※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX 番外編   作:とも667

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 ホロメン視点は初挑戦です。


Story~ラプラス・ダークネス~

……吾輩は、ラプラス・ダークネス。ずっと、ずっと昔から……生きてきた。何千年も、何万年も、何億年も……寂しくて、涙が出ることもあった。物心ついた時にはお父さんもお母さんもいなくて、それからは力を使って、ずっと一人で生きてきた。何億年くらい生きた頃だっただろうか……ルイに出会って、二人になって……三人も加わって、すごく賑やかになった……おかげで、寂しくなくなったんだ。だけど、そんなある日……

 

「お買い物終わり! ナスもちゃんと買ったし、家に帰って食べるでござる!」

 

「今日の晩御飯も楽しみだな~!」

 

「そうだな……」

 

 この時間が、嬉しい。まだ100年も行ってないのに、これまでの何億年よりも楽しくて充実している……仲間がいるって、いいな。昔できた友達は……動物くらいで。動物は、すぐに死んでしまった。人間も100年くらいで、すぐに死んでしまう……吾輩をまた、一人にする。だけど、みんなは長命だ。ずっと一緒にいられるんだ……でも、もしも……

 

「……ん? 何でござるか……?」

 

「っ! 伏せろ!!」

 

「え……わっ!?」

 

 それが、無くなってしまったら……失うようなことがあったら。

 

「……爆発した? 今の魔法は……あいつが!?」

 

「ダークソルジャー……? やけに数が多いけど……」

 

「気をつけろ、こいつらは普通じゃない……強いぞ!」

 

 吾輩は、壊れてしまうかもしれない。

 

「ぽこべぇは離れてるでござる! 大丈夫、すぐ戻るでござるよ!!」

 

「……」

 

「心配しなくても……風真達は強いでござるよ!! 早く片付けて、ルイねぇのご飯を食べるのでござる!!」

 

 ぽこべぇ……さむらいの非常食、らしいが……実質ペットで、大切な旅のお供だ。だから、吾輩も……頭の上のカラスに呼びかける。

 

「……お前も逃げておけ。危ないぞ」

 

「……!」

 

「心配しなくても外れないよ。吾輩は死なん、総帥だからな」

 

 そう言うと……二人はどこかに逃げていった、これで思う存分戦えるな。

 

「さて、やってやるか……」

 

「時間はかけてられないでござる……」

 

「これくらい、こよ達三人で十分だよね!」

 

 モンスターの大群に三人で突っ込む……魔法を避けつつ、反撃の魔法を撃ち込んでやる。一体はそこまでじゃないな、簡単に消し飛ばせる。

 

「Uraaaa!!」

 

「……遅い」

 

「Gu……!?」

 

 そのくらい、対応できないとでも? 攻撃をバリアで防いで……風魔法でバラバラにした。二人もやってるな……

 

「どんどん喰らえー!!」

 

「Gwaa!?」

 

「まだまだぁ!!」

 

 爆弾を投げつけていくはかせ……それによってその場にいた化け物が、全て消し飛んでいく。相変わらずすごい威力だ……さむらいも負けちゃいない。

 

「……ふっ!!」

 

「……?」

 

「次でござるっ!!」

 

 化け物がバラバラにされたことにも気づかず死んでゆく……風のような速さ、これがさむらいの強さだ……いつも、すごく努力してるもんな? 三人で奴らを蹴散らして、街の中心に向かっていく。

 

「……大丈夫でござるか?」

 

「お、お姉さん……?」

 

「早く逃げるでござる、危ないでござるよ」

 

 さむらいが動けなくなっていた男の子を逃がしつつ、中心部に向かうと……

 

「……なんだ、貴様らは?」

 

「お前がこれの首謀者だな? 今すぐこれをやめろ」

 

「断る。これは崇高なる魔王様の平和の第一歩なのだよ、お前ら如きには理解できないだろうがな」

 

 こんなに犠牲を出しておいて……平和だと?

