※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX 番外編   作:とも667

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皆様のためにぃ~……お作りしました。どうぞご覧下さい。


救済

 ……もう朝か。俺はいつも通り、弁当を作って箱に入れる……丁度、8人分だ。最近3人も弁当を強請ってきたので、作ってあげることにしたのだ。

 

「……よし。行く準備はokだな……」

 

 いろんなことがあった……親を殺して、魔王を殺して……でも、俺はこうして生きている。戦争は終わって、今は平和だ……欲求もリハビリで少しは戻ってきた。おっと……そろそろ、学校が始まるな。義手も義足も、きちんと動く……

 

「行くか!」

 

 いつものように、学校に向かって走り抜ける。その道中で……見つけた、みんなだ。俺関係ですっかり仲良しで、最近は一緒に登校している……さぁ、いつものアレをやるか。

 

「……来たよ!」

 

「もう、その手にはかからんぞ……? 残念だったな!」

 

「あ、捕まえ損ねた!!」

 

 残念でした。そんなことを思いながら、学校に向かう……俺は堀川守男。学生のフリをした、軍人だ。

 

 

 

「……あー、くそっ! 捕まえ損ねるなんて~、悔しい~!!」

 

「すばしっこいのら~!!」

 

「精進しなさい、彰人くんに負けてるぞ?」

 

 そう、最近は彰人くんの成長がめざましい。バトルロワイヤルでも上位を保っているし……すごいと思う。俺とも互角になってきた、あの時なんて……あんなに追い詰められたのは久しぶりだ。

 

「そんなぁ、言い過ぎですって!」

 

「謙遜するな、君は強いよ……ほら、もっと自信持って、胸張って!」

 

「守男さんにそういうこと言われると照れちゃうな……にひひっ」

 

 何だか、可愛い弟子を持った気分だ。師匠の気持ちってこんな感じなのかな?

 

「……ずるいでござる」

 

「むくれるなよ、いろは……最近強くなるために修行してるんだろ? いろはだってすごいさ」

 

「うぅ、いざハッキリ言われると……それはそれで……」

 

 じゃあ、俺にどうしろって言うんだ。

 

「ずるいぞさむらい!! 守男、吾輩だって……」

 

「こよだって、最近はね……」

 

「ボクだってすごいんだよ!?」

 

 圧がすごい、愛されてるのは嬉しいが……7人で詰め寄らないでほしい。

 

「わかった! わかったから……1人ずつ褒めていくからさ、これでいいだろ?」

 

「あ、律儀だね……」

 

「やっぱりそういうとこだよな~」

 

 俺は1人ずつ褒めちぎっていった、いいところ探しは得意分野だ。終わった頃には……

 

「えへへへ、もっとぉ……」

 

「そうだよねぇ、こよって偉いよね~……」

 

「たりないよぉ……もっとしてぇ……」

 

 なんで感じてんだよ、こればっかりは意味がわからん。囁いてくれって言うからそうしたのに……これじゃ授業にならんぞ。

 

「……教室に来たらクラスの8人がぶっ倒れてるってどういうことだ? お前が原因だろ、堀川? 何をした? 正直に言いなさい」

 

「実は、カクカクシカジカシカクイム-ブ,コントトレビアン! daihatsuってわけでして。」

 

「……胃痛と頭痛が……とりあえず保健室連れていこう、堀川……」

 

 可哀想な先生……後でガ○ターDとバファリ○買ってあげよう。そう思った俺なのであった……誰に言ってんだよ。

 

 

 

「……美味い。今日のは美味しくできたな、力がいい感じに入る……」

 

「ただいマンボウ~」

 

「おかえリスザル~」

 

 即興で考えたギャグ……よかった、ウケてる。

 

「リスザルって、リスザルってお前……! またマイナーな……」

 

「かわいいだろ、リスザル?」

 

「そういう問題じゃないでしょ……」

 

 みんな美味しそうに弁当を食べてくれる、この時間が好きだ……

 

「……ごちそうさま! 美味しかったよ!!」

 

「そりゃよかった……美味しく食べてもらえて。それにしても俺の弁当は人気だな……」

 

「軍人ができなくなったら、弁当屋やったら?」

 

 ……アリだな。

 

「候補のひとつに入れとくよ」

 

「……今日こそは……!!」

 

「何のことだ?」

 

 なんか嫌な予感が……俺は何をされるんだ?

 

「……今日はココの番だもんね」

 

「守男は果たしていけるかな?」

 

「覚悟しといた方がいいよ、守男にやられて、トワは……」

 

 ……まぁ、いいか。みんなのことだ、そこまで悪巧みしてるわけじゃないだろ……流賛と干満に比べれば、みんなの計画なんて可愛いものだ。きっと、イタズラの計画かなにかだろう……知ったからには、かからないようにさせてもらうけどな?

 

「……これ渡しとくね、こよのとっておき! どうしてもダメな時はこれで、ね!」

 

「ココならできるよ、きっと!」

 

「もっちろん、I can do it! なんたってお前らより胸があるからな!」

 

 ピシリ。そんな音がしそうな程、空気が凍てついた。気温が低い気がする……

 

「やんのかオメェ……!?」

 

「持たざる者は黙っとれい……ないのが悪いんだから、わためは悪くないよねぇ?」

 

「え、知らないの? 守男はちっちゃい方が好きなんだよ? そうだよね、守男?」

 

 俺に矛先が向いた。ヴァロンの氷魔法より冷たい空気が吹いてる。あれ、氷魔法使ってる?

 

「男はデカい方が好きなんですぅ、そうだよな?」

 

「そんなわけないよね?」

 

「いや、俺はどっちも好きだが」

 

 スパッと本音を言うと、空気が温まった気がした。

 

「まぁ、それならいいかぁ……」

 

「……次は誰の番?」

 

「またクジ引こうか……」

 

 ……本当に何の話なんだろうか。

 

「席につけー、お前ら。授業始めるぞ」

 

「は~い」

 

「よし、誰も倒れてないな? 保健室に行った人数は0、と」

 

 俺のせいですみません。そう思いながら、俺は授業を受け始めるのだった。

 

 

 

「……はい、これで今日は終わりだ。気をつけて帰れよ、特に堀川はな」

 

「はい、ご心配ありがとうございます……あと、これ。よかったら……」

 

「胃薬と……頭痛薬?」

 

 プレゼントだ、俺のせいだからな。

 

「頭と胃が痛いんでしょう? 私にも責任ありますし……受け取ってもらいたいです」

 

「……優しいなぁ、お前……ありがとうよ……」

 

「こちらこそ喜んでもらえて嬉しいです、では!」

 

 さてと……今日はフリーの日だが、何もないならスパーリングでもしに行こうかな?

