いつも通り多くは後書きにて語るとしましょう
第五話~小悪魔再び・羞恥の痴漢電車~
かれんがはっと目を覚ますと、そこはつい数時間前までいた灰色の世界だった。
目の前にはこれも灰色の濃淡でかろうじて輪郭がわかる程度の駅。場違いに感じる施設に、かれんはしばし混乱した。だが、今まで瞬間移動や空間転移を当たり前のようにこなす敵幹部との戦闘ばかりで感覚が麻痺していたが、ナイトメアの社員はほとんどがそのような能力を持たない普通の社員ばかりだ。見渡す限り、この世界はそれなりの広さがある。このような移動手段があってもおかしくはない。
ともあれ今のかれんには行動の目標がない。ただ闇雲に歩き回るよりも、どこか誘うように存在する駅を利用することを決断した。
かれんの胸にあるのは、軽い絶望と希望が入り交じったような奇妙な感覚。自分の前に現れたココとナッツが偽物であったことに落胆しつつ、偽物であってくれてよかったという安堵。
気付けば、駅のホームは目の前だった。それに合わせるようにして、これまた灰色の電車が入って来た。
空気の抜ける音と共に、電車の扉が一斉に開く。車内には男女の社員が所狭しと並んでいる。とはいえ人っ子一人入れないという訳でもなく、かれんは車内に滑り込んだ。
ガタンゴトンと車内が揺れる。かれんは窓際で、移ろい行く景色を眺めていた。もっとも、見えるのは灰色のビル群だけだったが。
「……ひゃ!?」
かれんは小さく悲鳴を上げた。何者かが後ろから太ももを撫で上げたのだ。
慌てて周囲を見回すが、視界に入るのはどれも絶望の仮面をつけたナイトメア社員だけ。かれんが堂々と乗車しても気にも止めなかったことからして、彼らが意図してやったとは考えにくい。そもそもただ命令を忠実にこなすだけの人形がそのような行為には及ばないだろう。
(気のせい……かしら)
電車の揺れで偶然当たったのだろう、と自分自分自分を納得させて、かれんは再び前を向き直した。
「……っ!」
今度は明確に、意思のある触り方でかれんの胸が掴まれた。
「このっ……!」
考えるよりも先に痴漢の手首を掴むと、捻り上げながら自分の右側に引き寄せた。
「痛いなぁ……かれんさん」
人混みから引っ張り出されたのは、ツインテールの小柄な少女、春日野うらら。予想外の人物にかれんは一瞬動揺したが、すぐにきつい目付きで抗議を意を表した。
対するうららはおどけたように肩をすくめると、電車内であることを考慮してか小声で話す。
「おお怖い怖い。何もそんな目をしなくてもいいじゃないですか」
「……ふざけないで」
かれんは冷たく突き放すと、乱暴に手を振り払った。うららは手首を回しながら、ひとつため息をついた。
「で、どうしてかれんさんがここにいるんです?あ、心変わりでもしました?」
「……本気で言っているのかしら」
「まさか、冗談ですよ」
人を小馬鹿にしたような態度で、うららはかれんの身体を舐め回すように観察する。かれんは視線を切って、その不快感から逃れた。
「ねえかれんさん」
「……」
「しばらく見ない内に……またイヤらしい身体付きになりました、ねっ」
「……んっ!?」
突然、うららの手がかれんの服の下に潜り込み、直に胸をまさぐった。
かれんが抵抗するよりも早く、しなやかな五本の指が、つきたての餅のような果実に食い込んだ。
「なっ……やめっ……」
身体をくねらせて抵抗するが、電車内という状況にどうしても意識が向いてしまい、大声を出すことができない。背中に密着してかれんの抵抗の具合を確認したうららは、自分を振りほどけないと確信すると、いよいよ責め手を加速させる。
余った方の手で器用に前ボタンを外し、胸元をはだけさせる。かれんがそれに恥じらっている間に、うららの手はスカートの中へと伸びた。
