も優れている。
貴方はアイドル時代にテレビで歌を歌ったりしていたから、声だけで解ってしまうかもしれない。
絶対に声を出しては駄目。
良いわね?
アシスタントを呼ぶ時は予め貴方に教えておくから』
人がいる事は確かだが、誰かも解らない状態と言うのは気味が悪い。
それでも大金を貰える美味しい仕事を逃したくないと思う一心で、彼女は何事も無かったかの様に仕事部屋へと戻っていった。
「ハー……終わった。
やっと今年の仕事も一段落したわね」
午後6時。
クリスマス前の20日頃から続いていた長きに渡る戦いが終わりを告げる。
クリスマス用の仕事を含めると合計300枚程。
普段は受けている小説の挿絵を断って取り組んだが、それでも体力と精神力を削っていく日々だった。
「お疲れ様でした。
何時もの様にすれば大丈夫ですよね?」
「ええ。
ファミレスで待ってる御客さんの所に届けてきてね。
絵は全部封筒に入れてアルファベット別にしてあるから。
間違いが起きない様に最後、ちゃんと確認してもらってから引き揚げて頂戴」
上着を羽織りバッグを持ったアシスタント2人に大きな封筒と小さな封筒を渡すみゆる。
大きな封筒にはポスター、小さな封筒には彼女達に支払うギャラが入っている。
アシスタントは1日毎に必ず一旦帰宅させていたが、みゆる本人は徹夜を繰り返していた。
達成感と同時に集中力が切れ、今にも倒れそうな状態に陥っている。
「じゃあ先生。
仕事を終えたら私達も家に帰ります。
良いお年を」
「来年も宜しくお願いします」
2人を玄関まで送りドアを閉め鍵をかけた瞬間、みゆるは身体中の疲れが一気に噴き出したかの様に座り込んだ。
「いやぁ、今年は結構無茶なスケジュールだと思ってたけど出来ちゃうものね……
来年はここまでばたつかない様に、20日の前から準備を進めておかないと」
極力トイレに行かない様にする為、みゆるはここ数日まともな食事をとっていない。
携帯食と栄養が詰まったゼリーで済ませ、1日に僅かな仮眠を取ると言う生活を送っていた。
普通の人間ならば途中で倒れてしまいそうな過酷な戦いも、彼女は気力だけで乗り切ってみせる。
その代償はあまりにも大きく、強烈な睡魔が彼女に襲い掛かっていた。
「……咲、ゴメン。
私はもう寝るわ。
貴方も睡眠はしっかり取っておきなさいよ」
それだけ言うと、動きたくないと拒否する足を無理やり引き摺り自室へと向かうみゆる。
ベッドに倒れ込むとブラックアウトに等しい形で深い眠りへと落ちていった。
遠藤咲は大出みゆると違い睡眠こそ取っていたが、連日の激務で数日間自慰行為に耽る心の余裕が無く肉棒が異常な程膨れあがっていた。
「あー……ホンマ酷いで。
チンポ痛くても仕事が次から次に入ってきて全然出来へんし。
みぃやんに仕事してへんと怒られるしな。
それどころや無かったわ」
普段は性欲が溜まる前に吐き出していた咲であったが、『仕事を終わらせなければならない』と言う使命感の様なものに突き動かされる。
結果、ペニスが痛みを訴えてもアドレナリンが出続けている状態の為我慢がきくと言う状態であった。
そして全ての仕事が終わった今、みゆるに襲い掛かってきたのは睡眠欲であったが咲の場合は性欲だったのである。
「な、なんか凄い事になっとるんやけど……
これはカタクナールΩ飲んだ時以上やないの?」
肉棒全体が跳ねる様に脈動し、血流が全て股間に集中している証なのか血管が浮き出ていた。
通常の勃起よりも遥かに硬く大きくなったそれの処理をどうするべきなのか、咲は困り果ててしまう。
(手コキでいけるんかな。
こういう時にオナホとかあれば処理もし易いんやろうけど……
あかりはんに貰ったやつは匂いがきつくなってきたんで捨ててもうたし)
処理を行う回数も思春期の男性より遥かに多かった為、そういった器具もすぐに駄目にしてしまった。
最早通常の手段ではこの欲望を解放する事が出来ない。
(今からコレにサポーターを付けてあかりはんの所まで……
自殺行為やわ。
股間の膨らみがばれるか、歩いている途中に激痛に耐えかねて失神まであるで。
ああ、でもなぁ……
それは、そうなんやけど)
彼女の中に棲む獣が、唸り声を上げ始めた。
みゆるが自宅に自分とアシスタント以外の人間を滅多に呼ばず、呼んだとしてもそれは全て仕事関係の人間である事を咲はよく知っている。
みゆるは他人をこの部屋に呼ぶ事を認めず全面的に禁止していた。
(それは……駄目やんか。
絶対駄目な事で……でも……
このチンポを収める方法として一番簡単なのは……)
みゆるは咲と再会してから今まで、一度も咲とセックスを行った事が無い。
和枝とのセックスを思い出すのが嫌だったと言う事と、単純に咲をそういう目で見たくないと言う思いからだった。
だがそうやって縛り付けたのが仇となり、咲の欲望は理性を吹き飛ばす寸前にまで達している。
「みぃやん、みぃやん……」
性欲と勃起している肉棒の痛みに屈した咲は、服を全て脱ぎ捨てると夢遊病患者の様にみゆるの自室へと歩いていった。
性欲が暴走して耐えられなくなると、理性が崩壊して性行為を行う事しか考えられなくなる。
両性具有者の場合は10代後半から20代後半までそれが続き、40代になると性欲に関して徐々に淡泊になっていく。
咲はまさに性欲真っ盛りの年齢であり、数日間無視していた性欲が爆発しそうな程溜まっていた。
「ああ、みぃやん……」
みゆるは万が一を考え普段は自室にも内側から鍵をかけて寝ているのだが、疲労がピークに達していた為施錠する事をすっかり忘れてしまっている。
パソコンが突如シャットダウンを起こしたかの様に、彼女は寝ると言うより気絶する様な勢いで意識を失っていた。
「はぁ、はぁ……
みぃやん、ごめんな。
ウチ……もう我慢が出来へんのや」
自分がしようとしている事が許されはしないと言うのが解っているハズなのに、止める事が出来ない。
全裸の女が女性のジーンズのベルトとボタンを外し、引き抜く形で脱がしていく。
目を覚ましてこの姿を見られれば、軽蔑されるだろう。
この家から追い出される事も覚悟しなければならない。
心の片隅でそう思いはしたが、咲には激痛を訴えるペニスの本能に抗う事がどうしても出来なかった。
(最低や、ウチは……
命の恩人であるみぃやんを汚そうとしとるんやから。
でも、でも……
いっぺん入れてみたかったんよぉ!)
