※この作品はR-18です。

ZERO ~格闘ゲームに翻弄される者達~   作:夜月光介

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小説にはシミュレーターとしての役割もあるんじゃないかと
思っています。もしこんな世界があったらどうなるのかを
考えて、現実的に物語を進めていく。そして読者は別の世界を
疑似体験する事が出来る。ゲームと同じで、『新鮮な体験』を
楽しめるのが小説なんじゃないかと。


番外編 湯源郷の宴 1999 崩壊していく日常

【西暦1999年 7月20日 午後3:00 千葉県 公立虹見高校 体育館内】

 

 身体が重い。

 意識がハッキリせず、視界に靄がかかっている様な感覚に囚われている。

 鶴野(つるの)椿(つばき)は目を覚ました時、周りの状況をすぐには把握出来なかった。

 

 (身体が動かない。

 縄で、縛られてる……

 オチンチンが痛い。

 勃起……してるの?

 私は、確か薬を飲んだ後急に眠くなって……)

 

 考えがまとまらず、困惑しつつも自分が置かれている状況を理解しようとする椿。

 手足は縛られており動かせず、仰向けにされマットの上に全裸のまま寝かされている。

 頭と身体が思い通りに動かせない状態であるにも関わらず、股間だけは燃えているかの様に熱い。

 肉棒が重力に逆らって怒張し、激しく痙攣する事で己の存在を主張していた。

 

「希望(のぞみ)さん?

 これは一体……」

 自分の目の前に立ち、裸身を晒している戦場(いくさば)希望(のぞみ)。

 

 彼女が椿とセックスしたいと言っていた事を思い出し彼女が服を着ていない理由を察した椿であったが、視線を横に移した瞬間両目をカッと見開く。

「嘘、椿ってふたなりだったの……!?」

「すげぇ、本当に生えてるじゃん。

 ふたなりが実在するってのは単なる噂じゃ無かったんだな」

「うわッ、あんなに大きくなってる」

 

 体育館内に数十名の男女が集まり、椿の姿を見つめていた。

 同じ教室で共に勉学に励んでいたクラスメイト。

 今年卒業する同学年の陸上部女子部員の姿も見受けられる。

 彼等は一定の距離を保って扇の様な形を作り、傍観者として希望に招かれていたのだ。

 

 彼女達がすぐに認識出来る程椿の顔が青くなる。

 全身から血の気が引き、涙を流しながら歯をガチガチと鳴らす姿は哀れさを通り越して滑稽にすら映った。

 

「嫌ッ、嫌ァァァァァァッ!!

 見ないでッ、見ないでぇぇぇ」

 亀の様に鈍い身体を何とか動かし、周囲の目から陰茎を隠そうとする椿であったがそれが無意味である事は彼女にも解っている。

 手足の自由を奪われており、うつ伏せにもなれない。

 カタクナールΩの効能により痛い程硬くなっている砲身が自分の体重で潰れれば激痛を伴うであろう事は明白だった。

 

「泣いてるじゃん、椿。

 可哀想」

「私だって同じ状況に立たされたら泣くよ。

 誰だってそうでしょ」

 

 優しかったクラスメイト達の声が、明らかに違っている。

 見世物小屋で披露される『化け物』を、冷ややかな目で眺めている様に見えた。

「アタシが脅しをかけて呼んでやったんだ。

 有難く思えよ。

 こんなに早く確実に招集をかける事が出来る奴はそうはいない」

 

 事前に希望から指令を受けていたレディースのメンバーが、彼女からリストを渡され彼等の自宅に電話をかけていたのだ。

 学校の伝統とも言える『連絡網』には生徒達の自宅の電話番号が記載されている。

 電話をかけ、体育館に来る様呼びかけるのは希望にとって造作も無い事であった。

「な、何でこんな……」

 椿の訴えを希望は一蹴する。

 

「ハッ、どこまでも御人好しな甘ちゃんだな。

 アタシは確かに『体育館に来なければお前の身体の事を皆にバラす』って言ったが、来たからバラさないなんて何時(いつ)言った?

 それにアタシとアンタのセックス……

 ギャラリーがいないとつまらないだろ。

 どうせなら兄貴にも見てもらいたかったからさ」

 

 希望の視線の先に、壁の柱によりかかりながらクラスメイト達を睨み付けている戦場(いくさば)渡(わたる)の姿があった。

 ギャラリーが2人を遠巻きに見ているのは彼が生徒達を監視しているからに他ならない。

 (男子生徒が戦場希望に声をかけようとしただけで彼女の兄貴に病院送りにされたらしい)

 (そういう被害に遭った奴等が山程いる。

 この2人には逆らわない方が得策だ)

 

 つまり、彼等が体育館内で2人を見ているのも興味がある等の理由では無く単純に脅されて従っているだけだった。

 彼等が椿に対して罵声を浴びせているのも半分本音、半分強制と言えるだろう。

「さぁ、アタシの方はもう準備出来てるし始めるか。

 アンタの方は聞くまでも無ぇよな?

 ガチガチに硬くなってるんだしよ」

 

 希望はそう言うと椿が寝かされているマットの上に移動し、がに股の状態で膣口に肉棒の先端を近付ける。

 根元より少し上の部分を右手で持ちながら、左腕はバランスを取る為斜めに下ろされていた。

 

「お前等よく見とけ。

 そうそう見れるモンじゃねぇぞ。

 ふたなりがノーマルの女とセックスする一部始終を拝めるんだ。

 有難く思いな」

 

 椿はこれから何をされるのか理解はしていたが、現実味は全く無い。

 彼女に呼び出されさえしなければ今頃河原を元気に走っていた事だろう。

 (セックス……?