 

「守男、一緒に帰ろう!」

 

「あ、いいよ?」

 

「じゃあ行こう、早く!」

 

 今日のココはそそっかしいな……何かあるのか? そう思って帰っていると……

 

「……ねぇ、守男! 私の家来ない? 私の親が、是非挨拶したいって」

 

「……いいよ。ついて行く」

 

「やった! じゃあ行こっか!」

 

 俺はココに連れられて、家に行くことになった。挨拶……隠語かもしれん。戦闘態勢はとっておくか……

 

 

 

「……ここが私の家だぁ!」

 

「まんま事務所だな……お邪魔します」

 

「若! お帰りなさいませ!!」

 

 入った瞬間、一斉に礼をされた。強面の男ばかりだ……

 

「おう、ただいま!」

 

「なんだお前……この辺じゃ見かけねぇツラだな? どこのモンだ?」

 

「まさか若を誑かしてんじゃねぇだろうな!?」

 

 戦闘態勢を取ろうとしている……俺も剣に手をかけた。

 

「待て! こいつは私が言ってたあの人、超強い私を倒した男だよ!」

 

「え!? そ、そうなんですか!?」

 

「そうだ……申し遅れたな、炎剣の龍殺しの堀川守男だ。ニュースで聞いたことあるだろ?」

 

 俺がそう言うと、これまた全員が深々と礼をしてきた。

 

「そうとは知らず、無礼なことを……すんませんした!」

 

「すんませんした!!」

 

「構わない、不審者に見えたんだろ? ココの親御さんが俺に会いたいらしい、通してくれ」

 

 そう言うと、すぐ道を開けてくれた。

 

「どうぞ、お通りください!!」

 

「親父さんは大広間にいらっしゃいます!!」

 

「らしいよ? 行こう、守男!」

 

 そう言われて、歩を進める……いきなり火球が飛んでくるかもしれねぇんだ。警戒していこう。

 

「父さん! ただいま!!」

 

「……ココか? おかえり。そっちの人は?」

 

「父さんが会いたいって言ってた、堀川守男くん! ニュースにもなってたでしょ? ほら、単身魔王城に乗り込んだ……」

 

 ハッとしたような顔をして俺を見る、竜人の大男……弱いところは見せられない。そう思い、戦争時代を思い出して顔を固める。

 

「そうか、君が……ココを倒したあの人か」

 

「そうですね、私ですが……」

 

「……そんなに身構えるな。何も、君と戦いたいわけではないよ……お茶を出させよう、座るといい」

 

 ……随分気さくだな。

 

「桐生会……結構和やかだな」

 

「父さんが基本的に平和主義者だからね。怖い見た目してるから、子供に怖がられて陰で泣いてるよ」

 

「そうなのか……お構いなく、俺が煎れます」

 

 俺はキッチンに向かおうとしたが……

 

「悪いよ、客人に……おもてなしくらいさせてくれ。すまんがお茶を煎れてくれよ、君」

 

「はい! お任せ下さい!!」

 

「……ってわけだからさ。おもてなしされてあげて? テンション上がってるんだよ、有名人が来たから」

 

 そうか、俺って有名人なんだよな……スキャンダルとかって、大丈夫なんだろうか。

 

「こら、そういうこと言うな……恥ずかしいじゃないか」

 

「サインとか強請ったらくれるよ? 貰っといたら?」

 

「……じゃあ、これにサイン……お願いできませんか?」

 

 ココが可愛いだけあって、父親も可愛らしい人だな。そう思いながら、サインを書く。書くのは初めてなんだが。

 

「これでいいですかね?」

 

「あ、ありがとうございます……額縁に入れとこう!」

 

「大袈裟だなぁ、いつでも貰えるようになるのに!」

 

 心底楽しそうな顔……羨ましいな、親子の会話が。

 

「……親子っていいな」

 

「……ごめんなさい。私も知ってますよ、ココが酷い目に遭わされたから……」

 

「あの時すごい形相してたよね、どんな化け物より怖かったって専らの噂だよ」

 

 ちゃんと怒ると怖いんだな、安心した。

 

「お待たせしました、粗茶ですが……お茶菓子と一緒にどうぞ」

 

「ありがとう、下がっていいぞ」

 

「ありがとね~!」

 

 その人は部屋から出ていった……手際がいいな。

 

「……美味いお茶だ。茶菓子も甘すぎない、いいのを使ってる……」

 

「出た、守男の食レポ……」

 

「喜んでもらえると嬉しいです」

 

 お茶を飲み終わり、お話をすることになったが……どんな話を?

 

「それで、話というのは?」

 

「なに、変な男でないか確かめたかっただけさ。この様子なら……全然大丈夫そうだな」

 

「反対されても、私はもう守男のものだからね! 駆け落ちしちゃうよ!!」

 

 とんでもない脅しだ、そんなことしたら卒倒するんじゃないのか?

 

「そんなことされたらお父さん……泣いちゃうよ!!」

 

「脅しが可愛いな、オイ……ココが可愛いから、納得はいくけどさ」

 

「もぉ~、またそういうことばっかり言う!」

 

 思ったことを素直に言っただけだ、何ら問題ない。

 

「私の大泣きを舐めるなよ、一週間泣き続けてこの街を海にしちゃうぞ!!」

 

「それは困るな……洗濯物が干せなくなっちゃう」

 

「困るところそこ!?」

 

 いや、普通に困るだろう。

 

「困るだろ? だからココ、いなくなるなよ?」

 

「分かりましたよ~……大丈夫だったでしょ?」

 

「あぁ……悪い人達じゃなくてよかった」

 

 そう言って、俺は力を抜く……剣も地面に下ろした。

 

「いい剣だな……これはどこで?」

 

「特注品です、ウルカヌスって名前で……知り合いの鍛冶屋さんが作ってくれたんです」

 

「なるほど……その鍛冶屋は腕が相当いいらしい、少し触れただけでも危ないな……」

 

 この人は違いがわかる男のようだ。

 

「それで……俺はこれからどうすれば?」

 

「挨拶終わったし……遊びに行こう!!」

 

「いいよ、どこに行く?」

 

 もう決まっているようだ……笑っている。嫌な予感がしないこともないが……

 

「決まってる、遊園地行こうよ!!」

 

「わかった。じゃあ、お義父さん……しばらく娘さんを預かりますね」

 

「娘をよろしくお願いしますっ!!」

 