小学生の頃、姉とセックスしながらも大出みゆるとの性行為を何度も夢想した。
性欲は発散出来ていたので実行に移す事こそ無かったが、自己嫌悪に陥りながらもその妄想を止める事が出来ない。
咲にとって大出みゆるは自分と異なり普通の身体を持つ『憧れ』であり、同時に嫉妬する程の魅力を持った人物だった。
彼女に自分の肉棒を入れた時、どんな快感を体験するのか知りたかったのだ。
その『夢』が、今夢では無く現実に出来る状況にある。
(ああ、みぃやんのオメコ……
当たり前やけど、あかりはんと同じでチンポ付いてへん普通のオメコや。
前戯した方がええんかな。
流石に今のウチのチンポ、そのままやと入らんやろ)
みゆるは元々和枝と同じ様に眠りが非常に深く、本格的に眠ると多少の事があっても起きないのだが今はさらに深い眠りへと落ちていた。
ズボンとパンツを脱がされただけで無く、足を開いたり膣に指を突っ込んでみても目覚めない。
(何をしとるんや。
こんな事絶対にしたらアカン事やのに。
みぃやんはウチの命の恩人で、ウチに仕事を与えてくれて……)
理性が性欲によって黒く塗り潰され、彼女を犯したいと言う感情で満たされていく。
自分がしている事を心の中で必死に否定しても、膣をまさぐる指は動き続けていた。
「う……ふうう、ん……」
幼少期にセックスばかりしていた事もあり、指で相手をどう刺激すれば感じさせる事が出来るのか感覚で解っている。
閉じていた膣が僅かに開き、膣口が呼吸をしているかの様に閉じたり開いたりしているのを見た瞬間咲の理性の糸は完全に切れてしまった。
(みぃやん、ウチを……
受け止めてぇ……)
既に咲の肉棒は雄々しく反り立ち、亀頭にあたる部分の先端から透明な汁が漏れ出ている。
通常の勃起の1.5倍はあると思われるその肉の凶器が、みゆるの膣口へと近付いていった。
「ハァ、ハァ……
入れ……
入る、入っていく、お、おぅぅぅぅぅ」
和枝や横田に蹂躙され、緩くなっていた膣はその剛直をあっさりと受け入れる。
咲が腰を前に突き出した瞬間、その槍は吸い込まれるかの様に奥へと潜り込んでいった。
(ああ、コレが……
みぃやんのオメコの中。
あったかくて、チンポが蕩けてしまいそうやわ。
メッチャ気持ちええ。
中で弾けたら、もっと気持ちええんかな……?)
驚く程あっけなく、みゆるの膣が咲のペニスを根元まで飲み込んでいく。
彼女の中で脈動する己の肉棒を感じながら、咲はゆっくりと抜きまた深く挿す行為を繰り返した。
もっと乱暴にしたら彼女が起きてしまうだろうか。
今の咲にはそんな事を考える心の余裕が全く無い。
ただ快楽を得る為だけに腰を振る獣だった。
「あ、あはッ。
凄いわ。
襞が、ウチのチンポを擦る……
おかしくなってまう」
普通、両足を両手で持ち膣に肉棒を挿入され乱暴にピストン運動をされればその人物は起きてしまうだろう。
だが今のみゆるは電源を切ったパソコンの様な状態だった。
震度5クラスの地震が起きたとしても、彼女は眠り続けるのではないかとすら思える。
(最高や、みぃやん……
ウチが子供の頃から思い描いていた以上の心地良さ。
あかりはんには負けるけど、コレは相当なモンやで)
欲望が加速し、さらに硬く大きくなっていく。
咲は脱線しても尚走り続ける暴走列車の様だった。
股間が熱くなり、射精の前兆を感じ取る咲。
さらに激しく、深く彼女の中で暴れ続ける。
(オメコが、ウチのチンポを優しく包んで、擦ってくるぅ……
イッてまう、射精する……
出る、出るぅ!!)
