発情期があるタイプのTS幼馴染の性欲を独占したい 作:しじままどせ
理生の姉である
理生の姉だけあってとても綺麗な人だ。艶のある黒髪を腰まで伸ばして、肌は雪のように白くて滑らかで、大きな瞳は宝石のように輝いている。
小柄ながらスタイルも抜群で、手足はすらりと長い。
でも理生と違って勝ち気で活発な性格をしていて、弟とは正反対のタイプと言える。
とはいえ弱い者いじめをするような人ではなくて、むしろ理生のことを溺愛している節さえある。
「理生ちゃんかわいい♡ さすがあたしの弟、超かわいいっ♡」
と、会うたびにぎゅーっと抱きしめては頬擦りをしていた。
実のところ美緒さんは僕の初恋の人なのだけれど、それはともかくとして、美緒さんの服ならば女体化した理生でも問題なく着られるだろう。
「で、でも、ねーちゃんの服を勝手に借りるのはちょっと……」
「緊急事態なんだから仕方ないだろう」
「ゔぅ、でも……」
理生は顔を赤くして俯いてしまった。
栗色のふわふわした髪から覗く耳が真っ赤に火照っていて、どうやら恥ずかしがっているらしい。Tシャツの裾をぎゅーっと掴んでモジモジしている。
この小柄な美少女が恥ずかしそうに身体を捩ると、甘い香りとともに胸がふるふると震える。こちらに背を向けるとお尻の丸みまでもがシャツ越しに見える。
その光景に僕は思わず息を呑む。
そういえば理生は下着を履いているのだろうか。履いているとしたら、それはメンズだろうか。
「だって、ねーちゃんの服を借りるってことは、それは女装で……」
「いや、子供の頃からよく美緒さんに女装させられてたじゃん」
「そうだけど……! でも自分からするのはなんか違うっていうか……!」
鈴の鳴るような清らかな声で文句を言ってくる。
正直に言って庇護欲をそそられるのだけれど、だからやめてあげたいのだけれど、でも理生をこの明け透けなブカブカのTシャツ姿で外出させるわけにはいかない。
だって、そんなことをしたら絶対に犯罪に巻き込まれる。現状の理生が美少女であることは間違いないから、下手をしたらそのまま連れ去られてしまうかもしれない。
それはいやだ。
彼女がほかの男のものになるのはいやだ。
それは、独占欲に近い感情だったのだけれど、その時の僕はまだそれを自覚していなかった。ただ漠然と理生が誰かに奪われるのがいやだと思っていた。
だから僕は彼女の顎に手を添えて、ぐい、とやや強引にこちらを向かせた。
「――ッッ」と理生は驚いたように目をしばたかせた。目を白黒と瞳が揺れて、それから顔を真っ赤に染めていく。
あからさまに女子っぽい挙動だ。理生、男のころはこんな挙動をしたっけ。
ものすごく女の子っぽい反応に一瞬だけ違和感を覚える。一夜にして脳みそまで女の子になってしまったのか。
けれども、僕は構わず続ける。
どうしてか、どうしても理生のことを独占したい感じだったから。
「理生、聞いてくれ。僕が理生を助けるから、僕のことを信じろ」
「きょ、京介……」
「理生はこれから美緒さんの服を着て僕と病院に行く。理生は僕の後ろに隠れて付いてくるだけでいい。僕に付いてきてくれ」
かあぁ……っ、と理生の顔がさらに熱を帯びていった。頬が熟れたリンゴみたいに染まって、唇が何か言いたげにもごもごと動いている。
栗色の長い前髪のすき間から見える潤んだ瞳が僕を見つめている。
甘く短い、は、は、は♡という吐息が漏れている。
理生はぽんわりと蕩けたような表情のまま、じぃーっと僕の顔を見ていて動かない。まるで夢の中にいるかのような陶然とした眼差しで見つめてきている。
「理生、僕に付いてこい。いいね?」
「は、はぃ……」
理生は消え入りそうなほど小さな声で返事をした。
僕はその声を聞いて満足して、理生の頭を撫でてから玄関から理生の家の中に入る。不在の美緒さんの服を借りるために。
理生はとろんと潤んだ目をしたまま、ぽわんと呆けたような顔で僕についてきた。
僕は振り返らずに、理生がちゃんと後ろをついてくるかどうかだけを確認していた。
「キス、されるのかと思った……」
そんな、ものすごく、ものすごく小さな声が聞こえてきた気がしたけれど、残念ながら僕の耳には届かなかった。
◇◇◇
そうしてそれから僕は美緒さんに電話をした。『理生がTS病に罹患したらしく女の子になってしまったから服を貸してください』と、ストレートに伝えて、それからことのあらましをすべて説明した。
一番に自分に連絡をしなかったことを叱られたけれど、美緒さんは快く服を貸してくれると約束してくれた。
理生の病状のことを美緒さんはものすごく、ものすごく心配したけれど、理生の声を聞いたらとりあえずのところは落ち着いたようだった。動揺はしているようだったけれど。
どうしてもあと一時間は大学の講義が抜けられないとのことで、病院で合流しようという話になった。
僕たちなら勝手に美緒さんの部屋に入ってクローゼットを開けて良い、とのことだった。幼馴染特権で信頼されているのだろう。
もしかすると僕は美緒さんから異性であると認識されていない以前に、単なる家族というか弟みたいな存在だと思われているのかもしれないけれど。
――なるべくユニセックスな服装を選んだ方が理生の負担が軽いと思う。クローゼットの二段目にあるよ。
しゅぽ、と美緒さんがスマホからメッセージを送ってきた。
さすが、動揺しているといっても美緒さんはしっかり者のお姉さんだ。理生の心理的な負担まで考えて行動している。僕も見習わなければ。
――理生のこと、頼むね。
『任せてください』
――必要なら私のブラも使って良いよ。サイズ的にはあわないかもしれないけれど。
え? 初恋の人の、ブラジャーを、親友に、取り付ける……? もしかして、僕が……?
そのメッセージを見て、思わず動揺して理生に目線をやると、彼女はかぁぁ……っと頬を赤くして下を向いてしまった。耳まで真っ赤になっている。
「お、おれ、ねーちゃんのブラするの……?」
ふたりして、しばらく無言で固まってしまった。