 え、皆が見てるのに本当にするの?

 冗談でしょ?)

 

 羞恥心だけが増幅され、心の中の疑問符が頭の中でぐるぐると回り続ける。

 混乱している椿の意思とは関係無く、希望の膣は見事に反り返った剛直を飲み込んでいった。

 

「やべぇ、本当に入ってるよ。

 椿のチンポ」

「こ、こんな所でするなんて信じられない。

 繋がってる所丸見えだし……」

 愛液で潤っている膣が、あっと言う間に硬い肉棒を根元まで包み込んでいく。

 

 手淫やオナホでは味わえない未知の快楽に、椿は抗う事も出来ず震えていた。

 (な、何!?

 ぬるぬるの粘膜が私のに纏わりついてきて、別の生き物みたいにひくついてる。

 私のオチンチンが、本当に希望さんの中に入っているの?)

 

 薬を服用する事無く膣の快感に触れていた場合、椿は入れてから数秒で射精していただろう。

 手淫では達せない程パンパンに膨れ上がった肉棒が、易々とは絶頂に至る事を許さなかった。

 

「ホラ、解るか?

 アタシのがアンタのを全部咥え込んでるのが。

 仲間達の目の前で公開生セックスさせてやってるんだ。

 嬉しいだろ?」

 

 どす黒い絶望の感情と、今感じているとびきりの快感が混ざってどんな言葉を返すべきかその答えも見つからない。

 見物人さえいなければ、この快楽に溺れるだけで良かったのに。

 そんな自分勝手な思いしか、今の椿には抱けなかった。

 

 (つつ、まれてぇ……

 扱かれてッ……

 こんな情けない私を見られるなんて嫌なのに、オチンチンだけが元気で。

 ビクンビクンってしてるぅ。

 腰が抜けちゃうぅぅぅ)

 

 脳が溶けそうな程の強烈な快楽、自宅で何度も妄想に浸った『セックスで得られる快感の予想』。

 自分の想像を簡単に凌駕する膣の蠢きに、椿は抗う事が出来ず流されていくだけだった。

 

「お、ちょっとばかし膨らんだか?

 アンタのモノが出したいって叫んでるみたいだぜ。

 我慢せずにさっさと射精しちまえよ。

 その絶頂はアンタも望んでるんだろう?」

 

 繋がったまま、大股を開き接合部を見せびらかしながら上下に腰を振る希望。

 あまりにも刺激が強過ぎる光景に対して、男子生徒達は言葉を発する事が出来なかった。

 

 (信じられねぇ、無修正のマンコなんて生まれて初めて見たぜ……)

 (し、しかもクラスメイトのクリチンポとマンコとか……)

 自然と喉が鳴り、股間が勝手に膨らんでズボンの上からでもその変化が見てとれる。

 

「何だよお前等、滅多に無ぇチャンスだぞ?

 女どもには密告なんてさせねぇからセンズリしとけ。

 今やっておかなかったら後悔するぞ。

 一生に一度位だろうからな、こんな極上のオカズを提供されるのは」

 希望はそう言って笑っていたが、椿の方は彼女の『違和感』に気付き始めていた。

 

 (見ている人達には解らないだろうけど、希望さん、身体が震えてる……

 繋がっている私には解る。

 膣の脈動とは別に、肌が触れ合っているからこそ伝わってくる。

 無理をしてる?

 でもどうして無理をしてまでこんな事を!?

 どうして……)

 

 肉棒が蕩けそうな程の締め付けが、椿の思考を阻害する。

 羞恥心も彼女に対する疑問も、『射精したい』と言う強い衝動に負け後回しになっていた。

「クソッ、こんなモン見せられて我慢なんか出来るかよ」

 カチャカチャと金属同士が擦れ合う様な音がした後、男子生徒のズボンから勃起した肉棒が顔を出す。

 性欲に抗う事が出来ないのは椿だけでは無かった。

 

 そのまま堰を切った様に他の男子生徒も性器を堂々と露出して自慰行為を始めたのだ。

「う、嘘……本気?

 アンタ達頭おかしいんじゃないの」

 

「五月蠅ぇ。

 彼女の言う通りだろ。

 こんなお膳立てがされるなんて、俺の人生で間違いなく1回限り。

 今ココでオナニーしなかった事を後悔する位なら、俺は恥なんてドブに捨ててやる」

 

 ハァハァと言う男達の軽い喘ぎ声、右手によって扱かれるペニスの群れ。

 体育館内の温度が数度上がったかの様な異質な空気は、当然女性陣にも影響を与える。

 

「そうだよ、それでいいんだよ。

 人間なんて一皮剥けば皆獣なんだからもっと正直になるべきだろ。

 コイツだってそうだ。

 凛とした淑女みたいな顔をしてたが今はどうだ。

 アタシの中でチンポ勃起させて射精しそうになってる変態じゃねぇか!」

 