全身がビクビクと痙攣し、快楽が股間へと集中した後唐突に弾けた。
肉棒の先端から透明な粘液が噴き出し、みゆるの中を汚していく。
(あッ……
はう……くぅぅぅ)
漏れそうになる嬌声を歯を食いしばる事で抑え、短い射精の余韻に浸る咲。
荒い息を吐きながら彼女の腰付近にそっと手を置き、ゆっくりと肉の槍を引き抜いた。
(ああ、後先何も考えずに中出ししてもうた。
拭き取ったとしても違和感が残るやろ。
ウチ、本当にみぃやんとセックスしてもうたんやな……)
濁った意識の中でとりあえず後悔してみる咲であったが、股間の滾りは一度の射精では収まらない。
数日間溜まりに溜まった性欲が簡単に発散出来るハズも無く、彼女自身はまた重力に逆らっていた。
(射精する機械か、情けな……
なんでウチと姉やんはこんな身体に生まれてきてもうたんやろ。
男よりも激しい性欲なんて要らんわ。
要らん、けど……)
咲は入口から自分の液体が流れ出ている膣を見てさらに興奮する。
フェラチオやパイズリが頼めない以上、再び彼女の中に潜り込むしか自分の欲望を吐き出す手段は無さそうだった。
真っ暗な闇の中で泥に浸かっているかの様な、深い深い眠りの中。
下半身に僅かな違和感があっても、それを意識する事が出来ない。
みゆるは闇の中から抜け出し、『夢』と言う微睡みへと移行しつつあった。
『みぃやん、ごめん……
ごめんなぁ』
和枝の声が聞こえる。
僅かに上体を起こすとあの台の上で、裸の和枝が自分を犯していた。
(夢、か……)
意識があっても夢を見ている状態。
幽体離脱とも称される『明晰夢』の中、みゆるは過去を振り返る。
(私の人生の殆どが、和枝や横田に犯される日々。
夢ですらそう。
潜在的な痛みが、私の中から消える事は無い)
みゆるもまた全裸の状態で台に縛り付けられ、身動き出来ない状態の中一方的に蹂躙されていた。
和枝も自分も子供の頃の姿で、ふと視線を移すと横田の醜悪な顔が目に入る。
『もっと大出を悦ばせてやれよ。
俺よりでかいモノを持ってるんだろ?』
横田も全裸の状態で勃起しており、ニヤニヤ笑いを浮かべながら2人の醜態を眺めていた。
(夢だろうと何だろうと、もう虚無しか無い。
私の人生は一体何だったのかしら。
コレが運命だとするならば、残酷な神様がいたものだわ)
枯れ果てたはずの涙が、頬を伝って流れ落ちていく。
この夢を見せられるのは苦痛であったが、疲労が蓄積しており起きる事にも抵抗があった。
(もうちょっと、寝させて……)
また真っ暗な闇の中へと意識が落ちていく。
みゆるは再び深い眠りへと移行していった。
「最悪や、もう……」
呆れ果てる程の性欲。
その呪縛から解き放たれると、凄まじい自己嫌悪に陥る。
咲はみゆるの中で何発も弾け、彼女が意識を取り戻さないまま涙を流すのを見て己も泣いた。
みゆるが無意識の内に自分を拒否しているのではないかと感じたのだ。
(みぃやんが望むハズも無いのに、ウチがみぃやんを求めてもうて……
あの涙は拒絶の証や。
取り返しのつかん事を)
性欲に支配されている時は、その後の事など全く考えられなかった。
欲望のままに相手を犯し、憑き物が落ちたかの様な状態になってから後悔する。
かつて和枝もそれを繰り返してきた。
咲も和枝と同じ生き物でしかなかったのだ。
(と、とにかく……
起きたら全力で謝るしか無いわ。
出し過ぎたせいでベッドがウチの精液まみれになっとる。
拭き取ったとしても絶対バレるやろ。
ああ、みぃやん……)
謝罪しても、泣いても意味が無い事は理解していたが無意識の内に床に膝をつき咲は涙を流していた。
許してほしいと懇願しながら、正座した状態で膝に手をつきみゆるの方を見る。
(チンポがあるせいで、迷惑をかけるのはホンマ駄目や。
みぃやんがトラウマを抱えているのが解っているのに、快楽に負けてもうて。
無理してでも時間を作ってあかりはんに会いに行くべきやったろ)
受け止めてくれる相手ならば、罪悪感は生まれない。
互いに快楽に貪れればそれで充分。
だが、みゆるはそれを望んでいない。
咲はそれを知っていたにも関わらず、止まる事が出来なかった自分を恥じた。
どれだけ深く、眠っていたのだろう。
遠くから、除夜の鐘の音が聞こえてくる。
その音で彼女は目を覚ました。
「もう、そんな時間……
1日近く寝てたって事なの?」
みゆるは上体を起こし、自分がどの様な状態であるのかを知る。
(えッ?
私ズボンとパンツ履いてないじゃない。
どういう事)
ベッドから立ち上がると、下腹部に鈍い痛みが走る。
拭き取られてはいたが、自分との『性行為』が行われた痕跡がハッキリ残っていた。
「これはまさか……
咲!!」
勿論、こんな事をしでかす相手は1人しかいない。
申し訳なさそうな顔をして部屋に入ってきた咲の姿を見て、彼女は何が起こったのか全てを理解した。
「みぃやん、ごめん!
ウチ、どうしても我慢が」
「そういう事だったのね。
私の身体を使って性欲を満たしたと。
……私は貴方を怒鳴りたいワケじゃ無いのよ。
貴方を家に招き入れた時から、こうなるんじゃないかとは思ってたから」
不思議と、怒りたいとは感じない。
寧ろ諦めと、咲に対する憐憫の情が沸いてきた。
和枝に対しては当初自分をそんな目で見ていたのかと落胆する嫌悪感の様なものがあったが、だんだん薄れていく。
最終的には可哀想だと思う様になった。
自分と違い、己を抑制する事が出来ない人間である事を理解したからだ。
(和枝が性欲の奴隷だったんだから、咲だって同じ。
性欲の衝動のままに、何も考えられなくなって女性の身体を貪る。
私は、彼女を引き取ると決めた時からそれを受け入れる運命だった)
和枝が横田を殺していなければ、間違いなく自分が殺していた。
殺人犯になる運命を変えてくれた和枝への感謝の気持ちから、咲を自分の家に住まわせる事を決断したみゆる。
その時からいずれこうなる事は目に見えていた。
早いか遅いかだけの違いでしか無かった。
「……和枝が生きていたら、殺人犯になる事無く平穏な日々を過ごしていたら私と彼女の運命は逆転していた。
私は彼女が貴方に与えていたものを全部引き継がなきゃいけない。
和枝は当然、貴方の性欲処理もしていたハズ。
だから、それも含めて受け止めなければいけなかった。
それなのに私はそれが怖くて、貴方を無意識の内に拒んでしまっていた」
みゆるはベッドから立ち上がり、俯いたままの咲の肩にそっと手を置く。
「許すとか、許さないと言う次元じゃない。
私には貴方を受け入れる義務がある。
……でも、寝ている間にするのは止めてね。
私こそ、今まで拒んでしまってごめんなさい」
みゆるもまた、後悔していた。
