※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX 番外編   作:とも667

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 今日はちょっと不思議なお話。R18要素なしなので、お口直しにどうぞ。


守男と夢といつかの未来

 ……学園は今日も平和だ。戦争を終えた兵士である俺は、今日も銃を置いて学園にいる。そんな俺は今……窓際で太陽光を浴びて、うとうとしていた。自分で言うのもなんだが、とても軍人とは思えんな……

 

「あ、守男がうとうとしてる! かわいい~!」

 

「でも、こんなところで寝たら頭痛くなっちゃうよ?」

 

「何か枕にできそうなものない?」

 

 ……何か言っているようだが、眠過ぎてよく聞こえん。これまでの疲れってやつか……ツケが回ってきたんだな。

 

「ん~……そうだ! ビビ!」

 

「ビビって……トワのペットだっけ?」

 

「そう、いつもは帽子なんだけど……ビビ、元に戻って?」

 

 ……みんなが楽しそうに話している、一体なんのことだ……? 起きたいところだが、如何せん眠すぎる。

 

「わっ、丸っこくなった……かわいい!」

 

「……ちょ、ちょっとモフモフさせて欲しいでござる!」

 

「いいよ? はい」

 

 ヤバい、本当に寝そう。昼休み終わったら起こして欲しい……

 

「うわぁ、モフモフだぁ……!!」

 

「あ、やばい! 守男が本格的に寝そうだぞ!?」

 

「いろはちゃん、もうおしまい! ビビ、ちょっと我慢してね?」

 

 ……枕? 誰かが置いてくれたのか……ありがたい、起きたらお礼言わなきゃ、だ、な……

 

「あ、寝た……寝顔ってあんまり見たことないけど、可愛いな」

 

「ギャップっていうか、なんというか……」

 

「おやすみ、守男……」

 

 俺はそのまま、眠ってしまった。

 

 

 

「……んぁ?」

 

 俺はさっき寝たはずだが……ってことは、これは夢か。俺はロクな夢を見たためしがないから、大分不安なのだが……

 

「ジャスティーどころか、一番出てきそうなルサンチマンの気配すらしない……」

 

 そう思っていると……段々景色がハッキリしてきた。血塗れの何かが見えると思って、身構えていると。

 

「パパ! 起きて!!」

 

「……え?」

 

「え? じゃないよ! 今日はお休みだし、一緒に遊んでよ!」

 

 誰だ、この子は……? 見たところ、6歳くらいに見えるが。夢の中なのに妙にリアルだ……

 

「ちょ……ちょっと待て。ここはどこだ?」

 

「え~? パパ記憶喪失? しょーがないなー、ママ! パパが認知症になったよ~!!」

 

「はぁ!?」

 

 ますます意味がわからない、何故俺は認知症扱いされているんだ。夢じゃないのか? 余りにも感覚がリアルだぞ……

 

「何言ってるのさ、優一? いいから早く起こしてあげて、ご飯できたから!」

 

「はーい! ご飯食べたら思い出すよ!! おいで、パパ!!」

 

「むぅ……?」

 

 そう言われては着いて行くしかない。そう思って、階段を降りる……

 

「あ、やっと起きた。お寝坊さんになったね、守男?」

 

「……トワ、か?」

 

「何言ってるのさ、そうに決まってるじゃん」

 

 いや……おかしい。明らかに何かが違う……雰囲気そのものが変わっている。この夢、一体どうなってるんだ?

 

「ってことは……優一、お前は俺の子供……? 誰とのだ?」

 

「そりゃあもちろん、みんなだよ! 僕はトワ母さんの息子!!」

 

「……そうなのか……」

 

 よく見ると、小さいが角と尻尾がある。ってことは、これは……未来の話、ってことか?

