「フッ!ハァッ!」
ジャージに身を包み奥井詩織はまだ暗い早朝4時から武術の鍛錬に励む。
目指すは渋谷真央の
だがその方法は一筋縄ではいかない。
大金など持たない詩織にとって名医ノア・ベルガーに真央を診てもらうには犯罪まがいの行動を取るしかないのだ。
(私は絶対諦めない‥‥。親友を救う為には例え親友の家族‥‥いや親友そのものが敵になったとしても私は命を掛ける)
命は掛けるがなるべく生き残れるように頑張らなければ彩菜と真莉に立つ顔がない。
ようは死なずに命懸けで励むと言う事だが、一見すれば矛盾そのものだ。
(ぐだぐだ考えてもしゃーないわね。結局人間は
その為に、頭を使い身体を動かす。
考えればキリがないように思えるが『行動指針』は単純明快。
『親友を護る』
この一点である。
さてその親友達には自分自身の修錬の為、直接稽古を付けられていないがトークアプリによれば最近あの二人は氷魅夜樹里亜なる人物から武術の手解きを受けてるようだ。
詩織ももしこの件が穏便に終わったら是非その樹里亜から武術を学びたいところである。
‥‥‥‥行き先は鑑別所かも知れないが。
真央の母に叱咤されてから一週間‥‥今日の夜、詩織はベルガーの病院に忍び込む。
「朝練終わり。帰るか‥‥」
「ブラーヴァ!。今日も朝から華麗な妖精の舞が見れたよ!セニョリータ」
「またお前か‥‥晴人」
自分への賛美言葉と鳴り響く拍手にウンザリした様子で詩織は息を付く。
この同年代の少年日向晴人とは一週間前に偶然出会い以降毎日詩織の訓練時間に現れるのだ‥。
「どうやらその様子ではこの偉大で誉れ高い
(こいつみたいな思考回路の人間が多数いれば争い事なんて起きないんだろうな)
「誉れ高い?くどくて悪名高いの間違いだろ晴人」
呆れた笑いを溢しながら彼女は返した。
「Oh‥‥!。中々大胆なジョークだ!。‥‥思い返せば一週間前の朝、優雅に暗い道を俺が闊歩してた時に君と会えたのは神の悪戯に―――
「だぁぁぁぁぁぁ!もううっせ!あん時あんたに自己紹介しちまった自分を自分で恨みたいわ!」
付きあってきれないと判断した詩織は猛ダッシュで帰路についた。
「う~む‥‥シャイな子が多いのは日本人の欠点だな。まぁ長所と短所は紙一重だけど。だろ?我が親友達よ」
「お前の場合は相手方がああ言う態度を取るのも無理無いがな。シャイとか関係無しにお前に非がある」
彼の声掛けに明けの闇に潜む二人の少年が姿を見せた。
「僕も研一の意見に賛成だ‥‥‥晴人。君にああ言う態度を示す女は多いが僕にはあの子は何かに挑もうとしてるように見える。それも尋常ならざる事に」
眼鏡を掛けた悧発そうな少年は遠ゆく詩織の姿を見ながら呟く。
とても同年代の少女とは思えぬ重荷をあの背が担いでるような気がした。
「同感だな」と短髪でカミソリのような鋭い目をした少年‥東 研一も頷く。
「流石の考察力だな。叡智郎。俺も何か彼女は生き急いでいるように見える‥‥彼女の力になってやりたい‥‥惚れた者として」
「‥‥研一、彼は重症だね」
「しかし幼馴染で俺達の掛け替えのない友でもある。敢えて蛮勇に身を預けるのも楽しいかもな」
「君達が俺の親友で良かった。叡智郎。研一」
三人は顔を見合わせながら笑うと‥‥とあることを話しだした。
「支えるぞ彼女を」
躊躇うことなく晴人はそう呟いた。