 一瞬ですごく信頼された、やっぱり信用って大事だな……そう思いながら、俺は遊園地に向かおうとした……が。

 

「先行っててくれないかな、着替えてくる!」

 

「あぁ、わかった……待ち合わせだな」

 

「また後でね!」

 

 そして……遊園地についてしばらくした後。

 

「お待たせ!」

 

「今来たところだ……かわいい服になったな」

 

「デートなんだし、可愛いの選ばないとね!」

 

 いい意味でココらしくない、女の子っぽい服だ。

 

「さて……遊園地なんて、来るのは生まれて初めてだな」

 

「普通は、一回くらい来たことあるはずなんだけどね……そんな初心者は、私がガイドしてあげちゃうよ! ゴーゴー!!」

 

「じゃあ頼むぜ、ガイドさん」

 

 そう言って、俺はココに着いて行った……ある時はジェットコースターに乗り……

 

「いやっほー!!」

 

「凄まじいスピードだな……」

 

「守男も叫んでよ!!」

 

 フリーフォールをしてみたり……

 

「うわぁー、浮いてる!」

 

「こういうのもあるんだな……」

 

「楽しさより物珍しさが勝ってるのか……ならば!!」

 

 次は、怖いと有名のお化け屋敷だが……

 

「ワシの首はどこじゃあぁ~……お前の首を寄越せぇッ!!」

 

「すごい演技だな……大迫力だ……ん?」

 

「きゃー、怖いー!」

 

 ……わざとか。押し付けてきてやがる……さてはこれが狙いだったな、ココ?

 

「うぉぉぉっ!!」

 

「守男、怖いよぉ~」

 

「……先に進むか」

 

 お化け自体は大丈夫だったが、ココの胸のお陰で気が気でなかった。

 

「……本当に全然怖くなかったの?」

 

「うん。何なら本物に出くわしたこともある。戦争の時に……」

 

「思い出さなくてよろしい……あ、ホットドッグ売ってる!」

 

 俺がそれを買ってやると、ココは嬉しそうに頬張っている……

 

「美味しい……!」

 

「……遊園地の食べ物って、こういう感じなんだな」

 

「そうだよ? 楽しいことが他にもいっぱいあるんだ……」

 

 たくさんの奇跡が重なって、俺はここに感情も欲求も持って生きてる。普通なら、絶対有り得ないはずなんだけどな……

 

「そうか……遊園地ってこういうところなんだな」

 

「……さぁ、行くよ! まだまだ、楽しいことが沢山あるんだから!!」

 

「わかった。行こうか」

 

 今は大人しく、ココに着いて行こう。その方がきっと楽しい……今は大人しく、楽しい時間を過ごすとしよう。その方がココも、俺も幸せなはずだ……その後、俺達は日が暮れるまでたっぷり遊んだ。最後に……観覧車に乗った、ココ曰く最後のアトラクションの定番らしいが……

 

「高い……飛行機に乗ってるみたいだ」

 

「守男は楽しかった? 私は楽しかったよ」

 

「……ありがとう。新しい楽しみを教えてくれて……お陰で、また知識が増えたよ」

 

 そう言って、俺が笑うと……ココも優しく笑った。いつもかなた達とふざけている時に見せる笑顔じゃない……今のココは、ただの女の子だ。

 

「……ねぇ、守男。この観覧車の伝説、知らないでしょ? 教えてあげる……頂上ピッタリのところである事をすると、幸せになれるんだって。さぁ、問題です……何をするでしょうか?」

 

「ん? えっと……山に向かって叫ぶ、とか?」

 

「それは山の頂上でやることでしょ? 正解はね……」

 

 頂上に達した瞬間。俺はキスをされた。そういうことか……

 

「……っは、正解はキスでした」

 

「なるほどな、ロマンチックでいいじゃんか……ココ? どうした?」

 

「……もう二度と守男が戦争に行かずに済みますように。友達が誰一人欠けませんように……」

 

 ココにしては、信じられないほどナイーブな顔だ。そうか……だから、『幸せに』なれるようにって……でも。

 

「……ココが俺よりも、世界中の誰よりも……とびっきり幸せになりますように」

 

「……!」

 

「俺だって、ココに幸せになって欲しい。心配性はお互い様だぜ」

 

 そう言うと……ココは、俯いてしまった。

 

「……守男」

 

「なんだ? ……うぉ!?」

 

「お願い……死なないで。もういいの……頑張りすぎだよ、有給取ろう……戦争のこと、忘れよう? 私は……私は……!」

 

 ココは俺に抱きついている……上げられた顔は泣いていた。今までずっと、我慢していたのか? ダムが決壊したかのように、涙が溢れている。

 

「……」

 

「演技して、戦争して、私達の代わりにたくさん血を被って、それを隠してまた戦争して……もう、いいじゃない……! ぐすっ……無理して笑って、苦しくても顔には出さない……もう戦争は終わったんだから、普通に暮らそう? 寝て、起きて、美味しいご飯を食べて……人権を奪ってた奴は、守男が自分で片付けたでしょ? だったら、もういいじゃん……溜まった分の報酬、貰おうよ……私と一緒に……!」

 

「……ありがとう。優しいなぁ、相変わらず……みんなして、俺の心配ばかり……自分達が襲われるとか、巻き込まれるとかのことを考えてない。優しすぎる……悪いやつに騙されちまうよ」

 

 抱き返すことはしない。今は……このままでいたいから。

 

「うぅ……守男が心配かけるようなことばっかりするからでしょ? バカ……」

 

「……この分だと、平和なうちは俺も平和でいられそうだ。みんながいるからな……」

 

「そうじゃなきゃ、私のやったことの意味ないし……これ、みんなで考えた計画なんだよ? 守男の戦争をなんとか終わらせよう、って……まだ殺し合いが抜けてないからって」

 

 俺が平和になれてなかった理由、わかった気がする。戦争は感情を消し、頭が狂う寸前まで行く……個人にとっては不都合極まりないものだ。でも、ドラマとかで……戦争から戻ってきたあとに優しくあれるのは、きっと『迎えてくれる人がいるから』なんだろう。迎えてくれる人が誰もいなかった人は……きっと、ロクな精神状態じゃない。俺もその一人だった……そこに攻撃を加えられたから、俺はこんな性格なんだな。

 

「手間をかけたな……ごめん」

 

「武器を下ろして、兵器を卒業しよう? 人間に戻ろう? 血がついてるなら拭こう、拭けないなら拭いてあげる……取れないなら洗濯機に入れて、アイロンかけよう?」

 