 

「ご飯置いてあるよ、教えてもらったから美味しくなってると思うんだけど……」

 

「……うっま、何これ」

 

「何って、手取り足取り守男が教えてくれたんじゃん。みんなに」

 

 そうなのか……俺、大変だっただろうな。

 

「他のみんなは?」

 

「外にいるんじゃない? 遊んでるんだと思うよ」

 

「あっ、ずるい!! 僕も遊ぶ!!」

 

 俺の息子……と思わしき子が、外に走っていこうとしている。まだパジャマじゃないか、着替えて行け。

 

「着替えてから行きなさい……優一」

 

「ちぇっ、はーい……」

 

「はい、洗濯しなきゃいけないから、顔洗って服脱いで! 守男も!」

 

 ……とりあえずやるか。そう思って、洗面所と思わしき場所に行って……顔を洗った。顔は変わらず、傷だらけだな……

 

「服、ここに畳んで置いとくぞ……あ、ちゃんと畳めよ!」

 

「やっといて、パパ!」

 

「しょうがない子だよね……ヤンチャな時期なのかな」

 

 俺は子育てしてるのか? ……俺に出来るのか、そんなことが。そう思っていると、また気になるものがあった。

 

「……トワ。首に下げてるそれはなんだ?」

 

「守男がくれたんでしょ? ロケットペンダント……みんな持ってるよ、この写真入れてね」

 

「集合写真か……」

 

 思い出せん、この体なのに……記憶だけがない。まさかあっちが夢だったのか?

 

「あ、もう全部畳み終わった……懐かしいなぁ、この写真見てると……あの頃を思い出しちゃうよ。優一に守男のこと言ったら、『僕も強くなる!』って言って……今から筋トレなんかしちゃって」

 

「……俺も遊んでやりに行く。用があったらまた呼んでくれ」

 

「うん、最近休めなかったから優一寂しそうだったよ? 遊んであげて?」

 

 ……優一、か。頭を掻きながら外に出ると……

 

「あ、来たよ!」

 

「パパ、遊んで遊んで!!」

 

「うぉぉ……わ、わかったから……押すな!」

 

 結構力が強い、とりあえず抱き上げて……ラプラスにやってるみたいに、肩車をしてやった。

 

「きゃはは、やっぱり高いや!!」

 

「あ、また乗っけてあげてるの?」

 

「まぁな……他のみんなは?」

 

 またってことは、俺はちょくちょくこれをやってあげているのか。そう言ったのはかなただ、みんな昔と変わらないな……庭がやけに広い。家もデカいし……

 

「いろはなら、あっちで練習中。守男に負けてられないって言ってね。ルーナは国の行事だよ、もう女王様だからね……ココとわためは買い物、holoxのみんなもあっちにいると思うよ」

 

「そうか……ルーナは……みんなも変わってないな」

 

「なに? 久しぶりに帰ってきた人みたいに……」

 

 久しぶりっていうか、記憶がないんだが……まぁいいか。行ってみよう……

 

「パパ、見に行きたい!」

 

「そうか? じゃあ一緒に行くか」

 

「うん! かなたママ、行ってきます!!」

 

 父親は一人だが、母親は八人だものな。そう思って、言われた方に向かうと……練習場に、嵐が吹いていた。正確に的が叩かれていく……そうか、強くなったなぁ。

 

「いろは! 頑張ってるな、調子はどうだ?」

 

「守男!! 見に来てくれたのでござるか? 優一も……」

 

「動きが速くなったな、それに打ち方も正確だ……柳さんと比べても遜色ない」

 

 そう言うといろはは、顔を赤く染めた。照れ屋なのも変わりないな……未来でもみんなは変わらないようだ。

 

「やってるな、さむらい……守男!? いるならいるって言ってくれよ……!!」

 

「悪いな、ラプラス……ここにいたのか。というか、これは……」

 

「修行場兼、holox本部だ! ここに移転したらどうだ、って言ってくれただろ?」

 

 そうだったのか……頭の上のカラスは、今日も元気そうだ。

 

「よう……お前も元気か?」

 

「カァー」

 

「ハハ、元気そうでなによりだ」

 

 こよりはどこだろう、そう思っていると……目の前が見えなくなった。

 

「だーれだっ!」

 

「あ、こよりママ!」

 

「こら、優一!! 答え教えないの!!」

 

 そこにいたのか……俺としたことが迂闊だった。反応速度まで遅くなってるな……どうやら、しばらく戦争をしていないらしい。

 