 椿は希望の言葉を否定したかったが、自身の状態を顧みるとそうする事が出来なかった。

 本当に性欲が無いのなら、彼女の膣の中で爆発寸前になっている自分の肉棒は一体何なのか。

 今にも欲望の滾りを発射しそうになっている砲身が『お前は愚かな存在だ』と語り掛けてきているかの様だった。

「えッ、嘘でしょ。

 アンタ達まで」

 

「そんな事言われたって、変な気分になっちゃったんだもん。

 仕方ないでしょ」

「男連中が悪いのよ。

 見せびらかす様にオチンチン擦っちゃってさぁ」

 

 閉ざされた空間で、正常な判断が徐々に奪われていく。

 女生徒もパンツの中に片手を突っ込み、もう片方の手を口に当て自慰行為を始める。

 その禍々しい熱は伝染病の様な驚異的な広がりを見せ、今や殆どの男女が快感に魂を奪われていた。

 

「丁度良い。

 アンタがイッた後男達にぶっかけてもらえよ。

 そんな経験もなかなか出来ねぇだろうしな……

 そろそろ本気を出すぞ」

 

 希望の腰を上下させる動きが早くなり、根元まで挿入した後グリグリと押し付ける様な挙動が混じる。

 (あ、ああッ。

 オチンチンが跳ねてるッ。

 出ちゃう、駄目なのに出ちゃうッ)

 

 身体全体がビクビク痙攣し、股間に集まった熱が火山の噴火の様に溢れ出した。

 目の前が一瞬真っ白になる程の強烈な快楽に負け、脳が痺れているかの様な感覚に襲われる。

 先端から粘液が噴き出した瞬間、椿はだらしなく口を開け完全に理性を失っていた。

「出ちゃうッ!

 出ッ……ああああああ」

 

 最後の最後まで我慢したけど、快感に負けて射精してしまう。

 誰に弁解しているのか解らないがそう思わざるを得ない感情が彼女の心中に渦巻いていた。

 

「うッ……

 ふぐうッ、あうう……」

 希望の膣の中でほぼ垂直に反り立っている椿の剛直が、膨張と収縮を繰り返しながら精液を吐き出していく。

 結合部分が丸見えの状態で射精、さらに衆人環視の下で絶頂を迎えていた事が悔しかった。

 

 彼女に対する憎しみ、怒り、哀しみ、快楽。感情がグチャグチャになって全くまとまらない。

 希望を睨み付けながら涙を流し、歯を食いしばりながら射精する姿は端から見れば滑稽にすら映った。

 

「良かったなぁ、アンタ。

 アタシがいなかったら一生童貞だったかもしれないんだぜ。

 あいつ等みたいに手で必死こいて扱く日々で終わってたんだ。

 恨むより寧ろ感謝してほしいんだがなぁ」

 膣の中で肉棒が硬度を失った事が確認出来たのか、希望は立ち上がり椿から離れると、男子生徒達を呼び寄せる。

 

「な、何を馬鹿な事を。

 私は……ッ!」

 

「おっと、次はそいつ等に可愛がってもらいな。

 精液ぶっかけてマーキングしてやれよ。

 椿のマンコ使うのは無しだ。

 フェラチオ位ならしてもらえるだろうぜ」

 わらわらと集まってくるペニスを露出された男子生徒の群れを見て、椿は血の気がすっと引いていくのを感じた。

 

「ちょっと、冗談でしょ貴方達……

 おごッ、もごごご」

「鶴野、歯ァ立てるなよ。

 俺達、今ならお前に何をしたって反撃されないんだぜ」

 

「おい!抜け駆けすんなよ。

 鶴野に手コキしてもらえねぇってのに。

 クソッ、出る……

 出すぞ鶴野」

 椿以上の欲望の塊が、徒党を組んで椿に襲い掛かってくる。

 

 咥えたくも無い男性器を根元まで口の中に押し込まれ、身体中に白濁液を浴びせかけられた。

「信じられねぇ……

 あの鶴野の裸にぶっかけとか。

 今現実に起こってる事だってのに」

 

「女の口の中に出すの、生まれて初めてだ……

 があッ!!

 ハァ、ハァ……」

 口の中に精液を流し込まれ、身体に精液をかけられると言う屈辱。

 手足の自由が失われた状態では抵抗する事も出来ず、椿は男達に嬲られる一方だった。

 

 (気持ち悪い。

 喉の奥に流し込まれて、飲んじゃった……

 何でこんな事になってしまったの?

 私が何か悪い事をしたって言うの?

 神様……)

 

 希望への憎しみよりも、自分が両性具有である事を知られてしまったと言う絶望感の方が強い。

 椿は虚ろな瞳をしたまま放心状態に陥っていたが、足の拘束だけ外され無理やり立たされた。

「おい、誰でもいいから椿のチンポを扱いてやれ。

 アタシの中に出したんじゃ射精する所がよく見えねぇからな」

 

 悪意に満ちた笑顔で見つめられ、椿は思わず泣きながら顔を背ける。

「じゃあ、俺が……

 鶴野、悪く思うなよ」

 手を身体の後ろで縛られている状態は変わらない為、彼等から逃げる術が無い。

 

 (今逃げ出せたとしても全裸だし、オチンチンも完全には萎えてないし……

 何を考えてるんだろう。

 馬鹿だなぁ私は)

 本当に絶望して、光が見えない時人は泣きながら笑顔を見せたりするのか。

 椿は肉棒を掴まれながら、そんな事を考えていた。

 

「うわ、男のと触った時の感触が全然違うんだな……

 ふたなりのチンポって」

 かろうじて棒の様な形状を保っている竿を扱かれ、自分の意思とは無関係に嬌声が漏れる。

「んひッ、止めてぇ……

 お願いだから、それ以上擦らないで」

 

 男の手で乱暴にされていると言うのに、また勃起しようとしている。

 快楽に全く逆らえないと言う事実が、椿の心を蝕んでいた。

「カタクナールΩの効果は数発出してやっと落ち着くかって所らしいからな。

 椿のチンポの中に溜まったモン、全部吐き出させてやれよ」

 

 女子生徒はこの異様な状況の中で、嫌が応にも肉棒の長さや大きさを椿の竿と比較してしまう。

「ココにいる男連中のよりちょっと大きいんじゃない?