受け入れなければならないと言う事実から目を背け、自室に鍵をかける毎日。
その結果咲を暴走させ、この様な結果を招いてしまう。
咲を性犯罪者にしない為にも、自分と言う『ストッパー』が求められているのだ。
みゆるは反省し、自分の態度を改める事を誓った。
「みぃやん……
ウチの事を受け入れてくれるんやね。
嬉しいわ」
咲はみゆるを抱き締め、涙を流しながら笑顔を見せる。
その一方で、彼女が履いていたスカートが盛り上がり局部がみゆるの腹に触れていた。
(この底無しの性欲……
和枝の時もそうだったけど、ふたなりって何で短時間でまた勃起するのかしら。
泉みたいに次から次へと性欲が湧き出てくる。
無尽蔵って言うのはこう言う事よね)
受け入れるとは言ったが、本当に精力旺盛な咲の相手を務め続けられるのか。
みゆるは自分がそこまで耐えられる身体では無いと思っていた為、不安を払拭する事が出来なかった。
人間には当然、本音と建前が存在する。
咲はみゆるが自分を安心させる為にあの様な発言をしたが、本心から出た台詞では無い事に気付いていた。
(飼い犬に手を噛まれたっちゅう気分になったんやろうな。
みぃやんは。
それでもウチの事を思って、精一杯の嘘をついてくれた。
優しい人やで)
本音をぶちまけて、両者の対立感情を煽っても意味は無い。
みゆるは咲の行動を肯定する事で無用な争いを避けたのだ。
みゆるの本心が見えていたからこそ、咲は彼女に負担をかけたくは無かった。
「新年そうそう家に来て、相談の内容が気軽にセックスが出来る相手探しって……
沙織ちゃんらしいわね。
暇な時なら、私が相手をしてあげるのに」
年が明けた1月上旬。咲は火村あかりに自身の悩みを打ち明け、救いを求める。
あかりの自宅にはあかり本人と、雨宮比呂子の姿があった。
「先輩が相手をしてあげられない時があるから、『何時でも出来る相手』が欲しいって事じゃないですか?
でも、何時でも出来る都合の良い女性なんてそうそういませんよ」
「いや、それは解っとるんやけど……
みぃやんがやんわりとウチとのセックスを拒んでいる感じがするんや。
せやから、ウチの身体の事を気にせずに開放的にセックスが出来る環境があればええなって」
咲は軽い気持ちでそう言ったが、それがなかなか難しい条件である事は誰にでも解る。
「いっそ、沙織ちゃんと同じふたなりの子がいれば解決するわよね。
その子だって沙織ちゃんと同程度かそれ以上に性欲を抱え込んでいるハズだもの」
「あッ、そうですね!
先輩、そのアイディアナイスですよ。
ふたなり同士ならお互いの性欲を発散させ合う事が可能でしょう」
あかりの発言に頷き、名案だとばかりに握り拳で開いた手を叩く比呂子。
咲は頭では理解していたが、自分と同じ身体の人間に出会えるとはとても思えなかった。
「いやぁ……
確かにあくまで噂では天武日本国民のうち5000人がウチと同じふたなりって囁かれてるのは事実や。
それが本当かどうかはともかくとして。実際にいたとしても知り合うきっかけが無いやろ」
比呂子は暫くこめかみに手を当てて考え込んでいたが、何かを思い出したのかポケットからスマートフォンを取り出す。
「恵さんに聞いた事があるんですよ。
ふたなりの人達のコミュニティが存在するって。
大きな施設に皆が集まって、互いの性欲を満たしているって言う話を」
「きっとそういうコミュニティってネットで繋がったり、連絡を取り合ったりしてるんでしょうね。
私はそっちから当たってみるわ。
比呂ちゃんは恵ちゃんからもう少し詳しい話を聞いてみてくれる?」
あかりは机の上にノートパソコンを設置し起動させ、ネットの海に漂う情報を集めていく。
比呂子は丁度休憩時間中だった恵と電話口で会話を始めた。
(ウチから言い出した事とは言え、あかりはんも比呂子はんもこんなに親身になってくれるやなんて。
ホンマ、この出会いは貴重やったわ。
何にも代えられん宝物や)
比呂子は目頭が熱くなり、慌てて袖で滲み出た涙を拭う。
恵は警察関係者や政界に関わる人物とも親しかった為、高校生の頃比呂子が聞いた時より遥かに多くの情報を得る事が出来た。
「本当に有難う。
手間を取らせちゃってごめんね」
『比呂子の為ならこれ位の事は何時でもしたげるよ~。
私、今でも貴方の事を親友だと思ってるんだ』
恵がさらに人から聞いて比呂子に与えた情報は信憑性が高そうなものだった。
寿節子は、プラナスに来店した女性の話を語った。
土地を担保にかなりの額の借り入れを行い、あっと言う間にその金を返済したと言う。
『更地に相当大きな建物を作る為の費用だって言ってたわ。
数千万は借りたと思う。
それを1年かそこらで返しに来たの。
これ、恵だから言うんだからね。内緒にしといてよ』
そして松波徳治は、その建物に風俗営業法の申請があった事を語る。
『俺達もヤバイ案件だったら困るからさ。
調べたんだよ。
何せ外見は豪華な一軒家なのに、銭湯とソープランドの営業申請があったって話でな。
そんで聞いたら『特定の人にだけ開放する会員制の店』だって言うんだよ。
ああ、店の場所ならすぐに教えられるけど。
恵だから教えるんだぞ』
柳瀬繁は直接両性具有の女性から、その店の情報を掴んでいた。
『2年前だったかな。
交通事故の被害者になった女性がウチに運ばれてきてね。
下腹部がかなり酷い状態だったから手術が必要になって脱がしたんだけど……
その女性が両性具有者だったんだ。
勿論強請るつもりなんて毛頭無かったよ。
でも相手の女性が『秘密にしてください、後生です』って泣きついてきたんだ。
両性具有の女性がどうやって性欲を発散させているのか興味があったから、それを聞いてみたんだよ。
言い方は悪いけど、それを全部教えてくれたら黙ってますみたいな感じでね。
そうしたら、両性具有者しか入会する事が出来ない会員制の銭湯があるって教えてくれたんだ』
その情報が1つにまとまり、形を成していく。
東京都に存在する会員制の銭湯があり、その銭湯には両性具有者しか入れない。
店に入る為のルールや合言葉が存在し、それを守りさえすれば入会する事が可能だと言う。
「どうやら、借り入れがあったのは6年前の年末だったみたいですね。
私達が『魔の全国大会』で必死に戦っていた頃です。
入店する際にはサングラスで顔を隠す事。
インターホンで『合言葉をどうぞ』と言われたら『桜咲く天女の湯』と答える事。
入会金は2万円。
年会費1万円。
入湯料は1日5000円。
店の場所も解りましたし、コレで充分でしょう」
呆気に取られて口を開けている咲の顔を横目に見ながら、あかりは比呂子の両手を握り締めた。
「凄いわ、比呂ちゃん!