「……そうだな、軍人はしばらくお休みするか。俺は堀川伍長である前に、人間だったもんな」

 

 俺は人間だった。人間だったから、あの時も魔王と戦ったんだ……魔王にあんなことは言ったが、俺は自分を人間じゃなくて『兵器』として扱っていた。これじゃ、魔王にどやされるな。自分を人間だと言ってただろう、って……

 

「守男は人間だよ……署長が言ってたでしょ? 人間には悪意を制御する義務があるって……それは義務だけど、義務を果たせば権利はセットでついてくるんだよ? 人間として生きる権利、優しくされる権利……幸せになる権利もね」

 

「義務と権利はセット……ド正論をぶつけられると、反論のしようがないな。幸せになる権利か……俺は今のままで十分幸せだ、なんて思ってたんだが」

 

「ダメ。戦争してる状態のことを幸せとは言わないよ……言っても分からないみたいだから、強硬手段を使ったんだ。恨まないでね?」

 

 銃はしまおう……兵器も取って、しまっておこう。必要になるのは、きっと当分先だ。そうでないとしても、今はそう思っていたい……俺が、夢を見る日が来るなんてな。

 

「恨まないさ、最高だぜ……みんな、ありがとう。そしてココ……最高の一日をありがとうな。お前のおかげだ……迷惑かけたし、心配もかけた。もう大丈夫、心配ない……俺は人間だから、戦うとしても人間として戦える……まぁ、こんなこと言っても……すぐに戻れるわけじゃないし、記憶は消えやしないけどな」

 

「それでもいいよ……ゆっくり戻ろう、焦らないで……歩き出してくれたら、それでいいの。消さなくてもいい、それがファイルの奥底に沈むくらい幸せになろう……有給を使って、ね!」

 

「……じゃあ、これは知ってるか? ココ?」

 

 抱きしめられたまま、ココに呼びかける。今だ泣き止まないココ……でも。

 

「んっ……!?」

 

「……っは。ここでキスをすると……悲しい気持ちが全部ぶっ飛ぶ。今、ココの悲しい気持ちがぶっ飛んだから……それが証明だ。これで伝説がひとつ増えたな!」

 

「うぇ、あ……」

 

 ココには珍しく、顔を真っ赤にしてフリーズしている……でも、泣き止んだ。悲しい気持ちはぶっ飛んだらしい……嘘にはならなかったな。

 

「終了です……楽しかったですか?」

 

「はい、すごく……ココ、行くぞ? ……ココ?」

 

「ふぁ……えぁ……」

 

 固まって動かんな……よし、お返しだ。

 

「飯食いに行くぞ、ココ! 早速、権利を行使させてもらうとしよう!!」

 

「うぇぇっ、ちょ、ちょっとタンマ……!」

 

「さっきのお返しだぜ? あ、係員さん! 降りるちょっと前辺りでキスをすると、悲しい気持ちが全部ぶっ飛びます! 証明できたんで、追加しといてください! では!!」

 

 待ってくれる人は、いなかった……今できた。戦いから帰ってきたら、俺の心配をして……血を拭いて、叱って、泣いて……笑ってくれる人達がいる。素晴らしいことだ……これも人間の権利、だよな?

 

「……破天荒な人だったな……乗る前と随分違うような? とりあえず書いとこう……」

 

「今度はみんなで来ようぜ、ココ! この楽しさは、二人占めするには勿体ない!!」

 

「……うん!」

 

 そうだ……俺は戦争から帰ってこれる。完全に帰るまでには、もうちょい時間がかかるけど。きっと、それは……素敵な旅になることだろう。ちなみにこの観覧車が、二つの伝説を持つ観覧車になり……大盛況となるのは、また違うお話。

 

「どこがいい? 牛丼?」

 

「騎士団長の先輩じゃないんだからさ! ここは手堅く……ラーメン屋でしょ!!」

 

「よし、決まりだ! 行くぞ!!」

 

 みんなで旅をしよう、戦争から戻ってくるまで。武器は捨てて……ゆっくり歩こう。急ぐことはない、有給は……平和はたっぷりあるのだから。

 

 

 

「うまぁーい!!」

 

「……!」

 

「どうしたの? 美味しくなかった?」

 

 そうじゃない……驚いたんだ。味がしっかりとする。匂いも、ぼんやりしていたのがハッキリしてきた。精神状態って、こんなに影響するものなんだな。

 

「いや……凄まじく美味いもんでついな。こんなに美味いものは……生まれて初めてだ!!」

 

「そ、そこまで言って貰えるなんて……」

 

「大袈裟だなぁ……」

 

 大袈裟じゃないさ……こんなに美味しいのは、本当に生まれて初めてなんだ。だから、反応がオーバーでも許してくれ。美味いって楽しい。塩気、旨み、甘み、匂い。全部が新鮮だ……血生臭くもオイル臭くもない、冷めきった食べ残しでもない。美味しいご飯だ……演技してた頃でさえ、こんなにハッキリ味はしなかった。

 

「ごちそうさま、お代はここに置いときます!」

 

「ありがとうございました!」

 

「食べるの早いなぁ……」

 

 口の中に残った味を噛み締め続ける。平和な世界は、思っていたより明るいらしい。

 

「守男早いよぉ……」

 

「悪い、悪い……帰らないと心配されるよな? 送っていくよ」

 

「……やだ」

 

 どういうことだ? そう思うと……ココは顔を赤くしながら、笑った。

 

「帰りたくない」

 

「それって……いや、お義父さんの性格考えるとまず……」

 

「もしもし父さん? 今日守男のとこ泊まるからね! もう着替えもバッグに入れてあるから! あ、OK? ありがとう、じゃあね!!」

 

 ……外堀が埋まってしまった。これは……確実に。

 

「……謀ったなココォ!!」

 

「さぁ~て、何のことやら?」

 

「おのれ、この!!」

 

 ココは逃げようとしたが……軍人、舐めんな。

 

「遅い遅……えっ、早い……!」

 

「軍人はお休みしてるけどよ、技能は裏切らないぜ?」

 

「チクショー! 離せぇー!」

 

 離したら大変なことになるのが目に見えてるので、離しません。

 

「連行~」

 

「うぎゃー! 恨むぞぉー!!」

 

「なははは、無駄だ! 恨みだけはたくさん買ってるからな、1つ増えても何も変わらんぞ!!」

 

 無敵だ、勝ったな。

 

「なんてこった……私の恨みが効かないなんて、ガックシ」

 

「完全勝利……!」

 

「悔しい~!!」

 

 地団駄を踏むココを、俺は家に連行するのであった。

 

 

 

「はい、収監」

 

「くっそ~……覚えてろぉ!」

 

「どこからでもかかってくるがいい……」

 

 そんなことを言いながら、剣は置いてリラックス。あの剣だけは捨てない、ルカヌスさんの気持ちが籠ってるから……

 

「お湯入れて、風呂入ってくるから!」

 

「おう、いいぞ。言っとくが、ソープの趣味はないからな」

 

「それは本音なんだ……わかったよ」

 

 風呂に入っていったココ……この家もある意味負の遺産なわけだが……まぁ、何だかんだ住みやすいし、利用させてもらおう。憎い相手に利用される気分はどうだ? ルサンチマン?