 椿のアレ……」

「うん、私もそう思う。

 あんなのが入ってきたらと思うと怖くてしょうがないわ」

 

 自然と発せられる恐怖、拒絶。

 言葉によって自分が否定されている事が椿の心を深く抉った。

「触っていいのはチンポだけだぞ。

 膣はいじくるなよ」

「は、はい」

 

 男子生徒も希望の存在を忘れそうになっていたが、ドスの効いた声を聞いた事で一定の自制心が発生する。

 希望の兄である渡が無言のまま、常に彼等を睨み付けていた。

「本番以外なら、女どもに勃起したモノの処理をねだっても構わねぇからな。

 滅多にやらねぇ宴だ。

 どうせなら派手に楽しんだ方が得だろ?」

 

 椿と彼女の周辺にいる男女を、希望は恐怖と快楽によって思いのままに操っている。

 やがて膣をいじくっているだけでは満足出来なくなった女子生徒の一部が、男達の中に混ざり始めた。

 

「初めてなんだ。

 手とか口でされるのも……」

「今日だけだからね。

 うむぅ……ふぐ、おふぅ」

 

 勃起した三本の肉棒の相手を女子生徒1人がこなし、全員が恍惚の表情を浮かべている。

 (どうして、こんな……

 皆催眠術にかけられてしまった様に)

 椿は彼等が堕落している現状を訝しんだが、そこまで不思議な事でも無かった。

 

 人は誰でも本能で雄や雌を求め、快楽を貪りたいと言う欲望や衝動を抱えて生きている。

 普段はその欲求を理性で抑え込んで生活しているのが人間だが、その理性が無くなれば脆い。

 人の前で自慰行為を行うと言う現実離れした行動が、彼等のリミッターを解除してしまったのだ。

 希望によってその動きがコントロールされていると言う点も、彼等が獣となった主な要因だった。

 

「気持ちいいんだろ?

 チンポ勃起させて、先っぽから汁垂れ流してるじゃねぇか。

 どんなに感じていないと言っても、身体は嘘がつけねぇもんな」

 

 天武日本人は『自分から動く』事は苦手だが、『誰かに命令されて動く』事には抵抗感が無い。

 特にこういった淫らな行為を強要されているのだと自分に言い聞かせる事で、心の安定を図っているのだ。

 彼女達がすんなりと異常な状況を受け入れたのも、ある意味当然であると言えた。

 肉棒を握る手がリズミカルに動き、刺激を与えていく。

 触られる前は萎えかけていたペニスも完全に硬度を取り戻し、膨張した状態で脈を打っていた。

 

「おいコイツ、マンコの方も濡れてやがるぜ。

 スケベだなぁ椿は」

「そのまま皆の前で射精しやがれ。

 男の手で擦られてイクのは屈辱的だろ?」

 

 希望の残酷な言葉が椿の心を抉る。

 先程彼女の中で絶頂を迎えてしまったと言う事実が椿を苦しめていた。

 (止めてッ……

 そんなに激しく扱かれたら、また出ちゃう)

 

 泥酔したかの様に快楽に溺れている生徒達の姿は椿を少しだけ安堵させる。

 他の事に夢中になってさえいれば、自分が無様に射精する姿を人に見られる事は無い。

「こんなに激しくビクンビクンって震えるんだな、椿の……

 握ってるだけで俺も変な気分になってきちまうよ」

 

 椿の肉棒を扱いている男子生徒もまた他の者達と同じ様に勃起したモノを露出させている。

 その硬いモノが尻に触れた瞬間、椿はそのままそれが突き入れられると言う最悪の展開を容易に想像する事が出来た。

「おい、勝手な事はするなよ馬鹿野郎。

 兄貴に殺されてぇのかテメェは」

 憤怒の表情で希望が男子生徒を睨み付けた瞬間、その肉棒はあっと言う間にその硬度を失う。

 

「すいません、調子に乗り過ぎました」

「お前はアタシに言われた事だけやっていれば良いんだ。

 さっさと椿を射精させろ」

 ギリギリの所でクラスメイトに強姦されると言う悪夢は免れた椿であったが、状況が好転したとも言い難い。

 

 (ココまで滅茶苦茶な事をしているのに、希望さんは最後の一線だけは頑なに守ろうとしている。

 有難いけれど、どうして?