私なんか断片的で不確かな情報しか集められなかったのに」
「いえいえ、たまたま情報通の友達がいただけですよ。
私自身は何もしてませんって」
比呂子自身も、恵が天武日本を直接動かせる様なエリートと親友関係にある事が信じられなかった。
(ちょっと前まで、私も知らなかったんですよ。
元々最近まで教えてもらえなかったんですが。
恵さん、出席日数はギリギリでしたけど頭は抜群に良かったですからね……)
何故彼女がエリートと親しくしていながら風俗嬢として働いているのか、それに対して答えを教えてもらう事は出来なかったがそれで良いとも思っていた。
比呂子にも触れられたくない『傷』がある。
そして恵もまた、彼女が傷を負っている事に気付いていた。
「東京と言ってもどちらかと言えば閑静な住宅街が立ち並んでいるエリアですね。
こんな所に大邸宅があったらすぐに解ると思いますよ」
ノートパソコンに表示されたマップの一部分を指差しながら比呂子がそう言うと、咲は比呂子に深々と頭を下げる。
「何から何まで……
有難うな。
ウチ1人で行くのはちょっと不安やけど、行ってみるわ」
「行ってきたら色々教えてね。
私もそういう施設の中がどうなってるのか興味があるから」
咲はさらに詳しい情報を聞いた後、あかり達と別れみゆるが待つ自宅へと戻った。
【2011年1月9日 東京都大田区 北(きた)馬篭(まごめ)駅近郊】
朝の9時。
都心から離れ、閑静な住宅街が立ち並ぶ東京都の外れ、大田区。
詳しい場所が記された地図を片手に、咲は目的地である『天女の湯』を目指し歩いていた。
「それにしても、東京都とは思えん程の静けさやな。
みぃやんと一緒に住んどる家の周りとは人の量が全然違うで」
人の波とも形容出来る大勢の人々が行き交うイメージとは全く違い、都心から少し離れると人を見かける事自体が少ない。
都心一極集中の弊害なのか、ぽつぽつと建っている店も繁盛している様子が無かった。
(疑っとるワケや無いけど、こんな所に3万5千円も取る会員制の銭湯があるんか?
いや、人で溢れ返ってる所に作ってもすぐどんな建物かばれるやろうし……
こういう辺鄙な場所にあれば、隠れ蓑にもなるっちゅうワケやな)
歩きながらそんな事を考えていた咲の眼前に、突然比呂子が言っていた通りの大豪邸が姿を現した。
「すごッ……
中の広さ、どの位あるんやろ。
体育館位はあるんかな」
最早家と言うより『御殿』と呼んだ方が適切であると思われるその大きさ。
だが決して外から見た時に目立つ様な色合いの家では無い。
あくまで大きさが違うだけで、デザイン自体は周囲に立つ一軒家に合わせているかの様だった。
(とにかく、徹底的にカモフラージュしとるんやろうな)
咲自身もどちらかと言えば無個性な服装をしている。
ニット帽、上着とコート、ジーンズ。
どれも量販店で購入した平凡な色合いのものばかりだ。
サングラスをしている為不審者と間違われても不思議では無かったが、女性である事が幸いし職務質問は受けずに済む。
「さぁて……
ココからはウチも『隠れ蓑』を纏った方が身の為や」
立派な門の前に立ち、インターホンのボタンを押しながら咲は軽く咳をした。
サングラスをかけてこいと言ったのは当然、自分自身の身元を解らなくする為だろう。
両性具有者の集いであっても『普段の自分』は互いに知られたくない。
客の多くがそう考えているに違いない。
それならば、自分の素性を隠す為に関西弁を隠す必要があると咲は思った。
『合言葉をどうぞ』
比呂子やあかりから事前に聞いていた『合言葉』を、相手に聞こえる様ハッキリと答える咲。
『桜咲く、天女の湯』
少しの間沈黙が続いた為咲は不安に駆られたが、不意に大きな扉が自動で開いた。
『お入りください』
扉をくぐった咲は、立派な日本庭園と石畳を目にする。
(どっからどう見ても金持ちの家や。
外から見たらそうとしか思えんわ)
庭に大きな松の木が植えられ、木で出来た棚の上には多くの盆栽が置かれていた。
それらが全て手入れされており、見る者を楽しませる。
(それにしても、最初の入口から2分歩いて玄関かぁ)
玄関には黒塗りの立派な門が付いており、見た目とは裏腹に前に立った瞬間横に開いた。
(この見た目で自動ドアなん?