「ちょっと……うらら……!」
「何です?まさか興奮しちゃってるんですか?」
「そんなこと……ない……!」
かれんは顔を朱に染めて、うららの手の甲を押さえ込んだ。ほんの気休め程度だが、動きを制限して責め手を緩める。
だがそれも長くは続かない。じりじりと太ももを上っていたうららの手が、一瞬の隙を突いて下着の中へ侵入した。
「うあぁ……っく……」
必死にせき止めていた官能の喘ぎ声が、絞り出されるように白い喉の奥から漏れた。
うららの五指はまるで別々の生き物のように動き回り、次第に卑猥な水音を奏で始める。電車内という密室でこのような辱しめを受ける屈辱に、かれんは目を閉じて必死に耐えた。
だが黄色い小悪魔は無邪気な子供のように、かれんの身体のあらゆる場所を性感帯に改造せんと次々に指を這い廻らせる。もちろん左手はスカートの中でかれんの最も敏感な箇所を責め続けながら。
背中に回った手で背筋を撫でられ、そのゾクゾクした感触に喘がされた。
熱くぬめった舌で耳元を舐められ小さく悲鳴を上げた。
朦朧とした意識の中で、あっさりと口内への指の侵入を許し、声にならない声を上げた。
「う……あぅ……」
ちゅぽっ、という水音と共に、うららの指が口から引き抜かれた。同時に下半身の責めも止み、頭の淫らな靄が晴れていく。
「あっさり堕ちてもらっても困りますしねー」
「く……くそっ……」
悪態をつきながら、乱れた衣服を整えようとするかれん。
「誰が終わったって言いました?」
「うぁ!?」
鈎型に曲がったうららの指が、かれんの膣内でうごめいた。反射的に腰が引け、蠱惑的なヒップを押し付けるような格好になる。
くちゅりと水っぽい音が響き、かれんは羞恥に顔を染めながら、首を回してキッと鋭い視線をうららに送る。だがうららはそんなそんな様子など気にも止めずに、むしろ睨むだけで何もできないかれんを嘲笑うかのように巧みな指捌きで追い詰める。
「どうしました?抵抗しないんですか?もしかしてこれが抵抗のつもりとか?」
「うぅ……!」
心の底から人を馬鹿にしたようなうららに、メラリと反骨の炎が燃える。だがそれも一瞬、秘所への責めに気を取られている間に、するりと滑り込んだうららの指先がかれんの乳首を摘まむ。
「んひっ!?……いぃ……!」
「ここまで予想通りの反応されると逆につまらないですね。少しは抵抗してください……よっと」
コリッと乳首を押し潰され、かれんは声にならない悲鳴を上げる。
悔しい、情けない。かつての後輩に良いように扱われる状況に、歯を噛み砕かんばかりに食い縛りながらも、その端から漏れる喘ぎを自分の意思では止められない。
「一度イキましょうか。私も手加減するの飽きましたし」
「何……言って……あああっ!」
うららの指捌きが、反応を楽しむものから強制的に絶頂へと昇らせるそれに変わる。
速く、正確にかれんの最も感じるスポットを集中的に責めあげながら、そこだけに意識を向けさせないように胸を揉みしだきながらの乳首責めも忘れない。
「か……!はぁ……!」
「かれんさーん?足震えてますよー?もう限界だなんて情けないです、ね!」
「んんうううぅぅぅ……!」
止めとばかりに二本の指が膣壁を擦り上げる。
限界まで高められていたかれんの身体は、あっけなく絶頂に身を震わせた。
「は……あぅ……」
下半身がガクガクと震え、ついには床に膝を屈する。
荒い息を吐くかれんの頬に、にちゃあ……と粘着質な液体が塗り込まれた。
「わかりますか?これかれんさんのえっちなお汁ですよ。無駄な抵抗は……おっと、まだそんな目、できるんですね」
「……」
それは正に野獣の眼光。獲物を一睨みで震え上がらせるような、ギラギラとした光がかれんの瞳に宿っていた。