 

「……いいお湯だったなぁ~」

 

「……バスタオル一枚ってお前、服着ろよ……」

 

「えぇ~なんで? 着なくても、興奮しないはずでしょ?」

 

 ……分かってて言ってるのか? 食欲と味覚と嗅覚が戻って……性欲も戻ったらしい。

 

「……するんだよ。これも生まれて初めてだな」

 

「へぇ~? そうなんだぁ~……この体見て興奮しちゃってるんだな? 具体的にどの辺? ねぇねぇ……」

 

「……いい加減にしなさい!」

 

 ちょっとイラッときた。勢いに任せて押し倒す……そのまま、胸を揉みしだいた。

 

「んっ……あ……こ、こんなところで……ダメだよ」

 

「からかっといて何言ってんだよ」

 

「……背中痛いから、布団の上でしよ?」

 

 しおらしくなっている……煽った責任は取ってもらおうか、もう性欲のない俺じゃないぞ。

 

「性欲戻したのはココなんだ、感謝してるが……覚悟はしてるよな?」

 

「……まぁ、ね……」

 

「バッグは持ってある、逃げ場はないぜ? 風呂入ってくるから、ここで待ってな」

 

 優しくベッドに寝かして、風呂と歯磨きを速攻で済ませる。トワの時は演技全開だったが……本音で、やる。

 

「……優しくしてね」

 

「わかってるさ」

 

「んっ、う……」

 

 ひとつキスをして、バスタオルのはだけた胸を揉む……わかってたけど大きいな。

 

「んはっ……んっ、ふぅ……あ……」

 

「綺麗だし大きい、柔らかい……」

 

「んっ、言うなぁ……この際、あっ、巨乳派にして、ふぁ、痛い目、はぁっ……見せて、やる」

 

 かなたのことを言ってるのか? なら……先端を摘んでやった。

 

「俺はどっちも派だよ、残念だったなぁ!」

 

「んひゃぁ!? だめ、そこだめ……ああっ、んぅぅ……んんっあ、ふぁぁ……ひぃっう!」

 

「デカくてもここは気持ちいいんだなぁ」

 

 そんなことを言ってみる。前の俺なら絶対言ってないな。

 

「いいに、んんっ、決まってんだろ……あ、すりすりするのだめ! あっ、あぁぁっ……だめっ、みないで……! んぁぁ、はぁうっ……!」

 

「……ココ、可愛いよ」

 

「ふぇあっ!?」

 

 耳元で囁くと、喘ぎ声と悲鳴が混ざって変な声を上げた。手をどかすと、蕩けきった顔が見えた。そこで、優しく先端を擦ってやる。

 

「んひっ……あぁぁぁぁぁっ!!」

 

「……今、最高に可愛い顔してる。気持ちよかったんだ」

 

「ば、か……はずか、し……ふっ、ん……」

 

 余韻で快感を覚えているらしい。普通余韻に浸り終わるのを待つところ、なのだろうが……溜まった性欲はこんなもんじゃないらしい。付き合ってもらおう……

 

「あっ、う……んんぅっ!? だめ、あぁぁぁっ、今しちゃだめぇっ!!」

 

「流石に甘い味がしたりはしないか……」

 

「んあっあ、まだ、ひあっん、あか、ちゃん……あっあっ、できて……ない、もん……ふぁぁ!!」

 

 胸を口に咥えて、舐めて吸って……片方も弄る。そうだよな、まぁ……

 

「その声だけでお腹いっぱいだ!」

 

「んはぁぁぁ、いわ、ないで……ふあぁぁあっ! きもちぃ、よぉ……ひぁぁっ、ああっあっあ!!」

 

「……下着履いてなくてよかったな」

 

 意志とは関係なく、蜜を垂れ流す秘部……そこに指を入れて出し入れ、無論胸にキスをするのは忘れずに。

 

「あ゙あぁぁっ!! それ、んぁぁぁぁ、ほんと、に……あはっ、だ、めぇ……! ひゃあぁぁんっ!!」

 

「腰動いてるよ? ダメならやめるけど……」

 

「あぁぁぁ、ひゃめ、ひぁぁぁ、ないれぇ……イかせて……でもイったら、んぁっ! おかしくなりそう、なのぉ……ふぁぁぁん!!」

 

 おかしくなって笑うココか……絶対かわいいな! そう思って、動きを速くした。すると俺に抱きついて、強すぎる快楽に耐えるように顔を押し付けてくる。

 

「そんなココも大好きだ、おかしくなるくらい気持ちよくなっちゃえよ!!」

 

「あっあ゙っあ゙っ、あ゙あぁぁぁっ!! つよいの、ひぃぃっあ、くるっ……んはぁぁぁぁ、だめだめだめ!! ふぁぁぁぁぁ……あ゙っ……! んっ、あ゙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「すっごく気持ちいいって顔してる……涎垂れてるよ?」

 

 これまでにない程、ココが深く絶頂した……気持ちよすぎて文句も言えないのか、とても荒い息を吐きながら抱きしめてくる。こっそり先端を弄ると、顔を逸らしてイきそうな顔をするのがたまらない。相当敏感になっているようだ……あ、今一回イったな。

 

「あ゙……っ、あ……んっ、あはっ……んっ、ひぃぃ、あ゙……!」

 

「今、またイったでしょ? もっと顔見せて」

 

「……だ、め……ほんと、に……もどれなく、なる……あ゙っ」

 

 敏感な胸を弄って何度もイかせていると、手を止めようとしてきた。その手は弱々しく、イく度に掴もうとする手が止まる。本気じゃないのが丸わかりだ……

 

「……こうされるのと口でするの、どっちが好き?」

 

「……どっちも……だいすき……だいすきすぎて、きもちいいことしか、かんがえ、られなく……あ゙ぁぁぁぁ」

 

「へぇ、良いことじゃん」

 

 股に手を伸ばす……わざと表面をなぞるだけ。

それだけでもイっているようだが……

 

「……きもちぃ、きもちぃっ……すき、なのっ、もりお……だいすき、だからっ……もりおので、いっぱい……きもちぃの、ちょうだい……?」

 

「……なんか人格変わってないか?」

 

「だっ、て……もりおが、するのやめない、から……あ゙、あ゙っあ゙」

 

 幼児退行してるような気がする……本当に大丈夫か? これで帰ったら、お義父さん卒倒しないかな?

