「ん……?」
奥井詩織は目の間の異変に首を捻る。
病院の前面の灯りが明らかにいつもに比べ灯っていない。
そして入り口に立つ看守や警備員の気配もない。
こんな状態の警備体制を見るのは初めてだ。
………どう言う事だ?。幾日か探ってたけど休憩にはまだ早いぞ。
詩織の最初のプランは見張りに立つ者達が休憩中に病院に侵入する事だった。
一瞬、罠かとも考えたがいつでもナイフを出せるようにして病院のドアを開き中に入る。
おかしいぞマジで……すんなり行き過ぎだ……。
前方に広がる、火災報知器の赤い光だけを灯す廊下。
狭苦しい空間の中、あの先に何があるか考えるだけで息が乱れそうになる。
しっかりしろ!詩織!
心で気合いを入れパチンと小さく頬を叩く。
確かにこの簡単すぎる侵入は罠の可能性があるだったらそれを逆手に取ってノアの場所迄行けばいいだけだ。
大人に後悔させてやればいいのだ。子供を舐めた代償を。
いきづく詩織だが暗闇に目が慣れて来て改めて開かれる光景に血の気が引いていく。
「マジかよ…」
青い服を着た警備員、白い服を着た看守数名が血に濡れて倒れていた。
『ウフフフフ』
「誰だ!」
笑い声がした方向に刃物を構えるが誰もいない。
………気配もしない。
更にはギィィィィと音を立て先程入った扉がしまったのである。
ガチャリと施錠のおまけ付きで……。
「……オーケー、退屈しなくて済みそうだな」
キッチンナイフを右手に進んでいく。
倒れてる警備員と看守達を横目に見ると呼吸をしてる様子は無かった。
スマホのライトを照らすと皆首筋を齧られ、失血死していた………。
「昔の私だったら泣いて逃げてたぞ…」
強くなったのを喜ぶべきか否か微妙な状況だ。
この病院は肉食動物でも飼ってるのか……それとも――。
「Leuchtendes rotes, leuchtend rotes, leuchtend rotes Blutー♪ Mein Herz wird glücklichー♪」
「Tod den erbärmlichen Menschen, die hereinkamenー♪」
「はっ……何語?英語か?」
日本語ではないのは確かであろうが。
2つの…それも幼い気配を詩織は感じた。
「「グートゥン アーブン!お姉さん!」」
見たところ7、8歳程か。
少年と少女が手を繋ぎながらこちらに歩いて来る。
両者とも日本人に見え非常に整った顔立ちだ。
だが詩織は警戒を崩さない。
「お前ら何者だ……何故、口元と襟を赤く染めている?」
まさか……ととある考えが過るが、現実的ではないと詩織が否定してる内に男の子が口を開いた。
「僕と望亜がおじさん達の血を吸ったからだよ」
「……何?」
眉を顰めた。
「ヤー。嘘じゃないわ嶺臣の言う通りよ。だって私達ディアナお姉様に吸血鬼にされたから。好きにしなさいって言われたからやったの」
ねー!と
「お前達は吸血鬼って事か?」
「そうよ!」
「だからね。お姉さんの血も―――」
『吸わせて』
幼き子供に似つかない犬歯を二人は其々生やした。
目を赤く煌々と光らせて―――。