「私は……絶対に……」
「許さないとでも?まあ許す許さないは自由ですけど。それじゃ、怖い怖い猛獣さんには首輪が必要ですねー」
どこからともなく、うららは黒い革製の首輪を取り出した。
それは、かれんにも見覚えのある品で。
「……っ、それは……」
「前回は付け損ねちゃいましたからねー。あ、今回は特別に私がつけてあげます」
カチャリ、とごく自然に首輪がかれんの首を捕らえる。
ひんやりとした無機質な革の感触が、人間扱いされない事の証左に思えて、かれんの奥歯がギリッと鳴った。
「さ、立ってください。まだ本社までいくつか駅がありますから」
「ぐぅっ!」
首輪に繋いだ鎖で、強引に立ち上がらせられる。首に食い込む革が呼吸を阻害し、思わずかれんは咳き込んだ。
「けほっ……何度でも言うわようらら。私は貴女を……」
「私を、何です?」
「取り戻して……んうっ!」
決意の言葉は最後まで紡がれなかった。
正面からかれんの秘所に侵入したうららの指が、強制的に発言をやめさせる。
腰を引こうにも、背後は電車の壁。逃げ場のない快感に頑として抗おうとするかれんだが、うららは捻るような指使いでぐいぐいと壁へ壁へと押し付ける。
「私を取り戻す、ですか」
「貴女だけじゃない……くぅ!……のぞみも……りんも……はっ……こまちも……おぉ!」
「はいはいそうですか」
黄色の小悪魔は笑う。かつての戦友と変わらぬはじける笑顔で。
「ま、頑張ってください」
だがもう心はここにはない。
慣れた手付きでかれんの胸元をはだけさせると、溢れんばかりの胸を覆うブラを指先でずらす。
重みに耐えきれなくなった布がめくれ落ち、ぷるんとした乳房が揺れる。
「良い加減、自分が雌犬って事を理解してくださいね。はむっ」
「ん……!」
かれんの身体が痙攣する。
うららの小さな唇に桜色の乳首が消え、中でたっぷり唾液を絡ませながられろれろと舌先で転がされた。
ピリピリと痺れる快感。最初は舐め転がすだけだったうららも、徐々に要領を覚えたのか、ちゅるちゅると吸い上げたり、時には前歯で甘噛みしたりと責めに緩急をつける。
「い……いや……んっ!やめて……うらら……!」
「んふー、嫌って言われると余計にやりたくなるのわかってて言ってますよね?そうなんですよね?」
「ちがっ、違う……うああああ……!」
うららが身体を密着させ、いよいよ逃げ場がなくなるかれん。その瞳に宿る炎をかき消そうと、指の小刻みなピストンがラストスパートをかける。
「はぁ!はぁ!はあああぁぁ……!」
「もうすぐ目的地ですよかれんさん。なのでもう一回、派手にイカせちゃいますね」
「はひい……!ふぅ、はぁ!いや……いやいやいやっ……イキ……たく……ない……!」
「あははっ!本当にかれんさんって人を楽しませる天才ですね。あ、ちなみにそのお願いの答えはノーって事で」
くちゅくちゅくちゅ!と卑猥な音が静かな車内に意外な程大きく響く。
悪戯っぽく微笑む小悪魔の責めは、徐々に減速する電車とは対照的に加速していった。手首だけでなく肘まで使って淫らなピストンをかれんの秘所に送り込む。
「あ……がっ……!」
強靭な精神力で耐え続けたかれんにも限界が訪れようとしていた。対するうららは中々イカないかれんに若干の焦れったさを感じながら、ふと悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべる。
「お疲れ様ですかれんさん。ナイトメア本社ですよ、んちゅる!」
「ひっ……!」
身震いするくらいに優しく、かれんの乳首が吸い付かれた。器用に舌を螺旋状にして、ザラザラとした舌の感触を味わわせながら吸い上げる。