 

「罪のない人達を大量に巻き込んで……何が平和なんだよ! 酷すぎるよ!!」

 

「……魔王様を侮辱しおって。うるさい奴らだ」

 

「やめないなら……強硬手段でござる!!」

 

 さむらいが刀を構えた。吾輩とはかせも構える……

 

「身の程知らず共めが……思い知らせてやる! 魔王軍四天王が一角!! 『不退転の軍師』バルカが貴様らを殺す!!」

 

「やってみろ……やれるならな!!」

 

「行け、ダークソルジャー!!」

 

 大量に雑魚が向かってくる……あいつが操っているのか。なら……

 

「わざわざ相手することはないな!!」

 

「フン……」

 

「Gaa!?」

 

 あいつはダークソルジャーを出して、肉壁にした……そう来るか。

 

「近づかないとダメそうだな……さむらい、いけそうか?」

 

「やってみるでござる!!」

 

「こよがサポートするよ!」

 

 あれは気化する麻痺の薬……あれを吸わせる気か。

 

「チッ、厄介なものを……!?」

 

「風真流……落ち椿ッ!!」

 

「おのれ!!」

 

 またダークソルジャーか……幾ら数を増やしても無駄なのに。

 

「逃がさないよ!!」

 

「クソ……!」

 

「風真流、崩れ牡丹!!」

 

 奴はなんとか躱しているが……時間の問題だ。吾輩が肉壁を突破して、土魔法を叩き込んでやろうとした……その時。

 

「喰らえ……!!」

 

「……なんてな。詰めが甘い奴らだ」

 

「な……!?」

 

 気がつくと、ビルの上にいたダークソルジャーが魔法を撃ってきていた。回避が間に合わない、バリアを張らないと。

 

「っ……!!」

 

「それくらい予測してないとでも?」

 

「総帥、危ない!!」

 

 後ろから斬りかかってきていたが、いろはが庇ってくれた……そんな時。

 

「うっ……!?」

 

「はかせ!?」

 

「こよちゃん!?」

 

 魔法を食らった……まずい、囲まれてる。

 

「やめ……」

 

「やれ」

 

「あっ、ぐ……っ……」

 

 その場に倒れるはかせ……やられた。

 

「貴様……何をしたかわかっているのか」

 

「よくも風真の仲間を……!!」

 

「……安心しろ。すぐに起こしてやる……」

 

 怪我をしたはかせが、すぐに起き上がる。

 

「はかせ! 無理するな、逃げ……はかせ?」

 

「風真達はこっちでござるよ……?」

 

「私の力『魔界軍師』。私の倒した相手の体を操る……本人の意思とは関係なくな」

 

 恐ろしい真実。それじゃ、今のはかせは……

 

「……嘘だ!!」

 

「嘘かどうか、お前の最強の目で確かめるがいい! 行け!!」

 

「こ、こよちゃん……?」

 

 薬を調合して……投げてきた。攻撃してきたのだ。

 

「そ、んな……」

 

「嘘ではないと言っただろう……? さぁ、殺し合え!!」

 

「そんな……こよちゃん、起きて……!!」

 

 この動きは、本人の意思とは関係ない。その事実が重くのしかかる……薬が飛んできた。

 

「こっちもいるんだ、忘れるなよ?」

 

「くそ……はかせ!! 吾輩達は……友達だろ!?」

 

「……」

 

 呼びかけには返事がない……その代わりに、涙が流れる。ボタボタと滴り落ちていく……

 

「無駄だというのがわからんのか!? さっさとやられろ!!」

 

「こよちゃん!! そんなもの友情で打ち破るでござる!! 風真達は……世界一大切な友達同士、でしょ!?」

 

「この世界は現実だ! 正義はないし……平等に救いはない!! 犠牲のないものもない、戦争は終わらんし……それも全て人間のせいだ、汚らしい人間共のせいで……!! そんなものあってたまるか、奇跡などないわ!!」

 

 それを肯定するかのように、爆弾を投げるこより。泣き腫らして真っ赤になった目……もう、涙も枯れたのか……なぜ、守れなかった? 吾輩は、総帥なのに……!! 目の前が、思わず潤む。さむらいも同様に……

 

「……っ……」

 

「隙ありィ!!」

 

「しまっ……」

 

 さむらいですら、回避が間に合わない。さむらいの目の前で、激しい衝撃波と熱が全てを壊した。ボロボロのいろはが、吹っ飛んでいく。

あのままじゃ、いろはもこよりも……

 

「死んじゃう……っ!?」

 

「麻痺の薬か? 考え事なんかするから当たったんだ……マヌケめ」

 

「……」

 

 ダメだ。このままじゃ……いろはも起き上がってしまった。無論、敵として……泣いてる。でもそれも……枯れてなくなるんだ。

 

「……峰打ちで頼むぜ。こいつは強いからな、力を貰うとしよう」

 