 解らない事が増えていく一方だわ……)

 

 全裸と言う滑稽な見た目であっても、般若の様な顔で睨まれれば一定の凄みがあった。

 彼女の兄が過去に父親を殺害していると言う事実もあり、男子生徒は暴挙に及ぶ事無く己の仕事を全うする。

「畜生、相手のモノを扱くだけの仕事なんて生殺しだろ……」

 男子生徒が小声で文句を言いながら、熱を放っている椿のペニスを乱暴に扱い始めた。

 だがそうして雑に擦られる程、いきり立った肉棒が強い刺激を受けますます硬くなっていく。

 

 (あッ嫌ッ!

 馬鹿になっちゃう。

 射精する事しか考えられなくなっちゃうッ)

 

 怒張した肉の凶器に蓄積された欲望の塊が、我慢出来ずに放出されようとしていた。

 希望は椿の理性を失いつつある顔を見て絶頂が近い事を察し、他の生徒達に大声で呼びかける。

「おいお前等、椿が精液をぶちまけるぞ!

 この機会だからよく見ておけ」

 

 犬の様に舌を出し、目の焦点が合わず虚ろな表情を浮かべている椿。

 頬と身体が赤くなり、肉棒は青筋を立て先端が完全に上を向いていた。

 男子生徒も、彼等の性欲を処理させられていた女子生徒も希望の声を聞いて一斉に椿の方へ視線を向ける。

 無様に射精する姿を見られたくないと僅かに残っていた理性が訴えていたが、それも無駄な足掻きでしか無かった。

 

「お願い、見ない、でッ……

 駄目、本当に駄目、出ちゃ、ひぐぅッ!!」

 心が悲鳴を上げていても、身体はその叫びを無視するかの様に精液を吐き出し始める。

 透明な粘液が先端から水鉄砲の様に飛び出し、床をあっと言う間に汚していった。

 

「うわ、とんでもねぇな……

 量も尋常じゃ無ぇけど、射精してる時のひくつきが半端ねぇわ」

 椿は肉棒を握られている状態のまま射精していた為、身体の震えや股間の脈動が手や密着している肌に直接伝わる。

 ギャラリーが呆然としている中、溜まっていた欲望を全て出した椿は両足をふらつかせながらも何とか立っていた。

 

「下がって良いぞ」

 希望は男子生徒に椿の剛直から手を離す様命じ、彼は大人しくそれに従う。

「お、俺まだイッてないんですけど……」

 精一杯の抵抗とばかりに不満を漏らし見返りを要求しようとしたが、希望の顔を見て顔色が変わった。

 

「随分と生意気な口をきくじゃねぇか。

 ああん?

 眠気覚ましに一発殴られてぇ様だな」

 渡が彼の方を向いた瞬間、男子生徒は恐慌状態に陥り走って他の生徒達がいる所へ逃げていく。

 

「……チッ。

 もう良いよ兄貴。

 屑野郎にいちいち構っていたら時間が勿体無ぇし」

 この群れの支配者である自分に指図する事は絶対に許さない。

 彼女のプライドと驕りが見え隠れする一幕だったが、椿は少しだけ違うものを感じていた。

 

 (誰かに何かを指図されるのが嫌だって、神経質になっている様な気がする。

 どうして、酷い事をしているのに貴方の目は哀しそうなの?

 解らない、何も解らない……)

 

 椿は彼女を憐れんでいるかの様な表情を見せ、希望は思わずそっぽを向く。

 怒るでも無く、嘆くでも無く、ただ自身が負った傷から必死に目を逸らしているのではないか。

 椿には希望が自暴自棄になっている様に見受けられた。

 

「見ろよ、男どものあの間抜けそうな面。

 目の前の女にむしゃぶりつく事だけしか考えられねぇ。

 アタシの目が届いている間はそれ以上の行為はさせねぇけどな。

 おい、お前等!

 その辺りまでにしとけ。

 やるのはあくまでコイツとアタシだけだ」

 

 希望は手淫やフェラチオだけでは満足出来ず、女子生徒に襲い掛かろうとしている男子生徒を完全に抑え込む。

 暴行を受ける恐怖、殺されるかもしれないと言う恐怖でギャラリーを縛りつつ理性を剥ぐ様な行動を推奨すると言う一見矛盾した行為。

 

 恐らく彼女は、他人を思い通りにコントロールしていると言う快感に酔っているのだろう。

 自分が先に描いていた設計図と同じ様に人を動かし従わせると言う歪な喜び。

 自分にはそれだけの事が出来る。

 私はそれだけ強いんだ。

 

 椿には希望が自分で自分に言い聞かせ、虚勢を張っている様な気がした。

 (この場所にいる全ての者達が彼女には逆らえない。

 当然私も……)

 足と身体がガクガク震えて、立っているのも精一杯。

 それ程精神的・肉体的に疲弊しているにも関わらず、肉棒だけは痛みと滾りを訴え続けていた。

 

「カタクナールΩは射精量が増えるだけで無く、3回か4回は出さねぇと萎える事は無ぇ。

 あんなに沢山出したばかりなのに勃起したままなのはおかしいと思ってるんだろ?

 アンタは難しい事なんて考えずにアタシのマンコを使って気持ち良くなりゃいいんだよ」

 

 薄桃色の砲身が、もっと出したい。

 さらなる快楽を貪りたいと叫び続けている。

 激痛すら感じる程ガチガチに硬くなったペニスをセックス無しで射精させるのはどう考えても不可能だった。

 

「ホラ、アタシのを使えばいいじゃねぇか。

 射精してぇんだろ?