「あ……」
かくん、と力が抜けた。
同時にそれまで押さえ込んでいた快感が、一気に爆発する。
「あああああ!うあああああああ!」
ビクンビクンと打ち上げられた魚のように身体を跳ね回らせながら、かれんは二度目の絶頂を迎えた。
「ふんふふーん」
上機嫌に鼻歌を歌いながら、うららは手元の鎖を引っ張る。繋がれたかれんは、引きずられるようにしながら後を追っていた。
自分はこれからどうなるのだろう。
一抹の不安と、むしろ社内に潜入できるのだという前向きな考え。
かれんの心は、まだ折れていない。
「さ、着きましたよー。これからかれんさんは私の研究室で実験台になってもらいますからね。凄いでしょ、私、研究副主任なんですよ!」
「……」
場所はナイトメア本社。ここから見えるのは自動ドアと無機質なロビーだけだ。
無邪気にはしゃぐ姿は、かつての春日野うららその物。だが纏う衣装と状況だけで、こうも印象が変わるものなのだな、とかれんは思った。
「さーて、楽しい楽しい……」
急にうららの語尾が萎んだ。かれんは重たい首をもたげ……そして目を見開いた。
「何の用です……こまちさん」
灰色の世界に咲いた緑色の花。
安らぎを与えるはずのそれは、どこか毒にも似た雰囲気を醸し出す。
ナイトメアの社服姿の秋元こまちが、自動ドアをくぐってその姿を現していた。
「何の、とは失礼ね。うらら、貴女首尾よくかれんを捕まえたそうじゃない」
「んふ、そうなんですよ!これ大手柄ですよね!」
「ええ、お手柄ねうらら。じゃあ……それを渡しなさい」
は?とうららが間抜けな声を出す。
「聞こえなかったかしら。かれんを、渡しなさい」
「い、嫌ですよ!手柄の横取りなんてさせませんから!」
「何も横取りしようって訳じゃないわうらら。ちょっと貸して欲しいだけ。もちろん貴女が一番に捕まえたって事は報告しておくわ」
「信じられません」
「信じようが信じまいが貴女の自由よ。でも上司の命令は絶対、わかるでしょう?」
じぃっと、うららは疑いを隠しもせずこまちを睨む。それからため息をひとつ、そしてかれんの首輪を引っ張ると、引き寄せたかれんの秘所におもむろに指をねじ込んだ。
「あんっ!」
愛液でぐっしょりと濡れたかれんの秘所は、何の抵抗もなく指を受け入れる。それは一瞬だったが、刺すような快感が走り抜け、ガグリと膝をついた。
「ちょっと触るだけでこのザマです。自分好みに調教しようとでも?」
「うらら、それ以上の暴言は許さないわよ」
「はいはいどうぞご勝手に!ちゃんと私の手柄になってるか後で確認しますからね!」
鎖を地面に叩きつけ、うららは大股で本社のロビーへ消えた。
「……」
二人きりになって。
先程までの『上司』としての顔ではなく、いつかの『親友』の顔になったこまちは、一歩かれんに歩み寄る。
「私を笑いにでも?」
「……」
こまちは小さく首を振った。
「ねえかれん……」
「……何」
「どうして……」
声は、震えていた。
「どうして戻ってきたの……かれん……」
ぽろぽろと、透明な雫がこまちの頬を伝う。
彼女は泣いていた。
ぽろぽろ、ぽろぽろと。溢れる涙を拭いもせず、泣いていた。
まずはここまで読んでくださった皆様に感謝を感謝を
……はい、前回の更新が去年の三月ですので、一年以上間を空けてしまいました。物書きとして良いんですかね。
一通りキャラが出揃いましたので、これからはより深く、キャラ同士の関係を書いてみたいと思っています。それにしても、どうしてストーリー性を付けたがってしまうのでしょう。筆者がバトル一辺倒だったり、官能一辺倒だったりするのがあまり好きではないからかもしれません。
今回はこの辺りでお別れです。機会があればまた次回お会いしましょう。