「……っ、やめろ……やめてくれ……いろは!!」

 

「じゃあ、お前らの友情とやらで……人間の作った、薄っぺらなその概念で防げるかどうか……! 試してみろよ!!」

 

 ……いろはは、向かってきた。いつものように見えなくなって……何発も、打ち込まれる。

 

「あ、ぐ……」

 

「よし……」

 

「……ルイ……クロヱ……た、すけ、て……」

 

 意識を保てない……そのまま、意識を飛ばしてすぐに……意識が戻される。体が勝手に動く……涙が溢れて止まらない。

 

「……行け。学園を壊すんだ……無論、醜い人間の街もな!!」

 

 体が勝手に動いて、魔法を乱射する。いろはの大事な刀が、人斬りに使われて……こんなの、こんなのってないよ……

 

「ぐぁぁぁぁ!!」

 

「うぎゃあぁぁぁっ!!」

 

「実に気分がいいな、人間の悲鳴を聞くのは……この辺りは終わりだ、学園に向かって進軍するとしよう」

 

 もう、涙を流せない。お願いだ、誰でもいい。いろはとこよりだけでも、助けてやってくれ……助けるのが無理なら、せめて……楽にしてやってくれ。そして、吾輩も……そう思っているのに、体は破壊行為を続けた……そんな時。

 

「……フレイムタイフーン!!」

 

 なんの声だ? 男の声……ルイやクロヱじゃない。

 

「……何か出てきたな。行ってみるか」

 

 会話が聞こえてくる……

 

「……全く。使えない兵士共め……私の言う事も満足に聞けんのか?」

 

「……お前がこれをやったのか?」

 

「いかにも。我が名は【不退転の軍師】バルカ。世界最高の軍師にして、魔王様に大昔より仕える四天王の一角」

 

 どうやら、ダークソルジャーを倒しに来たらしい……

 

「それにしては若いな? 不老不死なのか?」

 

「よくわかったな? その通り、我ら四天王は魔王様の力を受け取り、不老不死の身となっている。そしてそうなった時にこそ、魔王様に永久に従う栄誉を得られるのだ」

 

「……まぁいい、なんでこんなことをしたのか教えてもらおうか」

 

 察しの良い奴だ、頭はいいみたいだな……

 

「可愛い圧だな……人間などこんなものか。人間にしては中々だ……それに免じて教えてやろう。この街には、魔王軍の障害となる者が大量にいるとの報告を受け、魔王様直々に私を向かわせたのだ! この街を完全に破壊せよ、とな!!」

 

「みんなの事か……悪いがその計画は失敗だ! なにを隠そう、その障害となる者達のバトルロワイヤル優勝者は俺だからな!!」

 

「……なるほど、噂には聞いていたが……貴様、人の身でありながら龍を殺した男か。こいつだけは絶対に殺せと言われていたな……むしろ好都合! 貴様を倒すことも目的だったのだ! この場で滅んでもらおうか!!」

 

 炎剣の龍殺し……? あいつか? 取材されてたやつ?

 

「俺は炎剣の龍殺し……堀川 守男! 勝負だ、魔王軍四天王バルカ!!」

 

「堀川守男……? 貴様が……堀川守男だと!?」

 

「なんだ? 俺はそっちでも有名なのか?」

 

 知っているような口ぶりだな……

 

「ク、ククク……クハハハハハ! こんなところで因縁の敵に会えるとはな! 魔王様がやけにお怒りだったのは……そういうことか! すまんが、なにがなんでも貴様を生かしておくわけにはいかなくなった……覚悟してもらおう!!」

 

「上等だ……俺を舐めるなよ!!」

 

「……普通にやっても勝てんことはわかっているさ。だから軍師らしく戦わせてもらう……」

 

 ……吾輩達が出されるのか。

 

「……どうするつもりだ!?」

 

「お前の前に、間抜けにも私に挑んできた馬鹿共がいてな。そいつらを利用させてもらおう……来い!」

 

「な、なに……!?」

 

 体が勝手に動いて、あいつの方に向かっていく……やっぱりあいつだ。頼む、殺してくれ……もう、無理だ。生きていたくない……

 

「な、三人……!?」

 

「こいつら、全員まとめてかかってきおってな……流石の私もまずいかと思ったが、攻撃途中に一人ダウンしてくれてな……そいつを洗脳して差し向けたら、あとは楽勝だったよ。友情だとかなんとかうるさかったが……もう一言も喋らん、今となっては最強の駒よ! クハハハハハ!!」

