「と言う事でノア先生の病院で真央は診てもらう事になりましたよ……真央のお母さん…」
奥井詩織からその言葉を聞き渋谷凪央は喜びと驚きと少しの嫉妬を覚えた。
真央が名医ノア・ベルガーに診てもらえるのは大変喜ばしいが共働きの渋谷家のお金を持ってしても出来ない事を目の前で笑うこの少女は平然とやってのけたのだ。
こんなガキ如きが!と怒りそうになる感情を押し殺し「ありがとう……詩織ちゃん」と凪央は頭を下げた。
「いいんです!真央の力になりたかったから……それじゃ元気になったらご連絡ください」
「えぇ…じゃあね」
「はい!」
この前とは真逆の感情で家を出ていく詩織を見て凪央は床を手で叩いた。
私はあのガキ以下なのか。
たかだか小学6年生の少女にも負けるのか。
更年期障害や真央の介護のストレス等もあったが彼女の怒りは限界を突破しそうだった。
「悲しいですよね……渋谷さん」
明らかに異質な雰囲気が籠る声。
張ってるわけでも元気があるわけでもないのに凪央の心にその声はスーパーで流れる曲のように張り付く。
不思議な中毒性があった。
「……君は…誰かしら…」
美しい顔つきに、優しさを含んだ眼差し……。
彼が不法侵入なんてこと忘れ凪央は既に心を許していた。
「名乗る程の者じゃありません。けど貴女が苦しそうだから――――――――」
『僕なりのアドバイスをと思って』
―――――
「「詩織!」」
「真莉!彩菜!。久しぶり、修行してたか?」
「勿論よ」
「詩織もその様子だと真央のお母さんに話しがついたみたいね」
この日三人は久々に公園であった。
暫く会えなかったからか皆和気あいあいとしている。
「二人共ちょっと細くなった?」
「あ、分かる」
「正解」
だが少し変だ……鍛えたのなら当然つくものが彼女らにはついてない。
「貴女達筋肉ついてないのね?」
「樹里亜ちゃんから『波紋』を教わってどれだけ鍛えようが筋肉が身体につかない方法を教えてもらったの!」
自慢気に彩菜に筋肉が付かない話をされた詩織は「波紋?」と首を捻る。
武術の話題としては今迄聞いたことのない言葉だ。
「お風呂場に水が滴り落ちた時出来る波紋じゃなくて……波紋と言う武術があるの?」
「武術と言うか……呼吸法ね。波紋の呼吸をすると太陽と同等のエネルギーが身体に発生するんだって」
「へー」
ディアナや嶺臣や望愛が聞いたら嫌がりそうだて考えたら吹きそうになる。
「大まかに言えば健康法みたいなものね。当然彩菜だけじゃなく私もマスターしたわ。美容にもいいみたいよ」
「それめっちゃいいわね。私も樹里亜ちゃんに教えてもらいたわね」
詩織自体筋肉はあまりついてあるように見えないが、ゴツゴツとした筋肉の見た目になるのには少し抵抗があった。
「じゃあ今から行きましょ!」
「そうね。善は急げよ!」
「ちょっと!二人共!待ってよ!」
三人は楽しそうに駆け出した。
スタンドを出すか出さないか考え中