「不審な少女?」
「えぇ。お祖父様」
「一週間ぐらい前からお祖父様の病院の周りをうろついているんだ」
今日の医療業務が全て終わり自宅に戻ったノアは二人の孫から神妙な面持ちで最近自分の病院の周辺をウロウロする少女の話を聞かされた。
「私か龍我、何方かがその子に近付こうとすると逃げるのよ」
「あぁ‥‥しかもとんでもないスピードでな。あの少女‥只者じゃないぞお祖父様」
「ハハハハ!大丈夫さ」
心配する二人の孫の頭に手を乗せた。
「こんな老いぼれを殺したって何もならんし、私の病院には見張りのスタッフの他に警備会社から派遣されている守衛もいる。まず不審者は入れないよ」
「‥‥本当に?」
「父上も言っていたぞ‥過信は禁物だって‥‥」
「私はいい孫を持ったな」とノアは呟く。
「心配してくれてありがとう。龍我、銀羽。早速うちの見張りのスタッフと警備会社の担当員に怪しい少女の件と監視を強くするように言ってこよう!。君達は家に戻り自由に過ごしてなさい」
「「分かった(わ)」」
暗い廊下を歩くノアの姿が見えなくなるまで二人は彼の背中を見ていた‥‥‥。
「‥‥お兄様。あの少女がもしお祖父様を狙っているのだとしたら‥‥?」
「‥‥あぁ。無くなはないな。けど12の俺等にどうこうできるもんでもない。従おう俺達が敬愛し尊敬するお祖父様に」
「うん‥‥」
ノアの姿が完全に見えなくなったのを確認すると二人は家に戻った。
廊下を曲がり、ノアは暗く赤い火災報知器の灯りのみが不気味に光る廊下で立ち止まる。
その表情は警戒や不安ではなく嗜虐的な好奇心に満ちていた。
(あぁ‥‥‥こんなに清々しい気分は何年振りだろうか!。
孫達によれば一匹の得体の知れない鼠がうろちょろして私の牙城に忍び込むかも知れないわけだ!)
「クフフフ‥‥、我が実験も無駄ではなかったか。鼠を殺すぐらいなら奴等でも役に立てそうだ!‥‥‥長らく
「ハハハハ‥‥‥ァハッハッハッハッハッハッハッ!」
ノアの満ち足りた笑い声が静寂を打ち消し病院中に響き渡る‥‥‥‥。
――――
「流石にサバイバルナイフは購入させて貰えなかったな‥‥」
ベルガー病院入口より北に500m、電柱の裏で奥井詩織は真っ黒なショートバックに入った武器の確認をしていた。
キッチンナイフ×10本
強化改造スタンガン×3個
催涙スプレー(自前で調合した殺虫スプレーの缶に偽装)×3本
メリケンサック1セット
現状前の世界のようにどこの
衣服は当然任務に失敗し逃亡する際、病院側に特定されるのを防ぐ為に黒で統一した帽子やマスク、長袖長ズボンを身に着けている。
もどきではあるが
メリケンサックは単純に12歳の自分の殴る力を上げて対抗するためだ。
「‥‥よし、行くか!」
覚悟を決め漆黒の衣を纏った少女は病院へと向かう。
病院に潜入することばかり考えていたからか暗視ゴーグルを用いてはるか後方から三人の少年がこちらを見ているのに気づかなかった。