 

「……なんてこと、なんてことしやがる……!!」

 

 怒ってくれるなら……吾輩達のためを思うなら、殺してくれ。もう助からない……体中が激しく痛む、限界を超えて強化されているんだ……

 

「どうした? もう怖気づいたか?」

 

「許さん、絶対に許さん……ぶん殴ってやるぞ!!」

 

「それはこいつらを殺してみせてから言うのだな!! 行け、最強の駒達よ!!」

 

 それからあいつは……吾輩達を助けようとしているのか、攻撃しないように戦っていた。けどそれでも、助けることはできなかった……そして、ついには。

 

「……そろそろトドメを刺せ、貴様ら。最大の技でな!!」

 

「じ、地面が揺れて……!」

 

「よく頑張ったが終わりだ! さらば!!」

 

 こよりの爆弾を避けて……追撃のいろはの攻撃が迫る。それを攻撃で弾く時に、いろはにダメージが入った……そして、最後に吾輩。因果律に干渉して、災害を起こす最後の切り札……それを使わされた。街の中で……!! あいつは子供を庇って、それをもろに食らった。お人好しだな……どうにか生きているようだ。そう思った時、突然込み上げてきたものを……吾輩達は一斉に吐き出した。血だ……体がもう、持たない。

 

「……っ、か、は」

 

「っ、あぅ……」

 

「っ、ひゅー、ひゅー……」

 

 もう、あいつの顔すら見えない……

 

「……!!」

 

「……使えんな。恐らくこの後、仲間が来れば解除されて、お涙頂戴になるところなのだろうが」

 

「やめろォ!!」

 

 ダメだ、間に合わない。肉壁を突破できない……殺されるのか。三人全員で……同じ場所で倒れている。吾輩達の喉元に、剣が向けられた。終わりなのか……でも、死ぬなら……それもいいのか……この痛みからは……解放されるんだもんな……?

 

 ……やだ。

 

 嫌だ、死にたくない。枯れたはずの涙が溢れ出す。みんなでやりたいことが沢山あるのに。早く帰って、ルイのご飯食べたいのに……クロヱを風呂に入れなきゃなのに。こんなところで、死にたくないよ……やだよ、やだ……お願い、助けて……吾輩は、まだ生きてたいよ……無慈悲に剣が突き刺された。

 

「……何故だ?」

 

「……わかんねぇよ。でも、それで十分だ。人を助けられるようになれるのなんて……!!」

 

「ッ、早く殺れ!!」

 

 助かったのか……? あったかい……誰かに抱き抱えられてるような、そんな感じだ。強化魔法が消えた……洗脳も消えてる。指が自分の思い通りに動く……ってことは、いろはとこよりも……でも、どうして? あいつが助けてくれたのか? 自分の力でか……? 自分も、痛いだろうに……骨だって折れてるだろうに。あいつは……見ず知らずの、誰かのために。吾輩が気絶する前に響いてきた……最後の声は。

 

「だぁらららららぁッ!!」

 

「あぎゃらばっぽっばぁーッ!!」

 

「だぁらぁぁぁっ!!」

 

 奴の断末魔と、ガラスを突き破る音……殺ったんだ、あの状態で……そう思いながら。吾輩達は意識を飛ばした。そして、次起きた時は……三人と相部屋の病室だった。点滴がされている……

 

「……ここは……?」

 

「病院のようだぞ……」

 

「助かったので、ござるか……?」

 

 どうやら、幻聴じゃなかったらしい……やってくれたんだ。それと同時に、吾輩の心の中に溢れてきたのは……安心感でも、憎悪でもなく……

 

「……! こよは、なんてことを……!!」

 

「私も……あぁ、人を……あの人だって……!!」

 

「……ひぐっ、ぐすっ」

 

 罪悪感。それが、重くのしかかる……血塗れのあいつに、吾輩達が破壊したもの。殺した人……事情はどうあれ、やってしまったんだ。反省や謝罪で許されることじゃない。泣くことしか、できなかった……

 

「う、うっ、あ……うわぁぁぁぁぁん!! ごめんなさい、ごめんなさい……!!」

 

「うぇぇぇぇぇん!! わたしは、わたし、は……うぁぁはぁぁぁっ!!」

 