「よう。みんな元気そうで何よりだぜ……他の人達も元気か?」

 

「うん! 相変わらず沙花叉はお風呂入らないし、ルイねぇのギャグは寒いし……holoxは変わらないよ!」

 

「それならよかった……新しい薬はできたか?」

 

 さりげなく、研究成果を聞いてみる。こよりは聞いてあげると喜ぶのだ……

 

「ふふん、よくぞ聞いてくれました! もう少しで完成しそうなんだよね!! holoxの頭脳が作り出した、絶対売れるお薬が!!」

 

「どんな薬だ?」

 

「名付けて……カムカムベイビーCくん!!」

 

 はぁ……なんだそれ。

 

「カムカム……朝ドラ?」

 

「違うと思うぞ」

 

「その驚きの効能は、なんと! 理論上はこれを飲んですれば……絶対、100%百発百中で赤ちゃんができる!!」

 

 ……つまり、外れることなく一発命中させられるのか。確かに売れそうではある……

 

「それホントでござるか!?」

 

「なんで早く言わなかったんだ、早速使うぞ!!」

 

「おい待て。一体何人増やす気だ」

 

 お前ら、やるのは俺なんだぞ。産むのだって、命懸けなんだから……

 

「ねーねー、ママとパパ。赤ちゃん増やすためには何するの?」

 

「あ……」

 

「……そ、そうだっ!! かなたママとも遊んできなさい、俺ちょっと仕事しなきゃ!」

 

 そう言って、息子を引き剥がす。少し可哀想だが……

 

「わかりました! 行ってきまーす!!」

 

「行ってらっしゃい……素直だな」

 

「あぁ、性格は父親に似たらしい」

 

 ……俺に似たのか。じゃあ……まともに育てば、『まともな環境でいた俺』になるのかな?

 

「……あの子には、戦争させたくないもんだな」

 

「ほら、またそうなる……守男の話すると、絶対そっち考えちゃうからダメでござるよ!」

 

「ご、ごめん……」

 

 俺のこれは変わってないんだな……夢にしては、妙にリアルだが、本当にどうなってるんだ?

 

「……それ、今日から使うのか?」

 

「もちろん!!」

 

「で……誰から?」

 

 そう聞くと……こよりは固まってしまった。前も同じような話題でこんなこと無かったか?

 

「考えてませんでした……」

 

「おいはかせ!!」

 

「またくじ引きでござるか?」

 

 多分、そうなるんだろうな。本っ当に、な~んにも変わりない……

 

「みんな変わってないなぁ……」

 

「どうしたんだ、久々に帰ってきたみたいに……ずっとここにいるだろ?」

 

「あぁ、俺はどこにも行かないよ……きっとな……」

 

 多分、大分時間が経ってる。俺がこうなってるということは……戦争は起きていないということ。なんて素晴らしいことだろう……魔王や勇者の死は、決して無駄ではなかった。山積みの死体は戦争を押さえ込んでくれたのだ。本当によかった……

 

「そういえば……俺の剣はどこにやったっけ?」

 

「お前の部屋にあるんじゃないのか?」

 

「部屋……そうか、一人ずつ部屋があるんだな?」

 

 だからこんなに家がデカイのか、納得。金はあるからな……というか俺、なんの仕事をしてるんだ? やっぱり軍人か?

 

「今日の守男……なんか変な気がするでござる」

 

「匂いは変わらないけど……」

 

「あー……まぁ、久々の休みなもんでな。仕事してたら色々忘れちまうんだよ。俺の仕事、何か知ってるだろ?」

 

 それとなく聞いてみる……これでなんの仕事かわかるぞ。

 

「知らないわけないだろ? 同居してるんだから! モンスター狩りと、時期によってはダンジョン潜り。おかげで収入は十分だ……吾輩達の方がヒモだな、これじゃ」

 

「……だよな! みんなが居るだけで頑張れるんだ、頑張るのは俺だけでいい!」

 

「守男は昔からそう言ってるよねぇ……」

 

