Wave ~Summer NudeKiss~ 作:みやびまい
山岸高成や茜谷優里と言ったカラミざかりやボク嘘のキャラクターも今後登場する予定です。
みちるは天井を見上げてはパソコン画面に向き合うのを繰り返す。
(こんな感じかなあ)
チャットに投稿し、また文章を綴っていく。
「ふう…今日はここまでにしよう」
みちるはあまり夜遅くまでは起きない。勿論実家の手伝いで早起きしなければいけないのもあるが、持病もあり体への負担はなるべく避けたいというのもあるからだ。
「ねよー」
みちるは電気を小さくして、布団に入った。
そしてボク嘘の更新日が来た。
『あーあ…あーあ!!!』
豊は乱心状態である。無理もない。彼の推しである茜谷優里が彼氏に乱暴されたからだ。
『こうなるとは思ってたけど最悪すぎる!なんでだよー!!』
チャットはいつの間にか豊のコメントであふれ尽されている。みちるは今日の更新どうしようかなと考えていたとき、沈黙は破られる。
『そらそうなるよ』
『てかなんで茜谷山岸誘ったん。彼氏側からすりゃあ浮気になるんだからこうなるでしょ。てか呑気に彼氏に電話してる時点でだろうなと思ったわ』
香織のコメント。それは優里をばっさり切ったものだ。ただ、間違った事は書かれておらずむしろ正論ではある。
それを見た智広は固唾をのむ。即ち優里の危機管理の低さが露呈した結果と脚本の都合と認識していた。
ちなみにみちるは就寝中である。
(てか普通タクシー呼ぶよね)
香織がそう思っていた時。豊のコメントが送信される。
『それは言い過ぎだ。茜谷悪くないじゃん』
「はあ?」
…こうしてとうとうレスバの火ぶたが切って落とされた。
ーーーーー
夜明け。豊と香織。互いに自身の主張を一歩も引かない状況である。豊は優里は悪くないの一点張り、香織は彼氏が一番悪いが優里の甘さもあると言って譲らない。
智広は一度落ち着くよう2人に話したが、聞き入れてはくれなかった。
朝。みちるはパソコンを開くとチャット画面で2人のいさかいと作品の更新内容を知る。
「あちゃ~…」
開口一番のセリフに大きなため息が混じる。
「揉めてる…」
一応チャットの主はみちるである。その為みちるは2人を仲裁しなければならなくなっている。
『2人とも落ち着いてここまでにしましょう。確かに読んでて色々な意見は出てくると思いますが、一旦そこまでというか譲歩した方が良いかと』
その言葉でチャットは一時沈黙が流れる。その沈黙を破るのは誰かとみちるは画面を見つめる。
『分かりました。この話は一旦やめで』
沈黙を破ったのは香織だった。
『管理人さんすみませんでした』
香織の謝罪にみちるはいえいえとコメントを送る。これで騒ぎは落ち着いた。みちるがそう思った時、豊のコメントが送信される。
『俺は?!てかお前茜谷嫌いなのかよ』
鎮火しつつある火に油を注ぐようなコメントである。
『別に嫌いじゃないけど。てかなんであんたそんな茜谷に対して必死なの』
『推しだからだけど』
『なんか単純に推してるっていう風には見えない』
豊のコメントが止まった。
夜。智広は豊にDMでなぜ茜谷優里推しなのかという文面を送った。
『うーん…推してるから。高根の花って感じで良いよね』
思ったよりあいまいな答えである。と智広は感じていた。しかし智広はそれ以上詮索する事はやめたのだった。
(彼なりに何かあるかもだし、これ以上詮索するのはやめよう)
ーーーーー
『休みだったので、聖地巡礼に行ってきました』
ある日から豊による写真投稿がいきなり始まった。どうやらボク嘘に登場する背景にはモデルとなった場所があるらしく、その地へと実際に足を伸ばして来たらしい。
本人が撮影したという証拠に自撮り画像も用意していた。
『現地お疲れ様です』
智広の投稿に豊は反応を返す。みちるも画像を見ながらお疲れ様ですとコメントを送った。
この頃、香織も1人部屋で豊の投稿を見ていた。
「また急に…」
香織のため息が部屋中に重く響く。
豊はぼちぼち聖地巡礼と称した写真を投稿しつつ、コメントもアップしていった。
『山岸は茜谷とくっついてくれ…!御池先生頼む!』
『飯田とかあり得んからマジで…!茜谷ルートいけ!』
豊とは対照的に香織の浮上率は低くなっていた。チャット自体は見ており、紅い青春に対しても顔文字や短い短文コメントを送ったりはしているのだが、逆を言えばそれだけである。
「茜谷ルートは無いでしょ…立場わかってんのかね」
加熱する豊のコメントを香織は冷めた目で見ていた日が続いた。
しかし5月28日分の投稿。これを読んだ豊は盲目的にコメントを連打し続ける。
『茜谷しか勝たん!』
『茜谷しかいない!御池先生頼むよ!!』
『飯田やめろ、絶対やめろ!!』
この様子にチャットルームの管理人であるみちるはどう対処すべきか頭を悩ませていた。下手に落ち着くように言っても何言われるか分からない。みちるはあれこれ考えた結果、勇気を出して智広にDMを送って相談する事にした。
(ここは先生に相談してみようか。年上だし)
DMを送ると休日という事もありすぐ返信が来た。
『とりあえずほとぼりが冷めるまではあんな感じ続くと思うよねえ、無理に落ち着かせても逆効果だろうしここはしばらく閉鎖しとく?』
閉鎖する手もあったか。とみちるは考えた。しかし紅い青春がしばらく投稿できなくなるのは避けたいというのもまた本音である。
「どうすっかなあ…」
この時、みちるはある事を思いつく。
『またオフ会しません?そこで色々吐き出すとか』
『あー溜まってるのを吐き出す場を作るって事ね。自分は良いと思う』
みちるは早速オフ会をしたいとチャットルームに書き込んだ。すると呼応するかのように智広が書き込み、それに釣られる形で香織と豊も好意的かつオフ会の計画を練るコメントを次々に投稿していく。
それによってぎすぎすしていた場の雰囲気も少しは和らいだ。
結果。1泊2日のオフ会旅行が行われる事が決まる。
『ここで色々お話しましょう』
みちるはそうコメントを送ると、パソコンを切った。
「はあ…」
香織もまたため息をついている。