「なかないで、くれ、よ……全部、わがはいの、せきに、ん……うっ、うぁぁぁぁぁっ!!」

 

 泣いても、状況が変わるわけではない。罪の意識は消えないし……あの人だって、吾輩達のことを恨んでいるかもしれないんだ。それをわかっていても尚、泣き止めない。途中で看護師が何か言ってきたが、よく聞こえなかった……泣き声でかき消されてしまったから。しばらく泣いて、涙がまた枯れて……

 

「ひぐっ、私達は……どうしたらいいの?」

 

「こよにはわかんない……ぐすっ、あの人が生きてるかどうかも怪しいし……」

 

「……もし死んでたら……」

 

 吾輩達は命の恩人をぶち殺したことになる……そうなったら、二度と立ち直れないかもしれない。そんなことを思っていた時だった……ドアが開かれ、誰かが入ってきたのだ。最初は看護師だと思った……でも、吾輩達はすぐに自分の目を疑うことになった。何故なら、そこには……

 

「お邪魔しまぁす!!」

 

「誰……っっっ!?」

 

「あ、あぁぁ……」

 

 涙が枯れて出ない。その代わりに……罪悪感が再燃する……こいつに注目して気づいた。何かが足りない……大事なものが、足りない気がする。でも、そんな気づきも罪悪感に押し潰された。

 

「ご、ごめん、なさ……私は……うあぁぁ!!」

 

「……なんでそんなに責任を感じてるんですか?」

 

「だ、だって……だって!! その傷は私がつけたのでござるよ!? 大怪我したのだって私のせいでござる!!」

 

 ……なんでこいつ、こんなにケロッとしてるんだ? 恨みが強すぎて、逆に笑顔になってるのか? そう思いながら、話を続けて……責任の背負い合いで、いつまでも話がつかない。そんな時……あいつがとんでもないことを言い出した。

 

「……皆さん! 恨むなら、俺を恨んでください!!」

 

「な……!?」

 

「なんであなたに責任があることになるの!? こよの責任だって言ってるのに!!」

 

 あいつはそれを否定した……そして、続ける。

 

「そ、そんなわけ……!」

 

「だから、恨むなら俺を恨んでください。悪いのは俺です、俺の悪口はいくらでも言ってくれて構わない……殴ってくれたっていいです。だからもう、自分の責任だと思うのだけはやめてください!」

 

「……そんなことない!!」

 

 吾輩は必死で否定した。それだけは違う、否定しなくては……!

 

「ラプちゃん……?」

 

「お前が助けたから吾輩はここにいられるんだ!  あのままだったら、吾輩達はずっとあいつの奴隷だった!! 街だって、お前が来なかったらもっと酷い有様だったはずだ!! お前のおかげなのに……なんで責められなきゃならないんだ!!」

 

「総帥……」

 

 吾輩が必死にそう言うと、あいつは笑った。まるで、予定調和かのように……

 

「……そう言ってくれるんですね」

 

「そうだ、当然だろう!?」

 

「じゃあ、自分にもそれを適用していいんじゃないですか?」

 

「え……」

 

 まさか、それを吾輩達に気づかせるために? 今の一瞬でそこまで考えたのか?

 

「あなた達が戦ってくれたから俺は間に合った。あのままだったら俺は間に合わずに終わってた……街だって、もっと酷い有様だったでしょう。あなた達のおかげなのに……どうして自分を責めるんですか?」

 

「あ……!」

 

「……恨んでないの? たくさん大怪我したのに……治らない傷もついたのに」

 

 あいつは頭を横に振る……骨が折れていないかのように直立してるし、そこまでして吾輩達を励ましたかったのか?

 

「そんな馬鹿な……恨むことがどこにありますか? 俺は確かに怪我をした、でもその代わりに、街のみんなとあなた達の命と心が助かった! 破格の交換じゃないですか!!」

 

「ど、どうしてそこまで……風真達が女の子だからでござるか?」

 

「それ、あいつにも言われたな……違いますよ、俺はただあいつの行為、性格、全てを見下し潰そうとする傲慢さ……とにかく、奴の全部が気に入らなかったからぶん殴って、被害者を助けただけです!」

 

 だから助けてくれた……? 気に入らないから?