 そう言われて、自分を省みる……無茶しすぎ、頑張りすぎって何度も言われたっけ。モンスター狩りでいつもは金を稼いで、ダンジョン潜って宝探しか……自分で言うのも何だが、天職な気がする。戦争が起きていない今軍人になるより、そっちがいいだろう。大体は殺せるはずだ、魔王よりは弱いだろうからな。

 

「本音だからな。そういえば……世界征服の方はどうだ? 上手くいってるか?」

 

「順調だ! 守男のネームバリューのおかげで、吾輩達holoxも有名になり……今となっては有名人だ!! 世界に吾輩達が知れ渡る日もそう遠くない!!」

 

「じゃあ期待しとくよ……頑張れ、総帥」

 

 そう言って、優一のところに行く。かなたは大丈夫かな、優一は大分やんちゃみたいだからな……

 

「おーい、かなた? 何やってるんだ?」

 

「泥団子!」

 

「一緒に作ってるんだけど……ダメだね、ボクじゃ潰しちゃう」

 

 泥団子……綺麗にやったものだ、ピカピカじゃないか。

 

「子供の才能って、どこで発揮されるかわからんな……」

 

「ふふーん!」

 

「どれ、俺も……」

 

 やってみようとするが……意外と難しいな。

 

「ぬ、ぬぬぅ……くっ……!!」

 

「お父さん、下手だね~」

 

「くそ……子供に負けてちゃ話にならんぞ」

 

 そう思って、俺が泥団子作りに悪戦苦闘していると……

 

「ただいまー!!」

 

「……わため! ココ! おかえり!!」

 

「あ、守男!!」

 

 買い出しに行ってたようだ……だからいなかったんだな。ちっとも変わってない……安心した。

 

「おう、起きたか! ねぼすけ!!」

 

「そんなに寝てたのか……俺もよく寝るようになったな」

 

「自分で自分を分析してる……」

 

 相当平和らしいな、俺がここまでなるなんて。

 

「寝ないより寝れる方がマシだろ!」

 

「まぁ……それはそうだな」

 

「わため特性羊毛布団が効いたかな?」

 

 そういえば、やけにモコモコしてたが……そうだったのか。

 

「おい……そんなに羊毛取って大丈夫なのか?」

 

「そこは大丈夫、抜け毛で作ったから!」

 

「それならいいんだが……」

 

 わためが寒くちゃ元も子もないからな。

 

「寒かったら言いなよ? わためが抱き枕になってあげるから!」

 

「私でもいいよ、守男?」

 

「……ついでにヤる気だろ、お前ら」

 

 図星らしい。表情が引きつっている……

 

「そそ、そんなことありませんよ~?」

 

「……嘘だな。分かりやすい」

 

「う~! だって!! 最近一緒に寝てくれないから、寂しいんだよ!!」

 

 そうなのか……いかんぞ、俺。ちゃんと一緒に寝てあげないと……

 

「ごめんな……相手してあげられなくて」

 

「そ……そうだよ! 寂しくしたのは守男なんだから! わためは……」

 

「悪くない、だろ?」

 

 寂しい思いをさせてるなら、それは俺が悪い。俺は何を考えてるんだ……? 自分で自分が何考えてたかわからんって、意味不明だな。

 

「あ、わためのセリフ……! もぉ~!!」

 

「もぉ~、って……お前いつの間に牛に……?」

 

「わためぇは羊だよ!! ねぇ、守男も何とか言ってよ!!」

 

 こういう会話も変わっちゃいないんだな……みんな仲良しじゃないと。

 

「……ん? あぁ……わためは羊だから……牛肉じゃなくてラム肉が取れるな」

 

「守男まで!? 食べても美味しく……なくはないけど!! 食べないでよ!!」

 

「美味しいことは認めるのか……」

 

 まぁ、ラム肉は美味いもんな。

 

「じゅる……ちょっとくらい、齧ってもバレないよな……?」

 

「ひっ……守男、助けてぇ……ドラゴンに食べられる!!」

 

「ココ、わためを食べるより普通にジンギスカン買った方が美味いだろ? というか、ちょっと欠けたら普通に気づくわ。バレないとでも思ってるのか?」

 

 わための前でジンギスカンの話するのは……少し気が引けるが、まぁわためを守るためだ。ベンチに座りながら、そんなことを考えた。

 

「そうか……ちょっと買ってくる!」

 

「ふぅ、助かった……ありがとう、守男!」

 

「気にするな、俺はわための彼氏だろ?」

 

 ……そう言うと、わためは首を傾げた。何か違ったか?