最初の扉も自動やったけど)
中に入ると着物を着た30前後だと思われる見た目の女性が咲に対して御辞儀を行う。
「御客様、会員カードはお持ちでいらっしゃいますか?」
女性は着物が似合う色白の美人で、微笑む姿もまた様になっていた。
「いえ、入会希望です」
咲がそう答えると、女性は手に持っていたリモコンのボタンを押した後咲の目をじっと見つめる。
「当店は特殊な身体を持つ女性の方のみの入会を許可しております。
今他の客が入口から入ってくる事はございません。
私の目で直に確認させて頂きます」
鋭い鷹の様な目に若干怯えを感じつつも、咲は彼女の言葉を理解した。
(つまり、ココで脱いで勃起したチンポを見せろと……
めっちゃ恥ずかしいんやけど。こんな通過儀礼を乗り越える必要があるんか)
だがそれをしなければ追い返され、二度とこの店に足を運ぶ事は出来ないと思われる。
咲はジーンズを脱ぎ、パンツを取るとその下に装着していたサポーターを外した。
「堂々としていれば宜しいのです。
この店では、自らの身体を恥じる必要はありません。
貴方がそういった身体ならば、他の御客様方も同じ身体なのですから」
咲から見ても憧れを感じる様な女性だった。
毅然とした態度。透き通る様な声。
シミ1つ無い柔肌。
艶やかな黒髪。
男性が見ても魅了されるに違いない。
(この人も、ふたなりなんやろうか……
多分そうなんやろうな)
他人の前で自慰行為に耽ると言うのも顔から火が出そうな程恥ずかしかったが、咲はそれを実行しクリトリスを刺激する。
「はん、ああッ……
はうん……」
もう片方の手で膣をまさぐっていると、徐々にクリトリスが肥大化してきた。
「あくッ……
はぁ、はぁ」
クリトリスが硬く膨らみ、長く伸びてペニスの形へと変化する。
ものの数秒で完全に勃起した咲の肉棒を一瞥した女性は、頬に人差し指を当てた後笑顔を見せた。
「申し遅れました。
私、この銭湯のオーナーを務めております『湯姫(ゆき)』と申します。
御客様の御名前をお伺いする事はございませんが、次回御来店の際本人確認を行いますので6桁の暗証番号をお決めください。
それと、成人している事を証明するものの御提示をお願いしております」
(暗証番号かぁ。
どないしよ……
ウチが覚え易い簡単な数字の方がええわなぁ。
せや、記念として初めて来店した日にしよ)
股間の肉棒を隠さずに会話する自らの姿は滑稽そのものであったが、勃起したモノを鎮めるのは難しい。
開き直りながらも、咲は『201119』を暗証番号として湯姫に伝えた。
面倒くさかったので、年齢を確認する為のものとして自身の保険証を見せる。
「只今、御客様のIDカードを作成致します。
入会金、年会費、入湯料はその際一括でお求めしますので……
少しの間待っていてください。
カードを当店のスタッフに作らせます」
優雅な歩き方で湯姫は廊下の奥へと消えていった。
その場に咲だけが残される。
(恥ずかしいわ!!
こんなん、拷問に近いやろ。
下半身丸出しでおまけにチンポフル勃起て。
この状態で待たされるとか晒し者にされてるのと何が違うんや)
思わず撮影されていないかどうか監視カメラを探してしまう程、今の咲には心理的余裕が無かった。
一旦勃起した肉棒は『扱いてくれ』と言わんばかりに膨張し、一定のリズムで脈を打っている。
(きっつい……
自分の部屋やったらすぐにチンポ扱くんやけどな……
この状態でそれをしたら変態確定やんか。
そもそもこの恰好の時点で充分変態やけど!)
数秒が数分に感じられる程の長い時間が経過した様に思えたが、実際そこまで待ちはしなかった。
「お待たせ致しました。
こちらが御客様のIDカードになります。
先程の6桁の数字が暗証番号及びIDナンバー。
その横に記載されているアルファベットと数字が御客様のロッカー番号です。
このカード、御来店の際は必ず御提示してくださいます様お願い申し上げます」
銀色に光るカードを手に持ちながら、何か言いたそうな表情を浮かべる湯姫。
その意図を読み取った咲はバッグから財布を取り出すと3万5千円を彼女に手渡した。
「入会金2万、年会費1万、入湯料5000、確かに頂戴致しました。
それでは、この店でのルールを改めて説明させて頂きます」
湯姫は受け取った金を財布の中に入れながら、口元だけで軽く微笑む。
「当店では御客様に安心安全な入浴をお楽しみ頂く為、この『仮面』の装着を義務付けさせてもらっております。
特殊なプラスチック製で、湯船に浸かっても変色したり錆びたりする事はございません」
湯姫が取り出したのは、かつて中世ヨーロッパで使用されていた眼鏡の様な仮面だった。
仮面によって目元と鼻が隠れる様になっており、確かにこれでは顔の判別は出来ない。
「入浴の際は『浴場』、他の女性とのお楽しみの際は必ず『愛の間』を御利用くださいませ。
この規則を破ってしまった場合次回からの来店を禁止させて頂く事になります。
店内において他の御客様の個人情報を聞き出す事もお控えくださる様お願いしております。
コレはあくまで確認なのですが、御客様は成人されていらっしゃいますよね?」
保険証だけでは不確かだと思ったのか、湯姫は咲の顔を睨む様に見つめた。
「すいません、運転免許証とか持ってなくて……
でも私は確かに成人しています。
信じてください」
暫く互いの顔を見つめ合っていた2人だったが、湯姫はやがて笑顔を見せる。
「貴方を信用致しましょう。
御客様が未成年だった場合、当店では責任を負いかねますので確認を行っているのです。
無礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした」
再び頭を下げる湯姫の姿を見ながら、咲は早く銭湯の脱衣所に向かいたいと思っていた。
(色々な意味できっついわ。
チンポが痛いし、この状態が恥ずかしいし……
全員が裸でいても違和感が無い所に移動したいでホンマに)
湯姫は咲の思惑を読み取ったのか手を叩き、奥の部屋からスタッフを呼び寄せた。
「この仮面を装着して頂いた後、脱衣所の方へと移動してくださいませ。
案内はこの『檜(ひのき)』が行います。
それではどうぞ1日ゆっくりしていってください」
咲は靴を脱ぎ、ジーンズとパンツ、サポーターと共に手に持った状態でスタッフの女性の後をついていく。
「御客様、『湯名(ゆな)』はお決めになられておりますか?」
檜と呼ばれた若い女性にそう聞かれ、咲は戸惑った。
「ゆなって何ですか?」
「天女の湯で御客様に名乗って頂く『偽名』です。
ホステスや風俗嬢が使用する『源氏名』と同じ様なものだと思ってください」
確かに他の客と会話をする際、個人情報は隠したいが名無しと言うワケにはいかないだろう。
咲は『さおり』と名乗ろうかとも考えたが、万一の事を考え別の名前にした。
「じゃあ、私は『きつね』と言う事で……
お願いします」
咲も沙織も自分が既に名乗った事がある名前。
それならば、仮面を被っていれば見えない『見た目』を名前にしようと思い付く。
檜は頷き、そのまま咲を廊下の奥にある脱衣所まで案内した。
「こちらが脱衣所になります。
ロッカーの鍵にはゴムが付いておりますので、手首に装着してください。
脱衣所の奥が浴場、その手前右奥の部屋が『愛の間』となっております。
何か解らない事がありましたら脱衣所にスタッフが常駐しておりますので御気軽にお尋ねくださいませ」
そう言ってもと来た道を通り去っていく女性スタッフ。
咲は1人取り残される形となったが、目の前に広がる光景を見て言葉を失った。
「お、おお……ッ!」
勃起した肉棒の痛みすら忘れてしまう程衝撃的な光景が咲の眼前で展開している。
「早く入りましょうよ」
「先に風呂浴びる?