 

「そ……それだけ? それだけで、命を懸けて……あいつを?」

 

「それだけです、他になんの理由もありません! 人を助けるのに理由がいりますか?」

 

「……いで、ござる」

 

 ……そんなのずるい。なんで、そんなに優しくできるんだ。

 

「ずるい……そんなのずるい……!!」

 

「なにが!?」

 

「カッコよく人を助けて、自分で全部責任を背負おうとして、見返りもいらないし傷ついても構わない……おかしいよ!!」

 

 こよりのいう通り……吾輩も同じ気持ちだ。あいつはなんか、看護師さんと話していたが……それを気にしている暇はない。枯れたはずの涙が戻ってきたのだ……

 

「うっ、うぅぅ……な、なんで風真、泣いて……情けないでござる……」

 

「いろはだけじゃないよ、こよも……うっ、ぐす」

 

「わ、吾輩は泣かんぞ……総帥だからな……!!」

 

 もう、泣くしかない。罪悪感を消し飛ばす言葉ばかりかけられて……また泣いてしまいそうになったが……総帥が何度も泣けるか。そう思って耐えていたのに……あいつは。

 

「……泣いてもいいんじゃないですかね?」

 

「なっ……!?」

 

「だって、女の子でしょう? 泣きたい時に泣くのは女の子の特権です! 使わなきゃ損損!! 我慢は体に毒ですよ?」

 

 吾輩達に言ってきたのだ。泣きたいなら泣けと……あのお人好しは。その言葉でまた溢れそうになる涙を堪えて、言葉を紡ぐ。

 

「お、女の子だと……?」

 

「女の子でしょ? 男が泣くのは情けないですけど、女の子はいくら泣いてもいいのです!」

 

「な、なんでだ……どうしてそんなに……優しいんだ……」

 

 あいつは首を傾げた……それは、全てこれらが本音から出た行動であることの証明になった。何かが足りないとしても、こいつはすごく強くて……底抜けに優しいやつだ。

 

「え? 『泣いていいよ』って……男が言われたら情けないことこの上ないけど、男が女の子に言うのはカッコいいこと……じゃないんですか?」

 

「……それだけ、なのか……?」

 

「男ならカッコよくありたいですもの! カッコ悪くはなりたくないです! カッコよくて、タフで強くて優しい! それが漢ってものですよ! 千里の道も一歩ずつ、です!! 漢にいつかなるんじゃない、今なるんです! 明日って今ですからね!!」

 

 そう、サムズアップして言ってくる。そうされた瞬間に……プツンと音がして、涙が溢れ出す。張っていた糸が切れてしまった……そんな吾輩を見るあいつの顔は、この上ない安心に緩んでいた。よかった、泣いてくれて……とでも言いたいのか? このお人好しめ……

 

「……やっぱり、ずるい……ずるすぎる……! う、ぅぅぅ……うぁぁぁ!!」

 

「ラプラス大丈夫!?」

 

「ラプ……!! なんで泣いてるの!?」

 

 みんなも来て、誤解されそうになりながら……事情を説明すると。

 

「そうだったのか……ラプ、辛かったろ? 2人もごめんな、その場にいなくて……」

 

 三人で、ルイの胸の中に飛び込む。そうだ……やっぱりここは、どんな時でもあったかい。

 

「かんぶぅ……!!」

 

「ルイルイー!!」

 

「ルイねぇー!!」

 

 ……吾輩達はこうして、あいつと出会ったんだ。それから……泣き止んで、立ち直ったあと。あいつの顔を見ると……顔が熱い。罪悪感はないのに顔が見られないよ……ルイが勧誘をしてるけど……holoxに来てくれることを考えると、何故か嬉しくなった。なんでだよ……給料はいっぱいいっぱいだろ? 雇えるわけないのに……

 

「……あの」

 

「ラプラスさん? お二人も……」

 

「ありがとね……わざわざ慰めに来てくれて……おかげで、もうすっかり立ち直れたよ」

 

 顔を見ると……とてつもなく嬉しそうに笑っていた。その顔をやめてくれ……顔から湯気が出そうだ。二人もそうなってるし……心臓がうるさい、原因があいつなのはわかってるのに、考えるのをやめられない。負の連鎖だ。それからもお人好しっぷりを発揮して、吾輩達の体を焼こうとしてくる守男は……

 

「これでいつでも話せるね!」

 

「おう! また電話番号が増えたぜ、これで8個だ!!」

 

「早く元気になって……なったら……その」

 

 一緒に遊びに行きたいのか……照れ屋なのに、頑張るなぁ。

 