 まさかそこまででかくなったチンポをそのままにして帰れるなんて思わねぇよな」

 希望はそう言うと体育館の壁に手を付き、尻を上げた状態で椿を誘惑する。

 何も身につけていない、華奢だが艶めかしい身体が椿のモノをますます膨張させた。

 

 (したい……

 セックスしたい。

 希望さんの中に私のをぶち込んで、出したいッ……!!)

 

 欲望が加速していく。

 全てを吐き出して楽になりたいと勃起した肉棒が叫び続けている。

 背中側で両手首を縛られている為股間に手を添える事は出来なかったが、椿はガチガチに硬くなったモノを彼女の膣に押し当てた。

 快楽を貪っていた生徒達も、椿と希望が醸し出している淫靡な雰囲気に気付き彼女達の方に視線を向ける。

 美しい身体を持つ全裸の少女2人が理性を捨ててまぐわっている姿は見方によっては神々しいとさえ感じられた。

 

「うわ、あんなに硬くなってるから押し込むだけで入っちゃうんだ……」

「俺のよりでけぇじゃん。

 でも何でだろ……

 男のとは違って椿のチンポはエロく見えるんだよな」

 

 愛液と先程椿自身が出した精液によって受け入れる準備が整っていた希望の膣が、まるで最初から結合していたかの様にその砲身を飲み込んでいく。

 やがてその太い肉棒が生徒達の視界から完全に消え、彼女の最奥へと突き刺さった。

 

 (先端からオチンチンの根元まで、全部あったかいオマンコの壁に包まれてる……

 こんなの、我慢出来ない。

 もっと気持ち良くなりたい。

 出したいのぉぉぉぉ)

 

 繋がった瞬間、椿の中に辛うじて残っていた理性が弾け飛ぶ。

 乱暴に素早く抜き差しする事は出来なかったが、希望が壁に手をついていた為上体を反らして腰を前に突き出していた。

 

「ハハッ……

 アンタのチンポは正直だな。

 アタシの中で出してぇってか。

 良いぜ、好きなだけ暴れて全部注ぎ込めよ。

 空っぽになるまで付き合ってやるからさ」

 

 何とか踏ん張って立っているものの、先程の射精の余韻と快感によって足を動かす事すら厳しくなっている。

 それを察した希望は丁度壁に備え付けられていた肋木(ろくぼく)を両手で掴み、腕を寄せたり引いたりする事で肉棒を扱き上げた。

「くひッ!?

 ち、チンポが、擦れてぇ……

 あうぅぅ、おかしくなっちゃう」

 

「アタシも気持ち良くしてもらわねぇとな。

 簡単にイクんじゃねぇぞ。もっとアタシを悦ばせろ」

 椿の視点からだと自分の剛直が見えたり消えたりしているだけなのだが、その往復運動の度に快感が電流の様に全身を駆け巡る。

 肉棒を起点として、身体の全てが鋭敏になり火照っているかの様だった。

 

 (なんでこんなッ……

 オチンチンが今まで見た事も無い程大きくなって、疼いてる……

 頭の中が性的な快楽に侵されて、もう射精する事しか考えられない!)

 周囲の視線は椿の意識の外へと押し出され、希望の身体と自分の身体しか椿は認識する事が出来ない。

 腰を振り、時には振られペニスを通じて繋がり合う事で椿は彼女と一体となっているかの様な錯覚すら感じていた。

 

 肉と肉がぶつかり合う淫らな音が、体育館内に響き渡る。

 一定のリズムを刻むパンパンと言う音と滴っているかの様な水音。

 結合部から漏れ出る音とは別に、椿も両性具有者としての本性を露わにしていた。

 

「あおおおッ、おッ、おおッ。

 良いッ……良いよぉ。

 んはッ、あうああ」

 喘ぎ声と言うより、それは獣の雄叫びに近い。

 

 肉の柱が希望の膣奥をこじ開けようとするかの様にぶつかり、希望もまた先端がぶつかってくる快感に身を震わせていた。

「アンタの先っぽ、凄ぇ良いよ……

 アタシの膣内ガンガンに突いてきて気持ち良くしてくれるじゃんか。

 そろそろ本格的に責めて、大量に出させてやるよ。

 有難く思いな」

 

 さらに腰の動きを早め、時折入口に力を込めて根元まで埋まったペニスを締め上げる。

 涙と涎でぐちゃぐちゃになった顔をほころばせ、椿は射精の予兆を敏感に感じ取っていた。

「きちゃう。

 オチンチン、爆発しちゃうッ!!

 出る、出るよぉッ」

 

「遠慮せず出せよ。

 溜まっている精液をアタシの中にぶち撒けたいんだろ?

 皆が見てくれてるんだぜ。

 アンタが射精する瞬間を……おほッ」

 

 漲り、逞しくなった先端部分が扉を壊す為の丸太の様に何度も何度も奥へと突き刺さる。

 動きも勢いも盛んになり、椿は頭の中に電気が流れる様な感覚に身を委ねた。

 

「ああッ、駄目ぇ!

 ほ、本当に出ちゃう。

 せーえき出ちゃうッ!!