 

「……じゃあ、いくぞ?」

 

「まっ、て……もりおは、きもちよくなってない……!」

 

「ぬぅ……!? 何をする気だ!?」

 

 逆に押し倒された、尻尾でホールドされて抜け出せない。

 

「わぁ……せいよくが、あるんだ……うれしいな……」

 

「……もしかしてこれ、素直になってるのか?」

 

「おとこのこ、って……こういうのすき、だよね?」

 

 胸でモノを挟み込んだ……俺のが埋まるには、十分な大きさだ。

 

「お、おいまさか……」

 

「ねっ、もりお……きもちぃ?」

 

「うっ、く……!」

 

 気持ちいい。凄まじい快感だ……あったかい。

 

「……きもちよくない?」

 

「いいに、決まってんだろ……?」

 

「ほんと……えんぎじゃない? ほんとにほんと!?」

 

 泣きながら聞いてくる……本当に本当だ、こんな日が来るなんてな。

 

「ほんとにほんと、だよ……?」

 

「うれしい……みんな、やったよぉ……!!」

 

「……」

 

 みんな、俺の事をずっと心配して……お人好しだな、ホント。

 

「もりお、もっと……もっときもちよく、なって!」

 

「ぐぅ、っ……激しい……」

 

「でそう? このままだして!」

 

 ぬ、抜かないとまずい! かかるぞ、確実に!!

 

「やばいって、ココ……ぐぅぅ!!」

 

「ほら……おねがい!」

 

「うっ、あ……やべっ……! がっ!!」

 

 抵抗できずに出してしまった。ほら、言わんこっちゃない……べとべとだ。

 

「あったかいよぉ……」

 

「ばっちいから拭けよ、ココ……っておい! 舐めるな! 病気になるぞ!?」

 

「ん~……あじしない。にがいっていってたのに、うそつき……」

 

 そういう問題じゃない、ばっちいって!!

 

「ぺーしなさい、ぺー!」

 

「やだ……!」

 

「の、飲みおった……俺はどうなっても知らんぞ?」

 

 してやったり、みたいな顔をしている……こういうところは変わらないんだな。

 

「じゃあ、ほんばん……しよっか」

 

「元々その予定だったんだよ……よし、つけた。これでよし……」

 

「はやくして……!」

 

 めっちゃ動いてる、ハッキリ言ってグロいまであるが……俺の顔の方がどう考えてもグロいので、文句は言わない。

 

「処女貰うぜ……!」

 

「う、んっ……! あっ……ぐ……っあ!!」

 

「……入ったな。痛いか? 痛いよな?」

 

 気休めになればと、頭を撫でる。痛みに歪んで涙を流すココ……血も出てるし。結構キツいぞ、緩いって言ってたのに……もしかしてドラゴンだから?

 

「ふぅっ……いいよ……いたいの、なくなった」

 

「そうか……じゃあ、行くぞ?」

 

「ん、あっ、あっ、あ゙……」

 

 もう4回はイった、痛みもドーパミンとエンドルフィンで大分和らいだだろう。

 

「……痛みはどうだ?」

 

「ないよっ、んぁぁ……もっと、して……」

 

「じゃあお言葉に甘えて……!」

 

 動きを激しくする……水音が鳴り、ココの顔も快楽に歪む。俺の顔もだ……俺の顔は、痛みや憎しみに歪んだこと以外はなかったんだが。

 

「あ゙っ、んあ゙っあ゙っ、また、つよいのが……ふぅぅあ゙っ、くる……ひとりじゃ、やだ……もりおは?」

 

「俺も……ヤバい……!」

 

「そうなの? じゃあ、いっしょにいって!!」

 

 心底嬉しそうに言うココ……相当嬉しいんだな、俺が人間らしくなったことが。ホントに、お人好しが過ぎるぜ。

 

「あぁ……!」

 

「ふぁぁぁっあ゙、だいすき、すきっすきっ!! あ゙っあ゙っあ゙っ……!!」

 

「俺も好きだぜ、ココ……!」

 

 そう言って……俺は、ココとコンマ1秒の差もなく。

 

「んぅっあ゙ぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ぐぅ、ぎぃっ……!!」

 

「……さいっ、こう……」

 

 そう言って……ココは眠ってしまった。俺も、猛烈に眠い。すぐに引っこ抜いて、避妊具を捨てる。こんなことで寝てたら戦場じゃ、生き残れないけど……戦争はしてない、寝たっていいよな……?

 

「……おやすみ、ココ……」

 

「すぅ、すぅ……えっへへへ……」

 

「……ははっ」

 

 そうして俺は、眠りについた。

 

 

 

「……ここは?」

 

 真っ暗な場所だ。ここは一体……

 

「……ここは地獄だよ、クソ野郎。ようやく引きずり込めた」

 

「ジャスティー!? ってことは……」

 

「久しぶりだな……今度こそは許さん!!」

 

 エミリシア……他の奴らもどんどん出てくる。ルサンチマン夫妻もいる……!

 

「俺を殺しておいて……罪悪感もなく、もう一回殺しやがってえッ!! 許さねぇ!!」

 

「困るんだよなぁ、弱者の敵が生きてるってのはよォ!!」

 

「正義の裁きを受けてもらうわ!!」

 

 囲まれてる……手元にあるのはマシンガンに、手榴弾に剣に……兵器はたくさんある。絶望的な状況。だけど、負けられないんだ……通すわけにはいかない。たとえ何度蘇ったとしても。

 

「お前らをもう一度殺す……!!」

 

「愚か者め、自分の無力さを思い知れッ!!」

 

「うがぁぁぁぁ!!」

 

 どんどん斬り倒す。無意識の内に、敵が死んでいく。一般兵士も出てきたから、そいつも勿論斬った。

 

「ゔお゙らぁぁぁぁぁ!!」

 

「がっ、は……!!」

 

「ぐぅっ、ふぅ……ふぅ……」

 

 腕は両方壊れかけ、足も同様だが……勝った、これでみんなは平和でいられ……

 

「なんてな? 残念でしたァ……」

 

「なっ……なぜ!? 確かにバラバラにしたはずだ!!」

 

