子供の吸血鬼二人と相対する詩織。
外は宵闇で環境まで相手の味方をする中彼女は、この絶対的不利な状況をどう切り抜ける………。
「おねぇちゃんどこ行ったのー」
「あーそぼ!」
「ハァ……ハァッ………!」
かき乱れる呼吸―――。
無邪気なその声が自分を死に至らしめると考えただけで奥井詩織は吐き気に苛まれる。
………これは彩菜の復讐や、自分が死ぬ寸前の恐怖を遥かに越える事態だ。
カツカツカツ、と足音を鳴らし詩織が居る方に近づいてくる。
「クソッ……!」
小声で悪態を付き、廊下の角を曲がった。
背中を壁に預け背後から二人の吸血鬼が来ないか微動だにせず警戒する。
まさか隠れんぼの鬼が吸血鬼とはな……笑えないジョークだぞ……。
そもそも吸血鬼の弱点と聞いて思い浮かぶのは太陽の光ぐらいだ。
だが今太陽は寝静まり真っ暗闇な夜の支配下にある。
つまりそれは……詩織がどう足掻いても吸血鬼達を殺せないと言う絶望的な事実を突き付けているのだ。
しかし詩織はまだ諦め無い……この状態が奴等に有利なのは事実だが奴等が詩織を屠れるわけでもないからだ。
体術と戦略だけでここをきり抜けるしかない。
「望亜ー。お姉ちゃんいないよ~」
「嶺臣それ本当ー?。つまんないの~。帰っちゃったのかな?」
そうだ……。私は帰ったって事にしてお前らどっかいけ。
「せっかく遊べると思ったのにー」
「しょうがないよ。戻ろう」
つまらなそうに二人は言って足音と気配が遠のいて行く。
動くなら今だ。
今動かなければ動くチャンスはなくなるかも知れない。
詩織はあまり足音を立てず素早く動いた。
「「ich habe es gefunden!」」
「ガフッ!」
動いた直後に詩織は嶺臣に体当たりされ数メートルも吹き飛ばされた。
華奢な身体に見合わない怪力も去ることながら最後に「戻る」旨の会話をしてから詩織が移動し始めここに現れるまで体感で約1秒程だ。
「Gute Arbeit!嶺臣!」
「えへへ。見っけたよお姉ちゃん!」
「ゴホッ……、ゲホッ……!」
咳と共におびただしい量の血を吐いた。
「お前ら…マジで化け物染みてるな…」
「もっと遊ぼうよ!」
また嶺臣が体当たりを繰り出そうとするが寸でで詩織はキッチンナイフで首を刺した。
鍛えてきた詩織だから出来た技であり常人なら追加のダメージで死んでた可能性がある。
そんな中詩織はカウンターを決めたのだ。
「おままごとする歳じゃねぇんだよこっちは…ゲホッ!」
「嶺臣!嶺臣ぉぉぉぉ!」
「私の邪魔をすんなよ。お嬢ちゃん。日本語以外にも話せるんだ。頭はいいだろう?。そこのボーイフレンド連れて静かにベッドに戻りな」
血が付き赤く不気味に煌めくキッチンナイフを向け呼吸を整えながら詩織は警告した。
「お、お前何かに…!」
「待って嶺臣!。うふふ。お姉ちゃんは本当に馬鹿な人だね」
「あ?」
「ノアおじさんは貴女を警戒していた。私達が本気で手を下さずとも、貴女は既におじさんの手中の中だよ……。それに私達は吸血鬼だからこの程度の傷はすぐ再生する」
確かにそうだ。
明確に今この場でダメージを受けたのは詩織一人だ。
だがそれ式の事で目的達成をやめはしない。
絶対に馬鹿みたいな運命に反逆しなくてはならない。
「いいぜ。ガキ共。この命お前らとの戦いで派手に散らしたって構わねぇ。その変わり私は本気でお前らに技を食らわすがな」
「やだよ…流石に私達だって痛みはあるし、あのスピードの嶺臣にカウンターするなんてお姉ちゃん強いし―――」
『後はノア先生のゾルダートが相手してくれるよ』
「ゾルダート?……横文字はサッパリだ」
「勉強出来ていいじゃん。何事も初めるのに歳は関係ないよ」
「分かったような口を…………だがそうだな」
「
「
お姉ちゃんってフレーズ以外望亜と嶺臣が何語で何と言ってるか分からなかったが嶺臣は目つきと口調からして自分を馬鹿にしたニュアンスの言葉を吐いたのだろうなと思った。