 

「もう、守男は……何言ってるのさ! 私達もう結婚してるじゃない! だから……守男はみんなのお父さんなの!」

 

「……そうか、なんか昔の気分になっちまってたよ。そうだよな、ごめん」

 

「昔……あー、懐かしいなぁ……みんなで遊んで出かけて、笑い転げて……心配だったけど、すっかり感情豊かになっちゃって。今はもう、普通の優しいお父さんだね!」

 

 ……この世界でも、幸せは続いているらしい。よかった……

 

「懐かしいよな……こうしてられるのが奇跡ってことだ」

 

「うん……色んなことあったよね。楽しいだけじゃなくて、困ったことや苦しいこともあったけど……それでも守男がいつだって守ってくれたから、怖くなかったよ」

 

「そりゃあ、よかったよ……」

 

 幸せそうだ……この世界の俺も、みんなも、息子も……

 

「一番辛かったのは守男、でしょ……? ありがとう……休みたくなったら言ってね? わため達は、ずっと守男の味方でいるよ……もう、あんな思いさせないから」

 

「……ありがとうな。心配しなくていい、俺は幸せだから。わための心も体も……あったかいなぁ」

 

「よかった……羊だからね、モフモフだよ? あったかい?」

 

 あったかいな……動物の匂いがする。大嫌いな鉄や血の匂いは、欠片もしない。あるのは優しい暖かみと、わための体の感触だけ。

 

「……そろそろやめとこう。わためは自分のスタイルの良さを自覚しておけ」

 

「失礼な、わためはルーナよりおっきいんだよ!? って……あ……」

 

「性欲、あったらあったで不便だよな」

 

 そうボヤきつつ、優一の相手をしに行こうとする。

 

「遠くで何言ってるのー?」

 

「あぁ、悪い! 泥団子、作り直しだ!!」

 

「……守男なら……いいかも……」

 

 なにか聞こえたが……聞こえないふりだ。そう思って歩を進めると……背中に重たいものが乗ってきた。

 

「っ……!?」

 

「ただいま、なのら!! ルーナもそうだけど、守男もお寝坊さんになってきてるのら!!」

 

「ルーナか、帰ってきたんだな……ルーナは大変だよな、国のこともあるし……」

 

 そう言って、ルーナを労る……相変わらず体は小さいまま、成長は見られない。もしかしたら謎があるのかもしれないが、『まだ』知らない俺にはわからないのだ。

 

「そうなのら、今日も色々やって疲れたのらぁ……疲れ取ってなのら!!」

 

「あ、イチャイチャしてる!」

 

「ル、ルーナ? 優一が見てるからさ、家の中でやろうぜ? ごめん優一、今度教えてくれ。俺はルーナを充電するから」

 

 俺がそう言うと、優一は笑って……

 

「わかりました、お父さん! 行ってらっしゃい!!」

 

「はーい……」

 

「んなぁ~……」

 

 しょうがない子だな……そう思いながら、手を洗ってから二人で座った。

 

「お疲れ様、ルーナ……疲れたろ? おいで?」

 

「守男~……やっぱりここが落ち着くのら……」

 

「俺はどこにも行かないぞ、いつでも充電してやるからな」

 

 そう言って……頭を差し出されたので、撫でておく。

 

「んふ……いい気分なのら~! 散々な日もこれと美味しいご飯があれば、100点満点なのら!!」

 

「そんなに価値高いの?」

 

「プライスレスなのら!! どれもルーナ達専用なのら~」

 

 そう言って、嬉しそうに顔を緩ませるルーナ……毎日こうしてるんだろうか。いや、全然いいんだけどな? しばらく、ルーナを撫でていると……仕事が終わったと思われるトワが、何だか物欲しそうな目で寄ってきた。