「ここは地獄だ、って言ったろ? 死んでるのにもう一遍死ねるかよ。お前を道連れにするまで俺達は死なん。お前はここで朽ち果てるんだ!」

 

 ジャスティーやルサンチマンが、嗤っている。まだだ、武器はあるんだ……戦争は終わってない。

 

「諦めの悪い悪人だな……わかってたことだが」

 

「じゃあ、たっぷり……じっくり痛めつけてから殺してやるとするか、弱者の特権だ!!」

 

「かかって、こいよ……」

 

 10回、100回、1万回……何度倒しただろう、100万からは数えられてない。吐血は止まらず、立っているのでやっとだ……なのにあっちは疲れてる様子がない。くそったれ。

 

「これで562億1872万3261回目だ……いい加減にしろ、お前の相手面倒くさいんだよ」

 

「お褒めの言葉、どうも……」

 

「死に損ないめが……いつもそうだ、貴様は私達が死んでいても、のうのうと生きる! 悪魔め、狂っているとは思わんのか!?」

 

 数が増えている、それでも俺は笑ってみせてやるんだ。

 

「……その顔をやめろ、頭が怒りで沸騰する!! 弱者で優しい私を、ここまで怒らせられるのは貴様だけだぞ!!」

 

「いい加減に肉塊になりなさいよ、今の貴様は肉塊以下よ。肉塊にグレードアップさせてあげようと言うのだから、優しさに媚び泣いて欲しいわね」

 

「何言っても無駄だぜ、姉さん。こいつは戦犯だからな。私情を持ち込む最低の男だぜ」

 

 声も聞こえなくなってきた。前も、見えない。だけど……俺はそれでも戦う。俺は軍人だから。戦争は終わらない……!

 

「そうですね、この男ほど最低な男を私は知りません」

 

「正義の味方殺した時点で、マトモなわけねぇだろうよ!! こいつは悪、俺達は正義! それが真理だァ!!」

 

 ……正義だろうが悪だろうが、俺は戦うだけ。戦争をして……みんなを守る。

 

「これで終わりにしてやる……死にさらせ、ゴミクズ!!」

 

「自分でどうにかできないなら、助けを呼んでみりゃいいさ!! 誰を呼ぶ? かなたか? トワ? ルーナ? わため? ココ? ラプラス? こより? いろは? ……だぁ~れもここにはいないぜ、お前のことを愛しちゃいねぇからな!!」

 

「……」

 

 みんなは俺を愛してない。それが真理、現実だ……

 

 本当に?

 

 違う、きっと俺を愛してくれている。どんな時だって、みんなは俺を気にしてくれた。俺がみんなを気にするのと同じように。俺が傷ついたら、悲しんで怒って、泣いて……まるで、愛されてるみたいだろ。そうさ、愛されてるんだ。優しさを貰ってる、愛が何倍にもなって返ってきてる。お人好しで、女の子とは思えない程に強いみんな……

 

「……ち、がう……!」

 

「……は? 何言ってんだテメェ」

 

「みんなを、侮辱、する、な……」

 

 俺はみんなに謝らなきゃいけない……俺はみんなを疑ってた。お人好しさを否定してたんだ。侮辱してしまっていた……一生かかっても、償いきれないだろう。だけど、これ以上罪を重ねるのはやめだ……信じる。みんなのお人好しさを!!

 

「急に何を言うかと思えば、ついにトチ狂ったか? 馬鹿らしい……」

 

「強者の最後なんてそんなもんさ、弱者は勝つんだよ! 弱きを助け強きを挫く、強い物は挫かれる運命なのさ!!」

 

「ここまで来ると哀れね……楽に殺してあげようかしら。あぁ、私ってなんて優しいのかしら! 地獄行きはやっぱり間違いなのよ!!」

 

 ……呼ばなくてもいい、その代わりに俺は……全ての力を使って叫んだ。

 

「俺は愛されてる!! みんなは度を超えたお人好しだ!! 貴様ら如きにわかってたまるかッ、ルサンチマン!! ジャスティー!! エミリシアに浦下!! 来るなって言っても……来ないわけがない!!」

 

「あー、うるせぇ……耳がキンキンする。死ね、出来損ない」

 

「お前も地獄に落ちるんだなァ! グヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

 ……ここにないはずの気配がする。来た……!!

 

「ん、なんだ?」

 

「ようやく気づいてくれたな……遅いぞ?」

 

「……ごめん、な」

 

 バリィィィィン!!

 

 ガラスが割れるような、大きな音がした。それと一緒に、攻撃が飛んできて……ジャスティー達を吹き飛ばした。

 

「がっ、は……誰だ!? どこのどいつだ!? 弱者に手を出すのは!?」

 

「そうよ、ジェンダー平等を知らないの!?」

 

「おのれェェェェ……許さんぞぉぉーッ!!」

 

 怒り狂う奴ら……見慣れた影が8つ。その中の一人が消えて……ジャスティーの後ろに立った。流れるような綺麗な金髪。よく手入れされた刀、澄んだ翡翠色の瞳……風真流、八代目。

 

「は……?」

 

「風真流、疾風断破」

 

「……嘘だ……こんな……小娘に……この、俺が……」

 

 バラバラになって、消えてしまった。復活はしない。

 

「ふ、復活できんだと!? 何故だ!? ここは地獄ではなかったのか!?」

 

「地獄に行くのはアンタ達だけで十分だよ」

 

「がっ……きさ、ま……」

 

 紫色の髪に、特徴的な悪魔の尻尾と角。銃がエミリシアを正確に撃ち抜いた。俺には一発も当たってない。

 

「くっ……おい! お前ら、戦え!! あいつらは悪だぞ!! ……どこ行った!?」

 

「ルーナイト! 一斉攻撃! なのらっ!!」

 

「なっ……ぎぃやぁぁぁぁーっ!!」

 

 ピンク色の鎧を着た騎士達が、浦下を切り裂いた後に魔法で消し飛ばした。鎧の色をした髪に、不思議なドレス。玩具のような杖と……ワケありのオッドアイ。

 

「ちっ……! そうだ、お前さえ死ねば!! ブレイブ……!」

 

「わたほうしっ!!」

 

「ぐぁ!? う、動けん……!!」

 

 暖かそうな毛皮に、特徴的にカールした角。クリーム色の髪が靡く……

 

「ずぁりゃー!!」

 

「ぐぅおぁ!? こいつ……前より強くなっているのか!?」

 

「ボクらだって成長するんだよ!!」

 

 頭の上についた天使の輪っか、小さいが存在感のある天使の羽……その銀髪が綺麗に輝く。

 