それとも愛の間に行っちゃいましょうか」
服を脱いで全裸になっている女性達は全員咲が付けているのと同じ仮面を付けている。
それよりも咲の目を引いたのが、隠す事無く晒されている股間の肉棒だった。
咲と全く同じ形状をしており、同じ様にビクビクと力強く脈動している。
(凄い……
ウチと同じふたなりがホンマにおるんやな!
しかも見る女見る女全員ふたなりって、夢でも見とる様や)
椅子に座って涼みながらコーヒー牛乳を飲んでいる女性も、その隣で談笑している2人の女性も両性具有者。
備え付けの体重計に乗って溜息をつく女性も、ロッカーに着物をしまっている女性も両性具有者。
自分と同じ異質な身体を持つ人間がこれ程多くいるとは思っていなかった為、咲は驚きを隠せなかった。
(総人口1億人の中に5000人いるとは聞いとったけど、実際見ると言葉が無いで。
これは最早、白昼夢やな。
現実とはかけ離れた桃源郷に近いかもしれへん)
帰り支度をしている客は流石に勃起していなかったが、のんびりしている客は殆どが硬くなった肉棒を隠す事無く晒している。
(そうか……
日常のストレスを軽減する為に、晒しても問題の無いチンポをここぞとばかりに見せているんやな。
ウチもココではせめて堂々としよう!
他の女性と同じ様に、隠さず全てを見せるんや)
咲はコートと厚手の上着を脱ぎ、バッグと衣服を全てロッカーの中にしまうと鍵をかけた。
(C-47か、覚えとこ。
一応鍵にも番号は書いてあるけど……)
ロッカーの中に用意されていたバスタオルは持ち出さず、全裸のまま浴場へと向かう。
愛の間にいきなり行ってみようかとも考えたが、まずは浴場で見れるであろうさらに異質な光景を目撃してみたかった。
(凄い、凄いわぁ。
現実とは思えん光景や。
今みぃやんに叩き起こされても不思議やあらへん)
勃起させているのも1つのルールなのではないかと疑う程に、女性達は皆陰茎を逞しく膨張させている。
胸の大きさや形と同じ様に陰茎の太さや長さにも細かな違いがあったが、ふたなりとしての身体の構造は同一だった。
クリトリスが陰茎の形を成し、中には先端からカウパー液の様なものを滲ませている女性もいる。
(ウチのよりでかい……
寧ろウチ、他の人のと比べると大きくない方なんかな)
謎の敗北感を味わいつつ視線を移していた咲であったが、前から歩いてきた女性とぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい」
「自分以外のふたなりを見るのは初めてか?」
笑いながらそう言った女性にも、かなり太い肉棒がついている。
咲と同じ金髪で健康的な褐色肌の女性であったが、肉棒以外で目を引いたのが彼女の身長であった。
(背ぇ高ッ!
間違いなく180cm以上はあるやろコレ。
でかいなぁ……)
体つきも筋肉質でがっしりとしており、間違いなくスポーツか格闘技をしている人物であろうと思われる。
「お初の客なら、アタシも客だけど歓迎するよ。
アンタの名前は?」
「えっと、きつね……です」
「面白い湯名だなぁ。
アタシは『らいは』。
宜しく」
身長差がかなりある為、端から見ればまるで高校生と小学生が握手しているかの様に見えただろう。
「身体と頭を洗って、黒湯に入る。
浴場で出来る事はそれ位かな。
アタシが案内してあげようか」
「お願いします」
右も左も解らない状態の為、勝手を知っている人間が近くにいれば心強い。
咲は『らいは』と名乗った女性と一緒にシャワーが備え付けられている洗い場に向かった。
赤、青、緑……
様々な色の仮面を付けた女性が洗い場で身体を洗っている。
股間から薄桃色のペニスが生えた女性達が一列に並んでいる光景は衝撃的だった。
「仮面は防水仕様だから洗っても平気なんだ。
それに付けた状態で頭からお湯を被っても簡単には外れない様になってる」
洗い場自体は通常の銭湯と何も変わらない。
プラスチックで出来た椅子が置かれ、ボタンを押すと一定量のお湯が出てくる蛇口の下には桶。
シャワーの温度もつまみを回して調節する事が可能で、シャンプー、ボディソープ、コンディショナーが一通り揃っている。
「金はかかるけど、用意されてるモノは一級品だからね。
そのシャンプーは女性芸能人も宣伝してる高級なやつだよ。
アタシも普段使ってるから解るんだ」
彼女の髪はスポーツ刈りに近い程短く切り揃えられており、まるで男性の様だった。
咲は早速椅子に座り、髪の毛、身体と洗い始めていく。
(チンポも洗っておいた方がええんやろな……
後で『使う』事は解っとるんやから)
苦しい程に勃起している為、本当は早く楽になりたかったのだが『ルール』が彼女を抑制させていた。
洗い場で射精すればルール違反となり浴場からつまみ出されてしまうだろう。
それに、周りの人間が自分と同じ様に勃起しているのに自分だけ獣と化すのはどうなのかと言う思いもあった。
「皆、よく我慢出来てますね?