 

「……」

 

「……トワもおいで? 疲れたろ?」

 

「ん……」

 

 ルーナと一緒に抱きしめる……同じように頭を撫でると、幸せそうに笑ってくれる。

 

「毎日やってて飽きないか、これ?」

 

「全然なのら! 寧ろ癖になってるのら!!」

 

「これがないと生きていけないよ……」

 

 本当に毎日やってた。トワは依存度が高いな……俺が風邪引いたらどうするんだろうか。

 

「……俺の手がそんなにいいのか?」

 

「手だけじゃないよ? 守男が戦った証……傷だらけの体や、顔……男らしい匂いもするし……全部摂取できるから、これがお得なの」

 

「醜いって言われないのか?」

 

 普通の反応はそれのはずだ。現代ではそう言われてもおかしくない……顔の皮膚があちこち爛れ、焦げた痕が何個も残り……痣や深い切り傷の痕もたくさんある。自分で言うのもなんだが、惨いだろう。

 

「言われたことはあるのら……でも、いいのら。だってルーナ達は全部知ってるのら……誰かのために殺し合いをしたこと。何回も自分の心の痛みを無視したこと……何回も助けに来てくれたことだって……全部覚えてるのら。だから……ルーナ達にとっては、傷の一つ一つが守男の優しさの象徴なのら!!」

 

「そうか……ありがとうな」

 

「自信持って? 守男は優しいし、かっこいいよ……守男は優しいからたくさん傷ついた。優しすぎたから、バカを見た。それでも……お人好しが治らなくて、だから傷だらけなんだよ。でも、そうじゃなきゃトワ達は好きになってない。そんな度を越したお人好しを、トワ達は好きになったの」

 

 お人好し、か……やっぱり、そう言われるのは変わらないな。

 

「同感なのら~」

 

「……俺も撫でるの好きだぜ。本当にサラサラだ……」

 

「髪のお手入れは大事だからね!」

 

 髪の感触に夢中になっていると……優一が家に入ってきた。

 

「3時だよ! おやつちょうだい!!」

 

「……とりあえず手を洗ってきなさい」

 

「はーいっ!!」

 

 おやつね……

 

「今日はホットケーキ焼いて、みんなで食べる予定だったんだけど……一人じゃ足りないかな」

 

「よし、俺が手伝うから……さっさと終わらせるぞ」

 

「よっ、待ってました! スーパーハイスペック男!!」

 

 ココに煽られつつ、ホットケーキ作りを急ぐ。急いでも焦らないように、美味しくなるように……

 

「よっ、と……トワも上手くなったな。俺とも遜色ない」

 

「守男にそう言って貰えると……自信つくね!!」

 

「……っし、あとはメープルシロップかけて……完成だ」

 

 美味そうだ……全員分盛り付けて、みんなに出す。12人分作っておいた、holoxの皆さんにも差し入れといこう。

 

「わぁ、美味しそう!!」

 

「零さないようにな? 俺はholoxのみんなに差し入れだ」

 

「相変わらず律儀だなぁ……」

 

 俺も食いたいし、早く届けて食べるとしよう。弁当の要領だ……大変なことじゃない。走るスピードに変化はないな。修行を怠ってはいないらしい……着いた!

 

「お邪魔します!! 差し入れですよ!!」

 

「あ、ちょっと待っ……行っちゃった」

 

「ホットケーキ……美味そうだな、みんなで食べよう!」

 

 よし……あとは戻るだけだな。

 

「ただいま!!」

 

「もう帰ってきた……」

 

「流石、元弁当配達員だね……」

 

 弁当配達……戦えなくなったら、本当に弁当屋やろうかな? 手を洗いながら老後のプランを立てる。まぁ、今はそれよりも……

 

「おやつだよな! いただきます!!」

 

「やけに美味しそうに食べるなぁ……いつもそうだけど、昔の守男に戻ったみたい」

 

「うん、我ながら美味い……丁度いい焦げ目が香ばしいし、生地の優しい甘み……そこにメープルシロップがよく合う」

 

 みんなが不思議そうにしている……これ、もうやってないのか?