 オチンチンから噴き出ちゃう。

 見られるの嫌ッ、嫌ぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 突き上げる音が一層激しくなり、一番奥へと突き入れた状態で唐突に肉棒が弾ける。

 膨らんだ砲身の先から飛び出す透明な粘液の量と速さは、まるで決壊した堤防から溢れ出る濁流の様な勢いを有していた。

 

「止まらないの、止まらないのぉッ。

 どくどくって流し込んでるのぉ……

 オチンチンが壊れちゃってるぅ、おかしくなっちゃってるッ」

 ホースで直接膣の中に水を流し込んでいるかの様な、強烈な精液の量。

 そしてその射精の間ずっと硬度を保ち続け脈動している肉棒が与える快楽は、希望を甘美な絶頂へと導く。

 

「す、凄ぇ……

 アタシの身体もずっと痙攣してるよ。

 かなりの体力を持っていかれるんだな、ふたなりとのセックスって……

 こんな体験をしたら戻れなくなっちまいそうだ」

 希望もまた満足し、肋木を掴んだまま荒い息を吐き続けていた。

 

「あう……あ……

 へッ、へうッ。

 おううう、くうッ」

 言葉にならない声を発し、萎えない肉棒を膣の奥へと押し当てる度に先端から粘液が発射される。

 その量を膣が受け入れられるハズも無く、繋がっている段階で精液が床にぼたぼたと垂れ落ちていた。

 

 最早自分の身体を制御する事が出来ず、射精をこなす人形であるかの様に何度も精液を吐き出す椿。

 (オチンチンが馬鹿になっちゃってる。

 痛い位に膨らんで、脈打つ度に精液が出てる……)

 自身の性欲の強さと、カタクナールΩによってもたらされた効能が合わさる事によって生まれた驚異的な性欲。

 椿自身にも解らぬ程何度も射精を繰り返していた肉棒は、中身が空になった事でようやくその動きを止める。

 

「もう……

 な、何で……」

 椿は誰に向かって言うでもなく疑問を呟いた後、態勢を維持出来なくなり床に尻もちをついた。

 その瞬間にまだ勃起していた肉棒がずるりと抜け、透明な液体が希望の膣からどばっと溢れ出す。

 

 男のそれを遥かに上回る獣じみた性欲をまざまぜと見せ付けられ、クラスメイト達はただ黙って一部始終を見届ける事しか出来なかった。

「み、皆……

 見ないで、そんな目で私を見ないでぇ」

 欲望を全て吐き出し、肉棒が萎え始めた事で椿はやっと周囲の状況に目を向ける余裕が生まれる。

 だがそれは、男子生徒も女子生徒も怯える程自分に対して引いていると言う残酷な現実を突き付けられると言う事でもあった。

 

「椿、盛ってた私達が言う事じゃ無いかもしれないけどさ。

 何か怖いよ……」

「俺達とは身体の構造が全く違うんだな。

 あんなに発情するモンなのか」

 

 快楽に酔っていた事に対する言い訳。

 椿を否定する事で自分達のプライドを守ろうとする行為。

 下劣ではあったが、椿はその言葉を仕方ないと受け入れた。

 それでも涙は止まってくれなかった。

 

 (解ってるわよ。

 私の股間にオチンチンが生えていて、それが人と違うって事位。

 でも、そんな私が『普通の生活』を望む事がいけない事なの?

 それは罪だって言うの!?)

 

 全員にそう訴えたかったが、言葉が出なかった。

 自分の正体を暴露されてしまった今、そんな言葉を叫んだ所で誰が自分を認めてくれると言うのだろう。

 嘆きと諦めの中で、椿は収縮していく自らの『罪』を恨めしそうに見つめていた。

 

「いやぁ、滅茶苦茶気持ち良かった……

 最高だったよ、椿」

 全裸のまま大きく伸びをしてそう言う希望の笑顔に対して、椿は歯を食いしばり何かを訴える様な表情を見せる。

 

「おいおい。

 アンタそういう顔する?

 折角アタシが童貞を卒業させてやったんだ。

 寧ろ感謝してほしい位なんだがな。

 そうだろ?」

 

 希望の目は光を失い、笑っていても不気味な印象を受ける。

 彼女の綺麗な裸体と相まって、決して触れてはいけない危険な薔薇……

 そんな印象を彼女に与えた。

 

 (あの虚ろな瞳……

 あれは自分では背負いきれない位の傷を与えられて歪んでしまった人の目だ。

 絶望から立ち直る事が出来ず暗闇の中を彷徨っている。

 希望さん……

 どうして私を苦しめるの?

 傷付く苦しみは、貴方も知っているハズなのに)

 

 勇気が出ず、その疑問を直接口に出す事が出来ない。

 そして実際に問いかけてみたとしても、今彼女から答えは返ってこないであろうと思われた。

 

 現実とは思えない、異様な光景。

 膣から透明な粘液を垂らし、仁王立ちの状態で人を小馬鹿にする様な表情を浮かべている希望。

 肉棒が完全に収縮し、クリトリスの大きさに戻ってはいるものの彼女と同じく全裸で両手の自由を奪われている椿。

 その異空間の中で淫らな行為に興じていた生徒達の目を覚ますかの様に、希望は両手を強く叩き周囲の視線を集める。

 

「お前等、パーティはお開きだ。

 何時までも体育館を貸し切りにしておけるワケじゃねぇからな」

 頬こそ赤くなってはいるが、つい先程まで椿と共に快楽を貪り、喘いでいたとは思えない回復力。

 もう少し非日常を楽しめるかと思っていた男子生徒達は、その有無を言わせぬ迫力にたじろぎながらも不満そうな顔を見せた。

 

「そんな、俺達まだ……」

「体育館にお前達以外の人間を近寄らせないでいられる時間はそんなに長くねぇんだよ。

 椿とアタシのセックスを見て欲情したとしても、ココでこれ以上ダラダラする事は無理だって事位理解しろ。

 アタシの目の届かない所で何かしたいって言うなら止めやしねぇから」

 

 ココから先の彼等の動きは自分には与り知らぬ事。

 無責任とも言える希望の言い分だったが、生徒達が彼女にそれ以上食い下がれるワケが無い。

「とにかく、解散だ!