「あぁ、一緒に遊ぼうな!」

 

「ひゃ、ひゃいっ!!」

 

「……天然女たらしって、こういう人なんだね。エロ本とかで読む人とはちょっと違うけど……」

 

 女たらし……これがか。

 

「あの、そろそろ昼食の時間なので……部屋に戻っていただけると」

 

「あ、そうですか! じゃあな、皆! また会おう、アディオス!!」

 

「あっ、うん、またね!」

 

 ……やられた。吾輩達はまんまと惚れさせられたわけだ……

 

「……全然顔見れなかった」

 

「風真もでござる……」

 

「吾輩も……」

 

 三人まとめてやられたな。

 

「……ははーん。やられちゃったってわけだね」

 

「わ、わかるの?」

 

「今までにない顔してたらわかるよ。そっか……まぁ、いい男の子なんだろうね。ラプラスが、こんな簡単に気を許すなんて……滅多なことじゃないよ」

 

 全く……本当に。

 

「凄いやつだな……」

 

 そう、呟いた。

 

 

 

「……ん」

 

「起きたか? 丁度おやつ出来たぜ、ラプラス」

 

「本当か!?」

 

 そうか、今のは夢か……昔の夢を見たな。そうだ、ああやって好きになったんだ。あの後も色んなことがあったな、飛行機事故にあった時は本当に焦った……腕も足も無くなって、それでも戦って……親を殺して。因縁に決着をつけて……今、ここにいられる。これはきっと、奇跡だ……因果律にもなかった奇跡。守男が掴み取った……最高のエンディング。

 

「眠そうにしてたから、頭を撫でて寝かしつけたらぐっすり寝ちまって……いい夢見たか?」

 

「あぁ……最初に出会った時の夢だった」

 

「そうか……あの時はまだ演技してたよな」

 

 でも、優しさだけは本物だった。

 

「でも、お人好しさは変わらなかったな」

 

「まぁな……」

 

「……ホットケーキじゃないか、美味しそうだな! 食べさせて!!」

 

 これも、いつも通り。

 

「いいぜ、ほら……あーん」

 

「んっ……美味しい……!」

 

「好評だな、相変わらず。おかわりいるか?」

 

 ……きっと、いつかはまた一人になるのだろう。けど……今は凄く幸せだ。掴んだ奇跡を噛み締めよう、今ある幸せを噛み締めよう……美味しいホットケーキと一緒に。

 

「いる!!」

 

「ハッハッハ、OK! ちょっと待ってろ!」

 

「……幸せだな」

 

 虚しそうな守男を見るのは辛かった。でも、今の守男は……すごく楽しそうだ。大変そうにしてるけど、それでも……これは、吾輩達が全員で掴んだ奇跡だ。誰にも渡さない……吾輩達の一番の、宝物。

 

「はい、お待たせ……結構寝てたけど、夜寝れるか?」

 

「寝れなかったら、また寝かしつけてくれよ」

 

「またか……いいけど。あーん」

 

 始まったばかりの、守男と吾輩の物語。それ

ぞれが掴んだもので手に入れた……非現実的な、ハッピーエンド。でも……あれだけ苦労したんだ。そろそろ報われたって、文句は言えないだろう。

 

「……ごちそうさま!」

 

「夜ご飯食えるか?」

 

「美味しいから大丈夫だ!」

 

 この何気ない会話すら、楽しい。

 

「本当かねぇ……」

 

「本当だっての! 吾輩の年齢は地球とタメなんだぞ!!」

 

「それ何回も聞いたぞ~?」

 

 わかってないな……なら、わからせてやる。

 

「なら……これでわかるだろ!?」

 

「ん……!?」

 

「……っは。わかったか?」

 

 座ってる状態でも、ちょっと背伸びしないと届かない。傷だらけの顔の……頬にキスをした。

 

「積極的だな……」

 

「嫌か?」

 

「そんなんじゃないさ……できれば、これがずっと続いて欲しいな」

 

 そう言って、遠くを見つめる守男……かけられる言葉はない。その代わりに、そっと体を寄せる。守男が何かをしてくることはない……でも、守男は……少し笑ってくれた。それがたまらなく嬉しいんだ……心から笑えるようになって本当によかった。守男の戦争が、報われてよかった……そう思いながら……吾輩は守男と同じ方を、しばらく見続けた。




 きっとまだまだ、平和はあります。
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