 

「懐かしいね、その食レポ」

 

「ん……? 今はやってなかったか?」

 

「ずっと前からやってないよ?」

 

 そうなのか……する必要がなくなったんだな。味覚が戻ったから……味を感じるフリをしなくてよくなったんだ。

 

「なんか……昔の教室にいた頃みたい」

 

「ボクも思ってた……色々あったけど、なんだかんだ楽しかったよね」

 

「私達、世界で一番波乱万丈な人生を送ってるかもな!」

 

 そう言って、笑う……少しからかってみようか。

 

「人じゃなくて竜だから、竜生じゃないか? わための場合は羊生だし……」

 

「こいつ! 言うようになったなぁ!!」

 

「俺だって変わるさ。平和なんだからな……ごちそうさま」

 

 食べ終わると……眠くなってきた。俺はガキかなんかか……と思っていると、優一もウトウトし始めた。

 

「う~……」

 

「あ、寝そうだよ……? 守男もだ」

 

「守男、一緒に寝てあげて?」

 

 そう言われて、ゆっくり立ち上がる。優一を抱えて、布団を敷いて……お昼寝の時間だ。

 

「パパ、眠い……」

 

「お父さんも眠い……だから、一緒に寝ようぜ?」

 

「うん……」

 

 優一の頭を撫でて、眠らせる……俺も眠ろうか。

 

「可愛い寝顔……こんなところまでお父さんに似ちゃって」

 

「守男もおやすみ。夜ご飯、一緒に作ってね?」

 

「あぁ……わかった……」

 

 そう呟いて、俺は夢の中でも眠った……夢の中で夢を見るのか? そう思っていると……目の前が急に明るくなった。

 

「ん……ふぁ~……」

 

「あ、起きた! ビビ、お疲れ様!」

 

「ビビって……トワのペットだったっけ。もしかして、枕になってくれてたのか……? ありがとう、ビビ」

 

 ビビは疲れた様子で帽子に戻り……トワの頭に乗った。

 

「いい顔してたね、どんな夢見てたの?」

 

「……妙にリアルな夢だったよ。内容は……あれ?」

 

「思い出せない感じ? あるよね、起きた瞬間覚えてるのにすぐ消えていく記憶!」

 

 あぁ、さっきまで覚えてたのに……忘れるのが早いな。少し悲しいが……

 

「でも、幸せな夢だったことはわかる……『優一』って誰だ? 夢の中に出てきた気がするんだが……」

 

「知らないな……誰だろう? 昔の軍人仲間、とか?」

 

「そんな殺伐としてるものじゃない……なんか、愛おしくて手離したくない何かだった、気がするんだ……」

 

 優一……いい名前だな。何だかしっくりくる。

 

「……まぁ、わからないならいいのら! 夢より今が大事なのら!!」

 

「……それもそうだな! よし、今日はみんなにおやつ作るよ!! holoxのみんなにも作る!!」

 

「え!? 嬉しいけど……急になんで?」

 

 わからん、だが……作りたい気分なんだ。

 

「何となく……作りたい気分でな。そうだ、ホットケーキにしよう!! それがいい気がする!!」

 

「今日の守男、なんか直観的だね……でもいいや、直感大歓迎! そうと決まれば連絡連絡! ……でも、なんでホットケーキだって即決で決めたの?」

 

「……なんか、美味しくできる気がするから!!」

 

 放課後……ホットケーキをみんなで食べた。holoxの人達にも届けたが……思った通り、上手くいった。理由は分からないが……まぁ、ともかく喜んでもらえてよかった。

 

「ふぅ、美味しかった! ごちそうさま、守男!!」

 

「お粗末さまでした……こうやってられる日々が、ずっと続くといいな」

 

「……きっと続くよ。何だか、そんな気がするもん」

 

 俺もそんな気がする……あの夢は、きっと普通の夢じゃないんだ。根拠はないが、そんな気がする……あの夢が本当になるように、歩んでいこう。未来は明るい……みんなといれば、そう信じていられるから。




 この夢はいつか、本当になる。
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