「リベンジマッチだぜ……! クロスファイア! ブレスッ!!」

 

「ま、待っ……うぎゃあぁぁぁぁッ!!」

 

「そ、そんな……!」

 

 強烈な炎を吐く巨大な龍……虹色のペンダントに、浮いてる角。力強い尻尾が目立つ……オレンジの髪をした女の子。

 

「くそ……私は逃げるからな!!」

 

「逃がす、か……!」

 

「甘い!! ランド……!」

 

 まずい、反撃を食らう……そう思っていると、突然動きが止まった。

 

「ブレー……なっ、動けん……!? まさか!?」

 

「こよ特性マヒ薬……効果抜群だね!」

 

「お、おのれぇぇぇっ!! 獣人如きがぁぁぁ!!」

 

 一際目立つ耳と尻尾、白衣を着ていることでピンク色の装飾がまた目立つ……ピンクの髪が、動きに合わせて揺れた。

 

「……トドメを刺すんだろ? 無茶ばっかりして、しょうがないやつだ……」

 

「……へ、へ……」

 

「……やるといい。吾輩が許す!」

 

 その低身長に似合わない大きな角と……紫色の十字形をしたものが連なった尻尾も生えている。その容姿に似合わぬ威厳と、優しさ……その銀髪と金色の瞳が、俺の背中を押してくれる。

 

「やめろ、よせ!! 尊属殺人だぞ!!」

 

「……今更何を言う。何億回殺したと思ってんだ……グレイトスラッシュ!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ……」

 

 叫びながら消えていく母親……終わったか。

 

「……気づくのが遅いよ、守男」

 

「ごめんな、みんな……疑ってて。俺はみんなを信じられてなかった。侮辱してたんだ……本当にごめん」

 

「……それは現実の吾輩達に言ってやってくれ。きっと同じ気持ちだろうから」

 

 そうだな……戦争は終わったんだ。縛られなくていい、たっぷり幸せになろう……

 

「教えてくれて……助けてくれて、ありがとう。みんな」

 

「当然でしょ? やっぱり一緒に戦いたいし、助け合いは大事だよ!」

 

「連携は戦いの基本だからな」

 

 そんなことを言っていると、目の前がぼやけてきた。

 

「……夢から覚めるみたいでござるな」

 

「そうか……じゃあ、バイバイ」

 

「また会おうね、あと現実でも……言ってあげて」

 

 そう言われて俺は……夢から覚めた。

 

「……っは。ココ……?」

 

「すぅ、すぅ……もり、お……」

 

「俺の夢なんか見て……可愛いヤツめ」

 

 そう言っていると、ココが起きた。

 

「ふわぁ……守男……?」

 

「おはよう、ココ?」

 

「……あっ、う……!!」

 

 顔がみるみる赤くなっていく……今日は学校あるから、急がないと。

 

「大丈夫?」

 

「だいじょばない……」

 

「……ごめんな」

 

 二つの意味をこめて、ごめんなさいだ。

 

「謝らなくても……途中から原因私だったし」

 

「……そうじゃなくてさ。俺は疑ってた、みんなの愛を……侮辱してたんだよ。本当に、ごめん」

 

「……えぇ!? あんだけ好きって言ってたのに、疑ってたわけ!? どうやったら疑えるの逆に!? 嘘でしょ!?」

 

 こうなることはわかっていた……

 

「一生かけても償いきれないよな……みんなにも言わないと」

 

「……言わなくていいよ。言ったら、罪の意識を感じちゃうかもしれないし。そうなったら本当に悪いことしちゃうよ?」

 

「……そうだな」

 

 じゃあ、どうしようか。

 

「……愛してるって言ってあげればいいと思う。それでチャラ……だって、愛が足りないなら足せばいいだけでしょ? たっぷり足してあげなよ」

 

「……ありがとう、ココ。お前はやっぱり若大将だよ……」

 

「だろ? だろ!? 私はすごいし強い……だから、昨日のことは忘れろ。私も忘れる!!」

 

 ……よっぽど恥ずかしかったんだな。そんなことを思いながら……俺はココと一緒に学校に行った。

 

 

 

「……来たよ、構えて!」

 

「はい、届け物」

 

「……っえ?」

 

 みんな拍子抜け、という顔をしている。

 

「どういうこと……? なんで止まったの?」

 

「一緒に行きたくてな」

 

「え、珍しっ……明日雪降る? 今まだ秋だけどさ」

 

 ……余計なことは言わないでいい。愛を足す、それだけでいいんだ。

 

「何にせよラッキーでござる!」

 

「……!」

 

「ぽこべぇも嬉しいでござるか? ふふふ……」

 

 ぽこべぇは人懐っこいので、俺によく抱っこを強請る。それに応じてやると、赤ちゃんのように喜ぶのだ。

 

「すっごく喜んでる……かわいい~」

 

「そうだね! ……ココ、どうだった? 結果の方は……」

 

「……」

 

 こっそり二重丸を作ったのは、見逃さない。何だかんだ、良かったらしい。

 

「そっか……!」

 

「次は誰になるんだ?」

 

「まだ決めてないんだよね……」

 

 みんなが作戦会議しているところに……俺は、一言。

 

「みんな……いつもありがとう。愛してくれて、どんな俺にも優しくしてくれて」

 

「な、なになに……急に改まって? 大事な話なら……」

 

「いや、そんなに大層なことじゃない。ありがとうってだけさ……愛してるよ、みんな。本当にな。演技じゃないぜ?」

 

 自分を忘れないで……そう言いたいのか、ぽこべぇが体を叩いてくる。

 

「ははは、ぽこべぇ……もちろん、お前もな」

 

「そ、そんなっ……急に言われると、照れちゃうでござる……」

 

「嬉しくて仕方ないんだけど……いつもなら言わないよね、どうかしたの?」

 

 そう聞かれて……俺は笑って返す。

 

「なんでもないさ……言いたくなっただけ。愛の補給さ、補給」

 

「え~、何それ!? ガソリンか何かなの!?」

 

「愛はあればある程いいだろ~?」

 

 そう言いながら、学校に向かう。戦争はしばらくお休みにして……楽しいことを沢山しよう。美味しいものを食べて、愛を与え合おう……

 

「じゃあ行こうか、守男! ほら、遅れちゃうよ?」

 

「だな……! よし、競争だ! 行くぞ!!」

 

「あー、全力で走らないでよー!!」

 

 それが平和な時の人間らしい、だろ?




イチャイチャは本格的に書くの初めてだったんですよね、ご満足いただけたでしょうか?
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