私は結構厳しい状態なんですけど……」
「慣れだよ慣れ。
アタシも最初はキツかったけど勃起させたままの状態でいる事がだんだん平気になってきたから。
ちゃんと洗ったら一緒に黒湯へ行こう。
アタシは洗って入ろうとしてた所だったし」
普段ならどうと言う事も無い作業も、神経が鋭敏になっている為自然と息が荒くなる。
ボディーソープを手に付けて肉棒に触れる際も、扱きたいと言う欲望を抑えるだけで精一杯だった。
湯船に張られているお湯は濃い褐色をしており、まるで黒蜜を溶かした液体に浸かるかの様だ。
咲はらいはと共に熱めのお湯に浸かり、座った状態のまま話し始める。
「気持ちいいだろ?黒湯って。
普通のお湯と違って美容にも効果があるらしいから有難いよな。
他にも神経痛とか肩こり、関節痛とかに効果があるんだって」
気持ち良さそうに両手を上に伸ばすらいはに対して、咲は素朴な疑問を口にした。
「私はたまたま知っている人が身近にいたからこの場所が解ったんですけど……
どうやってこの場所を知るんでしょうか?」
「アタシはネットの『裏サイト』みたいなコミュニティを辿って偶然知ったんだ。
会員はこの場所だけで200人。
こういう秘密の銭湯はチェーン展開されてて、全国に12店舗位あるんだって」
「じゅ、12店舗も?じゃあ、古都とか九州でも……」
驚く咲に対して、らいはは屈託の無い笑みを浮かべる。
「あるんじゃない?
アタシはこの場所しか知らないけど。
のきあは古都府にある『天女の湯』に行った事があるらしくてさ。
そこでもやっぱり会員の数が多くて、200近くはいってるって」
そう言いながら、らいはは湯船に浸かったまま近付いてくる2人の女性に対して手招きをした。
「あら、見た事の無い顔じゃない。
初めての御客さんかしら?」
「ど、どうも……
初めまして」
どちらも長い黒髪の女性で、片方は豊満な胸を持つ大人の女性。
もう片方は咲と同じ位の体格で咲以上の貧乳だった。
「紹介しよう。
胸がでかくて泣き黒子がある方が『のきあ』。
そこの自信無さそうにしてるのが『まるう』だ。
1年前からココで出会ってしょっちゅう顔を合わせてる。
あくまでこの場所で、だけど」
当然この2人の女性も両性具有者で、のきあと呼ばれた女性は恥ずかしがる事無く巨大なペニスを晒している。
(らいははんもかなりの太さ、長さやったけどこんなミサイルみたいなチンポ……
普段どうやって格納しとるんや?
やっぱり、膨張率が凄いんやろか)
のきあの肉棒は根元近くに青筋を立て、時折全体が雄々しく脈打っていた。
ペットボトルを2本繋げた様な規格外のペニスの横で、可愛らしいモノが湯船の中に隠れている。
(あ、ちょっと安心するわ。
ウチより小さなチンポの女もおるんやな。
謎の屈辱感があったんやけど、全員が全員でかいワケでも無いわなぁ)
馬の様なペニスは湯船からはみ出ており、のきあは人の身体にぶつけない様片手で腹に近付けていた。
「貴方、御名前は?」
「あ、きつね……です。
この銭湯に来たのは今日が初めてです」
ぺこりと頭を下げる咲の肩に、のきあはそっと手を乗せる。
「ビックリしたでしょう。
貴方と同じ身体の女性がこんなにいるものだから」
広い浴場を見渡せば、女性の数だけピンク色の陰茎が己の存在を主張していた。
咲は顔を上げ、のきあがもう片方の手で抱えている肉棒に触れる。
「ええ、本当に……
何もかもが驚く事ばかりで」
「皆、普段の生活では出来ない事をしてストレスを発散させているのよ。
おちんちんを勃起させた状態で人目に晒すなんて、絶対に出来ないでしょう。
何時もなら、勃起しない様に中身を全部吐き出してサポーターで封印するわよね」
のきあは微笑みながら浴場全体をゆっくりと見回し、他の女性達を眺めた。
「でも……
ココでは自分が両性具有者である事を隠す必要は無い。
顔や身分は隠すけれど、自分と同じ身体の人間がこれだけ多くいると言うのが解ると気持ちが凄く楽になるの。
サイレントマイノリティ(物言わぬ少数派)である私達が唯一救われる場所だと思うわ」
彼女も、きっと自分と同じ様な苦しい道を歩いてきたのだろう。
外にいる間は、常に『普通の人間』と同じであると思わせ続けなければならない。
勃起を無理やり止める為にサポーターを付ければ、時折気絶しそうになる程の激痛が襲い掛かってくる。
肉棒が大きければ大きい程負担は増え、性欲を発散する場所も無く消耗していくのだ。
ニュースにならないだけで一線を越えてしまったふたなりもいるだろう。
咲はそう思った。
「そして欲望を誰に遠慮する事無く解き放ち、満たせる場所でもあるわ。
貴方も一緒にどう?
今まで味わった事も無い快楽を体験させてあげる」
咲が触れているのきあの肉槍が、大きく震えて硬さを増した様に感じられた。
「確かに。
アタシもずっと『おあずけ』をくらってるのは辛いからさぁ。
早いとこ『愛の間』に行って楽しもうよ。
アンタも来るだろ?」
馴れ馴れしく肩に手を回してくるらいはであったが、不快感は全く無い。
寧ろ、これから訪れるであろう『性欲の宴』に興奮し、股間が熱くなった。
「御一緒させてもらいます」
4人はそのまま風呂から上がり、身体を拭いた後『愛の間』に向かった。