 大人しく家に帰りな」

 

 希望は鋭い目つきで全員を睨み付け、数十名の生徒達はそのまま体育館を後にした。

 先程まで熱気が篭もっていた体育館の中が急にがらんと静まり返った事で、椿の思考はより暗い場所へと落ちていく。

 

 (あんな、あんな事をして、馬鹿みたいな事言っちゃって……

 終わりだ。

 私の学校生活。

 もう皆は今までと同じ目では私を見てくれない)

 

 手首の拘束が外れていない為、恥ずかしくても顔を隠す事すら出来なかった。

「さぁ、着替えと片付けを済ませて撤収だ。

 兄貴はマットを片付けておいてくれ。

 流石に精液まみれのまま帰らせるワケにもいかねぇし、コレ使って拭けばいいか」

 

 そう言うと希望は10枚程制汗シートを床の上に置く。

 拘束を解かれた後自分が来ていた服も渡され、椿は黙ったまま着替えを済ませた。

 肌はともかく、髪にかけられた精液はある程度拭いても取り切れない。

 

「いやぁ、楽しかった。

 ギャラリーも満足してくれたみてぇだし、アンタもアタシも気持ち良くなれただろ?

 ふたなりとのセックスは身体を熱くしてくれる。

 いずれ機会があればまたアンタと……」

 

「ふざけないで!!」

 彼女に逆らえば命は無い。

 先程それを何度も痛感させられていた椿であったが、喉の奥から飛び出す衝動を抑える事が出来なかった。

 

「私はたった今、全部失ったのよ!

 平穏な学校生活も、輝かしい未来が待つ陸上部の全国大会への道も。

 貴方が皆を招いたせいで、もう昨日までの日常は取り戻せない。

 そんな事をしておいてまた私と『したい』だなんて、いい加減にして頂戴!!」

 

 元々気性が荒い方では無かった椿が、偽り無く述べた魂の叫び。

 既に着替え終わっていた希望は彼女に近付き、彼女の顎に手を当て無理やり自分の方へと顔を向かせる。

「バーカ。

 ズルいんだよ、アンタだけ幸せになろうなんてさ。

 そういう身体をしておいて辛い目にも遭わずに生きていくつもりだったんだろうが、許さねぇぞそんなの」

 

 自分だけ不幸になるのは不公平だ。

 だからお前にも不幸になってもらう。

 ゾッとする様な笑顔とその言葉の裏に深い哀しみを感じ、椿は思わず床に座ったまま後方に逃げた。

 

「アタシは気に入ったものは何でも手に入れたい主義なんだ。

 アンタがアタシから離れていっても、また見つけて何度でも近くに寄ってやる。

 手の届かない所に隠れられると思うな。

 アタシは蛇みたいにしつこい女だって事を覚えとけ」

 

 どす黒い霧が彼女を覆い尽くしている。

 今から椿が味わうであろう絶望よりもより濃く、治したり癒やしたりする事が不可能な程の闇。

 その闇の根源がいずれ彼女の口から明かされる時が来るのだろうか。

 椿はその闇に興味を抱きながらも、何も言えず震えていた。

 

 体育館から自宅までの道のりを歩きながら、椿はつい先程までの記憶を何度も頭の中で再生していた。

 獣と化して希望とセックスをしたと言う現実。

 仲間から怯えられ蔑まれたと言う現実。

 

 希望と希望の兄である渡の魂を失っているかの様な冷たい瞳。

 これまでの事よりもこれからの事を考えなければならない。

 頭では解っていたが、彼女はどうしてもその現実を受け入れる事が出来なかった。

 

 (全て失われた。

 私の世界は終わってしまったんだ。

 両性具有者と言う秘密が暴露されてしまった今、私はどう生きていけばいいと言うんだろう)

 

 誰にも話す事無く墓場まで持っていこうとしていた身体の異常を人に知られてしまった。

 家族に知られたら、その関係も崩壊してしまうのだろうか?

 考えているだけで、椿の目から涙が流れ出し止まらなくなる。

 

 (とにかく、今は帰らないと……)

 受け入れたくない。

 これから待ち受けている絶望なんて、まやかしであってほしい。

 現実逃避しつつも辿り着いた自宅。

 そのドアや家の壁に白い紙が貼られていた。

 

『ふたなりの化け物!

 この街から出て行け!』

『この家には異形の女が住んでいます』

 

 目を覆いたくなる様な文が書かれた紙が、自宅のあちらこちらに貼られている。

 周囲の塀にまで貼られた紙を見た瞬間、椿は膝から地面に崩れ落ちた後泣き叫んだ。

「ううッ……

 うああああああああ!!」

 

 最早自分の力では絶望へと至る流れを止める事が出来ない。

 そしてこの心の痛みがさらに深くなるであろうと言う事は、薄々彼女も気付いていた。

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